報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「成田で一泊」 2

2023-05-22 16:24:36 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月23日22時00分 天候:雨 千葉県成田市取香 東横イン成田空港新館]

 私とリサはツインルームに入った。

 愛原「もう深夜帯だ。早く風呂に入って寝ろ」
 リサ「まずはバスタブにお湯を溜めなきゃ」
 愛原「ああ、そうだな。リサが先に入っていいぞ」
 リサ「え?一緒に入るんじゃないの?」
 愛原「何でだよw」
 リサ「『夫婦が一緒に入るのは当然だっちゃ』って、あるアニメのキャラが言ってたよ」
 愛原「やめなさい、そういうネタ!後でクレーム来るから!とにかく、先に入っていいから!」
 リサ「はーい」

 リサは窓側のベッドの脇に荷物を置くと、バスルームに向かった。
 そして、バスタブにお湯を溜める音が聞こえる。

 愛原「風呂に入る前に、お茶でも入れるか」
 リサ「あっ、わたしが入れてあげる」
 愛原「そうか?」

 このホテルの客室には、電気ケトルがある。
 リサは一旦、風呂の水道を止めると、水に切り替えて電気ケトルに水を入れた。
 そして、それを持ってきて電源を入れる。
 再びお湯を入れ始めて、また戻って来た。

 愛原「それで……どうだった?斉藤早苗は?」
 リサ「間違いなくBOW。他のリサ・トレヴァーと同じ臭いがした」
 愛原「そうか」
 リサ「エレンと一緒の部屋にして大丈夫なの?」
 愛原「もし絵恋さんが襲われるんだったたら、沖縄にいる間に襲っているだろう。だから、絵恋さんに関しては何を今さらだと思うんだ」
 リサ「なるほど。先生はどうする?」
 愛原「善場主任に報告するさ。オマエが風呂に入ってる間に」
 リサ「どうしてわたしがお風呂に入ってる時に?」
 愛原「オマエは俺と善場主任がどんな話をしたのか、全く知らない方がいい。後で、斉藤早苗に聞かれた時にな」
 リサ「なるほど」
 愛原「それと、ついでに見張り」
 リサ「見張り?」
 愛原「お前のような奴は、天井のダクトを使って侵入てかできるんだろ?もしかしたら、早苗もそんなことができるかもしれない」
 リサ「なるほど。わたしなら、そんな奴らが近づいてくればすぐ分かるから……」
 愛原「そういうことだよ」
 リサ「そういうことなら……」
 愛原「頼んだぞ」
 リサ「任せて。……あ」
 愛原「どうした?」
 リサ「お風呂上がりのジュース、買ってない」
 愛原「任せろ。俺にいい考えがある」

 私は自分のスマホを取り出した。
 そして、高橋にLINEする。

 愛原「高橋に買ってきてもらう」
 リサ「なるほど」
 愛原「リサは何がいい?」
 リサ「オレンジジュース」
 愛原「分かった。高橋に買いに行かせよう」

 私は高橋にLINEした。
 これには1つ理由がある。
 高橋をここに呼ぶ口実を作る為だ。
 そして、高橋にも斉藤早苗のことは伝えておくわけである。

 リサ「はい、お茶」
 愛原「ありがとう」

 リサは私に煎茶を入れてくれた。

 リサ「着替え、着替え」

 リサは自分の荷物の所に行き、そこから黒いスポブラとショーツを取り出す。
 リサは寝る時、上にはスポブラを着ける習慣がある。
 他には体育がある時とか。

 リサ「わたしの着替え、見る?」
 愛原「バスルームで着替えろよw そろそろお湯が溜まる頃なんじゃないのか?」
 リサ「ちょっと見て来る」

 リサはバスルームに向かった。

 リサ「もうちょっとみたい」
 愛原「そうか」

 それから少しして……。

 絵恋「ぎゃっ!何すんのよ!?」

 部屋の外から、絵恋の叫び声が聞こえた。

 リサ「エレン!?」

 そして、部屋のドアがノックされる。

 愛原「リサ、気をつけて開けろよ?」
 リサ「分かってる」

 リサは右手の爪を長く鋭く伸ばした。
 それだけでなく、パチッと火花を散らして放電の準備を始めた。
 そして、ドアを開けた。

 高橋「何か、不審者がドアスコープ覗いてたんで、ボコしときましたが?」
 絵恋「ううう……」
 リサ「お兄ちゃんだったの……」
 高橋「頼まれた飲み物、買ってきましたよ」
 愛原「ああ、ありがとう」
 リサ「エレン!先生が早く寝ろって言ってたでしょ!」
 絵恋「だってぇ……」
 愛原「もう夜も遅いから、明日にしなさい」
 高橋「そうだそうだ。ガキは寝る時間だぞー」
 リサ「エレン。先生の命令は絶対」
 絵恋「はーい……」

 リサは絵恋を部屋から出した。

 リサ「ちょうど、お風呂のお湯が溜まった」
 愛原「よし、入ってこい。ゆっくり入っていいからな?」
 リサ「はーい」
 高橋「先生を差し置いて1番風呂とは……」
 愛原「俺が先に入れって命令したんだ。文句あるか?」
 高橋「い、いえ……。先生の御命令は絶対ですから」
 愛原「だろ?」

 私は飲み物を部屋の冷蔵庫に入れた。

 愛原「せっかくだ。オマエも茶、飲んでけ」
 高橋「ありがとうございます!」
 愛原「ちょっと、話がある」

 私は高橋にも、斉藤早苗のことを話した。

 高橋「……なるほど。そういうことですか」
 愛原「今のところ、彼女は何もする気はないようだが、しかし俺達が怪しんでることに気づいたら、何かしてくるかもしれん」
 高橋「ですが、明日はウィルス検査っスよね?それでバレるんじゃないスか?」
 愛原「それについて、彼女が何を思っているのかは分からん。とにかく明日、検査が始まるまでは、何も起こらないようにしたい」
 高橋「分かりました。要は、俺も何もするなってことですね?」
 愛原「まあ、そうだな。もし仮に彼女と話をする機会があったとしても、オマエは普通の女子高生と話している感じで接してほしいんだ」
 高橋「分かりました。お任せください」
 愛原「頼んだぞ」
 高橋「向こうが正体を現して襲ってきたら、マグナム撃ち込んでいいんスね?」
 愛原「それは……正当防衛だからな。それでいいと思う」
 高橋「了解っス」

 その後、私は善場主任にメールを送った。

 高橋「姉ちゃん、このホテルにいるんスかね?」
 愛原「分からんな……」

 取りあえず善場主任からは、了解の旨の返信が来た。
 ホテル内には既にBSAAが潜り込んでいるらしい。
 私達は何食わぬ顔で、過ごしてほしいとのことだった。
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“私立探偵 愛原学” 「成田で一泊」

2023-05-22 11:24:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月23日21時45分 天候:雨 千葉県成田市取香 東横イン成田空港新館]

 成田空港第2ターミナルを出発したバスは、予定通り、第1ターミナルに到着した。
 ここでも乗客を乗せて来る。
 大型バスで運行して当然だと思うくらいの乗客数になった。
 満席ではないものの、2席まるっと空いている所は無いのではないかと思うほど。
 そしてようやく、バスはホテルへと向かう。
 この送迎バス、空港からホテルに向かう際、変わったルートを通る。
 それは、本来のルートであれば国道295号線の取香橋交差点を右折すれば良いのだが、あえてそこを左折する。
 少しうら寂しい住宅街のような所を少し進むと、駐車場らしき空地へとバスは入る。
 しかし、周りを見渡しても、ホテルらしき建物は見当たらない。
 まさか、ここから歩けというのだろうか?
 そうではない。
 バスは再び通りに出ると、来た道を戻り始めた。
 そして、先ほどの取香橋交差点に差し掛かり、今度は直進する。
 何故このような『3段階右折』をするのかというと、取香橋交差点の特殊な構造による。
 別に、右折が禁止されているわけではない。
 ところが、右折先の橋が狭い上に鋭角カーブになっている為、大型車では曲がり切れないからである。
 その為、東横インでは左折先の空き地を転回場として確保し、そこで転回した上で、ホテルに向かうという方法を取っているのである。
 なので、右折禁止ではないが、大型車のみそれは禁止されている。
 さて、そんな『3段階右折』を経て、バスはようやくホテルへと到着した。

 

 運転手「はい、お疲れさまでしたー」
 我那覇絵恋「これで運賃を取らないなんて、凄いわね。チップくらい払った方がいいのかしら?」
 愛原「外国じゃないんだから……」
 絵恋「昔、アメリカ旅行に行った時に乗ったシャトルバスなんか、それはもうヒドいものでしたわ。運転は乱暴だし、車内で音楽は掛けまくるし、食べながら運転するし、おまけに走りながらナンパしてるし……」
 愛原「メキシコのバスの間違いじゃない?」
 絵恋「テキサス州でした」
 愛原「あー……うん。メキシコに近いな」

 バスから荷物を降ろし、私達はホテルの中に入った。

 リサ「大きいホテル……!」
 愛原「ああ。全国にある東横インの中では、大規模だろうな」

 本館と新館が隣接しているが、私達が泊まるのは新館の方。
 本館はどことなくリゾートホテルのような外観をしているが、新館は全国にある東横インの建物の外観とほぼ同じ。
 バスの乗客が一斉にフロントに向かったので混雑しているが、私は自動チェックイン機を使用する。

 高橋「先生。どういう部屋割りになるんスか?」

 当然高橋は、自分が私と同じ部屋であると思っていたらしい。

 愛原「オマエだけ喫煙室だから、別の部屋な」
 高橋「ええっ!?」
 愛原「あとは俺達、禁煙だから」
 絵恋「ですよねー!」

 絵恋さんは明らかに、高橋に侮蔑するような目を向けた。

 高橋「そんな殺生な!」
 絵恋「うるっさいわね!だったら禁煙しなさいよ!タバコ臭い!」
 高橋「うるせっ!」
 リサ「わたしは誰と同じ部屋?」
 絵恋「当然、私ですよねぇ!?」
 愛原「いや。リサは俺と同じ部屋だ」
 高橋「ファッ!?」
 絵恋「はい!?」
 リサ「おー!」
 斉藤早苗「……!?」
 高橋「危険じゃないですか!こんな人食い鬼!」
 リサ「先生は私のダーリンだもんね!当たり前!」
 絵恋「どうしてですか?!私がリサさんと同じ部屋じゃないんですか!?」
 高橋「絵恋さんは早苗さんと同じ部屋で寝てもらう」

 私の部屋割りに、リサ以外の全員が納得していない顔だった。
 但し、早苗さんだけが無表情で、どういう考えをしているのかまでは分からない。

 愛原「それじゃ、これがカードキーな。朝食は朝6時半から9時までらしいから、朝食食べたかったら寝坊しないように。それじゃ」
 リサ「先生!一緒に行こっ!」

 リサは喜び勇んで、私の右腕を組んできた。

 絵恋「ちょっと!どういうことなの?」
 高橋「俺だって知らねーよ!まさかリサのヤツ、俺が留置場に入ってる間に先生とヤッたんじゃねーだろうな?」
 絵恋「ええっ!?留置場!?」
 高橋「ああ。ちょいとサツにパクられて……」
 絵恋「近づかないで、犯罪者!弁護士呼ぶわよ!」
 高橋「元・金持ちの御嬢様はサツじゃなくて弁護士かよ!」
 愛原「おい、何やってるんだ?早く来い!」
 高橋「は、はい!……くそっ!先生の御命令は絶対だからな。逆らえねぇ……」
 絵恋「私だって、リサさんの命令は絶対だからね。逆らえないわよ……」
 早苗「さすがは『魔王様』ね」
 絵恋「そうよ!」
 高橋「そして、我らが愛原先生は、そんな『魔王』を退治する『勇者』であらせられる!」

 何言ってるんだか……。

 愛原「ここからアメニティを持って行くんだ」
 リサ「はーい」

 エレベーターホール付近にクリーニング済みのナイトウェアや、アメニティが置かれている。
 インスタントのお茶なんかもここにある。

 愛原「それじゃ行こう」

 東横インの中でも大規模な店舗ということもあり、エレベーターも4基あった。
 小規模の店舗だと1基しかない所もある中、これだけでも圧巻だ。

 愛原「俺達は9階な?」
 リサ「そこそこ高い」
 愛原「そうだな」

 私達はエレベーターに乗り込んだ。
 喫煙可の部屋の高橋だけ、別のフロアだ。

 リサ「やった!先生と同じ部屋……同じ部屋……!」

 リサはやたら興奮している。

 絵恋「リサさん、部屋に遊びに行くからね!?」
 リサ「いや、来なくていいよ」
 絵恋「そんなぁ……!」
 愛原「もう夜も遅いんだから、早く寝なよ」
 リサ「先生の命令は絶対」
 絵恋「ううう……」

 『女の友情』は、時には恋愛や結婚の足枷になるとは、よく言ったものだ。
 私とリサは、自分の部屋に入った。

 リサ「先生!早速ヤろ!?」
 愛原「いや、そんなつもりで一緒の部屋にしたんじゃないんだよ」
 リサ「ええーっ!?」

 ヤるだけだったら、ラフボに行くわい。
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“愛原リサの日常” 「もう1人の魔王様」

2023-05-21 20:55:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月23日21時00分 天候:雨 千葉県成田市 成田国際空港第3ターミナル]

 我那覇絵恋達を乗せた飛行機は、遅れて着陸した。
 到着口から、大きな荷物を持った乗客がぞろぞろと出てくる。

 我那覇絵恋「リサさーん!」
 リサ「エレン!」

 そしてその中に、我那覇絵恋がいた。
 心なしか、少し日焼けして、髪が長くなっているような気がする。

 絵恋「会いたかったーっ!」
 リサ「わたしも。……あれ?エレン、1人だけ?」
 絵恋「ああ!早苗さんは今、トイレに行ってるわ」
 リサ「そうか……」
 愛原「久しぶりだね?絵恋さん」
 絵恋「愛原先生、御無沙汰してます。宜しくお願い致します」
 愛原「ああ」
 リサ「ここからホテルまで、どうやって行くの?」
 愛原「隣の第2ターミナルに移動する。この第3ターミナルとは隣り合ってるから、第1と違って徒歩でのアクセスが可能だ。そして、そこからホテルの送迎バスに乗るから」
 リサ「なるほど……。!」

 その時、リサの言葉が止まった。
 そして、ある一点を見つめる。

 リサ(何だ?この臭い……?)

 リサの脳裏に、他の日本版リサ・トレヴァー達の姿が浮かんだ。
 それの臭いに酷似していた。
 人食いをしたが故の体臭。
 或いはそれを隠す為の香水の臭い。
 それにプラスして、Gウィルスが持つ臭い。
 そのどれもに似ていた。

 絵恋「あっ、来たわ。早く!こっちよ!」

 絵恋が手を振ったその先には、ベージュのコートを羽織った少女がいた。
 どうやら、学校の制服で着たようである。
 絵恋がお嬢様らしく、ワンピースで来たのとは対照的だ。

 リサ(こいつ……!こいつこいつこいつ!BOWだ!わたしと同じ!人間に化けているんだ!)

 しかし、愛原達は全く正体に気づいていないようだ。
 愛原達も斉藤早苗の正体については、聞かされているはずなのだが……。

 愛原「え、えーと……キミが斉藤早苗さんかな?」
 斉藤早苗「はい。斉藤早苗です。初めてまして」

 斉藤早苗はリサと同じような背丈をしており、リサと同じようなおかっぱ頭だった。
 但し、リサと違って、やや直毛である。

 早苗「あなたが『魔王様』ですね?こちらの我那覇さんから、お噂はかねがね伺っております。私は『魔王軍沖縄支部四天王兼副総督』の斉藤早苗です。よろしく」
 リサ「……え、エレン」
 絵恋「はい?」
 リサ「ちょっと、こっちに来い……」
 絵恋「え?何です?」
 リサ「いいから……こっちに来い……!」

 リサは緊迫した顔で、絵恋を手招きした。

 早苗「よろしくお願いしますね!魔王様!」

 早苗はリサをハグした。

 リサ「!!!(み、見えない……!見えなかった……!こいつの動き……!)」

 そして、早苗がリサの耳元で囁いてくる。

 早苗「もしもここでバイオハザードを起こされたくなかったら、私の正体をバラすなよ?」
 リサ「き、キサマ……!?」
 早苗「ここでウィルスをばら撒いたらどうなるか……。リサ・トレヴァーのあなたなら分かるでしょう?」
 リサ「そ、そうは行くか!」
 早苗「大好きな愛原先生をクリーチャーにしたくないだろう?」
 リサ「……!」
 絵恋「ちょっとォ!私のリサさんに、そんなに抱き着かないでっ!」

 すると早苗、パッとリサから離れた。

 早苗「ゴメンねぇ、我那覇さん。あの魔王様に直に会えて、思わず嬉しくなっちゃって……」

 早苗はニコニコ笑っている。

 絵恋「そ、そうよね。その気持ちは分かるわ。でも、物には限度ってものがあるからね」
 早苗「そうね。ごめんなさい」
 絵恋「わ、分かればいいのよ。これからリサさんに抱き着きたかったら、『総督』の私の許可を得ることね!」
 早苗「はーい」
 高橋「何だァ?登場人物全員漏れなくLGBTかぁ?」
 絵恋「うるっさいわね!BだかGだかのアンタよりはマシよ!」
 高橋「ンだと、コラ?Lの方がよっぽどキメェだろうが」
 愛原「おい、高橋。ノーマルの俺を勝手に含めんな!」
 高橋「あっ……。先生、俺と一緒にBかGやりませんか?」
 愛原「アホか!……さっさとホテルに移動するぞ」

[同日21時25分 天候:雨 同市内 同空港第2ターミナル→東横イン送迎バス車内]

 徒歩で第2ターミナルに移動し、そこのバス乗り場に向かう。
 ホテルから空港ターミナルまではやや離れているので、ホテルのサービスで無料送迎バスが運行されているのである。
 時刻表を見ると、この時間帯は20分に1本の割合で運転されているようだった。

 愛原「ほお。大型バスで運転されるのか……」

 ターコイズブルーの塗装にホテルの名前が塗装されている、大型観光バスがやってきた。
 路線としてはホテル→第2ターミナル→第1ターミナル→ホテルの循環である。
 しかしこの時間、ホテルから乗って来る客はおらず、先客は無いに等しかった。
 当然、下車客はいない。
 その代わり、乗車客はいる。
 もちろん、リサ達以外にもだ。

 運転手「お待たせしました!ホテル東横イン行きです!」

 運転手が降りて来て、ホテルの名前が書かれたボードを掲げた。
 送迎バスを運行しているのは東横インに限らない。
 恐らく、空港周辺のホテルの殆どが送迎バスを出しているのではないだろうか。
 東横インのような白ナンバーの自社便もあれば、地元のバス会社に運行を委託しているホテルもある。
 運転手は荷物室のハッチを開けた。

 絵恋「お願いします」
 運転手「はい」

 大きなキャリーバッグを持っている絵恋と早苗は、運転手に荷物を預けた。
 それからバスに乗り込む。

 絵恋「リサさん!一緒に座りましょ!」
 リサ「いいのか?」
 愛原「後ろに座ったら?」

 愛原は1番後ろの座席を指さした。
 高速バスと違ってトイレが付いているわけではないから、1番後ろの席は5人が横並びに座れるようになっていた。

 早苗「それはいいですね」

 早苗は大きく頷いた。

 高橋「先生の御命令は絶対だからな」
 絵恋「それはそうね」

 リサ達は1番後ろの座席に横並びに座った。

 愛原「長旅大変だっただろう?ホテルに着いたら、すぐに休むんだぞ?」
 絵恋「はーい」
 リサ(どうしよう?先生、気づいてないのかな?)

 リサは早苗の方を見た。
 早苗は進行方向右の窓側に座っている。
 その隣に絵恋、真ん中にリサが座っているといった感じ。
 早苗と目があった。
 リサはすぐに目を逸らしたが、早苗は目で警告してきた。

 早苗「余計なことを言ったら、このバスの乗員乗客が全員ゾンビ化しますよ?」

 と。
 そして、更に気づく。

 リサ(どうしてアプリが起動しない!?)

 BSAAが開発したアプリ。
 もしも危険なBOWやクリーチャーが接近しようものなら、すぐにアラームを鳴らして知らせてくれるものである。
 だが、リサが自分のスマホのアプリを開いても、何の警告も出ていなかった。

 リサ(どういうことだ……?)
 運転手「出発しまーす!」

 乗客が全員乗り込み、発車時間になったことで、バスが走り出した。
 だいたい前の方に、3分の1くらいの乗客が乗っている。
 その中には外国人もいた。
 次は第1ターミナルに止まるので、そこからも乗客が乗って来るだろう。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港に向かう」 2

2023-05-21 15:14:48 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月23日19時35分 天候:小雨 千葉県印旛郡酒々井町 東関東自動車道・酒々井パーキングエリア]

 都内では傘が無いと厳しいくらいの強さの雨だったが、このパーキングエリアに来る頃には止んでいた。
 止んでいたというか、傘が要らないくらいの小降りになったと言った方が正しいか。
 平日の夕方出発の下り方向で、しかも雨ともなれば、スムーズに高速道路を走るのは難しい。
 スムーズにいけば40分強で到着できるそうなのだが、今回は1時間ほど掛かった。

 リサ「お腹空いた……」

 リサなど空腹の為に正体を隠せなくなっており、頭から角が2本生え、耳は長くて尖り、両手の爪も長く伸びている。
 グレーのパーカーを着ているので、そのフードを被って隠しているが……。

 愛原「松屋でガッツリ食えばいいだろ。ですよね?善場主任」
 善場「はい。時間調整も兼ねているので、夕食はゆっくり取って頂いて構いませんよ」
 愛原「それは良かった」

 駐車場はそこそこ賑わっていた。
 成田空港に最も近いパーキングエリアということもあり、規模もそこそこ大きい。
 大きめのパーキングエリア、小さめのサービスエリアといった感じだろうか。
 パーキングエリアには珍しいガソリンスタンドもある。
 さすがに、東北道の羽生パーキングエリアほどは大きくない。

 部下「ここでいいですか?」
 善場「大丈夫」

 車は空いている駐車スペースに駐車した。

 愛原「何時何分に出発しますか?」
 善場「予定では、20時15分くらいにしたいと思います」
 愛原「すると、40分休憩ですか。まあまあですね」

 私達は車を降りた。
 確かに傘は要らないくらいであった。
 しかし、時折顔に湿気のようなものが掛かる感じからして、弱い霧雨といった感じだろうか。

 リサ「御飯!御飯!」
 愛原「早く行こう」

 入るとフードコートがあり、確かに松屋があった。

 愛原「何がいい?」
 リサ「カルビ焼き定食ダブル!」
 愛原「……だろうなぁ」

 私はリサに食券を買ってあげた。

 愛原「俺は牛定でいいや。高橋は?」
 高橋「牛めし大盛りでオナシャス」
 愛原「あいよ。善場主任は……って、あれ?いない?」

 部下の人も来なかった。

 愛原「どこ行ったんだろう?」
 高橋「トイレとかじゃないっスか?」
 愛原「そうか。まあ、いいや」

 私達は空いているテーブルに座った。

 愛原「絵恋さん達は順調だって?」
 リサ「うん。ただ、成田空港が混んでるから、着陸が少し遅れるかもだって」
 愛原「そうなのか……」

 LCCは第3ターミナルに到着するそうだ。
 幸い高速道路のインターから最も近い所にある。
 しばらくして、食券の番号が読み上げられる。

 リサ「やっと食べれるー」

 リサはバーベキューソースをたっぷり掛けて、そこに七味唐辛子をドバドバ掛けた。

 愛原「うあ……」
 高橋「先生……マジでこいつに蒙古タンメン食わせてみたくなりました」
 愛原「あ、ああ。今度行くか……。後で、店の場所教えてくれ」
 高橋「う、うス……」
 リサ「んー!」

 変化前はどちらかというと甘い物が好きだったリサだったが、変化後はガチガチの辛党になってしまった。
 唐辛子まみれのカルビ牛肉を美味そうにガツガツ食べている。
 私は普通にポン酢タレを掛けて食べたが、高橋は高橋で、やっぱりちょこっとでも唐辛子を掛けて食べるのだった。

 愛原「どうせ俺は甘党だよ、ケッ!」
 リサ「んんっ!?」
 高橋「どうしたんスか、先生!?」

[同日20時15分 天候:雨 同パーキングエリア]

 食事が終わった後、私達はトイレに向かった。
 高橋はそれにプラスして、喫煙所にてタバコタイム。
 私とリサは自販機コーナーにて、食後のコーヒーとジュース。
 さて、それにしても、善場主任達はどこにいるのやら?
 そう思っていると、私のスマホにメールが着信した。

 善場「そろそろ出発しますので、車に戻ってください」

 とのことだった。

 愛原「予定通りの出発だな。リサ、行くぞ」
 リサ「おー」

 私は高橋にもLINEを送って、車に戻るように促した。

 愛原「うわ、また降ってきたな!」
 リサ「降ったり止んだりだね」
 愛原「そのようだ!」

 私達は車に戻った。

 善場「お疲れさまです」
 愛原「いえいえ、戻りました!」
 善場「それでは出発を」
 部下「はっ!」
 愛原「いや、ちょっと待ってください。まだ高橋が!」
 善場「おっと、そうでした」

 善場主任、もしかしてわざとか?
 少しして、高橋も戻って来た。

 高橋「サーセンっス!案外、喫煙所遠くて……」
 愛原「それは大変だったな。今度こそ大丈夫です」
 善場「はい」

 車が動き出す。

 善場「それでは第3ターミナルへ」
 部下「はっ!」
 愛原「善場主任は、夕食どうされたんですか?」
 善場「ああ、所長の事務所に来る前に少し食べてきましたので……。それに先ほど、スターバックスで食べて来ました」
 愛原「ああ、スタバ行かれたんですか!」
 高橋「さすがは姉ちゃんだぜ」

 高橋は、どういう意図で言ったのか分からない言葉を言った。

[同日20時35分 天候:雨 千葉県成田市 成田国際空港第3ターミナル]

 私達は一般車と同様、第3ターミナルの一般車乗降場のような場所で降ろされるのかと思った。
 だが、そうではなかった。
 途中でパトカーが待機している場所に立ち寄り、善場主任が警察官と何か話をしている。
 そして、車はパトカーの先導で、封鎖されているバリケードの向こうへ進んだ。

 高橋「何だか、VIP待遇っスね」
 愛原「おいおい……。以外と、警戒が厳重だな……」

 ややもすると、国際指名手配ものの白井伝三郎がここに来るかもしれないのだ。
 しかも、BOW化して。
 それでは確かに、警戒も厳重となるか。

 善場「皆さんには、ここで降りてもらいます」
 愛原「あ、はい」

 確かにそこは第3ターミナルの建物と思しき場所だった。
 しかし、その向こうには鉄扉がある。

 高橋「まさか、開けたらいきなり滑走路なんてことは無ェよな?」
 善場「そんなわけないでしょう」

 私達はとにかく自分達の荷物を手に、車を降りた。
 鉄扉の向こうは何だかバックヤードらしき通路となっており、そこを抜けてようやく一般客のいるエリアに着いた。
 どうしてこんなルートなのかは不明だが、とにかく着いた。

 愛原「飛行機はまだ着いていないようだな?」
 リサ「そうみたい」

 私達は絵恋さん達が到着するまで、ロビーで待っていることにした。
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“私立探偵 愛原学” 「成田空港へ向かう」

2023-05-21 11:41:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月23日18時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私達は出発の準備を整えてマンションを出、事務所に向かった。
 善場主任が車で迎えに来てくれるのは、この事務所という話だからだ。

 リサ「先生、夕食は?」
 愛原「途中で食べるだろ。もしかしたら、空港で食べるかもしれんぞ?」
 リサ「おー!」
 高橋「空港の飯、高くないっスか?」
 愛原「あー……まあ、滅多に行く場所じゃないからな……」

 尚、2学期の成績だが、リサはトップの成績というわけではない。
 だが、赤点は1回も取っていないことから、やはり地頭は良いのだと分かる。

 愛原「それにしても、あいにくの雨だな……」
 高橋「車の時も、雨は油断大敵っスよぉ」
 愛原「……だろうな。因みに、絵恋さんが乗る飛行機ってのは、何時に那覇空港を出るんだ?」
 リサ「18時20分だって」
 愛原「18時20分か……」
 リサ「向こうは晴れてるみたいだね。もうさすがに暗いけど」
 愛原「そりゃそうだろ。沖縄は17時になってもまだ明るいが、さすがに18時になるとな……」
 高橋「17時でも明るいんスか?」
 愛原「そうなんだよ」
 高橋「この時季の新潟なんか、16時台で暗くなりますよ」
 愛原「因みに札幌は16時で真っ暗だ。案外、日本って広いな」
 高橋「そ、そうっスね」

 恐らく私は、『日本なんて狭いから、広い海外に!』と考える人間とは価値観が合うことはないだろう。
 なかなかどうして、日本も広いと思うのだが。

 高橋「それにしても姉ちゃん、遅くないっスか?18時半って言ってましたよね?」
 愛原「そうだな……」

 私はスマホに何か着信は無いかと、画面を確認した時だった。

〔5階です。下に参ります〕

 愛原「あっ!」

 ちょうどエレベーターのドアが開いて、そこから善場主任が降りてきた。

 善場「お待たせしました。それでは、行きましょう」
 愛原「あ、はい。よろしくお願いします」

 私達はエレベーターに乗り込んだ。

〔ドアが開きます。1階です。上に参ります〕

 1階でエレベーターを降りると、私達は新大橋通りに面した正面入口ではなく、裏手の駐車場側に回った。
 そこに行くと、シルバーのミニバンが止まっていた。

 善場「こちらに乗ってください」

 主任の部下である黒スーツを着た男性職員が、手で助手席後ろのスライドドアを開けた。
 ドアノブを触れば、あとは電動で開く。

 高橋「(日産)セレナかと思ったら、(スズキ)ランディか。姉ちゃん達の組織、車何台持ってるんだ?」
 善場「内緒です」
 高橋「ナンバー的に、レンタカーじゃねーし……」
 愛原「別にいいじゃないか」
 善場「因みに車内禁煙でお願いします」
 高橋「ちっ!」

 私達はリアシートに3人並んで座った。
 善場主任は助手席に座る。

 善場「それじゃ、お願い」

 部下「はっ。まずは酒々井(しすい)ですね?」
 善場「そうね。混み具合によっては、市川でも可よ」
 部下「了解しました」

 部下の人はギアを操作して、車を出した。
 駐車場前の路地から、まずは都道50号線・新大橋通りに出る。
 雨が降っているので、ワイパーがフロントガラスの上を規則正しく動いていた。
 最近の東京では基本、12月に雪が降ることはない。
 なので、よく映画やドラマにある、東京でホワイトクリスマスなんて都合良くは発生しないのだ。
 恨むなら、地球温暖化を恨めよ。
 まあ、季節の上では雪が降って良いのに雨が降るということは、比較的暖かいということでもある。

 リサ「善場さん、夕食は?」
 善場「途中のパーキングに立ち寄りますので、そこで食べてください」
 愛原「成田空港に行く途中のパーキングというと……何がある?」

 私は車と高速道路に詳しい高橋に聞いた。

 高橋「ここから成田空港っつーと、多分首都高7号とか東関東道とかに乗ると思うんで……あ、それで、さっきの市川とか酒々井か」
 善場「ご名答です。さすがは暴走行為で起訴猶予を受けた方は違いますね」
 高橋「何だそりゃ……」

 しかし、高橋はそんな善場主任の嫌味にキレることはない。
 最悪起訴されていてもおかしくない高橋が起訴猶予で済んだのも、善場主任らの力添えによるものと理解しているからだ。
 不起訴ではなく、起訴猶予であることもミソ。
 まだ、高橋は疑われているということ。

 善場「予定では、酒々井パーキングエリアで休憩と時間調整をしたいと考えております」
 愛原「なるほど。本当に直に行こうとすると、確かに早いですもんね」

 航空ダイヤでは、絵恋さん達を乗せた飛行機が成田に到着するのは20時45分となっている。

 高橋「早く行って、空港で飯を食うとかは無ェのか?」
 善場「はい。BSAAの配備が完了するまでは、無理です。ので、私達のルートでは成田空港に最も近いパーキング、酒々井で時間調整をする必要があるのです」
 愛原「なるほど……」
 リサ「そのパーキング、何か美味しい物はある?」
 高橋「俺の記憶じゃ、言うてそんなに大した物は無かったような……」
 愛原「ウィキペディア先生によると、松屋と麺類のフードコートがあるだけだな。あとスタバ」
 リサ「松屋……牛定……カルビ定……」
 高橋「おま、そんなんでいいのかよw 森下駅前にもあんだろが……」

 まさかとは思うが、両方食べるわけではあるまいな?

 愛原「それにしても主任。18時半出発という時間に、何か意味はあるのですか?」
 善場「はい、あります。我那覇さん達が乗る飛行機。那覇空港離陸は、何時の予定ですか?」
 リサ「確か、18時20分」
 善場「そうです。ですが、飛行機は必ずしも時間通りに離陸するわけではありません。それで余裕を見て、18時30分としました。実際、那覇空港を10分遅れて離陸したとの情報が入っております」
 高橋「すると、今頃ガキ共は空の上か」
 愛原「まさか、向こうに誰かエージェントが乗っているとか?」
 善場「あいにくと人員の手配が間に合いませんでしたので、そこまではしていません。ただ、BSAAの航空機が付近を航行しています」
 高橋「で、いざとなったら撃ち落とすわけか?ああ?」
 善場「最悪の最悪が起きた場合、それも有り得ます。が、その確率はとても低いと考えています。何故なら、そのようなメリットが向こうにあるとはとても考えられないからです」

 リサは何の話をしているのか、分からないといった顔をしていた。
 実は私、あえてリサには斉藤早苗の正体を話していない。
 いや、リサも知ってはいる。
 ただ、リサとしては、全く同姓同名の別の斉藤早苗だと思っているようなのだ。
 同姓同名の別人が、絵恋さんと一緒に来るのだと、そう思っている。
 ……というか、私達も心のどこかでそう思っている所はある。
 だから、ウィルス検査をして、正体が判明するまでは、迂闊な態度が取れないということなのだ。
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