報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「斉藤早苗の正体……?」

2023-05-26 21:22:35 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日12時06分 天候:曇 東京都中央区日本橋浜町 都営地下鉄浜町駅]

 

〔1番線の電車は、各駅停車、新宿行きです。はまちょう、浜町。明治座前〕

 ……何も起こらなかった。
 私達を乗せた電車は、無事に浜町駅に到着した。
 とにかく、電車を降りる。
 浜町駅はカーブの途中にあるので、ホームもカーブしている。

〔1番線、ドアが閉まります〕

 電車は短い発車メロディを鳴らした後、ドアを閉めて発車して行った。
 そして、カーブの先のトンネルの向こうへと消えて行く。
 私達はエスカレーターで、改札口を目指した。

 愛原「あっ、善場主任……」

 改札口の前には、善場主任が立っていた。

 善場「お疲れ様です。愛原所長」
 愛原「お疲れ様です」

 善場主任は絵恋と早苗を、険しい顔で見比べた。

 我那覇絵恋「な、何ですか?」
 善場「ふーむ……。相当、特異菌に感染しているようね」
 絵恋「特異菌?」
 リサ「エレンも適合者。だから、モールデッドにはならない?」
 善場「さて、どうかしら……」

 そして、善場主任は早苗を見た。

 善場「あなたが、斉藤早苗さんね?それとも……白井伝三郎と呼んだ方がいいのかしら?」

 いきなりの主任の発言に、私と高橋、リサは息を呑んだ。

 絵恋「白井?誰ですか?」
 早苗「誰ですか、それ?」
 善場「ほお……そう来るわけね」
 早苗「私は斉藤早苗ですよ」
 善場「まあいいわ。後で調べれば分かることだから。それより、お腹空いたでしょ?この近くのファミレスに行きましょう」
 リサ「おー!善場さんの奢り!」
 愛原「こら、リサ!」
 善場「ウィルス検査を呼び掛けたのは、私ですから、私が持ちますよ。このコ達だけですけど……」
 愛原「ですよね」
 高橋「おい、そりゃ無ェぜ、姉ちゃん!」
 善場「……次の検察庁からの呼び出し、いつになるかしら?確か、起訴猶予でしたっけ?不起訴ではなく、起訴猶予ですよね?」
 高橋「くっ……くくっ……!」
 愛原「高橋、ここは逆らうな。オマエを起訴じゃなく、起訴猶予にできる力を持っている機関の方だぞ?」
 リサ「先生の命令は絶対!」
 愛原「というわけで善場主任、私と高橋の分は自分達で出しますから」
 善場「所長は御理解が早く、助かります」

 食事代の件といい、ここからは善場主任がルールになるから、私達はそれに従うべきである。

[同日13時15分 天候:晴 中央区日本橋浜町 某クリニック]

 私達は近くのファミレスで昼食を取った。
 リサのヤツ、昼食だというのにステーキを注文しやがった。
 ただまあ、善場主任にとっては想定内だったようだ。
 私と高橋は、チキンステーキやハンバーグにしておいたが。
 意外なのは、斉藤早苗さんも同じステーキを注文したこと。
 そして、善場主任の言葉……。

 善場「ちょっと、口の中を見せてくれる?」

 と、早苗に迫った。

 早苗「はい」

 早苗はパカッと口を開けた。
 すると!

 リサ「牙が生えてる!?」
 善場「やっぱり!」
 愛原「キミも鬼か!?」

 しかし、早苗は動じない。

 早苗「ただの生まれつきですよ。この通り、歯並びが悪いんです」
 高橋「歯並びの問題じゃねーだろ……」
 善場「あくまでも、シラを切るつもりね」

 そういうやり取りがあった昼食だった。

 リサ「着替えた」

 3人の少女は、検査着に着替えた。
 ピンク色の検査着だった。

 善場「愛原所長方は、適当にお待ち頂いて結構です」
 愛原「はあ……」
 高橋「俺、一服してきます」
 愛原「俺も行こう」
 高橋「マジっスか?」
 愛原「ああ」
 リサ「えー……先生、行っちゃうの?」
 愛原「同じフロアに、喫煙所や自販機コーナーがあるから、そこに行くだけだよ。一服し終わったら、また戻って来るよ」
 レントゲン技師「愛原リサさん。お入りください」
 リサ「は、はい!」
 愛原「ほら、言っといで」

 私はレントゲン室にリサを送ると、一旦クリニックを出た。
 そして、同じフロアにあるリフレッシュルームに向かった。
 このフロアには他に共用設備として給湯室の他、クリニック内にあるものとは別にトイレがある。

 愛原「喫煙室、他に誰かいるか?」
 高橋「今のところ、いませんね」

 恐らく、昼休みが終わって間もないからだろう。
 私と高橋は自販機で飲み物を買うと、喫煙室に入った。
 高橋はすぐにタバコを取り出して火を点ける。

 高橋「大丈夫スか?」
 愛原「ああ、何とか。それより、あいつらのことだ」
 高橋「そうですね。ぶっちゃけ、リサは検査しなくていいんじゃないスか?」
 愛原「まあ、リサに関してはついでみたいなこところがあるな。俺が気になるのは、早苗の態度だ。まるで、何もかも想定内といった感じに余裕しゃくしゃくって感じだ」
 高橋「そうっスね」
 愛原「牙のこともそうだし……。それに、早苗のヤツはリサと違って本当に人食いしている可能性がある」
 高橋「マジっスか!?」
 愛原「リサが言ってたんだ。『人食いをしないと出ない体臭がする』って」
 高橋「あのリサが言うくらいですから、もしかすると……」
 愛原「なー?もしかしたら、この検査で何か分かるかもしれんが、分からないかもしれない」
 高橋「がっつり検査するのに!?」
 愛原「そう」
 高橋「そんなことができるんスか?」
 愛原「知らん。普通はできないはずなんだけどな。でも、あの態度を見ていると、検査すら誤魔化せる。そんな気がするんだよ」

 その時、別の喫煙者が入室してきた。

 愛原「じゃ、俺は外で待ってるから」
 高橋「はい」

 私は缶コーヒー片手に、喫煙室の外に出た。
 そして、自販機コーナーの前にあるベンチに座って高橋を待つことにした。
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“私立探偵 愛原学” 「西へ向かう探偵達」

2023-05-26 16:51:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日11時25分 天候:曇 千葉県市川市八幡 京成電鉄京成八幡駅]

〔「まもなく八幡、八幡です。お出口は、右側です。都営地下鉄新宿線は、お乗り換えです。八幡の次は、高砂に止まります。菅野、市川真間、国府台、江戸川、小岩には止まりません。今度の普通、上野行きは降りたホーム1番線から、28分の発車です」〕

 私達を乗せた特急電車は、ダイヤ通りに運行していた。
 成田空港発車時はガラガラだった電車も、今は賑わっている。
 また、降っていた雨も、都内に近づく度に弱くなり、今は止んでいるようだった。

〔「ご乗車ありがとうございました。八幡、八幡です。1番線は特急、上野行きです。高砂、青砥、日暮里、終点上野の順に止まります」〕

 私達は電車を降りた。

 愛原「本当に1時間弱だった」
 高橋「早いんだか、遅いんだか……」
 愛原「通勤電車の中では、早い方だよ。次は都営新宿線ね」
 高橋「うス」

 ここで私は乗車車両を間違えたことに気づく。
 大きいミスではないのだが、エスカレーターやエレベーターはホームの後ろ寄りにあるということ。
 先頭車から向かうと、階段が最も近い。
 私と高橋、リサの3人だけならそれでも良いのだが、大きなキャリーバッグを持っている我那覇絵恋さんと斉藤早苗さんはキツいだろう。

 高橋「ほれほれw 頑張って登れやw」
 愛原「高橋……」
 我那覇絵恋「こンのー……!!」
 リサ「ん」

 代わりにリサが、ヒョイと絵恋さんのバッグを片手で持ち上げた。
 さすがは鬼型BOW。

 絵恋「り、リサさん!?持ってくれるの?」
 リサ「こんなん軽い」
 絵恋「も、萌えぇぇぇぇっ!!」
 高橋「あーあー、うるせぇレズガキだ」

 尚、斉藤早苗さんは軽々というわけではないが、それでも1人で自分のキャリーバッグを持ち上げていた。

[同日11時41分 天候:曇 同地区 都営地下鉄本八幡駅→都営新宿線1173K電車最後尾車]

 

 京成八幡駅と地下鉄本八幡駅は隣り合っている。
 連絡通路を行けば、基本的に雨が降っても傘は殆ど必要無い。
 地下鉄構内に入った後で……。

 斉藤早苗「キップ買ってきます」

 京成線に乗る時もそうだったが、彼女はICカードを持っていないようである。
 絵恋さんは元々埼玉に実家があった関係で、Suicaを持っている。
 確かに沖縄在住では、交通系ICカードを持つ機会は少ないか。
 沖縄県内で使用されているオリジナルのICカード、『OKICA(オキカ)』はある。
 沖縄都市モノレールや県内の路線バスなどで使用できるICカードだ。
 しかしながら、そのカードは県外は使えない。

 愛原「早苗さんもPasmoにしたら?」
 早苗「今は結構です」
 愛原「そ、そう?」

 早苗さんだけ紙のキップを購入する。

 愛原「それじゃ、行くか」

 ホームに向かうと、京王の電車がホームに停車していた。
 車両は“京王ライナー”にも使用されるものではなく、前々から運用に就いていた通勤電車タイプである。
 今度は、最後尾の車両に乗った。
 都営の車両は緑色が目立つが、京王のはローズピンクのシート柄が目立つ。
 始発駅ということもあり、私達は再び座席に腰かけた。

〔この電車は、各駅停車、新宿行きです〕

 電車に乗り込んでから、私は再び善場主任にメールを送った。

 善場「順調のようですね。ですが、油断大敵です。鉄道におけるバイオテロ並びに、その鎮圧活動報告はBSAAに限らず、アメリカのシークレットサービスにもあるほどです」

 とのことだ。
 まるで、この電車でバイオテロが起こると予言しているかのような返信だが……。

 善場「もしも予定通りなら、浜町駅にはお昼頃の到着ですね。私も昼食の御相伴に預からせて頂きます」

 とのことだった。

 愛原「おい、キミ達。どうやら、善場主任が昼食を御馳走してくれるかもしれないぞ?」
 リサ「おー!」
 高橋「さすがは姉ちゃん、太っ腹だぜ」
 愛原「こらこら。喜ぶのはまだ早いぞ」

〔「お待たせ致しました。11時41分発、各駅停車の新宿行き、まもなく発車致します」〕

 発車の時刻になり、ホームに発車ベルが鳴り響く。
 また、車両からの発車メロディも流れた。

〔「2番線から各駅停車、新宿行き、発車致します」〕

 ピンポンピンポンとドアチャイムが鳴るが、あまりボリュームは大きくない。
 むしろ代わりにホームドアの方のチャイムが大きく、それにかき消される感がある。
 ドアが閉まると、乗務員室から車掌の発車合図のブザー音が聞こえてくる。
 それからエアの抜ける音がして、電車はインバータの音を響かせて走り出した。

〔都営新宿線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、各駅停車、新宿行きです。次は篠崎、篠崎です。一部、電車とホームの間が広く空いておりますので、足元にご注意ください〕

 地下鉄の場合、末端部は地上区間になっている場合があるが、都営新宿線ではそのようなことはない。
 東大島~大島間に一部地上区間があるだけである。
 電車は殆どの座席が埋まっているといった感じで、まだ立っている乗客はいない。
 リサは絵恋に話し掛けられては、それに受け答えするといった感じだった。
 早苗はスマホを取り出し、それで何か操作している。
 善場主任は恐らく、早苗が何かしないか警戒しているのだろう。
 しかし、特にそのような感じはしなかった。
 因みに昨日は制服のような服を着ていたように見えたが、どうやら違うらしい。
 コートを上に着ていたので、私が見間違えたようだ。
 それでもプリーツスカートを穿いているのには違いない。
 だから、制服のスカートと見間違えたのだろう。
 顔は似ていないが、リサとは雰囲気は似ている。
 もしも早苗が日本版リサ・トレヴァーの何番だと言われたら、信じてしまいそうなほどだ。

 愛原「高橋。善場主任は、バイオテロに警戒するようにとのことだ」
 高橋「了解っス。マグナムなら持って来ています」
 愛原「そうか」

 電車は長い地下鉄のトンネルを突き進んだ。
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