長い物語が読みたいと、自分の中の「読みたい本」リストを
探していて、まだこの本が未読だったことに気が付きました。
最初は図書館で文庫版の方を借りてきたのですが、1~4がすぐに
揃わないので、こちらの単行本に切り替えました。
一度目は、ストーリーを追うことに精一杯で、ラストまで辿り着くも
あの国とこの国の関係はどうなっていたのかーとか、この人は誰と
通じ合っていたのかーとか、思い出せないことがいくつもあって、
それらの箇所を探すよりは、もう一度最初から読みなおした方が
早いと思い、この1ヵ月、ほぼ『鹿の王』の毎日でした。
なんとも壮大な話なんです。
二人いる主人公のうちひとりは「欠け角のヴァン」という名で呼ばれた
元戦士で、大勢の奴隷が噛み殺された岩塩鉱の中で、彼と、後に
彼が引き取り育てることになる、幼い女の子だけが生き残るという章
から物語は始まります。
もうひとりの主人公は、ホッサルという名の若者で、彼は「医術師」。
別々の章で、ストーリーは交互に進んでいき、ホッサルたち医療関係者を
通して、彼らが属しているセカイでの病の状況を知ると同時に、
私たちが居るこの世界の、人の体とウイルスのしくみを学ぶことが
できるとても優れた医術小説となっているのです。
では、鹿は?なぜ鹿の王??なのだろう。
序盤での私の中の疑問は、この物語がどのようにタイトルに繋がって
いくのかということでした。
ヴァンたちが暮らしていた地方では、鹿と言えば「飛鹿」(ピュイカ)
のことで‥ファンタジーならではの、とても魅力的な動物が登場する
のです。
物語が終盤に近づいたあたりで、ヴァンの父親がかつて自分が見た、
ピュイカの<鹿の王>を、成人の儀を終えた息子たちに話すシーンが
印象的でした。
平地で山犬や狼などに群れが襲われて、逃げきれない仔鹿がいた
時に、群れの中から一頭の牡鹿が躍り出て敵と向き合った。
その牡鹿はもう若くもないのに、その敵の前に立ち、まるで挑発
するように跳ね踊る‥その牡鹿を、群れを守るために我が身を犠牲に
する<鹿の王>と英雄扱いするのは違っている、と言うのです。
「敵の前にただ一頭で飛び出して、踊ってみせるような鹿は、
それが出来る心と身体を天から授かってしまった鹿なのだろう。
才というのは残酷なものだ。」
「そういう鹿のことを、呑気に<鹿の王>だのなんだのと持ち上げて
話すのを聞くたびに、おれは反吐がでそうになるのだ‥」
この時の父の言葉が、ヴァンの中に深く強く残っているのだなーと
二度読み終えた今なら、よくわかります。
『鹿の王』
物語の世界観は果てしなく、ディティールも込入っていて、
とても読み応えがありますが、作者の言いたいことは、実に
シンプルなのではないかと、思いました。
与えらた命を、精一杯を尽くして生きていくーできれば自分が
愛し、自分を愛してくれる人たちとともに。
ヴァンが見つけ慈しみ育ててる女の子ーユナが、そこにあるだけで
美しい、命の象徴のようでした。
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最近なかなか本のレビューが書けないのですが、こうやって
紹介した作品を読んで共感してもらえると、とても嬉しいものですね~
確かにこの作品は内容が濃いので、最初はストーリーを追うだけで精一杯。
理解しようと思えば読み返さないと無理ですよね。
でも、その分面白味も増すというか、壮大な物語に圧倒されてしまいます。
rucaさんのレビューを読んで、私ももう一度読み返そうと思ったら
娘のところへ行ったままでした。
村上春樹の『世界の終わりと・・・』といい、いつのまにか娘の本棚に
定住しているようです。やれやれ。
コメント残してくださってありがとうございます。
くっちゃ寝さんの読書記録はとても参考にさせて
いただいてます。ありがとうございます。
なかなか記録に残すのが億劫になってしまいがち
(内容が濃ければ濃いほどに)ですが、今後もちょっと先の自分のためにも続けていこうと思っています。
それにしても上橋さんの作品は本当に面白いです~まだ未読なものも残っているのがとても嬉しいです。そうそう『鹿の王』のアニメーション映画、来年2月頃公開ですよね。それも観に行ってしまいそうです(笑)。
ご長女様、村上RADIOも聴いているかなー。