”Ashram”
イタリアはナポリのバンド、という事で興味を惹かれて聴いてみたんだけど、これはクセモノだ。あまりイタリア臭さというものを感じさせず、どちらかといえば汎ヨーロッパ的な耽美世界を探求しているみたいなんだけど・・・
なんかねえ・・・昔、”雨音はショパンの調べ”なんて歌が流行ったけど、あの曲の主題による変奏曲集、みたいな雰囲気もありですな、あえて俗な表現を使ってみたが。
あくまでも繊細にして切ないメロディを奏で続けるピアノと、流麗なる調べを泉の如くに沸き立たせる豊かな響きのバイオリン。それらを従えて、やや中性的な男性ボーカルが暗黒の中で悲嘆の調べを朗々と歌い上げる。ヨーロッパの退廃美の底から湧き上がって来るエキスみたいな音楽だなあ。
クラシック色が相当に濃く、その系統のプログレの一種みたいにも思えるけど、それとも別の美意識を持ってやっているようだ。”美と悲嘆”をど真ん中に置いて悪びれる事がない。臆面もなく泣きのフレーズを積み重ねて行く。その結果としてムード・ミュージックのすぐ隣りあたりに表現の形が至ってしまう事を恐れない。ともかく美しければ勝ちだ、と腹を据えているんだな、彼らは。
そして最後に収められた、聴くまでが一苦労の(?)シークレッットトラックのアヴァンギャルドな響きに、哀愁世界の吟遊詩人に身をやつした彼らの心中に潜む悪意が顕わとなる運び。やっぱりヨーロッパ、一筋縄では行かない。