報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「もう1人の魔王様」

2023-05-21 20:55:20 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月23日21時00分 天候:雨 千葉県成田市 成田国際空港第3ターミナル]

 我那覇絵恋達を乗せた飛行機は、遅れて着陸した。
 到着口から、大きな荷物を持った乗客がぞろぞろと出てくる。

 我那覇絵恋「リサさーん!」
 リサ「エレン!」

 そしてその中に、我那覇絵恋がいた。
 心なしか、少し日焼けして、髪が長くなっているような気がする。

 絵恋「会いたかったーっ!」
 リサ「わたしも。……あれ?エレン、1人だけ?」
 絵恋「ああ!早苗さんは今、トイレに行ってるわ」
 リサ「そうか……」
 愛原「久しぶりだね?絵恋さん」
 絵恋「愛原先生、御無沙汰してます。宜しくお願い致します」
 愛原「ああ」
 リサ「ここからホテルまで、どうやって行くの?」
 愛原「隣の第2ターミナルに移動する。この第3ターミナルとは隣り合ってるから、第1と違って徒歩でのアクセスが可能だ。そして、そこからホテルの送迎バスに乗るから」
 リサ「なるほど……。!」

 その時、リサの言葉が止まった。
 そして、ある一点を見つめる。

 リサ(何だ?この臭い……?)

 リサの脳裏に、他の日本版リサ・トレヴァー達の姿が浮かんだ。
 それの臭いに酷似していた。
 人食いをしたが故の体臭。
 或いはそれを隠す為の香水の臭い。
 それにプラスして、Gウィルスが持つ臭い。
 そのどれもに似ていた。

 絵恋「あっ、来たわ。早く!こっちよ!」

 絵恋が手を振ったその先には、ベージュのコートを羽織った少女がいた。
 どうやら、学校の制服で着たようである。
 絵恋がお嬢様らしく、ワンピースで来たのとは対照的だ。

 リサ(こいつ……!こいつこいつこいつ!BOWだ!わたしと同じ!人間に化けているんだ!)

 しかし、愛原達は全く正体に気づいていないようだ。
 愛原達も斉藤早苗の正体については、聞かされているはずなのだが……。

 愛原「え、えーと……キミが斉藤早苗さんかな?」
 斉藤早苗「はい。斉藤早苗です。初めてまして」

 斉藤早苗はリサと同じような背丈をしており、リサと同じようなおかっぱ頭だった。
 但し、リサと違って、やや直毛である。

 早苗「あなたが『魔王様』ですね?こちらの我那覇さんから、お噂はかねがね伺っております。私は『魔王軍沖縄支部四天王兼副総督』の斉藤早苗です。よろしく」
 リサ「……え、エレン」
 絵恋「はい?」
 リサ「ちょっと、こっちに来い……」
 絵恋「え?何です?」
 リサ「いいから……こっちに来い……!」

 リサは緊迫した顔で、絵恋を手招きした。

 早苗「よろしくお願いしますね!魔王様!」

 早苗はリサをハグした。

 リサ「!!!(み、見えない……!見えなかった……!こいつの動き……!)」

 そして、早苗がリサの耳元で囁いてくる。

 早苗「もしもここでバイオハザードを起こされたくなかったら、私の正体をバラすなよ?」
 リサ「き、キサマ……!?」
 早苗「ここでウィルスをばら撒いたらどうなるか……。リサ・トレヴァーのあなたなら分かるでしょう?」
 リサ「そ、そうは行くか!」
 早苗「大好きな愛原先生をクリーチャーにしたくないだろう?」
 リサ「……!」
 絵恋「ちょっとォ!私のリサさんに、そんなに抱き着かないでっ!」

 すると早苗、パッとリサから離れた。

 早苗「ゴメンねぇ、我那覇さん。あの魔王様に直に会えて、思わず嬉しくなっちゃって……」

 早苗はニコニコ笑っている。

 絵恋「そ、そうよね。その気持ちは分かるわ。でも、物には限度ってものがあるからね」
 早苗「そうね。ごめんなさい」
 絵恋「わ、分かればいいのよ。これからリサさんに抱き着きたかったら、『総督』の私の許可を得ることね!」
 早苗「はーい」
 高橋「何だァ?登場人物全員漏れなくLGBTかぁ?」
 絵恋「うるっさいわね!BだかGだかのアンタよりはマシよ!」
 高橋「ンだと、コラ?Lの方がよっぽどキメェだろうが」
 愛原「おい、高橋。ノーマルの俺を勝手に含めんな!」
 高橋「あっ……。先生、俺と一緒にBかGやりませんか?」
 愛原「アホか!……さっさとホテルに移動するぞ」

[同日21時25分 天候:雨 同市内 同空港第2ターミナル→東横イン送迎バス車内]

 徒歩で第2ターミナルに移動し、そこのバス乗り場に向かう。
 ホテルから空港ターミナルまではやや離れているので、ホテルのサービスで無料送迎バスが運行されているのである。
 時刻表を見ると、この時間帯は20分に1本の割合で運転されているようだった。

 愛原「ほお。大型バスで運転されるのか……」

 ターコイズブルーの塗装にホテルの名前が塗装されている、大型観光バスがやってきた。
 路線としてはホテル→第2ターミナル→第1ターミナル→ホテルの循環である。
 しかしこの時間、ホテルから乗って来る客はおらず、先客は無いに等しかった。
 当然、下車客はいない。
 その代わり、乗車客はいる。
 もちろん、リサ達以外にもだ。

 運転手「お待たせしました!ホテル東横イン行きです!」

 運転手が降りて来て、ホテルの名前が書かれたボードを掲げた。
 送迎バスを運行しているのは東横インに限らない。
 恐らく、空港周辺のホテルの殆どが送迎バスを出しているのではないだろうか。
 東横インのような白ナンバーの自社便もあれば、地元のバス会社に運行を委託しているホテルもある。
 運転手は荷物室のハッチを開けた。

 絵恋「お願いします」
 運転手「はい」

 大きなキャリーバッグを持っている絵恋と早苗は、運転手に荷物を預けた。
 それからバスに乗り込む。

 絵恋「リサさん!一緒に座りましょ!」
 リサ「いいのか?」
 愛原「後ろに座ったら?」

 愛原は1番後ろの座席を指さした。
 高速バスと違ってトイレが付いているわけではないから、1番後ろの席は5人が横並びに座れるようになっていた。

 早苗「それはいいですね」

 早苗は大きく頷いた。

 高橋「先生の御命令は絶対だからな」
 絵恋「それはそうね」

 リサ達は1番後ろの座席に横並びに座った。

 愛原「長旅大変だっただろう?ホテルに着いたら、すぐに休むんだぞ?」
 絵恋「はーい」
 リサ(どうしよう?先生、気づいてないのかな?)

 リサは早苗の方を見た。
 早苗は進行方向右の窓側に座っている。
 その隣に絵恋、真ん中にリサが座っているといった感じ。
 早苗と目があった。
 リサはすぐに目を逸らしたが、早苗は目で警告してきた。

 早苗「余計なことを言ったら、このバスの乗員乗客が全員ゾンビ化しますよ?」

 と。
 そして、更に気づく。

 リサ(どうしてアプリが起動しない!?)

 BSAAが開発したアプリ。
 もしも危険なBOWやクリーチャーが接近しようものなら、すぐにアラームを鳴らして知らせてくれるものである。
 だが、リサが自分のスマホのアプリを開いても、何の警告も出ていなかった。

 リサ(どういうことだ……?)
 運転手「出発しまーす!」

 乗客が全員乗り込み、発車時間になったことで、バスが走り出した。
 だいたい前の方に、3分の1くらいの乗客が乗っている。
 その中には外国人もいた。
 次は第1ターミナルに止まるので、そこからも乗客が乗って来るだろう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「成田... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「成田... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事