報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵1人の夜」

2023-05-27 20:31:57 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日18時00分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 ホテル東横イン日本橋浜町明治座前]

 私は善場主任に連れられて、近隣のホテルにチェックインした。
 一方、高橋はマンションに着替えを取りに行っている。
 このホテルは東横インの中でも、小規模なホテルである。
 大規模店舗の成田空港と比べて、例えば向こうはエレベーターが4基あったのに対し、こちらは1基しかない。

 善場「高橋助手と合わせてツインルームを取っておきましたので……」
 愛原「ありがとうございます。主任もお泊りになるんですか?」
 善場「内緒です」
 愛原「え?」
 善場「高橋助手がここに着くまで、部屋でお休みになっては如何です?私はクリニックに戻りますので」
 愛原「そ、そうですか」

 私はチェックインした。
 部屋の鍵であるルームキーを受け取る。
 そして、他の店舗でもそうしたように、アメニティだのナイトウェアだのを持ってエレベーターに乗り込んだ。
 それで、ツインルームに行くと……。

 愛原「……!?何か、広いな?」

 成田空港で泊まったのとは違う内装だった。
 もしかして、高い部屋なのだろうか?
 そんな高い部屋、取ってもらわなくても良かったのに……。
 よく見ると、広いベッドと狭いベッドがあった。
 狭いベッドといっても、こちらが通常のシングルベッド。
 広い方はセミダブルといった感じか。
 しかも、トイレと浴室が別々になっていた。
 しかし、そこに入ってみてようやく気付いた。
 車椅子のまま入れる広さになっている。
 つまりこの部屋は、バリアフリールームなのだ。
 何故この部屋を予約したのだろう?
 単に、ここだけしか空いてなかっただけか?
 私はスマホを取り出し、それでメールをしてみた。
 すると、答えは簡単だった。

 善場「仰る通り、ツインはそこしか予約できなかったからです」

 とのことだった。
 何だ。
 単に、他に部屋が満室だったからか。
 まあ、土壇場で予約したような部屋だから、しょうがないと言えばしょうがないか。
 私は高橋に、いつホテルに来るか聞いてみようかと思った。
 すると、高橋から着信があった。
 もうホテルに着いたのか。

 愛原「もしもし?」

 私が電話に出ると……。

 パール「愛原先生?」

 ややドスの効いた女の声が向こうから聞こえてきた。

 愛原「そ、その声は……」
 パール「パールだよ。久しぶりだね?愛原先生」
 愛原「パール!?そのスマホは高橋のだろ?!高橋はどうした!?」
 パール「マサとは、これからクリスマスデートに行くんだ。いいでしょ?」
 愛原「いや、いいでしょってアンタ……」
 パール「荷物ならちゃんとホテルまで持って来たよ。早く取りに来てよ」
 愛原「わ、分かった!今行く!」

 私は電話を切った。
 パールのヤツ、一体何だって……。

 愛原「パール!」

 パールと高橋はバイクに乗っていた。
 具体的には1台の大型バイクにパールが乗り、その後ろに高橋が乗っている状態。
 ホテルの外に出て、2人に駆け寄る。

 高橋「先生……サーセン……」
 パール「ほら、荷物」
 愛原「これは一体、どういうことなんだ!?」

 ヘルメットのバイザーを上げると、ボコボコにされた高橋の顔が見えた。

 高橋「さ、サーセン……。マンションに戻ったら、こいつと鉢合わせになっちゃって……。『クリスマスデートに行かないと殺す』と言われまして……」

 パールは手持ちのアーミーナイフを取り出すと、その刃をペロッと舐めた。

 愛原「ちょっと困るなぁ!高橋は今、俺と一緒に業務中……」
 パール「有給取るから、ヨロシク」

 パールはバイクを急発進させた。

 愛原「ちょっと!おーい!」

 高橋、殆ど拉致されてしまった。
 これは……明日まで帰って来ないパターンか……。
 私はホテルに戻ると、善場主任に電話した。

 愛原「……というわけなんです」
 善場「それはそれは。モテる男は辛いですね」
 愛原「善場主任~」
 善場「我々は愛原所長と業務委託契約を結んでいるのです。高橋助手は関係ありません」
 愛原「そ、そりゃそうですけど……」
 善場「高橋助手の起訴猶予が取り消されないといいですね」
 愛原「は、はあ……」

 やはり善場主任、冷たい時は冷たい。

 愛原「へ、部屋の方はどうしましょう?」
 善場「今更変更はできませんので、そのままその部屋をご使用頂いて構いません」
 愛原「わ、分かりました」
 善場「愛原所長も大変ですね」
 愛原「そ、そうですね」
 善場「差し出がましいとは存じますが、もっとまともな人材を確保されることをお勧めします」
 愛原「す、すいません……」

 まともでない人材の中に、高野芽衣子君も入っているんだろうな、きっと……。

 愛原「夕飯でも食ってくるか……」

 私は着替えの入った荷物を部屋に置いて行き、それから夕食を食べに行こうと思った。
 贅沢するつもりは無く、近くに吉野家があるらしい。
 そこに行くことにした。
 リサ達、ちゃんとした夕食を食べれているだろうか……?
 すると、リサからLINEが来た。

 愛原「あ、俺より高級だ」

 どこかから、仕出し弁当でも頼んだのだろう。
 トンカツ弁当が映っていた。
 美味そうな弁当だ。
 私もトンカツ食べたくなってきた。
 幸い、近くにトンカツ屋があるらしい。
 そこに行って、夕食を食べることにした。
 ……まさか、その店からケータリングしたものだったりしてな。

[同日20時00分 天候:晴 同ホテル客室]

 夕食を終えて部屋に戻った私は、インスタントのお茶を入れた。
 トンカツ屋でビール1杯飲んできたのだが、何だか『孤独のグルメ』をやっている気分になった。
 それにしても、高橋やリサがいないと本当に静かだ。
 ……うん、静かだな。
 テレビを点けて、バラエティ番組でも観るのだが、すぐそこに体操服にブルマ姿で寝転がっているリサがいないと……何だか寂しい。
 明日、リサ、無事にクリニックを出られるといいな……。
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“私立探偵 愛原学” 「検査の結果は……」

2023-05-27 11:51:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月24日17時00分 天候:晴 東京都中央区日本橋浜町 某クリニックのあるフロアのリフレッシュルーム]

 愛原「お前のスマホにやたら来ているLINE、パールからなんだろ?『一緒にクリスマスデートしよう』って話なんだろ?」
 高橋「ちちち、違います!」
 愛原「嘘つけ、このやろ!ちょっとスマホ見せろ!」
 高橋「か、カンベンしてください!!」
 警備員「どうしました?何かありましたか?」

 巡回中の警備員に怪しまれる。

 愛原「な、なな、何でもないです!スイマセン!」
 警備員「館内では、お静かにお願いします」
 愛原「は、はい!」

 警備員が立ち去った後で……。

 愛原「ったく!お前のせいで怪しまれただろうが!」
 高橋「さ、サーセン……」
 愛原「で、結局のところどうなんだ?」

 私は高橋から奪い取ったタバコを手に取ると、それを口に咥えた。
 高橋が自分の懐から、そっとライターを取り出す。

 高橋「そ、それは……」
 警備員「お客様、おタバコは喫煙室でお願いします」
 愛原「プッ!」
 高橋「ブッ!」

 と、そこへ、善場主任が走って来た。

 善場「愛原所長!ちょっといいですか!?」
 愛原「あ、はい」

 何かあったのだろうか?
 私と高橋は、一緒にクリニックに戻った。
 そして、所内のカンファレンスルームに入る。
 よほど変なウィルスでも検出されたのだろうか?

 善場「そこにお掛けください」
 愛原「は、はい」
 高橋「一体、何だってんだ?」
 善場「まず……結論から申し上げます。あのコ達は、ここで1泊してもらいます」
 高橋「ガチでヤバいウィルスでも出たんか?」
 愛原「となると、俺達も感染してるかもしれんで?」
 高橋「姉ちゃん!俺達も泊まれっつーんじゃねーだろうな!?」
 善場「はい。但し、お2人はホテルに泊まって頂きます。以前、泊まったことありますよね?この近くのホテル」
 愛原「ああ。東横イン、この近くにありますね。……って、私達は検査しなくていいんですか?」
 善場「恐らくお2人を検査しても、今リサから受けている物以上の物は出ないでしょう」
 高橋「一体、どういうことなんだ?」
 善場「もっと言ってしまいますと……あのコ達……具体的にはリサ以外ですが、ウィルスは検出されませんでした。
 愛原「はあ?!」
 高橋「どういうこっちゃ???」
 善場「リサに関しては、言わずもがなですね。既にBOWであるわけですから、持ち前のGウィルスや特異菌が検出されるのは想定内です。リサに関しては、それ以外のウィルスは検出されませんでした」
 愛原「リサは異常無しってことですな。あの2人から、全くウィルスが検出されなかったですって?」
 善場「厳密に言いますと、我那覇絵恋さんからは微量の特異菌は検出されました。ただ、それはリサから受けた物だと判断されます。肝心の……斉藤早苗が持っているはずのウィルス等が全く検出されなかったのです」
 愛原「土壇場でワクチンを投与した?」
 善場「それにしたって、痕跡はあります。抗体ができたりとか……」
 愛原「あっ、そうか……」
 善場「まるで、最初からそんなウィルスなど体内に無かったかのようなデータが出てしまったのです」
 愛原「牙が生えていたりしたのにねぇ……」

 私はふと思った。
 早苗が余裕しゃくしゃくの態度なのは、こういうカラクリを使えるからなのではないかと。
 しかし、今までウィルスだの特異菌だの、完全に隠せるBOWなんて見たことも聞いたこともない。
 そのカラクリが解明されなければ、斉藤早苗は最初から『人間』だったということになる。
 それは、善場主任も思ったらしい。

 善場「あの3人には、今夜一晩泊まってもらいます」
 愛原「リサはいいんじゃないですか?」
 善場「リサに関しては、見張り役というのもありますので」
 愛原「見張り役?」
 善場「もしも斉藤早苗が正体を現した場合、同室の我那覇絵恋さんが危険です。それで」

 なるほど。
 見張り役というよりは、護衛役か。
 善場主任も、リサを信用してくれるようになったか。

 愛原「分かりました。夕食はどうしますか?」
 善場「あの3人については、既にお弁当を発注していますので」
 高橋「弁当かよ。寂しいな」
 善場「仕方ありませんよ。そういうことで、よろしくお願いします」
 愛原「もう一泊するのなら、着替えを取りに行かないとな」
 高橋「そうですね。俺が行ってきますよ。先生はホテルで休んでいてください」
 愛原「そうか?悪いな」
 高橋「いえいえ」

 カンファレンスルームを出ると、『特別処置室』の扉が解錠されるところだった。

 リサ「先生、クリスマスパーティーは?」
 絵恋「ちょっとぉ!まだ着替えちゃダメなの?」
 早苗「いい加減にしてもらえませんか?」
 善場「ダメです。今夜は一晩、こちらに泊まって頂きます」
 リサ「また『入院』かぁ……」

 変化中のリサに破壊された特別処置室も、今は元通りに修復されている。
 病院の入院病棟にあるようなベッドが3つ並んでいた。

 絵恋「り、リサさんも一緒なの?」
 リサ「とんだトバッチリだよ。せっかく、先生とクリスマスパーティーしたかったのに……」
 愛原「まあまあ。今日はイブだ。本当のクリスマスは明日なんだから、明日にしようよ」
 リサ「しょうがないねぇ……。先生はどうするの?」
 愛原「前回みたいに、俺と高橋は近くのホテルに泊まるよ。これから高橋に、着替えを取りに行ってもらうところだ。リサはどうする?」
 リサ「泊まるのは今夜だけでいいんだよね?」

 リサは善場主任を向いた。

 善場「クリニックの都合もあるので、泊まれるのは一晩だけです」

 恐らく、人間ドッグの『1泊2日コース』にかこつけているのだろう。

 善場「もしも結果が最悪でしたら、藤野に移送させて頂きます」
 リサ「やっぱりそうくるか……。それなら、まだいい」
 愛原「いいのか?」
 リサ「下着は多めに持って来たし……」
 善場「生理用品くらいでしたら、こちらで用意しますよ」
 リサ「それならいい」
 絵恋「リサさんがそう仰るのなら……」
 早苗「『魔王様』の命令は絶対だからね」
 愛原「それじゃリサ、また明日な?」
 リサ「先生、先生。ちょっとちょっと」

 リサは私を手招きした。

 愛原「ん?どうした、リサ?」

 リサは顔を近づけると……私の唇を奪った。

 愛原「!!!」
 絵恋「り、リサさん!?」
 早苗「ほお……」
 絵恋「先生!リサさんに何てことするんですか!?」
 愛原「お、俺が勝手にやられたんだよ!」
 リサ「『夫婦がキスするのは当然だっちゃ』……だよね?」
 愛原「お前なぁ……」
 善場「リサも突然のことで寂しいのでしょう。多目に見ます。この程度では、新たなウィルスには感染しないでしょうし。特に愛原所長は」
 愛原「な、何ですか、それは……」
 善場「とにかく、ホテルを取ってありますので、そこまでご案内致します。3人はこのクリニックからの外出を禁止します。もしも破った場合は……」
 リサ「BSAAが出動してくるんだね。分かった分かった」
 善場「そういうことです」
 絵恋「せめて自販機コーナーくらいまでは行かせて欲しいなぁ……」
 善場「なるほど。それでは、今のうちに買い込んできてください」
 愛原「ほれ」

 私は1000円札を渡した。

 愛原「ここの自販機、現金しか使えないから」
 リサ「おー、さすが先生!」
 愛原「仲良く分けるんだぞ」
 リサ「はーい」
 善場「飲み水くらいでしたら、クリニック内のウォーターサーバーが使えますので」
 リサ「だから、それ以外のジュースだね」

 まずは少女達に飲み物を買いに行かせ、それから私と善場主任はクリニックをあとにした。
 因みに特別処置室内には、冷蔵庫があるので、買った飲み物はそこでストックできるという。
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