韓国のドキュメント映画「牛の鈴音」をDVDで観ました。
(私にしては珍しい韓国映画。
そもそも韓国嫌いの私・・・韓国には行きたいとも思わない。
偏見は承知しています。
だから韓流ドラマやK・POPにもまったく興味がありません。
そんな偏った私ですがこれだけは例外で観たかったので視聴。)
2008年の作品。
韓国では300万人という観客動員を叩きだしたドキュメント映画です。
農業の機械化が当たり前の中、機械も農薬も使わずに農耕用の牛とともに暮らす老夫婦の物語です。
この作品が初監督作となるイ・チュンニョル氏が3年ほど費やしたとか。
物語の内容は・・・
15年の寿命と言われる牛だそうですが、この作品の中の老いた牝牛は40年も生きています。
もう足取りもおぼつかず、目の力もない。
そして同じく老いて不自由になった足を杖で支えやっと歩くチェ爺さん。
もう30年も一緒にこの牛と働いてきました。
チェ爺さんは無口だけれど頑固で、隣の田畑は機械化されているのに自分の田畑は牛と共に耕す毎日。
牛の食べる草をとるために農薬を使う事も拒否し、信念を曲げない暮らしをしています。
一緒に働くお婆さんは日常的に夫を責める。
「機械を使おうよ」「農薬をまこうよ」
そして「こんな人と一緒になったから苦労が続く」
「どうしてずっと楽ができないのか」
「牛と私とどっちが大事なのか」・・・
韓国女性の気の強さなのか(?)ずっと愚痴ばかり言ってました。
よろよろになった牛の世話も大変だから売ってしまおう、と提案するのも妻。
一度はチェ爺さんも牛を売りに行くのですが、高値を言うだけで売ろうとしない。
多分、最初から売る気持ちがなかったのだろうな~
この時の牛の涙にはグッときました。
物語は牛と共に淡々を描かれています。
畑の斜面を這いつくばるように農作業をするチェ爺さん、そしていつも傍らに牛。
チェ爺さんの具合が悪く町の病院に行くにも、牛に引かれて行くのです。
車の通る道を牛はゆっくり進むし、駐車場でも車の隣に牛は繋がれて老夫婦を待っています。
それでもやはり牛の寿命はやってきてしまう・・・
いつもは牛に邪険にしてしまったお婆さんが、牛の最期に「まだ逝くのは早いよ。」と言うシーン。
そしてチェ爺さんも「天国に行くんだよ。」と語りかけるシーン。
牛が息をひきとる時はかなり胸がキューンとなるように悲しかったです。
牛が葬られるのも見届け、老夫婦のために何度も何度も運んだ木の枝が山積みになっている光景には感動しました。
牛の鈴をチリンチリンと鳴らすさみしげなチェ爺さん・・・
何も言葉はいらないですね。
老いた牛とチェ爺さんの強い絆を感じ、地味ながらも黙々と働き続ける老夫婦の姿をしっかりとらえた良い作品だったと思います。
素直に感動しました。
今回の評価は・・・ 星4つ ☆☆☆☆