秋に読みたい、音楽絵本シリーズ(そんなのあるの~?)第一弾は
ずっとずっと前に ことり文庫 からやってきたこの本です。
『オーケストラの105人』
カーラ・カスキン 作 マーク・サイモント 絵
岩谷時子 訳
この本には、こどももおとなも両方楽しめる要素がぎっしり詰まっています。
まず、こどもたち。
子供は数字が大好きです。なぜなんでしょうね‥大勢のとかたくさんの
とか、書いてあるよりも、そこには36匹の羊がいて、とか、50台の車が
いっせいに走り出しました、のほうが喜びます。イメージしやすいからかなとも
思うのですが、逆に数字が込み合ってくると、こんがらがってよくわからない
くせに、それでも数字そのものにこだわります。
だから、オーケストラを、仮に知らなかったとしても、105人には
興味しんしんのはず。そして、3ページ目にはこんな文章‥。
まず みんな からだを洗います。
105人のうち
男のひとは 92人 女のひとは 13人です。
ほとんどのひとが シャワーをつかい
ふたりの 男のひとと 3人の 女のひとは
しゃぼんの あわで いっぱいの おふろに
はいります。
3ページ目から10ページ目までは、裸かそれに近い格好の人たちが
体を洗ったり、ひげをそったり、パンツを履いたりの場面が続きます。
子供はここらへんも大好き。カバーに書かれた紹介文をあえて読まないで
お話を読みはじめれば、この92人の男の人と、13人の女の人が
何をするために、身支度をしているのかわからないから、ますます先が
知りたくなります。
(2度目以降は、筋を全部知っているけれど、細部をたどっていく
楽しみが十分に残されています)
次におとな(=私)が楽しめたところ(っていうか好きなところ)
ひとつめに、タイトル。原題は The Philharmonic Gets Dressed
これを日本語にすると「オーケストラの105人」。直接的な英語も、
それを日本語にうまく訳したところもどちらにも拍手、です。
ふたつめは、書き出し。
金曜日の夜です。
そとは だんだん 暗くなり そして
だんだん 寒くなってきます。
お家や アパートに
あかりが ともりはじめました。
金曜日の夜にいったい何がはじまるのでしょう‥
この後、「町では‥」と続き、町の字が当てられていますが、
こっちの「街」のほうがよかったような。
だって、ここは限定されていないけれど、ニューヨークシティだと
私は思うのです‥。冬の寒さの様子といい、後からでてくる
地下鉄の中の落書きといい、タクシーも内部しか描かれてないけど
きっと、たぶん、そう。
みっつめに好きなところは、12人の女の人が黒い長いスカートを
はいたり、黒いセーターや黒いブラウスを着るところ。
(表紙の絵もそこからとってますね)
そして、いちばん好きなのは、92人の男の人と13人の女の人が
身支度を整えて、「いってきます」と出かけた後の、家族が描かれて
いる真ん中あたりのページです。
ある人のパートナーは椅子で新聞を読み、ある人のお嬢さんは
つまらなそうに机に両肘をつき、ある人の家のソファーでは
ネコがいつものことさ、って感じの顔をして寝そべり、ある人の家の
イヌはしゅんとうなだれています。
金曜日の夜に、颯爽と仕事に行く人がいれば、その人たちが
パタンと閉めたドアの内側には、待っている人がいる‥
(あるいは、一人暮らしで待っている人も動物もいないかもしれないけど
でも、そこにはその人の普段の、普段着の生活がある)
それが、しみじみ感じられる、このページがとてもいいなあと思います。
金曜日の夜 8時30分
105人の 男のひとと 女のひとは
黒と白の 服をきて
白い紙に 黒で 音符が書かれた 楽譜を
シンフォニーに かえるために ここへ
きたのです。
‥ ‥ ‥ ‥
シンフォニーに方々とは程遠いところにいるけれど、
9月の最初の日曜日に、娘のピアノの発表会がありました。
個人の先生主催の小さな発表会で、2年の1度の開催です。
rが最初に出たのは3年生の時。着ていた服は、
アニエス・ベーの薄手の白いニットに黒のフレアスカート。
足首よりちょっと上ぐらいのコットンレースがついた
白いソックスに黒い靴でした。季節はたしか10月。
今回は、5年生で、9月といってもまだまだ暑い時期。
どんな服にしたらよいかすごく迷いました。
が、結局、いとこのあっちゃんに借りた黒い厚底のローファ型
シューズがきめてとなり、2年前と同じ黒いスカートに、
MUJIで見つけた大人用のSのブラウス。そして黒い透け感のある
オーバーニーソックスにしました。
そのイデタチに誰よりも満足していたのは私です。
(一応、曲名も記しておきます。渚のアデリーヌと、友だちとの連弾で
君をのせて、でした♪)