[12月23日18時30分 天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
私達は出発の準備を整えてマンションを出、事務所に向かった。
善場主任が車で迎えに来てくれるのは、この事務所という話だからだ。
リサ「先生、夕食は?」
愛原「途中で食べるだろ。もしかしたら、空港で食べるかもしれんぞ?」
リサ「おー!」
高橋「空港の飯、高くないっスか?」
愛原「あー……まあ、滅多に行く場所じゃないからな……」
尚、2学期の成績だが、リサはトップの成績というわけではない。
だが、赤点は1回も取っていないことから、やはり地頭は良いのだと分かる。
愛原「それにしても、あいにくの雨だな……」
高橋「車の時も、雨は油断大敵っスよぉ」
愛原「……だろうな。因みに、絵恋さんが乗る飛行機ってのは、何時に那覇空港を出るんだ?」
リサ「18時20分だって」
愛原「18時20分か……」
リサ「向こうは晴れてるみたいだね。もうさすがに暗いけど」
愛原「そりゃそうだろ。沖縄は17時になってもまだ明るいが、さすがに18時になるとな……」
高橋「17時でも明るいんスか?」
愛原「そうなんだよ」
高橋「この時季の新潟なんか、16時台で暗くなりますよ」
愛原「因みに札幌は16時で真っ暗だ。案外、日本って広いな」
高橋「そ、そうっスね」
恐らく私は、『日本なんて狭いから、広い海外に!』と考える人間とは価値観が合うことはないだろう。
なかなかどうして、日本も広いと思うのだが。
高橋「それにしても姉ちゃん、遅くないっスか?18時半って言ってましたよね?」
愛原「そうだな……」
私はスマホに何か着信は無いかと、画面を確認した時だった。
〔5階です。下に参ります〕
愛原「あっ!」
ちょうどエレベーターのドアが開いて、そこから善場主任が降りてきた。
善場「お待たせしました。それでは、行きましょう」
愛原「あ、はい。よろしくお願いします」
私達はエレベーターに乗り込んだ。
〔ドアが開きます。1階です。上に参ります〕
1階でエレベーターを降りると、私達は新大橋通りに面した正面入口ではなく、裏手の駐車場側に回った。
そこに行くと、シルバーのミニバンが止まっていた。
善場「こちらに乗ってください」
主任の部下である黒スーツを着た男性職員が、手で助手席後ろのスライドドアを開けた。
ドアノブを触れば、あとは電動で開く。
高橋「(日産)セレナかと思ったら、(スズキ)ランディか。姉ちゃん達の組織、車何台持ってるんだ?」
善場「内緒です」
高橋「ナンバー的に、レンタカーじゃねーし……」
愛原「別にいいじゃないか」
善場「因みに車内禁煙でお願いします」
高橋「ちっ!」
私達はリアシートに3人並んで座った。
善場主任は助手席に座る。
善場「それじゃ、お願い」
部下「はっ。まずは酒々井(しすい)ですね?」
善場「そうね。混み具合によっては、市川でも可よ」
部下「了解しました」
部下の人はギアを操作して、車を出した。
駐車場前の路地から、まずは都道50号線・新大橋通りに出る。
雨が降っているので、ワイパーがフロントガラスの上を規則正しく動いていた。
最近の東京では基本、12月に雪が降ることはない。
なので、よく映画やドラマにある、東京でホワイトクリスマスなんて都合良くは発生しないのだ。
恨むなら、地球温暖化を恨めよ。
まあ、季節の上では雪が降って良いのに雨が降るということは、比較的暖かいということでもある。
リサ「善場さん、夕食は?」
善場「途中のパーキングに立ち寄りますので、そこで食べてください」
愛原「成田空港に行く途中のパーキングというと……何がある?」
私は車と高速道路に詳しい高橋に聞いた。
高橋「ここから成田空港っつーと、多分首都高7号とか東関東道とかに乗ると思うんで……あ、それで、さっきの市川とか酒々井か」
善場「ご名答です。さすがは暴走行為で起訴猶予を受けた方は違いますね」
高橋「何だそりゃ……」
しかし、高橋はそんな善場主任の嫌味にキレることはない。
最悪起訴されていてもおかしくない高橋が起訴猶予で済んだのも、善場主任らの力添えによるものと理解しているからだ。
不起訴ではなく、起訴猶予であることもミソ。
まだ、高橋は疑われているということ。
善場「予定では、酒々井パーキングエリアで休憩と時間調整をしたいと考えております」
愛原「なるほど。本当に直に行こうとすると、確かに早いですもんね」
航空ダイヤでは、絵恋さん達を乗せた飛行機が成田に到着するのは20時45分となっている。
高橋「早く行って、空港で飯を食うとかは無ェのか?」
善場「はい。BSAAの配備が完了するまでは、無理です。ので、私達のルートでは成田空港に最も近いパーキング、酒々井で時間調整をする必要があるのです」
愛原「なるほど……」
リサ「そのパーキング、何か美味しい物はある?」
高橋「俺の記憶じゃ、言うてそんなに大した物は無かったような……」
愛原「ウィキペディア先生によると、松屋と麺類のフードコートがあるだけだな。あとスタバ」
リサ「松屋……牛定……カルビ定……」
高橋「おま、そんなんでいいのかよw 森下駅前にもあんだろが……」
まさかとは思うが、両方食べるわけではあるまいな?
愛原「それにしても主任。18時半出発という時間に、何か意味はあるのですか?」
善場「はい、あります。我那覇さん達が乗る飛行機。那覇空港離陸は、何時の予定ですか?」
リサ「確か、18時20分」
善場「そうです。ですが、飛行機は必ずしも時間通りに離陸するわけではありません。それで余裕を見て、18時30分としました。実際、那覇空港を10分遅れて離陸したとの情報が入っております」
高橋「すると、今頃ガキ共は空の上か」
愛原「まさか、向こうに誰かエージェントが乗っているとか?」
善場「あいにくと人員の手配が間に合いませんでしたので、そこまではしていません。ただ、BSAAの航空機が付近を航行しています」
高橋「で、いざとなったら撃ち落とすわけか?ああ?」
善場「最悪の最悪が起きた場合、それも有り得ます。が、その確率はとても低いと考えています。何故なら、そのようなメリットが向こうにあるとはとても考えられないからです」
リサは何の話をしているのか、分からないといった顔をしていた。
実は私、あえてリサには斉藤早苗の正体を話していない。
いや、リサも知ってはいる。
ただ、リサとしては、全く同姓同名の別の斉藤早苗だと思っているようなのだ。
同姓同名の別人が、絵恋さんと一緒に来るのだと、そう思っている。
……というか、私達も心のどこかでそう思っている所はある。
だから、ウィルス検査をして、正体が判明するまでは、迂闊な態度が取れないということなのだ。
私達は出発の準備を整えてマンションを出、事務所に向かった。
善場主任が車で迎えに来てくれるのは、この事務所という話だからだ。
リサ「先生、夕食は?」
愛原「途中で食べるだろ。もしかしたら、空港で食べるかもしれんぞ?」
リサ「おー!」
高橋「空港の飯、高くないっスか?」
愛原「あー……まあ、滅多に行く場所じゃないからな……」
尚、2学期の成績だが、リサはトップの成績というわけではない。
だが、赤点は1回も取っていないことから、やはり地頭は良いのだと分かる。
愛原「それにしても、あいにくの雨だな……」
高橋「車の時も、雨は油断大敵っスよぉ」
愛原「……だろうな。因みに、絵恋さんが乗る飛行機ってのは、何時に那覇空港を出るんだ?」
リサ「18時20分だって」
愛原「18時20分か……」
リサ「向こうは晴れてるみたいだね。もうさすがに暗いけど」
愛原「そりゃそうだろ。沖縄は17時になってもまだ明るいが、さすがに18時になるとな……」
高橋「17時でも明るいんスか?」
愛原「そうなんだよ」
高橋「この時季の新潟なんか、16時台で暗くなりますよ」
愛原「因みに札幌は16時で真っ暗だ。案外、日本って広いな」
高橋「そ、そうっスね」
恐らく私は、『日本なんて狭いから、広い海外に!』と考える人間とは価値観が合うことはないだろう。
なかなかどうして、日本も広いと思うのだが。
高橋「それにしても姉ちゃん、遅くないっスか?18時半って言ってましたよね?」
愛原「そうだな……」
私はスマホに何か着信は無いかと、画面を確認した時だった。
〔5階です。下に参ります〕
愛原「あっ!」
ちょうどエレベーターのドアが開いて、そこから善場主任が降りてきた。
善場「お待たせしました。それでは、行きましょう」
愛原「あ、はい。よろしくお願いします」
私達はエレベーターに乗り込んだ。
〔ドアが開きます。1階です。上に参ります〕
1階でエレベーターを降りると、私達は新大橋通りに面した正面入口ではなく、裏手の駐車場側に回った。
そこに行くと、シルバーのミニバンが止まっていた。
善場「こちらに乗ってください」
主任の部下である黒スーツを着た男性職員が、手で助手席後ろのスライドドアを開けた。
ドアノブを触れば、あとは電動で開く。
高橋「(日産)セレナかと思ったら、(スズキ)ランディか。姉ちゃん達の組織、車何台持ってるんだ?」
善場「内緒です」
高橋「ナンバー的に、レンタカーじゃねーし……」
愛原「別にいいじゃないか」
善場「因みに車内禁煙でお願いします」
高橋「ちっ!」
私達はリアシートに3人並んで座った。
善場主任は助手席に座る。
善場「それじゃ、お願い」
部下「はっ。まずは酒々井(しすい)ですね?」
善場「そうね。混み具合によっては、市川でも可よ」
部下「了解しました」
部下の人はギアを操作して、車を出した。
駐車場前の路地から、まずは都道50号線・新大橋通りに出る。
雨が降っているので、ワイパーがフロントガラスの上を規則正しく動いていた。
最近の東京では基本、12月に雪が降ることはない。
なので、よく映画やドラマにある、東京でホワイトクリスマスなんて都合良くは発生しないのだ。
恨むなら、地球温暖化を恨めよ。
まあ、季節の上では雪が降って良いのに雨が降るということは、比較的暖かいということでもある。
リサ「善場さん、夕食は?」
善場「途中のパーキングに立ち寄りますので、そこで食べてください」
愛原「成田空港に行く途中のパーキングというと……何がある?」
私は車と高速道路に詳しい高橋に聞いた。
高橋「ここから成田空港っつーと、多分首都高7号とか東関東道とかに乗ると思うんで……あ、それで、さっきの市川とか酒々井か」
善場「ご名答です。さすがは暴走行為で起訴猶予を受けた方は違いますね」
高橋「何だそりゃ……」
しかし、高橋はそんな善場主任の嫌味にキレることはない。
最悪起訴されていてもおかしくない高橋が起訴猶予で済んだのも、善場主任らの力添えによるものと理解しているからだ。
不起訴ではなく、起訴猶予であることもミソ。
まだ、高橋は疑われているということ。
善場「予定では、酒々井パーキングエリアで休憩と時間調整をしたいと考えております」
愛原「なるほど。本当に直に行こうとすると、確かに早いですもんね」
航空ダイヤでは、絵恋さん達を乗せた飛行機が成田に到着するのは20時45分となっている。
高橋「早く行って、空港で飯を食うとかは無ェのか?」
善場「はい。BSAAの配備が完了するまでは、無理です。ので、私達のルートでは成田空港に最も近いパーキング、酒々井で時間調整をする必要があるのです」
愛原「なるほど……」
リサ「そのパーキング、何か美味しい物はある?」
高橋「俺の記憶じゃ、言うてそんなに大した物は無かったような……」
愛原「ウィキペディア先生によると、松屋と麺類のフードコートがあるだけだな。あとスタバ」
リサ「松屋……牛定……カルビ定……」
高橋「おま、そんなんでいいのかよw 森下駅前にもあんだろが……」
まさかとは思うが、両方食べるわけではあるまいな?
愛原「それにしても主任。18時半出発という時間に、何か意味はあるのですか?」
善場「はい、あります。我那覇さん達が乗る飛行機。那覇空港離陸は、何時の予定ですか?」
リサ「確か、18時20分」
善場「そうです。ですが、飛行機は必ずしも時間通りに離陸するわけではありません。それで余裕を見て、18時30分としました。実際、那覇空港を10分遅れて離陸したとの情報が入っております」
高橋「すると、今頃ガキ共は空の上か」
愛原「まさか、向こうに誰かエージェントが乗っているとか?」
善場「あいにくと人員の手配が間に合いませんでしたので、そこまではしていません。ただ、BSAAの航空機が付近を航行しています」
高橋「で、いざとなったら撃ち落とすわけか?ああ?」
善場「最悪の最悪が起きた場合、それも有り得ます。が、その確率はとても低いと考えています。何故なら、そのようなメリットが向こうにあるとはとても考えられないからです」
リサは何の話をしているのか、分からないといった顔をしていた。
実は私、あえてリサには斉藤早苗の正体を話していない。
いや、リサも知ってはいる。
ただ、リサとしては、全く同姓同名の別の斉藤早苗だと思っているようなのだ。
同姓同名の別人が、絵恋さんと一緒に来るのだと、そう思っている。
……というか、私達も心のどこかでそう思っている所はある。
だから、ウィルス検査をして、正体が判明するまでは、迂闊な態度が取れないということなのだ。
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