[7月16日18:15.天候:曇 東京都墨田区森下 ワンスターホテル→レストラン“マジックスター”]
エレベーターで1階に上がると、ロビーでマリアが待っていた。
寝る時に着ていたホテル備え付けの寝巻でもなければ、外出用の制服ファッションでもない。
白いTシャツに黒いスパッツという、ラフな格好だった。
また、雨音が聞こえなくなったことから、雨も止んだらしい。
勇太:「マリア、具合良くなったの!?」
マリア:「おかげさまで、何とかね」
エレーナ:「早いな。私の予想では、明日の朝に良くなるはずだったんだぜ?」
マリア:「そうかい」
エレーナ:「空気を読んで、もう一度寝込んで……」
マリア:「アホか!……それより勇太、話がある。お腹も空いたから、何か食べながらでいいから……」
勇太:「それじゃ、マジックスターに行こう」
リリィ:「フヒヒ……。そ、それじゃ、私も……」
エレーナ:「こら、リリィ。それこそ空気を読むんだぜ。オマエは下で弁当でも食ってろ」
リリィ:「えー……」
マリア:「私は別に構わない。どうやら、勇太の暇つぶしに付き合ってくれてたみたいだしな」
エレーナ:「そうか。じゃあ、私も行くんだぜ。オマエの話、相当深刻なんだろ?」
マリア:「……何で知ってるんだよ?」
エレーナ:「マスター、ちょっと夕食取りに行ってきます」
オーナー:「ああ、分かった」
4人の魔道士は、隣のレストラン“マジックスター”に向かった。
キャサリン:「おやおや?今日は4人なのね。いらっしゃい」
エレーナ:「今日は賄いじゃなくて、客用の夕食頼んます」
キャサリン:「それじゃ、テーブル席へどうぞ」
4人はテーブル席に座った。
勇太:「今日のオススメは、『3色ハーブのデミグラスソースハンバーグ』?」
エレーナ:「挽き肉の中に、グリーンハーブとレッドハーブ、そんでブルーハーブをみじん切りにしたものを混ぜてるんだろうな。前にも食ったことあるぜ。なかなか美味かった」
勇太:「そうか。それじゃ、今日はこれにしよう」
エレーナ:「さすが稲生氏だぜ」
夕食と飲み物を注文する。
勇太:「それでマリア、深刻な話って何だい?」
マリア:「寝てる間、夢を見たんだけど……」
それはマリアと勇太の結婚式だったらしい。
会場はどうやら、長野の屋敷。
ダンテ一門の面々が祝福してくれる中、イリーナだけが椅子に座ったまま微動だにせず、しかしいつもの目を細めた微笑を浮かべているだけだったという。
そして時間が経つにつれ、その姿は段々と薄くなっていき、最後には消えてしまうというもの。
夢の中の人物達は勇太を含め、それに全く気づいていないのだという。
マリア:「師匠とは相変わらず連絡が取れないし、この夢って、確か不吉な夢だったはず……。どうしたらいいのか……」
エレーナ:「確かに夢の中の人物が消えるってのは、不吉だぜ」
リリィ:「マリアンナ先輩、ご結婚おめでとうございます……フフフ……」
エレーナ:「そこじゃねぇ!」
勇太:「その言葉は、また今度に頂戴ね。……それにしても、マリアは気づいてたんだ?夢の中のマリアは?」
マリア:「そうなんだ。だけど、声を掛けられないんだ。どういうわけだか」
エレーナ:「予知夢かもしれないってわけか」
マリア:「どう思う?」
エレーナ:「考えられるのは、オマエ達が本当に結婚式を挙げる時点で、イリーナ先生はいらっしゃらない。だけど、意識体(幽霊)として参加しているという意味かな」
マリア:「やっぱりそうなるのか……」
しばらくして、料理が運ばれてくる。
付け合わせに、グリーンハーブが1つハンバーグの上に置かれていた。
キャサリン:「イリーナ先生がどうしたの?」
料理を運んで来たキャサリンが聞いてくる。
勇太:「なかなか連絡が取れなくて、心配なんですよ」
キャサリン:「あら、それなら魔界にいらっしゃるかもよ?」
勇太:「え!?」
マリア:「どうして分かるんですか!?」
キャサリン:「この前、材料を仕入れに魔界に行って、ポーリン先生に御挨拶する機会があったの」
キャサリンはエレーナの先輩で、ポーリン組のOGである。
今は独立して『一人親方』のような立場となっている。
キャサリン:「『お変わりありませんか?』と挨拶したら、『イリーナが押し掛けてきて大変だった』と、仰ってたから」
エレーナ:「イリーナ先生、うちの先生に何の用だったんだ?」
マリア:「ポーリン先生は宮廷魔導師。安倍春明首相絡みで、動かれたんだろうか?」
エレーナ:「宮廷魔導師は、陛下付きだから、あまり首相とは絡まないはずだけどな」
勇太:「魔界にいるのかなぁ……?」
マリア:「いずれにせよ、魔王城に行けば分かることだ。誰かが師匠を目撃しているだろう」
勇太:「それもそうだね」
[同日19:00.天候:曇 ワンスターホテル]
食事が終わってホテルに戻ると、オーナーが待っていた。
オーナー:「おっ、エレーナ」
エレーナ:「オーナー、どうかしたんですか?」
オーナー:「いや、ちょっと3階に行って来る。代わりにフロントを見ててくれ」
エレーナ:「は?」
オーナー:「301号室のお客様から、『エレベーターの電話が鳴りっぱなしでうるさい』という苦情を頂いたんだ。ちょっと見て来るから」
オーナーはそう言って、エレベーターに乗って行った。
マリア:「3階って私達の泊まってるフロアだな」
勇太:「そうだね」
確かに、エレベーターの横には内線電話がある。
しかし、どうしてそれが鳴るのだろう?
勇太:「まあ、ホテルの設備のことはホテルの人に任せよう」
マリア:「そうだな」
少しして、フロントの電話が鳴る。
エレーナ:「はい、フロントです。……ええ、大丈夫ですよ。感度良好です」
どうやら、問題の電話からオーナーがフロントに掛けているらしい。
エレーナ:「分かりました」
エレーナは電話を切る。
勇太:「オーナーから?」
エレーナ:「そうだぜ。エレベーターを降りたら、電話が切れたらしいぜ」
勇太:「んん?」
エレーナ:「で、今度はこっちから掛けてみるぜ」
エレーナは、問題の電話に掛けてみた。
エレーナ:「エレーナです。聞こえますか?」
イリーナ:「うん、良く聞こえるよ。アタシの声は聞こえるかい?」
エレーナ:「良好です。それじゃ、異常なしですね。それじゃ」
エレーナはナチュラルに電話を切った。
エレーナ:「……うぇっ?!へ!?え!?」
勇太:「え?なに、どうしたの!?」
エレーナ:「今、イリーナ先生が出たぜ!?」
勇太:「はあ!?」
マリア:「なにっ!?」
これは一体、どういうことなのか?
エレベーターで1階に上がると、ロビーでマリアが待っていた。
寝る時に着ていたホテル備え付けの寝巻でもなければ、外出用の制服ファッションでもない。
白いTシャツに黒いスパッツという、ラフな格好だった。
また、雨音が聞こえなくなったことから、雨も止んだらしい。
勇太:「マリア、具合良くなったの!?」
マリア:「おかげさまで、何とかね」
エレーナ:「早いな。私の予想では、明日の朝に良くなるはずだったんだぜ?」
マリア:「そうかい」
エレーナ:「空気を読んで、もう一度寝込んで……」
マリア:「アホか!……それより勇太、話がある。お腹も空いたから、何か食べながらでいいから……」
勇太:「それじゃ、マジックスターに行こう」
リリィ:「フヒヒ……。そ、それじゃ、私も……」
エレーナ:「こら、リリィ。それこそ空気を読むんだぜ。オマエは下で弁当でも食ってろ」
リリィ:「えー……」
マリア:「私は別に構わない。どうやら、勇太の暇つぶしに付き合ってくれてたみたいだしな」
エレーナ:「そうか。じゃあ、私も行くんだぜ。オマエの話、相当深刻なんだろ?」
マリア:「……何で知ってるんだよ?」
エレーナ:「マスター、ちょっと夕食取りに行ってきます」
オーナー:「ああ、分かった」
4人の魔道士は、隣のレストラン“マジックスター”に向かった。
キャサリン:「おやおや?今日は4人なのね。いらっしゃい」
エレーナ:「今日は賄いじゃなくて、客用の夕食頼んます」
キャサリン:「それじゃ、テーブル席へどうぞ」
4人はテーブル席に座った。
勇太:「今日のオススメは、『3色ハーブのデミグラスソースハンバーグ』?」
エレーナ:「挽き肉の中に、グリーンハーブとレッドハーブ、そんでブルーハーブをみじん切りにしたものを混ぜてるんだろうな。前にも食ったことあるぜ。なかなか美味かった」
勇太:「そうか。それじゃ、今日はこれにしよう」
エレーナ:「さすが稲生氏だぜ」
夕食と飲み物を注文する。
勇太:「それでマリア、深刻な話って何だい?」
マリア:「寝てる間、夢を見たんだけど……」
それはマリアと勇太の結婚式だったらしい。
会場はどうやら、長野の屋敷。
ダンテ一門の面々が祝福してくれる中、イリーナだけが椅子に座ったまま微動だにせず、しかしいつもの目を細めた微笑を浮かべているだけだったという。
そして時間が経つにつれ、その姿は段々と薄くなっていき、最後には消えてしまうというもの。
夢の中の人物達は勇太を含め、それに全く気づいていないのだという。
マリア:「師匠とは相変わらず連絡が取れないし、この夢って、確か不吉な夢だったはず……。どうしたらいいのか……」
エレーナ:「確かに夢の中の人物が消えるってのは、不吉だぜ」
リリィ:「マリアンナ先輩、ご結婚おめでとうございます……フフフ……」
エレーナ:「そこじゃねぇ!」
勇太:「その言葉は、また今度に頂戴ね。……それにしても、マリアは気づいてたんだ?夢の中のマリアは?」
マリア:「そうなんだ。だけど、声を掛けられないんだ。どういうわけだか」
エレーナ:「予知夢かもしれないってわけか」
マリア:「どう思う?」
エレーナ:「考えられるのは、オマエ達が本当に結婚式を挙げる時点で、イリーナ先生はいらっしゃらない。だけど、意識体(幽霊)として参加しているという意味かな」
マリア:「やっぱりそうなるのか……」
しばらくして、料理が運ばれてくる。
付け合わせに、グリーンハーブが1つハンバーグの上に置かれていた。
キャサリン:「イリーナ先生がどうしたの?」
料理を運んで来たキャサリンが聞いてくる。
勇太:「なかなか連絡が取れなくて、心配なんですよ」
キャサリン:「あら、それなら魔界にいらっしゃるかもよ?」
勇太:「え!?」
マリア:「どうして分かるんですか!?」
キャサリン:「この前、材料を仕入れに魔界に行って、ポーリン先生に御挨拶する機会があったの」
キャサリンはエレーナの先輩で、ポーリン組のOGである。
今は独立して『一人親方』のような立場となっている。
キャサリン:「『お変わりありませんか?』と挨拶したら、『イリーナが押し掛けてきて大変だった』と、仰ってたから」
エレーナ:「イリーナ先生、うちの先生に何の用だったんだ?」
マリア:「ポーリン先生は宮廷魔導師。安倍春明首相絡みで、動かれたんだろうか?」
エレーナ:「宮廷魔導師は、陛下付きだから、あまり首相とは絡まないはずだけどな」
勇太:「魔界にいるのかなぁ……?」
マリア:「いずれにせよ、魔王城に行けば分かることだ。誰かが師匠を目撃しているだろう」
勇太:「それもそうだね」
[同日19:00.天候:曇 ワンスターホテル]
食事が終わってホテルに戻ると、オーナーが待っていた。
オーナー:「おっ、エレーナ」
エレーナ:「オーナー、どうかしたんですか?」
オーナー:「いや、ちょっと3階に行って来る。代わりにフロントを見ててくれ」
エレーナ:「は?」
オーナー:「301号室のお客様から、『エレベーターの電話が鳴りっぱなしでうるさい』という苦情を頂いたんだ。ちょっと見て来るから」
オーナーはそう言って、エレベーターに乗って行った。
マリア:「3階って私達の泊まってるフロアだな」
勇太:「そうだね」
確かに、エレベーターの横には内線電話がある。
しかし、どうしてそれが鳴るのだろう?
勇太:「まあ、ホテルの設備のことはホテルの人に任せよう」
マリア:「そうだな」
少しして、フロントの電話が鳴る。
エレーナ:「はい、フロントです。……ええ、大丈夫ですよ。感度良好です」
どうやら、問題の電話からオーナーがフロントに掛けているらしい。
エレーナ:「分かりました」
エレーナは電話を切る。
勇太:「オーナーから?」
エレーナ:「そうだぜ。エレベーターを降りたら、電話が切れたらしいぜ」
勇太:「んん?」
エレーナ:「で、今度はこっちから掛けてみるぜ」
エレーナは、問題の電話に掛けてみた。
エレーナ:「エレーナです。聞こえますか?」
イリーナ:「うん、良く聞こえるよ。アタシの声は聞こえるかい?」
エレーナ:「良好です。それじゃ、異常なしですね。それじゃ」
エレーナはナチュラルに電話を切った。
エレーナ:「……うぇっ?!へ!?え!?」
勇太:「え?なに、どうしたの!?」
エレーナ:「今、イリーナ先生が出たぜ!?」
勇太:「はあ!?」
マリア:「なにっ!?」
これは一体、どういうことなのか?