報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「復讐」 2

2024-07-17 15:18:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月19日20時00分 天候:雨 東京都中央区日本橋某所 某クリニック]

 リサはあの後、呼ばれた救急車に乗せられた。
 傷自体はBOW故、すぐに塞がっていた。
 しかし、自分が刺された時に噴き出した血はそのままだから、そりゃ周りの人間は驚くだろう。
 新聞部2年生男子の上坂が現校舎の職員室に飛び込み、事態を速やかに報告したことで、大きく動いた。
 上坂の適格な行動は、さすが将来新聞記者を目指す新聞部員ならではと言えよう。
 リサとしては特に搬送など必要無いのだが、それでも成り行き上、搬送せざるを得ない状況だった。
 そこで、本来は入院設備など無い診療所ではあるが、リサの都内における検査場である日本橋地区のクリニックに搬送された。
 リサを刺した1年生男子の城ヶ崎という者は、救急と一緒に駆け付けた警察に連行されて行った。

 愛原「リサぁっ!!リサ!大丈夫だった!?」

 リサが収容されている特別処置室に、愛原が飛び込んで来る。

 リサ「あ、先生」
 倉田「愛原先生、ケガ人の前です。あまり、騒がないで……」
 リサ「わたしはもう無傷だよぉ……」
 愛原「わーっ!リサ!良かった良かった!無事だったんだな!?」
 リサ「そりゃBOWだもの。ナイフで刺されたくらいじゃ死なないって」

 それを知らないはずがない愛原なのに、何故か愛原はポンポンとリサの両肩を何度も叩いた。

 愛原「いやあ、良かった良かった!うんうん!良かった良かった!」
 リサ「そ、そう?」
 倉田「愛原さん」

 一緒に付き添った副担任の倉田が、愛原に話し掛ける。

 倉田「状況を説明しますので、カンファレンスルームへ」
 愛原「は、はい!」

 倉田と愛原は、特別処置室を出て行った。
 この特別処置室、外側からは機械室の入口に偽装されている。
 入れ替わるようにして、善場が入ってきた。

 善場「どうですか、気分は?」
 リサ「お腹空いた」
 善場「それなら、異常無しですね。特に、人食いはしていませんね?」
 リサ「男の肉なんて食わないよ。あ、愛原先生のは食べたいかも」
 善場「それは許可できません。それより、どうしてあなたは刺されたか分かりますか?」
 リサ「さあ……?」
 善場「だいぶ前、生徒会長が屋上から飛び降り自殺を図りました。今から、半年以上前のことですね。覚えていますか?」
 リサ「まあ、そんなこともあったかもね。それで?」
 善場「どうして、飛び降り自殺を図ったのでしょう?」
 リサ「ま、まあ、総会中にウ○チブリブリお漏らししたから、それで飛び降りたんじゃない?もう、皆が見てる前でブリブリーってね」
 善場「なるほど。ショックで飛び降りたというわけですね」
 リサ「だから何?まさか、化けて出て来たとでも言うの?」
 善場「いいえ。私は何となくあなたが犯人のような気がしますが」
 リサ「さ、さあ……何のことやら……。証拠でもあるの?」

 善場にはそれには答えなかった。

 善場「前・生徒会長には弟がいましてね。彼は今年、高等部の1年生なんですよ。弟ですから、苗字はもちろん城ヶ崎と言います」
 リサ「城ヶ崎……マジか。復讐に来たってか」
 善場「そのような旨の供述を、彼は警察でしているようです」
 リサ「学校は退学だろうねぇ?」
 善場「でしょうね。殺人未遂の現行犯ですからね、通常の人間であれば」
 リサ「あー……わたしは人間じゃないもんねぇ……」
 善場「とはいえ、学校にナイフを無許可で持ち込んでいたのは、どうあっても誤魔化せません。つまり、銃刀法違反の現行犯で立件ということになります」
 リサ「うちの学園、『補導で停学、逮捕で退学』だから、退学だね」
 善場「はい。あなたには、納得できないかもしれませんが」
 リサ「うん。せっかくの制服が血だらけになっちゃったよ。さすがにあれはもう着れないね」

 今のリサは副担任の倉田が持って来た学校のジャージに着替えている。
 また、愛原が代わりの私服を持って来てくれたようだ。

 善場「代わりの制服は用意します。幸いあなたの体型は標準的ですから、メーカーなどに在庫はあるはずです」
 リサ「それは助かる。平均以下の子供体型から、ようやく平均体型になれたよ。まあ、卒業までに平均越えのグラマーになれるかどうかは不明だけど……」
 善場「現時点ではまだ何とも言えませんね。とにかく、普段の行動には十分気を付けるんですよ。あまりにこういう事が多いと、私も庇い切れなくなります」
 リサ「……分かりました」

[同日20時30分 天候:晴 同クリニック→BPO法人デイライト車中]

 リサはジャージから愛原の持って来た私服に着替えた。

 リサ「学校のジャージはダサいね。まだ、ブルマの方がスッキリしてていいよ」
 愛原「それはありがとう」
 リサ「うん。……うん?」
 善場「……愛原所長、ちょっと日本語の使い方がおかしいです」
 愛原「失礼しました」

 もう夜間なので、クリニックの入居しているビルの正面エントランスは閉鎖されている。
 その為、警備室の前を通って、休日・夜間通用口から出ることになる。

 リサ「先生も、昔はあの仕事をしてたの?」
 愛原「そうだよ。まあ、懐かしいな」
 リサ「あの警備会社?」
 愛原「いや、全然違う」
 善場「所長がお勤めになられていた警備会社は、日本全国に支社や営業所のある大手だったそうですね?」
 愛原「まあ、そんなところです。今でも、『戻ってこないか?』なんて誘いはありますよ」
 善場「警備会社も、どこも人手不足だそうですからね」
 愛原「そうですね」

 ビルの外に出ると、裏路地の所に1台の黒塗りのミニバンが停車している。
 そこに黒スーツの大柄な男が待機しており、善場の姿を見かけると、助手席後ろのスライドドアを開けた。

 善場「所長の御宅までお送り致します」
 愛原「どうも、お手数おかけします」
 リサ「お邪魔しまーす」

 リサと愛原は、リアシートに乗り込んだ。
 2人の乗車を確認した善場の部下は、スライドドアを閉めた。
 電動なので、ドアの取っ手を操作すれば、あとは自動で開閉する。

 リサ「お腹空いた……」
 愛原「帰れば、ちゃんと飯は用意してあるから」
 リサ「うん……」

 車が走り出す。
 雨が降っているので、フロントガラスの上をワイパーが動いていた。

 善場「ただ、今回の事件のせいで、1つ台無しになったことがありましてね……」
 愛原「何ですか?」
 善場「また、やり直しですよ。リサの血を使って、とある特効薬を作る計画があったんです。先ほどの血液検査で、数値が足りなくなってしまい、またやり直しですよ」
 愛原「何の特効薬ですか?」
 善場「子宮頸がんワクチンです。子宮頸がんワクチンは、実はまだ開発中なんです。リサの血は、子宮頸がんを発症させるHPVを立ちどころに殺す効果があり、それはどんな重症患者にも効くところまで分かっています。ただ、Gウィルスの濃度の関係もあるので、しばらくリサの体の中で循環させる必要があったのです」
 愛原「Gウィルスが混じっていてもですか?」
 善場「そこで、Gウィルスに噛ませている偽性特異菌です。詳しいことは話せませんが、それで安全なワクチンを作れるかもしれないという話はあったんですよね」
 愛原「それがまたやり直しと?」
 善場「そうですね」
 リサ「城ヶ崎弟、国家反逆罪で死刑かな?」
 善場「その前に、あなたが普段の行動を反省しなくてはなりませんよ?」
 リサ「はーい……」

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