報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「一旦、東京へ」

2022-08-02 19:49:34 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日11:30.天候:晴 アルカディアシティ南端村 魔界稲荷]

 勇太は再び人力車を駆らせて、稲荷神社に戻って来た。

 マリア:「勇太、首尾は?」
 勇太:「急いで戻ろう!鬼怒川だ!鬼怒川温泉に横田理事はいる!」
 マリア:「そこって確か……」
 勇太:「顕正会が昔、夏合宿を行なった場所だよ!」
 マリア:「Huh?」
 勇太:「ゴメン、間違えた!前、『ダンテ先生を囲む会』で慰安旅行に行った場所だよ!」
 マリア:「ああ、あそこか……」
 勇太:「行き違いになったらマズい!急いで行こう!」
 マリア:「分かった!」
 威吹:「ユタ、昼食は……」
 勇太:「ゴメン!急いで戻らないといけないんだ!また来るから!」

 マリアは紙に描いた魔法陣を広げた。

 マリア:「この上に乗って」
 勇太:「うん!」
 美狐:「いいなぁ……。アタシも行きたい」
 威吹:「美狐、ユタ達の邪魔をしてはイカンでござるよ」
 勇太:「お土産買って来るから!」
 美狐:「ほんと!?」

 横田理事から推薦状さえもらえば、あとはそんなに慌てることもないだろう。
 少なくとも、坂本所長の話ぶりではそう思うのだ。

 勇太:「僕達が戻って来るまで、この魔法陣は大事に保管していて欲しいんだ」
 威吹:「分かった。誰にも指1本触れさせん」
 マリア:「なるべくこのように広げた状態で。雨風が凌げる屋内に置いておいてもらいたい」
 威吹:「あい分かった。客間に保管しておこう。客間は基本、来客と家の者以外は立入禁止にしてある」
 勇太:「ありがとう」
 マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」

 マリアは呪文を唱えながら、魔法陣に聖水を振り掛けた。
 魔法陣から紫色の光が現れ、2人を包み込む。
 光が消えたと思うと、既に魔道士2人の姿は無かった。

 美狐:「凄い……!これが仙人の仙術?」
 威吹:「魔道士の魔法だそうだ。もっとも、我々には仙人の仙術との違いは分からんよ」
 坂吹:「似たようなものでしょうか?」
 威吹:「恐らくな。さて、それよりこの魔法陣を客間に運ぶぞ。良いか?絶対に折り曲げたり、汚損・破損させることのないように!そして、ユタ達が戻って来るまで、客間は立入厳禁とする!」

 勇太達が再び戻ってくるまで、客間はちょっとした聖域となってしまった。

[日本時間7月15日11:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテルB1F]

 勇太達は魔界から現実世界へと戻って来た。
 スマホが正常に作動するようになり、位置情報からしてワンスターホテルに戻って来たのだと分かる。

 勇太:「エレーナの部屋、電気点いてないね?」
 マリア:「まだ上にいるか、魔女宅の仕事でもしてるんだろう。とにかく、上に行こう」
 勇太:「うん」

 2人はエレベーターに向かった。
 上から下りる際は、専用の鍵で操作しないと下りられないようになっているが、下から上がる場合はそのような操作は必要無い。
 エレベーターが上から下りてきて、ドアが開く。
 地下階は薄暗い為、エレベーター内の明かりが眩しいくらいだ。
 それで、1階に上がる。

 エレーナ:「おお~!お帰りだぜ!もう済んだのか?」
 勇太:「まだだ!まだ途中!」

 エレベーターを降りると、ロビーを掃除しているエレーナの姿があった。

 エレーナ:「何か、大変そうだぜ?今、どんな感じだ?」
 勇太:「その前に、タクシーを呼んでくれないか!?」
 エレーナ:「タクシーか?分かったぜ」

 エレーナはフロントに向かうと、そこの電話でタクシーを呼んだ。

 マリア:「タクシーでどこまで行くの?」
 勇太:「東京駅だよ、東京駅」
 マリア:「東京駅?」
 エレーナ:「タクシー呼んだぜ。すぐ来るそうだぜ。東京無線でいいか?」
 勇太:「イリーナ先生のカードが使えるなら、どこでもいいよ」
 エレーナ:「今日は泊まるのか?部屋なら空いてるぜ」
 勇太:「ああ、うん……。また下の魔法陣使う為には、1泊しないといけないんでしょ?」
 エレーナ:「そういうことだぜ。まあ、しばらくシングル2部屋くらいは空いてるから、いつでもいいけどな。取りあえず、今夜分はキープしといてやるぜ」
 勇太:「ああ、うん。よろしく」
 マリア:「あと、ついでに聖水の補充もよろしく」
 エレーナ:「そこにあるぜ。セルフサービスだぜ」
 マリア:「んん?……げっ!」

 ロビーの片隅には冷水器がある。
 何故かボタンが2つあり、1つは無料のミネラルウォーターサーバー。
 もう1つは1回100円の聖水サーバーだった。

 エレーナ:「タクシー呼んでやった手数料込みで、気持ち良く払うんだぜ。さあさあ!」
 マリア:「この守銭奴魔女が!」
 勇太:「商魂逞しいねぇ……」

 尚、この聖水、魔法陣に振り掛けて使う他、自分の傷に振り掛けたり、飲んだりして体力を回復させる回復薬としても使える。
 また、悪霊や魔物など、人ならざるモノにぶっかけてやると、ダメージを与えることができる。
 人ならざるモノによってもそのダメージは様々だが、中には塩酸や硫酸を掛けられたのかと思うほどの大ダメージを与えることもできる。
 かと思うと、ほんの少し怯ませる程度しか影響が無いモノも。

 勇太:「しょうがない。払おう」
 エレーナ:「毎度ありー!」

 100円玉を入れると、ボタンが押せるようになる。
 取りあえずそれで、瓶一杯に聖水を溜めておいた。
 そうこうしているうちに、タクシーがホテルの前に到着する。

 

 エレーナ:「タクシー、来たみたいだぜ?」
 勇太:「ありがとう。それじゃ、また」

 2人はホテルの外に出た。
 ここに来た時と打って変わって、空はカンカン照りである。
 夏の太陽が照り付けていて熱い。

 勇太:「すいません、予約した稲生です」
 運転手:「稲生様ですね。どうぞ」

 2人はリアシートに乗り込んだ。
 さすがに車内はクーラーが効いて涼しい。

 勇太:「東京駅までお願いします」
 運転手:「東京駅ですね。東京駅のどこにしましょう?」
 勇太:「八重洲の方でお願いします」
 運転手:「八重洲の方ですね。分かりました」

 タクシーが走り出す。

 勇太:「この晴れ方、まだ“魔の者”には見つかってないってことかな?」
 マリア:「多分ね。私達が魔界に行って、まさか戻って来るとは思っていないだろうから、油断しているのかも……。それより、どうして東京駅?」
 勇太:「都内から電車で鬼怒川に向かうには、2つのルートがある。新宿駅から向かうのと、浅草駅から向かうのと……。どっちの電車に乗れるか分からないから、まずは東京駅に行って、新宿発の電車の空席状況を確認しようと思う。席が空いているようなら、そこで押さえて新宿駅に向かう。ダメなようなら、浅草駅に向かって、浅草から乗る」
 マリア:「そういう作戦か……」
 勇太:「新宿に行くなら中央線に乗れるし、浅草に行くなら都営バスがある。だから一旦、東京駅に向かった方がいいんだ」
 マリア:「分かった。勇太に任せる」

 タクシーは炎天下の中、東京駅に向かった。
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