報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔王城へ向かう」

2022-08-25 14:28:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月18日09:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街カブキンシタウン]

 朝食を食べた後は、宿屋をチェックアウトした。

 勇太:「じゃあ、この後は6号線に……」
 マリア:「うん、その前にちょっと待って」
 勇太:「えっ?」
 マリア:「せっかく魔界に来たんだから、買い物して行きたい」
 勇太:「なるほど。魔王城から先は忙しくなるかもしれないもんね」
 マリア:「そういうこと」

 夜は歓楽街であるカブキンシタウンであるが、昼間は普通の中心街といった感じである。
 夜の店は閉まっているが、アイテム屋や武器屋などは営業している。

 薬屋:「いらっしゃい。薬屋だが、アイテムも取り扱ってるよ」
 勇太:「どうするの?」
 マリア:「余ってる金でエリクサーやら、ハイポーションやら買って行く」
 勇太:「なるほど」

 生理中は体力ゲージが下がって行くので。

 マリア:「MPを数値化すると、絶対に0になってるから」
 勇太:「“魔女の宅急便”がゲームになったら、絶対そうなるよね?」

 勇太は大きく頷いた。

 勇太:「あれ?でも、薬で抑えられるんじゃないの?」
 マリア:「辛い症状が緩和されるというだけで、MPガタ落ちなのは間違いない。これだ。これもちょうだい」
 薬屋:「毎度。この薬は、生理痛に悩む女性の冒険者達にも大好評だよ」
 マリア:「だろうな」
 勇太:(日本の薬事法的にはアウトなんだろうなぁ……)

 それから、次の店に移動する。
 今度は年配の女性が経営する、魔法具屋だった。

 魔法具屋:「いらっしゃい。魔法具は、何でもあるよ」
 マリア:「杖の先端に取り付ける装飾品を新調したい」
 勇太:(杖の先端の装飾品って、こういう所で調達するんだ!?)
 マリア:「他にオススメはある?」
 魔法具屋:「この高性能通信機はどうだい?相手の通話だけでなく、文字通信や天気占い、地図情報から翻訳機まで、何でも使えるよ?」
 勇太:「それ、僕のスマホで十分じゃない?」
 魔法具屋:「何と!?」

 現実世界では当たり前のアイテム、スマホも魔界では高級魔法具である。
 色々と買い物して、再び三星亭に戻った。

 女将:「おや?色々と回って来たみたいですねぇ。あなた達は、夜の街より、普通に昼の街を楽しむタイプかしら?」
 勇太:「そうかもしれません」
 マリア:「向こうの世界に送りたいものがあるので、お願いします」

 この街で買い物した物のうち、今は使わないものだ。

 マリア:「後でエレーナが取りに来るでしょう?」
 女将:「そうですね。午前便はもう取りに来たので、午後便になります」
 勇太:「午前と午後に分けて取りに来てるんだ!?」
 女将:「そうなんです。それと、これは稲生さん宛ての手紙です」
 勇太:「えっ?それもエレーナから?」
 女将:「はい」

 それは封筒であった。
 差出人を見ると、何と藤谷春人からであった。

 勇太:「藤谷班長から!?」

 勇太が封筒を開けると、書類と手紙が入っていた。

 勇太:「あっ、添書だ……」

 添書を見ると、藤谷班長が申込者の添書が入っていた。
 これは大石寺の奉安堂で毎週、土・日・月・火曜日に行われる『御開扉』に参加する為の申込書である。
 手紙も同封されていて、藤谷班長から、『たまには御登山しなさいよ』といった内容の事が書かれていた。
 返信用封筒も入っていて、これに添書を入れてエレーナに渡すと、エレーナから藤谷班長に送られる仕組みになっているらしい。
 そして藤谷から正証寺の御住職に渡され、そこから大石寺に提出する分を渡されるのだ。
 しかも、他にも書類が入っていた。

 勇太:「入信願書?まさか、魔界で街頭折伏でもしろってんじゃ……?」

 そんなことは無かった。
 既にマリアの名前が記入されており、『マリアさんも入信したら、一緒に御登山できるよ?』とのことだ。

 マリア:「Fire.」

 マリアは1番弱い火炎魔法で、その入信願書を焼き捨てた。

 女将:「ちょいと。店内で燃やさんといてもらえます?」
 マリア:「ごめんなさい」
 勇太:「マリアさんの折伏、失敗か……w」
 マリア:「なに笑ってんだ!」
 勇太:「手紙には、『正証寺では結婚式も執り行っています』と書かれてたけど?」
 マリア:「うちの屋敷でやるからいいでしょ」
 勇太:「はは、それは残念」

 マリアの入信願書は燃やされたが、しかし勇太の添書は燃やさなかったマリアだった。

 勇太:「僕は参加していいんだね?」
 マリア:「どうぞ御勝手に」
 勇太:「それじゃあ、御言葉に甘えまして……」

 勇太はペンを走らせ、自分が記入する所を記入した。
 内容的には、藤谷も一緒に御登山することになりそうだ。
 しかし日付を見ると平日のようだが、藤谷は休みが取れるのだろうか?

 勇太:「これでよし」

 勇太は添書を入れて封をした。

 女将:「それじや、これは後でエレーナに渡しておきます」
 勇太:「よろしくお願いします。エレーナだと、高く取りそうですね」
 女将:「この手紙に関しては、稲生さんからは取らないみたいですよ。この……藤谷さん?という方から取るそうで……」

 どうやらエレーナは、勇太に請求するよりも、藤谷に請求した方が料金を高く取れると踏んだようである。

 マリア:「じゃあ、これもお願いします」

 マリアは自分の荷物も送った。

 女将:「イリーナ様宛てですか?」
 マリア:「師匠名義にした方が、あの守銭奴魔女もボりにくいはずなので」

 マリアはニヤッと笑った。

 勇太:「いやあ……あの守銭奴は、普通に目上の人からも高く請求しそうだけど……」

 “ゲゲゲの鬼太郎”のねずみ男等を見ると、守銭奴キャラはどうもそんな感じに思えてくるのだった。

[同日10:00.天候:晴 アルカディアメトロ6番街駅→6号線電車内]

 路面電車の乗り場は、カブキンシタウン南口にある。
 それに対して、新しくできた6号線の駅は北口にあった。

 

 駅は地下にあるが、ホームは1面1線であった。
 そこには、昔のニューヨーク地下鉄によく似た電車が停車していた。

 

 電車に乗り込むと、車内はセミクロスシート。
 日本の地下鉄では、あまり見られない構造である。

 運転士:「おっ、お2人さん!先日はどうもね」

 運転士は先日、1番街駅から事件現場付近まで回送電車に乗せてくれたオーガだった。
 オーガとは、中東アラブ地域で語られる人食い鬼のことである。
 但し、日本の鬼や西洋の鬼のように、生きている人間を殺して食うよりは、死体を貪り食う『死食鬼』である。
 もちろん、この王国の法律では禁止されている。
 改心したり、王権支持者は順法精神を持ち、このような公共機関で働いていることが多い。

 運転士:「俺も仕事を失わずに済んだよ」
 勇太:「そ、それは良かった」

 オーガも額に角を生やしている。
 その為、制帽は深く被れない。

 運転士:「1番街まで行くんだろ?好きな席に座って寛いでくれ」
 勇太:「ありがとう」

 勇太としては先頭車に被りつきたいところだが、半室構造の運転室の横はクロスシートでも、進行方向逆向きに設置されている。
 しょうがないので、進行方向向きのクロスシートに座った。
 日本の地下鉄では、なかなか進行方向向きのクロスシートに座る機会は無い(都営浅草線乗り入れの京急電車の一部とか、京都市地下鉄乗り入れの京阪電車とかくらいか?)。
 オーガは基本的に体がデカい。
 なので、元ニューヨーク地下鉄の半室構造の運転室は、窮屈そうだった。
 ホームからは、短い発車サイン音が響いてくる。
 ニューヨークの地下鉄は今でも車掌乗務のツーマン運転だが、このアルカディアメトロの地下鉄は基本的にワンマン運転である。
 なので、運転室の横にサイドミラーが付いていたりする。
 乗降ドアが勢い良く閉まると、電車はゆっくりと走り出した。
 思いっ切りバンと閉まるのは、古い電車ならではである。

〔この電車は6号線、各駅停車、1番街経由、2番街行きです。次は6番街北、6番街北です〕

 車内は蛍光灯が輝いているが、旧型車両ということもあり、トンネル内では少し薄暗い。
 それでも、サハギン達がいなくなったことで、電車は元気に走っているようだった。
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“大魔道師の弟子” 「6番街の夜と朝」

2022-08-23 20:33:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月17日22:30.天候:晴 アルカディアシティ6番街 三星亭]

 三星亭に引き返した勇太とマリアを、女将が出迎えた。
 1階の酒場は、未だに賑わっている。

 女将:「お帰りなさい。首尾はどうでした?」
 勇太:「僕達の為に、口添えしておいてくれたそうですね。ありがとうございます」
 女将:「いえいえ。稲生さん達がお上手でしたのよ。いくら私が口添えしたところで、気に入らない人間とは一切関わらない人ですからね」

 そして女将、マリアを見る。

 女将:「実際に吉田さんのマッサージを受けたのは、マリアンナさんかしら?思いっ切りゴリゴリされたみたいですねぇ」
 マリア:「はあ……」
 女将:「今晩はぐっすり眠れることでしょう。今、バスルームが空いてますので、どうぞ入って、お休みになってくださいな」
 マリア:「そうせさてもらいます」

 2人は預けた鍵を受け取ると、再び階段を昇った。

 マリア:「ふわ……」

 マリアは大きな欠伸をする。

 勇太:「すっかり疲れが取れたみたいだね?」
 マリア:「ああ。お風呂入ってくるよ」
 勇太:「行ってらっしゃい」

 マリアはローブを脱いで、ベッドの上に置くと、タオルや着替えなどを持って部屋を出て行った。
 その間、勇太は夕の勤行をすることにした。
 因みにマリアは人形も連れて行ったことから、入浴の世話をさせるのだろう。

[同日23:00.天候:晴 三星亭(英名:Three Stars Inn)]

 勇太:(乃至法界平等利益……)

 ズドドドド!
 タタタタタ!

 勇太:「じたぐあん……って、何だ!?」

 部屋の外から銃声が聞こえて来た。

 横田:「あ~れ~……!」

 横田の声が聞こえて来たので、勇太が様子を見に行くと、横田が2階の階段から1階へと転がり落ちて行くのが見えた。
 そして、廊下にはAUGマシンガンやアサルトライフルを構えるミカエラとクラリスがいる。

 マリア:「覗き!覗きよ!ヘンタイ!!」

 マリアがバスタオルだけ巻いた状態で、バスルームから顔を出していた。

 女将:「またアンタかい!?今度こそ憲兵隊事務所に突き出そうかね!?」
 横田:「ご、誤解です!あそこは2階ですが」
 女将:「あァ!?」

 ここでいう憲兵とは、軍隊内部の規律違反を監視する警務憲兵のことではなく、国内の治安維持に当たる国家憲兵のことである。
 アルカディア王国には、Policeは存在せず、地方には郡保安隊がいて、保安官(Sheriff)がいる。
 王都アルカディアシティでは、国家憲兵が治安維持に当たっている。

 横田:「部屋を間違えてしまったです。クフフフフ……」
 女将:「アンタは宿泊してないだろ!」

 と、そこへ……。

 憲兵A:「アルカディアシティ東部憲兵隊の者だ!先ほどの銃声は何だ!?」
 憲兵B:「各自その場を動かず!事情を聞かせてもらおうか!?」
 憲兵C:「ヘタに隠し立てすると、連行するぞ!」
 女将:「おや、来たのかい。犯人はそいつさ。女性のお客様の入浴を覗いたのさ。これはれっきとした法律違反だね?」
 勇太:「魔界共和党の規則にも反してるぞ!」
 横田:「横田です。先般のマリアさんの入浴シーンにおける大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 勇太:「あ、ゲロった」
 女将:「犯行自供ってことね。連行よろしく」
 横田:「クフフフフ……。私を誰だと思っているのですか?魔界共和党総務理事の横田であります。ヒラ憲兵如きが、私を連行して良い理由がございますか?クフフフフ……」
 勇太:「……あ、もしもし?坂本所長ですか?夜分遅くに、恐れ入ります」

 勇太、受付カウンター横の公衆電話から、魔界共和党事務所に電話する。

 勇太:「実は今、6番街にいるんですが、また横田理事が宿屋で覗きをやってるんですよ。ちょうど今、憲兵隊がいるんですが、連行してもらっていいですか?」

 勇太は魔法の杖を受話器に当てた。
 するとあら不思議、まるでスピーカーホンのように大きな声が聞こえてくる。

 坂本:「魔界共和党選挙対策委員長、坂本成人の名において、横田理事の連行を認める」
 憲兵A:「ははっ!……というわけで、あなたを拘束します!」
 横田:「さ、坂本君!?キミ、顕正会退転者の癖に、よくも私を……!」
 坂本:「いや、顕正会関係無いやろ」
 憲兵B:「取りあえず、憲兵隊事務所まで」
 横田:「は、放せ~!放してくれ~!」
 憲兵C:「退けっ!道を開けろ!」
 憲兵D:「……すると、あなたがバスタブに浸かっている間、天井の換気口からずっと横田理事が覗いていた……と?」
 マリア:「はい、そうです」
 勇太:「坂本所長、すいませんねぇ。本当に、こんに夜更けに……」
 坂本:「構いませんよ。それより仏法はもう結構なので、折伏に来ないよう、雲羽監督に伝えてもらえますか?」
 勇太:「分かりました。伝えておきます」

 雲羽:「折伏してもこれだもんなぁ……」
 多摩:「俺も結構だからな?」
 雲羽:「今度の秋季彼岸会、一緒に行きます?」
 多摩:「行かんっちゅーに!」

[7月18日07:00.天候:晴 三星亭2F・客室]

 勇太の枕元に置いたスマホが、アラームを鳴らす。

 勇太:「うぅん……」

 勇太、手を伸ばしてアラームを止めた。

 勇太:「もう朝か……」

 隣のベッドではマリアが寝ていた。
 昨夜の騒動のせいで、とてもマリアと【イチャラブ】できる雰囲気ではなかった。
 元々マリアは眠かったため、結局そのまま寝た次第。

 勇太:「マリア、朝だよ」
 マリア:「うーん……あと5分……」
 勇太:「イリーナ先生と同じこと言わない」
 マリア:「……それもそうだね」
 勇太:「そこで起きるんかーい」
 マリア:「勇太、朝の勤行するでしょ?」
 勇太:「もちろん」
 マリア:「その間、私はもう一度風呂に入って来る。昨夜はアホ横田のせいで、ゆっくり入ってられなかったからね」
 勇太:「う、うん。分かった。その後で、朝食だね」
 マリア:「そうしよう」

 マリアはTシャツに短パンで寝ていた。
 起き上がるとマリアはバスルーム、勇太は洗面所に向かった。
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“大魔道師の弟子” 「最後の推薦状」

2022-08-23 16:18:25 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月17日21:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街 『マッサージの吉田屋』店内]

 マリアは作務衣のような部屋着に着替えた。

 吉田:「んっふふふふ……。リッチなお客には、相応しいおもてなしを」

 吉田、カーテンを閉めて施術台を個室化した。
 マリアが受けるのは、ハンドマッサージである。
 施術前のヒアリングで、足よりも手の方が疲れていることが分かった。
 これは魔法使いでは、よくあることなのだという。

 吉田:「まずは、皮を痛めないようにクリームを……指の一本一本に、ねっとりと……丁寧に塗り込んで行くからね?」
 マリア:「うぅ……」(←この時点で既に気持ちいい)
 吉田:「それじゃあ、指先から行くよ?」
 マリア:「Right...」

 因みにマリア、ハンドマッサージを受けるのは初めてである。
 尚、リクライニングチェアに座っている。

 吉田:「ほぉら、力を抜いて。悪いようにはしないからさ」
 マリア:「(まるで師匠にマッサージされているかのようだ……)あぁ……!」

 吉田自身がアラフォーなのと、背格好や猫を被った性格が似ているからだろう。
 弟子として、体の使用期限が迫っている師匠のマッサージをしたことはあるが、されるのは初めてだった。

 吉田:「おや?痛かったかい?」
 マリア:「いえ……」
 吉田:「んふふふ……。次は、指の付け根を揉んで行くよ。凝り固まった老廃物を、どんどんと流して行くからね?……あなたは手を使うことが多いようだから、老廃物が溜まりに溜まってるわね」
 マリア:「人形作りが趣味なもので。あぅぅ……」
 吉田:「声出してもいいんだよ?我慢は体に毒だからね?」
 マリア:「でも、隣の部屋には勇太が……」
 吉田:「いいのいいの。気にしなくて。……最後に、掌のツボを優しく押していくよ?こんな風に……」
 マリア:「ううッ……!」
 吉田:「おや、どうしたんだい?声が漏れてるね?……ここが気持ちいいのかい?……ここはどうだい?……それとも、ここかい?」
 マリア:「あッ……!ああッ……!!」

 で、隣の部屋……。

 勇太:「な、何かマリアの絶叫というか、嬌声というか、そういうのが聞こえる」
 アヤ:「キョーセー?」

 尚、こちらの方は順調に施術が進んでいた。
 勇太をロリコン呼ばわりしたマリアだったが、特に勇太はアヤに欲情することもなく、まるで娘に肩たたきでもされる父親のような感じで接していた。

 アヤ:「それじゃ次は足ツボ。お客さんも、夜はよくお酒を飲まれるようだから、そんな人の為のツボを調べました」
 勇太:「な、何かスイマセン……」
 アヤ:「こちらに、右足を置いてください」

 アヤ、フットレストを勇太の前に置く。
 尚、勇太もマリアと同様、リクライニングチェアに座って、最初にハンドマッサージを受けていた。

 アヤ:「それでは手と同様、皮を痛めないようにクリームを塗らせて頂きます。……それでは、始めます」
 勇太:「木の棒でグリグリするタイプか。本格的だねぇ……」
 アヤ:「ここ、ここです。分かりますか?ここが、肝臓に効くツボです。右足にしかありません」
 勇太:「そうなんだ。でも、全然痛くないね?ということは、僕の肝臓、とても健康的ってことでいいのかな?」
 アヤ:「あのね、本当に健康的だと、『痛気持ちいい』んだって。痛いだけだったり、逆に全然痛く無くてもダメなんだって」
 勇太:「そ、そうなの?じゃあ、僕の肝臓は……」

 マリアに付き合って、アルコール度数の高いワインやウィスキーにも手を出したからだろうか。

 アヤ:「お察しください」
 勇太:「だよねぇ……」

 その時、また隣の部屋からマリアの嬌声が聞こえてくる。

 勇太:「凄いな、マリア……。(Hの時でも、あんなに声は出さないのに……)」
 アヤ:「うちのママ、結構激しくグリグリやるからね」
 勇太:「そうなんだ」

 その為、ソフトタッチが良いとする客は、別にロリっ気など無くても、アヤを指名することがあるのだとか。

 マリア:「もうダメ~~~~!!
 吉田:「ここは我慢なさい。ここが1番、体に効くんだから」

 勇太:「な、何をしてるんだろう?何をしてるんだろう?」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 アヤ:「これかな?」

 アヤ、棒で勇太の足の親指辺りをグリグリとやる。
 眼などに効く部分だそうで、眼が疲れたりすると、かなり痛いらしい。

 勇太:「ぎゃおっ!?」
 アヤ:「ほら?w」
 勇太:「な、なるほど。そういうことか」

 足ツボの次は……。

 アヤ:「次は太ももの内側でーす」
 勇太:「わっ!?ちょちょちょ、女の子が大人の男の変な所を触るんじゃありません!」
 アヤ:「? あのね、ここはリンパが流れているところで、強く刺激してあげると、老廃物が一気に流れて健康的になれるんだよ」
 勇太:「そ、そうだったのか」
 アヤ:「多分、隣でも……」

 隣からマリアの笑い声が聞こえて来た。
 恐らくマリアにとって、太ももの内側から足の付け根に掛けては、くすぐったい所なのだろう。

 勇太:(今度、Hの時に舐めてあげよう……)

 くすぐったい所というのは、性感帯でもあるとのことで……。

[同日22:00.天候:晴 同店内]

 施術室から出て来るマリア。

 吉田:「気に入ったら、また来てちょうだい」
 マリア:「Right...」

 そして、勇太の方も……。

 アヤ:「またのご利用、お待ちしてまーす!」
 勇太:「あ、ありがとう……」
 吉田:「さて、三星亭の女将さんから話は聞いてるよ。あなた達の誠意、しかと見せてもらったからね。頼みってヤツを聞こうじゃないか」
 勇太:「あ、はい。実は……」

 勇太は事情を話し、後援会幹部である吉田の推薦状が欲しいと言った。

 吉田:「そういうことだったのね」

 因みにマリアは、あまりにも気持ち良くて腰が抜けてしまい、待合所の椅子に座り込んでしまった。

 アヤ:「はい、どうぞ。白湯です。これを飲めば、流した老廃物が外に排出されます」
 マリア:「Thanks...」
 吉田:「分かった。そういうことなら、すぐに書いてやろうじゃないか」
 勇太:「本当ですか!?」
 吉田:「ああ。今、書いてくるから、そこで白湯でも飲んでなさい」
 アヤ:「はい、白湯」
 勇太:「ど、どうも……」

 こうして勇太達は、見事に推薦状を3つ手に入れることができたのである。

 勇太:「“がんばれゴエモン”とかでも、通行手形を3枚くらい揃えないと関所が通れないとかあったけど、実際はこんな苦労だとは……」
 マリア:「随分、手間が掛かったねぇ……」
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“大魔道師の弟子” 「6番街のマッサージ屋さん」

2022-08-21 20:59:59 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月17日20:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街 吉田マッサージ店]

 三星亭の女将に教わった通りの道を進むと、6番街カブキンシタウンの東端部分に、クリスティーネ吉田のマッサージ店はあった。

 マリア:「ここ……だよね?」
 勇太:「そうだね」

 しかし、佇まいはまるで料亭のようである。
 看板は、ちゃんと『マッサージの吉田屋』と筆文字で書かれている。
 しかもその看板も、行灯風のものだ。

 勇太:「じゃあ、入ってみようか」
 マリア:「うん」
 勇太:(顕正会の会館よりも敷居の高そうな店だなぁ……)

 と、その時だった。

 青年:「何だよ、ここ!?ボッタクリじゃねーか!!」

 そんなことを喚きながら、飛び出して来る青年がいた。

 吉田:「言い掛かりつけんじゃないよ!この貧乏人が!!」
 青年:「クソッ!」

 青年は慌てて駆け出して行く。

 勇太:「えぇえ……?」
 マリア:「そんなに高いのか?い、イザとなったら、師匠のカードで」
 勇太:「ここ、カード使えるの?」
 マリア:「とにかく入ろう。入らないことには、進まない」
 勇太:「う、うん」

 何気に勇太を先に行かせるマリアだった。
 これが逆にチンピラ風の男なら、呪文を詠唱しながら殺意マックスで立ち向かうマリアだが、気の強い年上の同性には腰が引けるのだった。
 キレた時のイリーナに似ているからだろうか。

 勇太:「こ、こんばんは~……」

 勇太達が店内に入ると、フワッとしたアロマの香りが出迎えた。
 そして、やはり店内も和風である。
 受付カウンターには、着物を着たアラフォーくらいの女性がいた。
 アラフォーだが美人であり、勇太は思わず息を呑むほどであった。
 名前からして、欧米人とのハーフなのだろう。
 肌の色は日本人だが、顔の彫りは若干深く、鼻も若干高い。

 マリア:(和風の師匠みたい)

 と、イリーナとイメージを重ね合わせた。
 これが先ほど、青年を怒鳴りつけた女性かと思うほど、にこやかに2人を出迎える。

 吉田:「いらっしゃいませぇ。お2人ですね?どうぞ、こちらに」

 と、カウンターの前を勧めた。
 勇太達は、ゆっくりとそこに進む。

 吉田:「本日は、どういった揉みに致しましょう?」
 マリア:「揉み?」
 吉田:「あーら!これは失礼!御新規さんでしたか~」
 マリア:「うん」
 吉田:「うちはマッサージ店でございますのよ。人間、体が疲れてると、ロクに仕事も遊びもできやしませんでしょう?そんなお客様の疲れを揉み揉みと……うふふふ。私共のこの手で、丁寧に揉み解させて頂きます。うふふふ……。というわけで、本日はどういった揉みに致しましょう?」
 勇太:「あ、実は僕達は……」
 マリア:「勇太。私達、初めてなので、どういったコースがあるのか分からないんです。何か、オススメのコースとかありますか?」

 マリアは当初の作戦通り、まずは客として様子を伺うことにしたようだ。

 吉田:「そうですねぇ……。初めてのお客様には、こちらの3つのコースのいずれかがよろしいかと……」

 吉田はコースメニュー表を見せた。
 そこには、『最上の揉みコース』『普通の揉みコース』『人体実験コース』の3つがあった。

 勇太:「じ、人体実験!?」
 吉田:「こちらは1番安いコースでございまして、100ゴッズになります」
 マリア:「確かに安い。……特徴は?」
 吉田:「それは……受けたお客様だけが分かるのでございます」
 マリア:(どこかで聞いた魔女のセリフだなぁ……)

 その時、勇太はもう1つコースがあることに気づいた。

 勇太:「この、『極上のロリコース』ってのは何ですか?」
 吉田:「ああ、それは……」

 吉田は店の奥に向かって、パンパンと手を叩いた。

 幼女:「はーい!」

 すると、奥から着物姿の少女が現れた。
 女将の吉田が花魁だとするなら、少女の方は禿(かむろ)といった感じ。

 吉田:「私の娘なんですよ」

 歳の頃、10歳前後といった感じだ。

 アヤ:「アヤ吉田です!本日は、ようこそお越し下さいました!」

 恐らく、かなり練習して覚えたであろう、接客のセリフを元気よく言う。

 勇太:「いいんですか?まだ子供なのに……」
 吉田:「家業の手伝いですから」

 よく地方の個人経営のスナックに行くと、たまにママの娘が手伝っていたりすることがあるが、その感覚だろうか。

 吉田:「マッサージの技法・手法については既に仕込んでありますから、どうか御心配無く」
 アヤ:「お任せください!」

 アヤは小さな両手をわきわきさせながら言った。
 それでも日本では児童労働で、地域(特に大都市圏)では取り締まられるかもしれない。
 しかし、このアルカディア王国ではそういった規制は緩いようである。

 勇太:「うーん……どうしようかな?」
 マリア:「ちょっと、勇太!」

 因みに『(女将自ら手掛ける)最上の揉みコース』で3000ゴッズ、『(アヤが担当する)極上のロリコース』は2000ゴッズだった。
 尚、1番街での功績によって得た賞金のおかげで、いずれも予算はある。
 勇太が悩んでいると、店に飛び込んで来る者がいた。

 横田:「嗚呼ッ!今日もお美しい吉田さん!この私に『極上のロリコース』をッ!!」
 アヤ:「きゃあーっ!」

 横田、アヤに飛び掛かる。
 尚、吉原遊郭においても、禿に手を出すのは御法度とされていたはずだ(が、陰でこっそりロリ専客に売っていたこともあったらしい)。
 ここでも、もちろんセクハラは厳禁である。

 吉田:「ちょいと!アンタはもう店に出禁だよ!さっさと出ていった!!」

 吉田は大きな扇子を持っていたが、この扇子、どうやら鉄扇であったらしい。
 それで、バコーンと横田を殴り飛ばす。

 横田:「あ~れ~!」
 吉田:「今度来たら、憲兵を呼ぶからねっ!!」

 吉田、横田を追い出した。

 吉田:「ごめんなさいね?こういう町だから、変なのも店に来て大変なんですよ」
 勇太:「は、はあ……」
 吉田:「さて、どのコースにします?」
 勇太:「じゃ、じゃあ『極上のロリコース』で」

 マリアは溜め息をついた。

 マリア:「私は『最上の揉みコース』で」
 吉田:「まーいど♪それじゃあ、奥の部屋までいらっしゃい。アヤ、しっかりやるのよ?」
 アヤ:「はーい!」

 吉田の娘らしく、顔立ちはよく似ている。

 アヤ:「こちらへどうぞー!」

 アヤは勇太の手を握って、奥の部屋へ案内した。

 マリア:「チッ……!」

 その様子を見て、マリアは舌打ちをした。

 吉田:「あなたの彼氏さんかしら?」
 マリア:「そんなところです」
 吉田:「あの方、まさかロリコン?」
 マリア:「まあ、横田よりはマシだと思いますが」

 本当にただ一緒にゲームをしたり、ランチをしただけなのだが、未だにリリィと一緒に過ごしたことを根に持つマリアだった。

 吉田:「それなら大丈夫。本当に、うちは健全なマッサージ店なんだから。さ、奥で部屋着に着替えていらっしゃい」
 マリア:「Ok...」

 果たして、2人は無事に吉田から推薦状をもらえるのだろうか?
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“大魔道師の弟子” 「久しぶりの6番街」

2022-08-20 20:37:22 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月17日19:00.天候:晴 アルカディアシティ6番街→三星亭]

 辻馬車がもうすぐ6番街に到着する。

 勇太:「そういえばマリア」
 マリア:「なに?」
 勇太:「思ったんだけど、この時間になったってことは、この町にまた一泊するでしょ?」
 マリア:「そういうことになりそうだね」
 勇太:「6番街と言えば、あれだ。ワンスターホテルの姉妹店、三星亭があったでしょ?」
 マリア:「ああ!ジーナが働いてるところ!」
 勇太:「そう。今夜はそこに泊まるってのはどう?」
 マリア:「部屋が空いてるといいな。でもさ、それだったらサーシャの所に行く必要も無いんじゃない?三星亭の女将さんが知ってるかもよ?」
 勇太:「あっ、そうかぁ……」

 元々は6番街で店を経営しているという、魔界共和党の後援会幹部を訪ねて来たのだ。
 その情報を得る為に、サーシャとエリックの道場に行こうと思ったのだが……。
 宿屋の女将だって、その辺の情報は知っているはずだ。

 勇太:「どうせ泊まるんだったら知ってる所の方がいいし、女将さんも知ってそうだもんね」
 マリア:「そういうこと」

 すると、馬車が止まった。

 御者:「着いたぜ。ここが6番街のカブキンシタウンだ」

 ここへ流れ着いた日本人達が、東京の歌舞伎町と錦糸町をイメージして造った町なので、そういう名前が付いた。

 勇太:「ありがとう」
 マリア:「はい、約束の280ゴッズ」
 御者:「毎度!楽しんで来いよ!」

 馬車を降りて、煌びやかな繁華街の中に入る。

 客引き:「眠らない町、カブキンシ!一晩中遊ぶもよし!働くのもよし!さーて、お2人さんは……」
 勇太:「結構です!マリア、行こう!」
 マリア:「うん!」

 勇太はマリアの手を引いて、三星亭へ向かった。

 勇太:「『株、禁止』に聞こえる町だな……」
 マリア:「なに?」
 勇太:「FXの取引が禁止されている町に聞こえる」
 マリア:「Huh?」

 そして、三星亭に行くと……。

 ジーナ:「そこの御両人!今夜の宿はお決まりですか?」
 勇太:「えっ?」
 ジーナ:「お2人にピッタリの部屋が空いておりますよ!」
 マリア:「ジーナ!客引きやってるのか!?」
 ジーナ:「そ、その声は……!?マリアンナ先輩!?」
 勇太:「客引きしてるってことは、部屋が空いてるってことだよね?」
 ジーナ:「そ、そうです!」
 勇太:「早速、一泊させてもらいたいんだけど、いいかな?」
 ジーナ:「大歓迎です!どうぞ!」

 ジーナの後を付いていく2人。
 よく見ると、ジーナはマリアのよりも短いスカートを穿いている。
 エレーナよりも、ハードな宿屋の仕事をしているようだ。
 まあ、東京の下町のビジホと歓楽街の宿屋では、自ずと仕事内容も変わって来るか。

 ジーナ:「お客様お2人、ご案内でーす!」
 女将:「いらっしゃい。この宿屋は食事もベッドも最高だよ」

 女将がにこやかに出迎える。
 ワンスターホテルと違って、ここでは女将が前に出ている。

 勇太:「女将さん、お久しぶりです」
 女将:「おや、あなた達は……」
 勇太:「部屋が空いてるそうですね?一泊お願いしたいんですが?」
 女将:「どうぞどうぞ。2階のお部屋が空いてますよ」

 RPGの世界にある宿屋のデフォである。
 1階は酒場になっていて、2階が宿屋というパターン。
 また、夜は酒場だが、それ以外の時間帯は普通の飲食店という所もある。

 女将:「今、ツインの部屋しか空いてないんですけど、いいですか?」
 勇太:「いいですよ」
 女将:「お風呂ありの方がいいですか?」
 勇太:「それでお願いします」
 女将:「それでは前金で500ゴッズになります」
 勇太:「はい」
 女将:「今からお食事になさいますか?」
 勇太:「いえ、食事は取って来たので大丈夫です。それより女将さん、後でちょっとお話を伺いたいのですが?」
 女将:「はあ……構いませんけど。取りあえず、先に荷物を置いて来てはいかがでしょうか?」
 勇太:「そうします。マリア、行こう」
 マリア:「うん」

 勇太は鍵を受け取ると、2階への階段を昇って行った。
 1階は酒場もあることから喧噪に満ちているが、2階はそれが遠くから聞こえてくるといった感じ。
 部屋に入ると、そんな喧噪も殆ど聞こえて来なくなった。
 もっとも、窓を開けると、今度は外から繁華街の喧噪が聞こえてくるが。

 マリア:「私はこっちで寝るから、勇太はそっちで寝て」
 勇太:「分かった」

 一息ついてから、再びフロントに向かう。

 ジーナ:「ごゆっくりお過ごしください」
 勇太:「今度はフロントに入ったの?」
 ジーナ:「女将さんの話が終わるまでです」
 女将:「お2人さん、こっちへ」

 女将は勇太達を個室に招き入れた。
 おかげで喧噪な酒場から、逃れることができる。

 女将:「それで、話って何ですか?」
 勇太:「実はこの町に住む、クリスティーネ吉田さんって方を捜しているんですが……」
 女将:「ああ、あのマッサージ屋の。それがどうしたんですか?」
 勇太:「マッサージ屋さんなんですか!」
 女将:「ええ。値段は高いけど、腕は確かな人ですよ」
 勇太:「その人、魔界共和党の後援会の幹部なんですよね?」
 女将:「そうそう。この前も、推薦状ってのをもらいに行った人がいたそうなんですけど、体よく追い出されたそうですよ」
 勇太:「追い出された!?どうして!?」
 女将:「さあ……。あの人も好き嫌いが激しい人だから……。もちろん客商売だから、お客様にはちゃんとした態度ではあるんですけどね」

 気難しい人間なのだろうか。

 勇太:「実は僕達も、推薦状をもらいに来たんです」
 女将:「そうなの!?」
 勇太:「追い出されたりしないだろうか……」
 女将:「いきなり頼むのではなく、まずは御客として行って、機嫌を確かめてから頼んではどうかしら?」
 勇太:「あ、なるほど!その手があったか!」
 マリア:「でも、高い料金なんでしょう?」
 女将:「ピンキリね。でも、頼み事をするんだったら、料金の高いコースを頼んだ方がいいかもね」
 勇太:「やっぱり……」

 だが幸いなことに、サハギン退治の褒賞金で、それなりに所持金はある。
 この所持金の範囲内で、何とかするしかないだろう。

 勇太:「しょうがない。行ってみるか。そのマッサージ屋さんはどこに?」
 女将:「この店の北東。東門の近くにありますよ」
 勇太:「ありがとうございます」

 2人はクリスティーネ吉田のマッサージ店に向かうことにした。

 勇太:(まさか、性感マッサージとか、メンズエステ店とかじゃないだろうな?)
コメント (1)
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