報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「緑の伏魔殿 ~グリーンの花園妄想記~」 2

2022-08-07 20:36:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日16:00.天候:曇 栃木県日光市藤原 緑之花園妄想苑]

 ケンショーブルー:「イェーイ♪ノッてるかーい♪あぁッ!?」
 男子部員一同:「おおーっ!」

 かつてはバンケットホールであったであろう大広間に行くと、そこではケンショーブルーこと、サトー様がソロリサイタルをやっていた。

 ケンショーブルー:「サトー様のソロリサイタル、始まるぜっ!あぁッ!?心して聴いて行けよなっ!じゃ、頼んます!」

 ジャイアンほどではないものの、とても聴ける歌ではなかった。

 勇太:「ヒドい歌……」
 マリア:「禍々しい邪気を感じる……」
 衛護隊員A:「うぅ……。さすがサトー様……功徳の迸る……歌だ……」

 バタッと倒れる衛護隊員。

 マリア:「な、仲間も倒すとは……」
 勇太:「大丈夫か!?早く、こっちへ!」
 衛護隊員A:「す、すまない……」

 衛護隊員を物陰に連れ込む勇太。

 マリア:「おい、助けるのか?私は回復魔法なんて掛けてやらないぞ」
 勇太:「違うよ」

 意識を失った衛護隊員から、勇太は『衛護隊員用カードキー』を奪い取った。

 勇太:「恐らくこれで、地下に行けるはずだ」

 館内で入手した情報によると、ケンショーグリーンこと、横田理事は地下のプールに行ってるという。
 侵入者の情報にあっては、何も分かっていない。

 マリア:「さすがは勇太」
 衛護隊員B:「おい!そこで何をしている!?」
 勇太:「しまった!見つかった!」
 マリア:「la ri ho!」
 衛護隊員B:「うわっ!」

 マリアに催眠魔法を掛けられ、それをモロに受けた衛護隊員はバタッと倒れ……。

 衛護隊員B:「グー……グー……」

 眠ってしまった。

 マリア:「今のうちに!」
 勇太:「さすがマリア!」

 2人はその場からすぐに移動した。

 衛護隊員C:「一旦、ロビーに集結!一旦、ロビーに集結!これよりっ、ケンショーレッド(J衛)より、侵入者共の対応について、御指示を賜る!」
 衛護隊員D:「衛護隊員はロビーに集合!衛護隊員はロビーに集合!」
 衛護隊員E:「特定の任務に当たっている者以外はロビーに集合だ!」

 幸い、衛護隊員達は1ヶ所に集まってくれるようだ。
 その方が行動がしやすい。
 だが……。

 勇太:「しまった!地下へ行くエレベーターは、ロビーにあるんだ!あれでは見つかってしまう!」
 マリア:「階段は無いのか?非常階段とか……」
 勇太:「非常階段か……」

 2人は非常階段を探すことにした。
 それは幸いにも見つかった。
 だが、ホテル時代には無かったであろう、セキュリティドアが増設されていた。
 幸い、先ほど衛護隊員から奪い取ったカードキーで、それを開けることができた。

 勇太:「よし、こっちだ!」

 地下への階段をバタバタ下りる。
 だが、全ての階段がプールに繋がっているわけではなかったようだ。

 衛護隊員F:「おらおら~っ!もっとタービンを回せーっ!もっと!もっとだーっ!サトー様は只今、バンケットホールでリサイタル中であられるぞ~っ!!」
 田代元隊長:「ひぃぃぃっ!」

 どうやらこちらは、発電機室であるらしい。
 驚くことに、この建物がホテルとして廃業し、廃墟になってから電力の供給は受けていないらしい。
 代わりにケンショーは、大型の自家発電機を導入した。
 そして、多くの脱落会員達を発電奴隷としてこき使っているようである。
 他にはそれを監視し、動きの悪い者には鞭を振るう衛護隊員が数名ほど。

 男子部員:「ち、ちくしょう……!何で俺がこんな目に……!?」
 衛護隊員G:「無駄口を叩くな!」

 ビシィッ!(衛護隊員の鞭が炸裂)

 男子部員:「ぎゃっ!」
 衛護隊員G:「キサマが3ヶ月連続、誓願を達成できなかったからだろうが~っ!先生に対する懺悔の気持ちで、心を込めてしっかりとタービンを回すのだ!分かったかーっ!」
 田代元隊長:「わ、私は雲羽が退転したからここに送られたんだ!私の責任じゃない!」
 衛護隊員H:「ああッ!?キサマ!隊員の退転は隊長の責任だ!何年ケンショーで御奉公させて頂いていると思ってるのだ~っ!」

 ビシッ!ビシィッ!

 田代元隊長:「うっ……くっ……。恨むぞ、雲羽君」

 勇太:「こ、ここは違うみたいだね」
 マリア:「魔界にすら、こう言う所は無いぞ」

 そそくさと場所を移動する魔道士2人だった。

 勇太:「あっ、あんな所にエレベーターが!」

 地下フロアを進んでいくと、業務用エレベーターを見つけた。
 これもまたカードキーが必要だったが、衛護隊員用のカードキーでボタンを押すことができた。

 勇太:「プールは地下2階だ!ここじゃないよ!」
 マリア:「ガセだったのか!くそっ!」

 そして、エレベーターがやってくる。
 ドアが開くと……。

 男A:「何だ、キミ達は!?」
 男B:「誰だ!?」
 勇太:「しまった!」

 作業服にヘルメットを被った関係者達と鉢合わせしてしまった。

 マリア:「la ri ho!」
 男A:「くわっ!?」
 男B:「くっ!」

 マリアの魔法で眠らされる男達。

 マリア:「勇太、早くエレベーターに!」
 勇太:「分かった!」

 2人は無人となったエレベーターに乗り込んだ。
 既に地下2階のボタンが押されており、さっきの男達もそこへ向かう所だったらしい。

 マリア:「さっきの奴らもケンショー?」
 勇太:「……か、もしくは出入りの業者さん達だったのかも……」

 勇太は最初、この建物にリネンサプライのトラックが入って行ったのを思い出した。

 マリア:「その割には、私達を見てビックリしてなかった?」
 勇太:「ま、まあ、確かに……」

 そして、エレベーターが地下2階に到着した。

 勇太:「ここからが正念場だ。気を引き締めて行こう」
 マリア:「もちろんだ」

 どうやらケンショーグリーンかどうかまでは不明だが、いずれにせよケンショーレンジャーの誰かがいることは間違い無かった。
 巡回する衛護隊員の数がやたら多かったからだ。

 マリア:「ここからは『姿隠し』の魔法を使う」
 勇太:「便利だね」

 一時的に透明人間になる魔法だ。
 肉体だけでなく、着ている服や持ち物も一緒に透明になってくれる便利な魔法だ。
 そして、プールに向かうまでの間、何となく侵入者が誰かも分かって来た。

 衛護隊員I:「おい、そっちに妙観講はいたか!?」
 衛護隊員J:「いや、いない!」
 衛護隊員I:「奴ら、どこに行った!?」
 衛護隊員J:「何でも、出入りの業者に化けて侵入したらしい。既にホールのサトー様は捕まったって話だ」
 衛護隊員I:「くそっ!妙観講員め!」
 勇太:(侵入者って妙観講員だったの!?)
 衛護隊員K:「かつてこのホテルで働いていた従業員が、妙観講の中にいるらしい。だから、構造を熟知しているとのことだ」
 勇太:(妙観講員が相手なら、ケンショーなんか一たまりも無いだろうけど……。横田理事がボコボコにされる前に、先に接触しておかないと!)

 その深刻さはマリアにも理解できたらしい。

 マリア:(勇太、急ぐぞ!)

 2人はプールに急いだ。
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“大魔道師の弟子” 「緑の伏魔殿 ~グリーンの花園妄想記~」

2022-08-07 15:53:52 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日15:30.天候:曇 栃木県日光市藤原 某廃ホテル]

 鬼怒川温泉も全盛期の頃と比べれば、だいぶ衰退してしまったそうだ。
 バブル崩壊後に廃業したホテルの他、リーマンショックや東日本大震災、コロナ禍でなかなか立ち直れずにいる。
 バブル崩壊は創価学会のせいだとしても、バブル崩壊後は顕正会が夏合宿でいくつかのホテルを貸し切りにするなどしたことはあったが、新興宗教も力及ばずといったところか。
 作者がかつて、それで利用したホテルも廃業し、今は別の運営会社が運営に当たっている……が、こちらも休業してしまったようだ。
 そんな廃ホテルがいくつか残っている寂れた所を、タクシーは走る。

 運転手:「この辺りですよ」
 勇太:「分かりました。じゃあ、この辺で降ります」
 運転手:「はい」

 タクシーは、とあるバス停の前で止まった。
 バスの本数は少ないようで、1台もバスを見ることはなかった。
 勇太はイリーナのカードを運転手に渡し、それでタクシー料金を払った。

 運転手:「ありがとうございました」

 タクシーを降りると、バス停に行って、時刻表を確認してみる。
 確かに鬼怒川温泉駅行きのバスが止まるようだが、本数は少なかった。

 勇太:「なるべく、遅くてもこの最終便に間に合うように頑張ろう」
 マリア:「そうだな」

 マリアはローブのフードを深く被った。

 マリア:「で、どこから入る?正面から堂々と入れるだろうか?」
 勇太:「いざとなったら、裏口から入るしかないか……」

 廃ホテルはケンショーレンジャーが秘密基地として使用しているだけあって、営業している感は全く無さそうだ。
 一応、正面入口側に回ってみる。
 どうせ敷地内は関係者以外立入禁止だろうが、外側の公道から見る分には問題無いだろう。

 勇太:("゚д゚)ポカーン
 マリア:(;゚Д゚)

 正面入口側に回ってみて、2人はしばらく立ち尽くした。
 廃ホテルが廃ホテルのままだなんて、とんでもない。
 ちゃんとリニューアルされていた。
 しかし、そのリニューアルというのが……明らかにラブホテルの外観だったのである。

 勇太:「これ、ラブホじゃん!」
 マリア:「……私、まだ1度も連れてってもらってない」
 勇太:「う、うん。今度行こうね……って、今はそれよりも!……住所間違えたかな?」

 しかし、何度住所を確認しても、ここで間違いなかった。
 ただ、ホテル名の看板を見てみると、“緑之花園妄想苑”と書かれており、しかもグリーンのネオンサインが輝いている。
 とはいえ、もしも本物のラブホだったら、入口に料金体系について書かれているはずである。
 それが一切無かった。
 それどころか……。

 マリア:「勇太、車が来る」
 勇太:「ん?」

 1台のトラックが敷地内に入ろうとした。
 ボディに書かれた会社名を見ると、リネンサプライの会社であるようだった。
 そのトラックが駐車場入口のゲートバーの前で止まる。
 守衛所から出て来たのは、警備服を着た警備員だった。
 しかも、その警備員というのは……。

 勇太:「衛護隊だ!」

 勇太とマリアは電柱の影に隠れて、その様子を窺っている。

 マリア:「エーゴタイ?」
 勇太:「顕正会直属の警備隊だよ」

 創価学会で言えば、創価班と牙城会を足して2で割った組織である。

 勇太:「ということは、ここはやっぱりケンショーレンジャーの秘密基地で間違いないんだ」
 マリア:「どうする?一応、正面入口はセキュリティがいるみたいだけど……」
 勇太:「裏から回ってみるかな……」

 ゲートバーが開いて、トラックが中に入っていった。

 勇太:「裏に回ってみよう」

 2人は正面から入るのを諦め、裏口に回ってみることにした。

 勇太:「裏にも衛護隊がいるか……」

 裏口はさすがに正面よりも間口が狭かったが、一応、車が出入りできるようになっており、電話ボックスよりは一回りか二回りほど大きいガードマンボックスと、ゲートバーが設置されていた。
 恐らくあのボックスの中にも、衛護隊員が配置されているのだろう。

 マリア:「私の魔法で眠らせるか?」
 勇太:「それで行くしか無いかね」

 ボックスの大きさからして、2人は入れないだろう。
 正面入口の守衛所に関しては、駅前の交番くらいの大きさはあったので、複数の衛護隊員がいるのだろうが……。

 勇太:「……ん?でも、本当に中にいるのかな?」
 マリア:「えっ?」

 ボックスには窓があるのだが、そこを見る限り、中に衛護隊員の姿は見受けられなかった。

 勇太:「もしかして、誰もいないのかな?」
 マリア:「ちょっと行ってみるか」

 2人はサササッと裏口に行ってみた。
 そして、外側からボックスの中を覗く。

 勇太:「ああっ!?」

 しかし、中に衛護隊員はいた。
 だが、倒れ込んでいて意識が無い。

 マリア:「……マズいな。どうやら、先客がいるらしい」
 勇太:「先客?誰だ?」
 マリア:「それは知らないけど……」

 と、その時、ボックスに設置されている無線機から声がした。

〔「至急、至急!こちら衛護本部!通用口、応答せよ!通用口、応答せよ!」〕

 勇太とマリアは冷や汗をかいた。

〔「どうした、通用口?応答せよ!」〕

 マリア:「ここの事じゃないのか?」

 このままスルーしてたら、怪しまれて仲間が駆け付けるだろう。
 また、ここで気絶している衛護隊員が目を覚まし、異常を報告するのもまた目に見えている。
 かといって、ヘタに出て声が違うとバレたら、アウトだ。

 勇太:「む、無線に出よう」
 マリア:「大丈夫か?」

 勇太は無線機のマイクを取った。

 勇太:「こ、こちら通用口。どうぞ」

〔「了解、こちら衛護本部。館内に侵入者あり。これより、全ての出入口を閉鎖する。誰も外に出すな。以上だ」〕

 勇太:「つ、通用口、了解!」

 勇太はマイクを置いた。

 勇太:「もう僕達のことがバレたんだろうか?」
 マリア:「違う。多分、先客だ。このセキュリティを倒した、別の先客だと思う」
 勇太:「そ、そうか……。ど、どうする?出直す?」
 マリア:「ここまで来て出直したりしたら、また横田理事がどこかに行ってしまう。逆に先客のせいで混乱している今がチャンスだと思う」
 勇太:「そ、そうか」

 勇太はボックスの中を探した。
 ついでに、衛護隊員の持ち物も。

 勇太:「……ちっ、これしか無いか」

 勇太はボックスの中にあったカードキーを取り出した。
 しかし、『Visitor』と書いてある。
 恐らく外部の業者が、ここで入館手続きをして渡される入館証だろう。
 館内におけるセキュリティ権限は最も弱いと思われるが、何も持たないで入るよりはマシだろう。

 マリア:「なに?」
 勇太:「取りあえず、これを持って中に入ろう」
 マリア:「IDカードか。確かに、あった方がまだ誤魔化せるかもしれない」
 勇太:「閉鎖される前に入ろう!」

 すると、通用口の入口のシャッターが起動する音がした。
 どうやら、本当に閉鎖するつもりのようである。

 勇太:「急げ!」

 2人はシャッターが閉まり切る前、何とか館内に侵入を果たせたのである。
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