報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「6番街の夜と朝」

2022-08-23 20:33:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月17日22:30.天候:晴 アルカディアシティ6番街 三星亭]

 三星亭に引き返した勇太とマリアを、女将が出迎えた。
 1階の酒場は、未だに賑わっている。

 女将:「お帰りなさい。首尾はどうでした?」
 勇太:「僕達の為に、口添えしておいてくれたそうですね。ありがとうございます」
 女将:「いえいえ。稲生さん達がお上手でしたのよ。いくら私が口添えしたところで、気に入らない人間とは一切関わらない人ですからね」

 そして女将、マリアを見る。

 女将:「実際に吉田さんのマッサージを受けたのは、マリアンナさんかしら?思いっ切りゴリゴリされたみたいですねぇ」
 マリア:「はあ……」
 女将:「今晩はぐっすり眠れることでしょう。今、バスルームが空いてますので、どうぞ入って、お休みになってくださいな」
 マリア:「そうせさてもらいます」

 2人は預けた鍵を受け取ると、再び階段を昇った。

 マリア:「ふわ……」

 マリアは大きな欠伸をする。

 勇太:「すっかり疲れが取れたみたいだね?」
 マリア:「ああ。お風呂入ってくるよ」
 勇太:「行ってらっしゃい」

 マリアはローブを脱いで、ベッドの上に置くと、タオルや着替えなどを持って部屋を出て行った。
 その間、勇太は夕の勤行をすることにした。
 因みにマリアは人形も連れて行ったことから、入浴の世話をさせるのだろう。

[同日23:00.天候:晴 三星亭(英名:Three Stars Inn)]

 勇太:(乃至法界平等利益……)

 ズドドドド!
 タタタタタ!

 勇太:「じたぐあん……って、何だ!?」

 部屋の外から銃声が聞こえて来た。

 横田:「あ~れ~……!」

 横田の声が聞こえて来たので、勇太が様子を見に行くと、横田が2階の階段から1階へと転がり落ちて行くのが見えた。
 そして、廊下にはAUGマシンガンやアサルトライフルを構えるミカエラとクラリスがいる。

 マリア:「覗き!覗きよ!ヘンタイ!!」

 マリアがバスタオルだけ巻いた状態で、バスルームから顔を出していた。

 女将:「またアンタかい!?今度こそ憲兵隊事務所に突き出そうかね!?」
 横田:「ご、誤解です!あそこは2階ですが」
 女将:「あァ!?」

 ここでいう憲兵とは、軍隊内部の規律違反を監視する警務憲兵のことではなく、国内の治安維持に当たる国家憲兵のことである。
 アルカディア王国には、Policeは存在せず、地方には郡保安隊がいて、保安官(Sheriff)がいる。
 王都アルカディアシティでは、国家憲兵が治安維持に当たっている。

 横田:「部屋を間違えてしまったです。クフフフフ……」
 女将:「アンタは宿泊してないだろ!」

 と、そこへ……。

 憲兵A:「アルカディアシティ東部憲兵隊の者だ!先ほどの銃声は何だ!?」
 憲兵B:「各自その場を動かず!事情を聞かせてもらおうか!?」
 憲兵C:「ヘタに隠し立てすると、連行するぞ!」
 女将:「おや、来たのかい。犯人はそいつさ。女性のお客様の入浴を覗いたのさ。これはれっきとした法律違反だね?」
 勇太:「魔界共和党の規則にも反してるぞ!」
 横田:「横田です。先般のマリアさんの入浴シーンにおける大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 勇太:「あ、ゲロった」
 女将:「犯行自供ってことね。連行よろしく」
 横田:「クフフフフ……。私を誰だと思っているのですか?魔界共和党総務理事の横田であります。ヒラ憲兵如きが、私を連行して良い理由がございますか?クフフフフ……」
 勇太:「……あ、もしもし?坂本所長ですか?夜分遅くに、恐れ入ります」

 勇太、受付カウンター横の公衆電話から、魔界共和党事務所に電話する。

 勇太:「実は今、6番街にいるんですが、また横田理事が宿屋で覗きをやってるんですよ。ちょうど今、憲兵隊がいるんですが、連行してもらっていいですか?」

 勇太は魔法の杖を受話器に当てた。
 するとあら不思議、まるでスピーカーホンのように大きな声が聞こえてくる。

 坂本:「魔界共和党選挙対策委員長、坂本成人の名において、横田理事の連行を認める」
 憲兵A:「ははっ!……というわけで、あなたを拘束します!」
 横田:「さ、坂本君!?キミ、顕正会退転者の癖に、よくも私を……!」
 坂本:「いや、顕正会関係無いやろ」
 憲兵B:「取りあえず、憲兵隊事務所まで」
 横田:「は、放せ~!放してくれ~!」
 憲兵C:「退けっ!道を開けろ!」
 憲兵D:「……すると、あなたがバスタブに浸かっている間、天井の換気口からずっと横田理事が覗いていた……と?」
 マリア:「はい、そうです」
 勇太:「坂本所長、すいませんねぇ。本当に、こんに夜更けに……」
 坂本:「構いませんよ。それより仏法はもう結構なので、折伏に来ないよう、雲羽監督に伝えてもらえますか?」
 勇太:「分かりました。伝えておきます」

 雲羽:「折伏してもこれだもんなぁ……」
 多摩:「俺も結構だからな?」
 雲羽:「今度の秋季彼岸会、一緒に行きます?」
 多摩:「行かんっちゅーに!」

[7月18日07:00.天候:晴 三星亭2F・客室]

 勇太の枕元に置いたスマホが、アラームを鳴らす。

 勇太:「うぅん……」

 勇太、手を伸ばしてアラームを止めた。

 勇太:「もう朝か……」

 隣のベッドではマリアが寝ていた。
 昨夜の騒動のせいで、とてもマリアと【イチャラブ】できる雰囲気ではなかった。
 元々マリアは眠かったため、結局そのまま寝た次第。

 勇太:「マリア、朝だよ」
 マリア:「うーん……あと5分……」
 勇太:「イリーナ先生と同じこと言わない」
 マリア:「……それもそうだね」
 勇太:「そこで起きるんかーい」
 マリア:「勇太、朝の勤行するでしょ?」
 勇太:「もちろん」
 マリア:「その間、私はもう一度風呂に入って来る。昨夜はアホ横田のせいで、ゆっくり入ってられなかったからね」
 勇太:「う、うん。分かった。その後で、朝食だね」
 マリア:「そうしよう」

 マリアはTシャツに短パンで寝ていた。
 起き上がるとマリアはバスルーム、勇太は洗面所に向かった。

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