この画像は天球と呼ばれる中国で作られた象牙製の球体の彫り物です。11月に今治常盤町のT・Sさん宅の報恩講に参上しお
参りを終えていろいろお話をしておりましたら、Tさんが「ご院家(いんげ)さんに貰っていただきたいものがあるのです
が・・・・、主人が元気で仕事をしていた頃、どうしても傍に置いておきたいと云って求めたものです」と云って棚の中からおも
むろに私の前に出して来られたのが、この天球だったのです。
Tさんのご主人は腕のいい印刻士だったのですが還暦前に亡くなられたのです。漢字や篆刻、書道に関する膨大な蔵書は今万福
寺と大三島図書館に納まっています。前住職の落款印や私の印もSさんが彫って下さったものなのです。そのSさんがいつも傍に
置いていた象牙製の天球を万福寺に納めておきたいと、随分と脚の弱って来られたTさん云われるのです。
私は天球を手にとってしげしげと眺めて見ました。何と、球体の中に六重の球体が彫られていてそれぞれがレース様に彫刻され
て、不思議なことにそれぞれが歪さが全く見られない球体となっているのです。恐らくこれを求められた印刻士Sさんはこの天球
の彫刻の確かさに唸られたに違いないのです。どうしても傍に置いておきたい思いに駆られたのだと思いました。
手放しても本当にいいのかなァー、と思いましたが、Tさんの是非ともと云われますのでお預かりすることにしたのです。
何度眺めても、何度思案しても、この象牙製の天球を彫り出す方法、完成までにどの位の時間がかかっているのだろうなどと思
うと気が遠くなりそうになるのです。(直径6,5㌢、これには同じ象牙製の置き台が付属していたはずですが、それは付いてい
ません)
一番外側の球面にはダイナミックに3頭の雲龍が細かく彫られています。 さーて、この天球を何処に置くべきでしょうか?