コミックの映画化の場合、キャラクター、特に悪役の造形のコッテリ感が有名俳優の起用につながり、むしろ彼ら、彼女らもそれを楽しんで演じている感じがあった。今回は配役は豪華版であるがどれもコミック・キャラらしからぬあっさり感である。はじめの方に善良警官=ゲイリー・オールドマンが出てくるのを見て、そのうち本性を現すに違いないと思うが、期待は見事に裏切られる。
あくの強さで言えば、冒頭にオリエンタル・テイストで渡辺謙が健闘しているのと、「羊たちの沈黙」でレクターがかぶるようなマスク(おどろおどろしいが本当にガスマスクの機能が果たせるのかという感じ)を精神科医がかぶってスケアクロウと称しているくらい。したがっていわゆるコスチューム・プレイはバットマンの独壇場となるところが浮いているといえば浮いている。
クリスチャン・ベールのバットマンは歴代の中でも若々しく、なかなか(たぶん最も)良い。富豪の御曹司らしい気品とダークな影の部分が魅力的なヒーロー象を作っている気がする。
クライマックスのモノレールの脱線激突シーンはテレビで繰り返し目にしたJRの脱線事故が脳裏によみがえった。もし関係者が鑑賞した場合、精神的にどうなのだろう。