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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夜中の移動」

2025-04-14 15:22:39 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月24日01時17分 天候:晴 秋田県北秋田郡鬼里村 民宿『太平屋』2階]

 私は夜中に目が覚めて、トイレに向かった。
 隣の202号室では、リサと美樹が寝ている。
 私が起きると、ドアを少し開けて私の事を監視することになっているのだが、さすがにそんなことは無かった。
 私自身も静かに行動しているし、リサ達も夜に運動して疲れているから眠りこけているのかもしれない。

 トイレで用を足していると、外で車の音がした。
 一体、何だろう?
 洗面所で手を洗い、急いで廊下に出る。

 リサ「先生……」

 すると、部屋からリサが出て来た。
 浴衣を着ているが、はだけてその下のスポブラやショーツが覗いている。

 リサ「わたしもトイレ……」
 愛原「行ってこい。トイレが済んだら、すぐに部屋に戻れよ」
 リサ「うん」

 リサがトイレに行き、私が部屋に戻ると、1階からインターホンの音がした。
 擦りガラスの玄関ドア越しに、何人かの者がそこにいるのが分かった。
 一体、誰だろう?
 そのうち、玄関ドアをドンドンと叩いてきた。
 何だか嫌な予感がした私は、浴衣から私服に着替えた。
 そして、持って来た銃器を用意する。
 それから部屋を出た。
 その時に見えたのは、階段を下りる美樹の姿だった。

 美樹「何だべ、こんな時間に!?」

 美樹が玄関の引き戸を開けた。

 鬼男A「ミキちゃん。ここに泊まってるお客人達に、用あって来ただ」
 鬼男B「すぐに起こしてけろ」
 鬼男C「『姫』様のお呼びだべ」
 鬼男D「気が変わんねェうちに早くや!」
 美樹「はあ!?なに考えでんの!?もう夜中だべしゃ!リサも愛原先生も寝てるべよ!」
 鬼男A「ンだから、早ぐ起ごして欲しいんだべしゃ!」
 紗季「玄関先で何やってんの!」
 豊「近所迷惑だべ!」
 鬼男A「女将さん、大変なことになったべしゃ!『姫』様が急に、ここのお客人達ば呼んで来いっで!」
 紗季「はあ!?なに考えてんの、あのコは!?」
 鬼男B「半鬼同然の俺達と違っで、鬼の血ば濃いがら、夜型なんだべしゃ!」
 紗季「そんなの理由にならないでしょ!」

 玄関先で押し問答している村の青年団員と、太平山分家。

 リサ「要するに、わたしが御指名なんだね?」

 トイレから戻って来たリサが、廊下で見ている様子を見ている私の所に来た。

 愛原「俺もだよ」
 リサ「御指名なら、行くっきゃないでしょ」
 愛原「そうか?そう思うか?」
 リサ「先生だって、行く気満々じゃん」

 リサは私が持っているショットガンを見て、ニッと笑った。

 リサ「わたしも金棒持って行く」
 愛原「マジかよ」
 リサ「ちょっと待ってて。わたしも着替えてくる」
 愛原「分かった」

 リサは部屋に戻り、私は玄関に向かった。

 紗季「さすがに非常識だべ!」
 鬼男A「それは俺らも分がってる!ンだけンど、『姫』様には逆らえねぇ!」
 鬼男B「なあ、美樹ちゃんなら分かるべ!?『姫』様に命令されたら、夜中でも動かねっけねぇ俺達の気持ち!」
 美樹「ま、まあ、そうだけンど……」
 愛原「御指名でしたら、行きますよ」

 私は玄関に集まっている鬼達に言った。

 美樹「えっ!?」
 鬼男A「おおっ!」
 愛原「リサも御指名ですね。リサは今、部屋で着替えてますんで、もう少しお待ちください」
 紗季「先生、危険ですよ?夜中の雪ちゃんは凶暴なんです。昼間はグータラしてますけど」
 美樹「今のユキ姉には、誰も逆らえねェ……」
 愛原「因みに、これ効きます?」

 私はショットガンを見せた。

 美樹「効かねっスよ!」
 紗季「本家は鬼の血が濃いので、銃くらいは効きません」
 愛原「私もそれまで、銃が効かない鬼と戦ったことはあります」
 紗季「ええっ!?」
 愛原「恐らく今回は、リサが主に戦うことになるでしょう」
 美樹「リサは強ェけど、ユキ姉と比べてどうだべ……?」

 しばらくして、私服に着替えたリサが階段から下りて来た。
 手には、金棒を持っている。
 黒いTシャツに、デニム生地のショートパンツである。

 愛原「準備できたか」
 紗季「愛原先生、無理なさらなくていいんですよ?本当に雪ちゃん、先生を殺して食べるかもしれません」
 愛原「リサがいますから大丈夫ですよ」
 リサ「むふー!」
 鬼男A「ンでは、車さ乗ってくだせェ」

 青年団達はミニバンで来ていた。
 それに乗り込むと、ミニバンはすぐに走り出した。

 リサ「この車、タバコ臭い!酒臭い!女臭い!女連れ込んでパコパコしてる!?」
 鬼男B「そ、それは……」
 鬼男C「ンまあ、俺達、鬼だし」
 鬼男D「よ、良かったら、東京のお嬢さんも俺達と……」
 リサ「殺すぞ!」

 リサは赤い瞳をギラリと光らせ、牙を剥き出して、爪を長く鋭く伸ばした。

 鬼男B「げっ!?まるで『姫』様だ!」
 鬼男C「こ、こりゃ、ひょっとして、『姫』様に匹敵するかも?」

[同日02時00分 天候:晴 同村中心部 太平山家・本家]

 車は立派な門構えの家に到着した。
 門の前には門番がいて、青年団の車を見ると、すぐに門扉を開けた。
 そして車は中に入って行った。
 まるで老舗旅館や料亭のような佇まいの大きな日本家屋がそこにはあった。
 太平屋も立派な建物だが、本家はそれ以上であった。
 そんな建物の、大きな玄関の前で車は止まる。

 鬼男A「つ、着きましただー!」

 前の席に乗っている青年団員達が先に降りる。
 出迎えた本家関係者の中には、妖艶な鬼女もいたが、その中に『夜叉姫』がいるのだろうか。

 女将「お待ちしておりました。愛原様。『姫』様がお待ちです。どうぞ、こちらへ」

 な、何だ!
 この人が『夜叉姫』様じゃなかったのか。

 リサ「呼びつけてるんだから、本人が出迎えればいいのにね」
 愛原「まあまあ。最初に会いに来たのは、俺達なんだから」

 素直に情報をくれればいいんだがな。
 母屋の中には入らず、私達は離れへと連れて行かれた。
 離れというか……何か小屋みたいな所。
 こんな猟師小屋みたいな所に、お姫様が?
 そう思って中に入ると、そこにはエレベーターがあった。
 今時のエレベーターではなく、木製のガラス窓付きの扉。
 外側の扉がそれで、内側は鉄格子の扉になっていた。
 日本橋高島屋にあるようなエレベーターだ。

 女将「それでは、行ってらっしゃいませ」

 エレベーターに乗り込んだのは、私とリサだけ。
 ドアが閉まると、ゆっくりと地下へと下りて行く。

 愛原「さて、地獄の入口となるか……」
 リサ「地獄にも鬼はいるんだよね?」
 愛原「そうだな」

 私は手持ちのショットガンに弾を込めた。

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