報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「マリアの予知夢」

2022-08-14 20:23:29 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月16日18:15.天候:曇 東京都墨田区森下 ワンスターホテル→レストラン“マジックスター”]

 エレベーターで1階に上がると、ロビーでマリアが待っていた。
 寝る時に着ていたホテル備え付けの寝巻でもなければ、外出用の制服ファッションでもない。
 白いTシャツに黒いスパッツという、ラフな格好だった。
 また、雨音が聞こえなくなったことから、雨も止んだらしい。

 勇太:「マリア、具合良くなったの!?」
 マリア:「おかげさまで、何とかね」
 エレーナ:「早いな。私の予想では、明日の朝に良くなるはずだったんだぜ?」
 マリア:「そうかい」
 エレーナ:「空気を読んで、もう一度寝込んで……」
 マリア:「アホか!……それより勇太、話がある。お腹も空いたから、何か食べながらでいいから……」
 勇太:「それじゃ、マジックスターに行こう」
 リリィ:「フヒヒ……。そ、それじゃ、私も……」
 エレーナ:「こら、リリィ。それこそ空気を読むんだぜ。オマエは下で弁当でも食ってろ」
 リリィ:「えー……」
 マリア:「私は別に構わない。どうやら、勇太の暇つぶしに付き合ってくれてたみたいだしな」
 エレーナ:「そうか。じゃあ、私も行くんだぜ。オマエの話、相当深刻なんだろ?」
 マリア:「……何で知ってるんだよ?」
 エレーナ:「マスター、ちょっと夕食取りに行ってきます」
 オーナー:「ああ、分かった」

 4人の魔道士は、隣のレストラン“マジックスター”に向かった。

 キャサリン:「おやおや?今日は4人なのね。いらっしゃい」
 エレーナ:「今日は賄いじゃなくて、客用の夕食頼んます」
 キャサリン:「それじゃ、テーブル席へどうぞ」

 4人はテーブル席に座った。

 勇太:「今日のオススメは、『3色ハーブのデミグラスソースハンバーグ』?」
 エレーナ:「挽き肉の中に、グリーンハーブとレッドハーブ、そんでブルーハーブをみじん切りにしたものを混ぜてるんだろうな。前にも食ったことあるぜ。なかなか美味かった」
 勇太:「そうか。それじゃ、今日はこれにしよう」
 エレーナ:「さすが稲生氏だぜ」

 夕食と飲み物を注文する。

 勇太:「それでマリア、深刻な話って何だい?」
 マリア:「寝てる間、夢を見たんだけど……」

 それはマリアと勇太の結婚式だったらしい。
 会場はどうやら、長野の屋敷。
 ダンテ一門の面々が祝福してくれる中、イリーナだけが椅子に座ったまま微動だにせず、しかしいつもの目を細めた微笑を浮かべているだけだったという。
 そして時間が経つにつれ、その姿は段々と薄くなっていき、最後には消えてしまうというもの。
 夢の中の人物達は勇太を含め、それに全く気づいていないのだという。

 マリア:「師匠とは相変わらず連絡が取れないし、この夢って、確か不吉な夢だったはず……。どうしたらいいのか……」
 エレーナ:「確かに夢の中の人物が消えるってのは、不吉だぜ」
 リリィ:「マリアンナ先輩、ご結婚おめでとうございます……フフフ……」
 エレーナ:「そこじゃねぇ!」
 勇太:「その言葉は、また今度に頂戴ね。……それにしても、マリアは気づいてたんだ?夢の中のマリアは?」
 マリア:「そうなんだ。だけど、声を掛けられないんだ。どういうわけだか」
 エレーナ:「予知夢かもしれないってわけか」
 マリア:「どう思う?」
 エレーナ:「考えられるのは、オマエ達が本当に結婚式を挙げる時点で、イリーナ先生はいらっしゃらない。だけど、意識体(幽霊)として参加しているという意味かな」
 マリア:「やっぱりそうなるのか……」

 しばらくして、料理が運ばれてくる。
 付け合わせに、グリーンハーブが1つハンバーグの上に置かれていた。

 キャサリン:「イリーナ先生がどうしたの?」

 料理を運んで来たキャサリンが聞いてくる。

 勇太:「なかなか連絡が取れなくて、心配なんですよ」
 キャサリン:「あら、それなら魔界にいらっしゃるかもよ?」
 勇太:「え!?」
 マリア:「どうして分かるんですか!?」
 キャサリン:「この前、材料を仕入れに魔界に行って、ポーリン先生に御挨拶する機会があったの」

 キャサリンはエレーナの先輩で、ポーリン組のOGである。
 今は独立して『一人親方』のような立場となっている。

 キャサリン:「『お変わりありませんか?』と挨拶したら、『イリーナが押し掛けてきて大変だった』と、仰ってたから」
 エレーナ:「イリーナ先生、うちの先生に何の用だったんだ?」
 マリア:「ポーリン先生は宮廷魔導師。安倍春明首相絡みで、動かれたんだろうか?」
 エレーナ:「宮廷魔導師は、陛下付きだから、あまり首相とは絡まないはずだけどな」
 勇太:「魔界にいるのかなぁ……?」
 マリア:「いずれにせよ、魔王城に行けば分かることだ。誰かが師匠を目撃しているだろう」
 勇太:「それもそうだね」

[同日19:00.天候:曇 ワンスターホテル]

 食事が終わってホテルに戻ると、オーナーが待っていた。

 オーナー:「おっ、エレーナ」
 エレーナ:「オーナー、どうかしたんですか?」
 オーナー:「いや、ちょっと3階に行って来る。代わりにフロントを見ててくれ」
 エレーナ:「は?」
 オーナー:「301号室のお客様から、『エレベーターの電話が鳴りっぱなしでうるさい』という苦情を頂いたんだ。ちょっと見て来るから」

 オーナーはそう言って、エレベーターに乗って行った。

 マリア:「3階って私達の泊まってるフロアだな」
 勇太:「そうだね」

 確かに、エレベーターの横には内線電話がある。
 しかし、どうしてそれが鳴るのだろう?

 勇太:「まあ、ホテルの設備のことはホテルの人に任せよう」
 マリア:「そうだな」

 少しして、フロントの電話が鳴る。

 エレーナ:「はい、フロントです。……ええ、大丈夫ですよ。感度良好です」

 どうやら、問題の電話からオーナーがフロントに掛けているらしい。

 エレーナ:「分かりました」

 エレーナは電話を切る。

 勇太:「オーナーから?」
 エレーナ:「そうだぜ。エレベーターを降りたら、電話が切れたらしいぜ」
 勇太:「んん?」
 エレーナ:「で、今度はこっちから掛けてみるぜ」

 エレーナは、問題の電話に掛けてみた。

 エレーナ:「エレーナです。聞こえますか?」
 イリーナ:「うん、良く聞こえるよ。アタシの声は聞こえるかい?」
 エレーナ:「良好です。それじゃ、異常なしですね。それじゃ」

 エレーナはナチュラルに電話を切った。

 エレーナ:「……うぇっ?!へ!?え!?」
 勇太:「え?なに、どうしたの!?」
 エレーナ:「今、イリーナ先生が出たぜ!?」
 勇太:「はあ!?」
 マリア:「なにっ!?」

 これは一体、どういうことなのか?
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“大魔道師の弟子” 「雨の日の待機」 3

2022-08-14 11:51:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月16日12:00.天候:不明 東京都江東区森下 ワンスターホテルB1Fエレーナの部屋]

 ホテルの地下1階は機械室などがあり、関係者以外立ち入り禁止である。
 そこの一角には魔界へ行ける魔法陣がある他、エレーナが寝泊まりしている部屋がある。
 元はボイラー技師室だった部屋を改築した部屋で、造りは机や本棚の他に2段ベッド、テレビとトイレが一体になったシャワールームがある。
 部屋の外には、洗濯機と乾燥機があった。
 勇太はリリィに連れ込まれるようにしてこの部屋に入り、ゲームに付き合わされた。
 ニンテンドースイッチで、マリオカートに興じる2人。

 リリィ:「フヒッ!?稲生氏、強い!」
 勇太:「マリオカートは昔、よくやってたからなぁ……。今のはこんな感じなんだね」
 リリィ:「稲生氏!もう1回!」
 勇太:「もうそろそろお昼だよ。一旦、切り上げよう」
 リリィ:「えー……」
 勇太:「お昼食べたら、また遊んであげるから」
 リリィ:「フヒッ!約束!」
 勇太:「ああ、約束ね」
 リリィ:「フヒッ!」

 リリィ、手持ちの魔法の杖をドアに向ける。
 但し、マリアやエレーナのような長い杖ではなく、魔法少女(魔女っ子)が持つような短いタイプである。
 すると、ドアの鍵がカチッと開いた。

 勇太:「鍵掛けてたのか!」
 リリィ:「フヒッ、稲生氏が逃げないように……」
 勇太:「この監禁魔女!」

 勇太はコツンとリリィに軽くゲンコツ。

 リリィ:「フヒッ!?ゴメンなさい……」
 勇太:「いいから、マジックスターに行くよ」
 リリィ:「フヒ?マジックスターは今、ランチ営業、休業中です……フフフ……」
 勇太:「そうなのか?じゃあ、外に食べに行くか。雨だけど」

 エレベーターに乗って、1階に上がる。

 勇太:「マリアはお昼、要らないかなぁ?」
 リリィ:「た、多分、マリアンナ先輩は寝てると思います……」
 勇太:「……だよな」
 リリィ:「も、もし何でしたら、水晶玉で見てみます……か?」
 勇太:「見れるの!?是非!」
 リリィ:「フフフ……ちょっとお待ちください……」

 リリィはローブの中から水晶玉を取り出すと、それをロビーのテーブルに置いた。

 リリィ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

 すると、水晶玉にマリアの部屋が映し出された。
 確かにマリアは眠っており、ミカエラとクラリスも人形形態に戻っていることが分かった。

 勇太:「なるほど。それならしょうがないね。お昼は僕達で食べに行こう」
 リリィ:「フフフ……御馳走さまです……」

 勇太はフロントから傘を借りると、それを差して外に出た。

 勇太:「さーて、何がいいかな?」
 リリィ:「フフ……稲生氏にお任せします……」
 勇太:「1番困る注文だな。まあ、いいか」

[同日12:15.天候:雨 同地区 小野珈琲]

 喫茶店でホットケーキとコーヒーを注文する勇太達。

 リリィ:「ここは初めてです……」
 勇太:「鈴木君とは、どういう店に行くの?」
 リリィ:「スズキ、よくピザとか取るんで、外には出ない……です」
 勇太:「まだ、引きこもりだった頃の名残が……」

 注文したホットケーキを食べる2人。

 リリィ:「フフフ……美味しい……です」
 勇太:「それは良かった」
 リリィ:「フフフ……マリアンナ先輩に怒られそう……」
 勇太:「大丈夫だよ。マリアは寝てるし、たまたまヒマになった僕達が、たまたま昼食一緒に食べてるだけの話だから」
 リリィ:「きっとアウトです。それ……」
 勇太:「そうかな?」

[同日13:00.天候:雨 同地区 ワンスターホテル]

 昼食を終えて、再びワンスターホテルに戻る。

 リリィ:「稲生氏!ジュース!飲み物買って行こう!」
 勇太:「はいはい」

 ホテル内の自販機コーナーで、ゲームしながら飲む飲み物について購入する。

 エレーナ:「おっ、リリィ。稲生氏から金を巻き上げる作戦か?」
 リリィ:「フヒッ!?ちちち、違います!」
 エレーナ:「ゲームもいいけど、私の服の洗濯がまだだぜ?」
 リリィ:「フヒッ?!す、すぐやります!」
 勇太:「上下関係厳しいなぁ?」
 エレーナ:「いや、これがフツーだぜ。イリーナ組がユルいだけだぜ?」
 勇太:「まあ、いいや。僕も手伝うから、早く地下に行こう」
 リリィ:「フヒヒ……はい」

 エレベーターで地下階に下りる。
 取りあえず飲み物は冷蔵庫に保管しておくとして……。

 リリィ:「これは先輩の下着~。下着はネットに入れて洗う~」

 青を基調としたブラショーツである。

 勇太:「もしかして、これが鈴木君がエレーナにプレゼントしたってヤツ?」
 リリィ:「フヒヒ……そうです。だから、大事な物……です」
 勇太:「そうだね。『こんなの新品のうちに転売するぜ!』なんて言ってたくせに、ちゃんと使ってるんだ」
 リリィ:「フフフ……先輩、恥ずかしがり屋さん」
 勇太:「ねぇ」

 と、その時、水晶玉が光った。

 横田:「クフフフフ……。リリィさん、違いますね。前にも言ったと思いますが、エレーナさんの下着は『ネットに入れて洗う』のではなく、『ネットに出して売る』のです。今なら、私が買い上げますよ。嗚呼……ウクライナ美女の下着……!」
 リリィ:「フヒッ!?」
 勇太:「横田理事!?無事だったのか!?」
 横田:「クフフフ……。爆発直前、ヘリで脱出したのです。それより、フランス美少女のリリィさん、あなたの使用済みパンティも今なら高価買取……!じゅ、14歳の女の子の……パンティ……ハァ、ハァ……」
 リリィ:「フヒーッ!!」

 リリィは水晶玉を叩いて通信を強制遮断した。

 勇太:「全く。横田理事の変態ぶりには呆れるねぇ……」
 リリィ:「全くです……」
 勇太:「早いとこ、終わらせよう。今度は桃鉄でもやるかい?」
 リリィ:「フヒッ!や、やります!」

[同日18:00.天候:不明 同ホテル]

 テーブルゲームで盛り上がると、時間が経つのはあっという間である。
 気が付くと夕方になっており、しかも内線電話のコールが鳴って気づいた。

 勇太:「な、何だ何だ?」
 リリィ:「フヒッ!?え、エレーナ先輩からのコール……」

 リリィは急いで机の上の電話を取った。

 リリィ:「はい、リリアンヌです……」
 エレーナ:「おう、リリィ。タイムアップだぜ。早いとこ稲生氏を1階に上げるんだぜ」
 リリィ:「な、何かあったんですか?」
 エレーナ:「マリアンナが起きて来やがった。稲生氏を呼べとうるせーから、早く寄越すんだぜ。分かったな?」
 リリィ:「フヒッ!わ、分かりました……!」

 リリィは魔法を2回唱えた。
 今度は普通の鍵と魔法の鍵、二重ロックにしていたらしい。
 気に入った人間を監禁する魔女もまた、存在するのである。
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