[7月15日11:30.天候:晴 アルカディアシティ南端村 魔界稲荷]
勇太は再び人力車を駆らせて、稲荷神社に戻って来た。
マリア:「勇太、首尾は?」
勇太:「急いで戻ろう!鬼怒川だ!鬼怒川温泉に横田理事はいる!」
マリア:「そこって確か……」
勇太:「顕正会が昔、夏合宿を行なった場所だよ!」
マリア:「Huh?」
勇太:「ゴメン、間違えた!前、『ダンテ先生を囲む会』で慰安旅行に行った場所だよ!」
マリア:「ああ、あそこか……」
勇太:「行き違いになったらマズい!急いで行こう!」
マリア:「分かった!」
威吹:「ユタ、昼食は……」
勇太:「ゴメン!急いで戻らないといけないんだ!また来るから!」
マリアは紙に描いた魔法陣を広げた。
マリア:「この上に乗って」
勇太:「うん!」
美狐:「いいなぁ……。アタシも行きたい」
威吹:「美狐、ユタ達の邪魔をしてはイカンでござるよ」
勇太:「お土産買って来るから!」
美狐:「ほんと!?」
横田理事から推薦状さえもらえば、あとはそんなに慌てることもないだろう。
少なくとも、坂本所長の話ぶりではそう思うのだ。
勇太:「僕達が戻って来るまで、この魔法陣は大事に保管していて欲しいんだ」
威吹:「分かった。誰にも指1本触れさせん」
マリア:「なるべくこのように広げた状態で。雨風が凌げる屋内に置いておいてもらいたい」
威吹:「あい分かった。客間に保管しておこう。客間は基本、来客と家の者以外は立入禁止にしてある」
勇太:「ありがとう」
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」
マリアは呪文を唱えながら、魔法陣に聖水を振り掛けた。
魔法陣から紫色の光が現れ、2人を包み込む。
光が消えたと思うと、既に魔道士2人の姿は無かった。
美狐:「凄い……!これが仙人の仙術?」
威吹:「魔道士の魔法だそうだ。もっとも、我々には仙人の仙術との違いは分からんよ」
坂吹:「似たようなものでしょうか?」
威吹:「恐らくな。さて、それよりこの魔法陣を客間に運ぶぞ。良いか?絶対に折り曲げたり、汚損・破損させることのないように!そして、ユタ達が戻って来るまで、客間は立入厳禁とする!」
勇太達が再び戻ってくるまで、客間はちょっとした聖域となってしまった。
[日本時間7月15日11:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテルB1F]
勇太達は魔界から現実世界へと戻って来た。
スマホが正常に作動するようになり、位置情報からしてワンスターホテルに戻って来たのだと分かる。
勇太:「エレーナの部屋、電気点いてないね?」
マリア:「まだ上にいるか、魔女宅の仕事でもしてるんだろう。とにかく、上に行こう」
勇太:「うん」
2人はエレベーターに向かった。
上から下りる際は、専用の鍵で操作しないと下りられないようになっているが、下から上がる場合はそのような操作は必要無い。
エレベーターが上から下りてきて、ドアが開く。
地下階は薄暗い為、エレベーター内の明かりが眩しいくらいだ。
それで、1階に上がる。
エレーナ:「おお~!お帰りだぜ!もう済んだのか?」
勇太:「まだだ!まだ途中!」
エレベーターを降りると、ロビーを掃除しているエレーナの姿があった。
エレーナ:「何か、大変そうだぜ?今、どんな感じだ?」
勇太:「その前に、タクシーを呼んでくれないか!?」
エレーナ:「タクシーか?分かったぜ」
エレーナはフロントに向かうと、そこの電話でタクシーを呼んだ。
マリア:「タクシーでどこまで行くの?」
勇太:「東京駅だよ、東京駅」
マリア:「東京駅?」
エレーナ:「タクシー呼んだぜ。すぐ来るそうだぜ。東京無線でいいか?」
勇太:「イリーナ先生のカードが使えるなら、どこでもいいよ」
エレーナ:「今日は泊まるのか?部屋なら空いてるぜ」
勇太:「ああ、うん……。また下の魔法陣使う為には、1泊しないといけないんでしょ?」
エレーナ:「そういうことだぜ。まあ、しばらくシングル2部屋くらいは空いてるから、いつでもいいけどな。取りあえず、今夜分はキープしといてやるぜ」
勇太:「ああ、うん。よろしく」
マリア:「あと、ついでに聖水の補充もよろしく」
エレーナ:「そこにあるぜ。セルフサービスだぜ」
マリア:「んん?……げっ!」
ロビーの片隅には冷水器がある。
何故かボタンが2つあり、1つは無料のミネラルウォーターサーバー。
もう1つは1回100円の聖水サーバーだった。
エレーナ:「タクシー呼んでやった手数料込みで、気持ち良く払うんだぜ。さあさあ!」
マリア:「この守銭奴魔女が!」
勇太:「商魂逞しいねぇ……」
尚、この聖水、魔法陣に振り掛けて使う他、自分の傷に振り掛けたり、飲んだりして体力を回復させる回復薬としても使える。
また、悪霊や魔物など、人ならざるモノにぶっかけてやると、ダメージを与えることができる。
人ならざるモノによってもそのダメージは様々だが、中には塩酸や硫酸を掛けられたのかと思うほどの大ダメージを与えることもできる。
かと思うと、ほんの少し怯ませる程度しか影響が無いモノも。
勇太:「しょうがない。払おう」
エレーナ:「毎度ありー!」
100円玉を入れると、ボタンが押せるようになる。
取りあえずそれで、瓶一杯に聖水を溜めておいた。
そうこうしているうちに、タクシーがホテルの前に到着する。
エレーナ:「タクシー、来たみたいだぜ?」
勇太:「ありがとう。それじゃ、また」
2人はホテルの外に出た。
ここに来た時と打って変わって、空はカンカン照りである。
夏の太陽が照り付けていて熱い。
勇太:「すいません、予約した稲生です」
運転手:「稲生様ですね。どうぞ」
2人はリアシートに乗り込んだ。
さすがに車内はクーラーが効いて涼しい。
勇太:「東京駅までお願いします」
運転手:「東京駅ですね。東京駅のどこにしましょう?」
勇太:「八重洲の方でお願いします」
運転手:「八重洲の方ですね。分かりました」
タクシーが走り出す。
勇太:「この晴れ方、まだ“魔の者”には見つかってないってことかな?」
マリア:「多分ね。私達が魔界に行って、まさか戻って来るとは思っていないだろうから、油断しているのかも……。それより、どうして東京駅?」
勇太:「都内から電車で鬼怒川に向かうには、2つのルートがある。新宿駅から向かうのと、浅草駅から向かうのと……。どっちの電車に乗れるか分からないから、まずは東京駅に行って、新宿発の電車の空席状況を確認しようと思う。席が空いているようなら、そこで押さえて新宿駅に向かう。ダメなようなら、浅草駅に向かって、浅草から乗る」
マリア:「そういう作戦か……」
勇太:「新宿に行くなら中央線に乗れるし、浅草に行くなら都営バスがある。だから一旦、東京駅に向かった方がいいんだ」
マリア:「分かった。勇太に任せる」
タクシーは炎天下の中、東京駅に向かった。
勇太は再び人力車を駆らせて、稲荷神社に戻って来た。
マリア:「勇太、首尾は?」
勇太:「急いで戻ろう!鬼怒川だ!鬼怒川温泉に横田理事はいる!」
マリア:「そこって確か……」
勇太:「顕正会が昔、夏合宿を行なった場所だよ!」
マリア:「Huh?」
勇太:「ゴメン、間違えた!前、『ダンテ先生を囲む会』で慰安旅行に行った場所だよ!」
マリア:「ああ、あそこか……」
勇太:「行き違いになったらマズい!急いで行こう!」
マリア:「分かった!」
威吹:「ユタ、昼食は……」
勇太:「ゴメン!急いで戻らないといけないんだ!また来るから!」
マリアは紙に描いた魔法陣を広げた。
マリア:「この上に乗って」
勇太:「うん!」
美狐:「いいなぁ……。アタシも行きたい」
威吹:「美狐、ユタ達の邪魔をしてはイカンでござるよ」
勇太:「お土産買って来るから!」
美狐:「ほんと!?」
横田理事から推薦状さえもらえば、あとはそんなに慌てることもないだろう。
少なくとも、坂本所長の話ぶりではそう思うのだ。
勇太:「僕達が戻って来るまで、この魔法陣は大事に保管していて欲しいんだ」
威吹:「分かった。誰にも指1本触れさせん」
マリア:「なるべくこのように広げた状態で。雨風が凌げる屋内に置いておいてもらいたい」
威吹:「あい分かった。客間に保管しておこう。客間は基本、来客と家の者以外は立入禁止にしてある」
勇太:「ありがとう」
マリア:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ」
マリアは呪文を唱えながら、魔法陣に聖水を振り掛けた。
魔法陣から紫色の光が現れ、2人を包み込む。
光が消えたと思うと、既に魔道士2人の姿は無かった。
美狐:「凄い……!これが仙人の仙術?」
威吹:「魔道士の魔法だそうだ。もっとも、我々には仙人の仙術との違いは分からんよ」
坂吹:「似たようなものでしょうか?」
威吹:「恐らくな。さて、それよりこの魔法陣を客間に運ぶぞ。良いか?絶対に折り曲げたり、汚損・破損させることのないように!そして、ユタ達が戻って来るまで、客間は立入厳禁とする!」
勇太達が再び戻ってくるまで、客間はちょっとした聖域となってしまった。
[日本時間7月15日11:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテルB1F]
勇太達は魔界から現実世界へと戻って来た。
スマホが正常に作動するようになり、位置情報からしてワンスターホテルに戻って来たのだと分かる。
勇太:「エレーナの部屋、電気点いてないね?」
マリア:「まだ上にいるか、魔女宅の仕事でもしてるんだろう。とにかく、上に行こう」
勇太:「うん」
2人はエレベーターに向かった。
上から下りる際は、専用の鍵で操作しないと下りられないようになっているが、下から上がる場合はそのような操作は必要無い。
エレベーターが上から下りてきて、ドアが開く。
地下階は薄暗い為、エレベーター内の明かりが眩しいくらいだ。
それで、1階に上がる。
エレーナ:「おお~!お帰りだぜ!もう済んだのか?」
勇太:「まだだ!まだ途中!」
エレベーターを降りると、ロビーを掃除しているエレーナの姿があった。
エレーナ:「何か、大変そうだぜ?今、どんな感じだ?」
勇太:「その前に、タクシーを呼んでくれないか!?」
エレーナ:「タクシーか?分かったぜ」
エレーナはフロントに向かうと、そこの電話でタクシーを呼んだ。
マリア:「タクシーでどこまで行くの?」
勇太:「東京駅だよ、東京駅」
マリア:「東京駅?」
エレーナ:「タクシー呼んだぜ。すぐ来るそうだぜ。東京無線でいいか?」
勇太:「イリーナ先生のカードが使えるなら、どこでもいいよ」
エレーナ:「今日は泊まるのか?部屋なら空いてるぜ」
勇太:「ああ、うん……。また下の魔法陣使う為には、1泊しないといけないんでしょ?」
エレーナ:「そういうことだぜ。まあ、しばらくシングル2部屋くらいは空いてるから、いつでもいいけどな。取りあえず、今夜分はキープしといてやるぜ」
勇太:「ああ、うん。よろしく」
マリア:「あと、ついでに聖水の補充もよろしく」
エレーナ:「そこにあるぜ。セルフサービスだぜ」
マリア:「んん?……げっ!」
ロビーの片隅には冷水器がある。
何故かボタンが2つあり、1つは無料のミネラルウォーターサーバー。
もう1つは1回100円の聖水サーバーだった。
エレーナ:「タクシー呼んでやった手数料込みで、気持ち良く払うんだぜ。さあさあ!」
マリア:「この守銭奴魔女が!」
勇太:「商魂逞しいねぇ……」
尚、この聖水、魔法陣に振り掛けて使う他、自分の傷に振り掛けたり、飲んだりして体力を回復させる回復薬としても使える。
また、悪霊や魔物など、人ならざるモノにぶっかけてやると、ダメージを与えることができる。
人ならざるモノによってもそのダメージは様々だが、中には塩酸や硫酸を掛けられたのかと思うほどの大ダメージを与えることもできる。
かと思うと、ほんの少し怯ませる程度しか影響が無いモノも。
勇太:「しょうがない。払おう」
エレーナ:「毎度ありー!」
100円玉を入れると、ボタンが押せるようになる。
取りあえずそれで、瓶一杯に聖水を溜めておいた。
そうこうしているうちに、タクシーがホテルの前に到着する。
エレーナ:「タクシー、来たみたいだぜ?」
勇太:「ありがとう。それじゃ、また」
2人はホテルの外に出た。
ここに来た時と打って変わって、空はカンカン照りである。
夏の太陽が照り付けていて熱い。
勇太:「すいません、予約した稲生です」
運転手:「稲生様ですね。どうぞ」
2人はリアシートに乗り込んだ。
さすがに車内はクーラーが効いて涼しい。
勇太:「東京駅までお願いします」
運転手:「東京駅ですね。東京駅のどこにしましょう?」
勇太:「八重洲の方でお願いします」
運転手:「八重洲の方ですね。分かりました」
タクシーが走り出す。
勇太:「この晴れ方、まだ“魔の者”には見つかってないってことかな?」
マリア:「多分ね。私達が魔界に行って、まさか戻って来るとは思っていないだろうから、油断しているのかも……。それより、どうして東京駅?」
勇太:「都内から電車で鬼怒川に向かうには、2つのルートがある。新宿駅から向かうのと、浅草駅から向かうのと……。どっちの電車に乗れるか分からないから、まずは東京駅に行って、新宿発の電車の空席状況を確認しようと思う。席が空いているようなら、そこで押さえて新宿駅に向かう。ダメなようなら、浅草駅に向かって、浅草から乗る」
マリア:「そういう作戦か……」
勇太:「新宿に行くなら中央線に乗れるし、浅草に行くなら都営バスがある。だから一旦、東京駅に向かった方がいいんだ」
マリア:「分かった。勇太に任せる」
タクシーは炎天下の中、東京駅に向かった。