[7月15日22:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
東武浅草駅からワンスターホテルに向かっている最中、雨が降って来た。
それはまだ弱い雨だったし、雷鳴も聞こえて来なかった。
ので、“魔の者”の警告なのか、それともただの自然現象なのかは分からない。
大原:「へぇ!鬼怒川のケンショー施設を潰して来たのか!さすがは稲生君だね!」
乗り込んだ個人タクシーの運転手は、奇しくも勇太と同じ日蓮正宗寺院の班長だった。
勇太:「僕達が潰したというより、ケンショーグレーが強引に潰したと言う方が正しいですよ」
大原:「影の薄いヤツほど、何をするか分からないからねぇ、気を付けないとね」
勇太:「はあ……」
そんなことを話しているうちに、ホテルの前に到着する。
大原:「ここでいいかな?」
勇太:「あ、はい。ありがとうございます。あの、カード使えますよね?」
大原:「もちろん!今日日、東京の個人タクシーも基本的にカードは使えると思っていてくれていい」
勇太:「カードでお願いします」
大原:「おお!プラチナカード!ゴールドカードは何回か見たが、プラチナは初めて見た。藤谷親子ですらゴールドなのに、いきなり出世したね!?」
勇太:「いえ、これは僕達の先生から借りたものです」
大原:「そうなのかい?」
勇太:「僕なんか、普通のSuicaビューカードやdカードがせいぜいですよ」
大原:「なるほどね。……はい、じゃあ暗証番号を入力して」
勇太:「はい」
大原:「じゃあ、これが控えと領収証ね。それじゃ、お寺で待ってるからね」
勇太:「はい。お世話さまでした」
勇太はマリアの手を取って、大原タクシーを降りた。
そして、その足でホテルのロビーに入る。
オーナー:「いらっしゃいませ」
勇太:「こんばんは。遅くなりました」
オーナー:「おお、稲生さん!これはお疲れさまです。何かトラブルでもありましたか?」
勇太:「そういうわけじゃありませんが、マリアの具合が良くなくて……」
オーナー:「ええっ!?」
マリアはソファに座り込んだ。
マリア:「……病気じゃない。薬を飲まなかったせいで、一気に『重く』なっただけだ……」
マリアは自分の股間を指さして言った。
勇太:「そ、そうだったのか!」
オーナー:「エレーナなら薬を持っているでしょう。ちょっと、エレーナを起こしてきます」
勇太:「寝てるんですか?」
オーナー:「今日は魔女宅の仕事が忙しかったとかで、夜、帰って来て寝てますよ。明日は、こっちの仕事に入ってもらうことになってますから」
マリア:「……いい。今夜は寝てる。明日の具合次第だ」
勇太:「と、とにかく部屋で休もう」
勇太は急いで宿泊者カードに記入した。
オーナー:「では、どうぞ。こちらの鍵をお持ちください」
ルームキーを2つ渡される。
3階の同じ部屋だった。
もちろん、あの後でちゃんと清掃はされているだろうが。
勇太:「マリア、立てる?」
マリア:「うん……」
マリアが立ち上がると、フラッと倒れそうになる。
勇太:「おっと!」
それを勇太が支えた。
どうやら、軽い貧血を起こしたらしい。
オーナー:「ちょっと待ってください。今、車椅子を……」
勇太:「いえ、それには及びません」
オーナー:「えっ?」
勇太はマリアを負ぶった。
勇太:「よし、マリア軽い!」
オーナー:「大丈夫ですか?部屋まで御一緒に……」
勇太:「いえ、大丈夫です」
マリアのバッグから、メイド人形が出て来る。
それが人形形態から人間形態へと変わり、屋敷で働くメイドの姿となった。
勇太:「彼女達に付いてもらいますから」
オーナー:「さすがですね」
勇太達はエレベーターに乗り、それで3階へ向かった。
そして3階の、まずはマリアの部屋に入る。
勇太:「いいかい?あとはよろしく頼むよ?」
ベッドに寝かせると、あとはメイド人形のミカエラとクラリスに託した。
クラリス:「御意」
ミカエラ:「お任せください」
勇太:「それじゃマリア、ゆっくり休んでね?」
マリア:「…………」
勇太はマリアの部屋を出ると、すぐ隣の自分の部屋に入った。
部屋の造りはマリアと同じ、セミダブルベッドのデラックスシングルルームである。
但し、ベッドの配置やバスルームの位置が左右対称になっている。
スタンダードシングルルームと違うのは、そちらはベッドが本当にシングルサイズで、ライティングデスクも大きくない(パソコンデスク程度のサイズ)。
勇太:「ちょっと、勤行でマリアの具合が良くなるように御祈念しよう」
[7月16日07:00.天候:雨 同ホテル3F 勇太の部屋]
マリアの事が心配であまり寝られなかった上、スマホのアラームが鳴る前に目が覚めてしまった勇太。
外はどんよりと曇っていて、雨が降っている。
但し、雷が鳴っているわけでもなく、強い風が吹いているわけでもなく、ただしとしとと降っている感じだ。
しかし、恐らくは1日中この天気なのだろうと思わせる降り方だ。
要は、何だか梅雨に戻ったかのような天気ということである。
朝の身支度を整えてから、朝の勤行を始める。
それが終わってから、マリアの部屋に内線電話を掛けた。
すると……。
ミカエラ:「もしもし?」
メイド人形のミカエラが出た。
勇太:「あっ、ミカエラ?僕だけど……」
勇太はマリアの具合について聞いた。
ミカエラ:「あいにくですが、マスターは頭痛、生理痛などが昨夜より酷い状態です」
勇太:「そうか……」
ミカエラ:「食欲も無いので、御朝食は取れそうにもありません」
勇太:「分かった。マリアのこと、よろしく」
勇太は電話を切った。
勇太:「これは本気で、エレーナから薬を融通してもらった方が良さそうだ」
勇太はルームキーを手にすると、部屋を出て1階に向かった。
[同日07:45.天候:雨 同ホテル1階・ロビー]
エレベーターを降りると、すぐ目の前はロビーになっている。
オーナー:「あ、稲生さん、おはようございます」
勇太:「おはようございます。あの、エレーナは……?」
オーナー:「まだ、寝てると思います。マリアンナさんの具合は……?」
勇太:「昨夜よりも悪いようです。こりゃ本気で、エレーナから薬を融通してもらう必要があると思います」
オーナー:「分かりました。リリィは起きてると思うので、もしもエレーナが起きたら、すぐにフロントに来るよう伝えてもらいます」
勇太:「リリィが来てるんですか!」
オーナー:「魔界の学校は、夏休みが長いみたいですね」
勇太:「あ、そうか。日本の学校とは違うんだ」
オーナー:「そのようです。まずは、朝食を召し上がって来ては如何でしょう?」
勇太:「そうですね。ちょっと行って来ます」
勇太はフロントで朝食券を買うと、その会場であるレストランに向かった。
勇太:(マリアの具合が悪いようでは、魔界には行けない。延泊することになるのかな……)
東武浅草駅からワンスターホテルに向かっている最中、雨が降って来た。
それはまだ弱い雨だったし、雷鳴も聞こえて来なかった。
ので、“魔の者”の警告なのか、それともただの自然現象なのかは分からない。
大原:「へぇ!鬼怒川のケンショー施設を潰して来たのか!さすがは稲生君だね!」
乗り込んだ個人タクシーの運転手は、奇しくも勇太と同じ日蓮正宗寺院の班長だった。
勇太:「僕達が潰したというより、ケンショーグレーが強引に潰したと言う方が正しいですよ」
大原:「影の薄いヤツほど、何をするか分からないからねぇ、気を付けないとね」
勇太:「はあ……」
そんなことを話しているうちに、ホテルの前に到着する。
大原:「ここでいいかな?」
勇太:「あ、はい。ありがとうございます。あの、カード使えますよね?」
大原:「もちろん!今日日、東京の個人タクシーも基本的にカードは使えると思っていてくれていい」
勇太:「カードでお願いします」
大原:「おお!プラチナカード!ゴールドカードは何回か見たが、プラチナは初めて見た。藤谷親子ですらゴールドなのに、いきなり出世したね!?」
勇太:「いえ、これは僕達の先生から借りたものです」
大原:「そうなのかい?」
勇太:「僕なんか、普通のSuicaビューカードやdカードがせいぜいですよ」
大原:「なるほどね。……はい、じゃあ暗証番号を入力して」
勇太:「はい」
大原:「じゃあ、これが控えと領収証ね。それじゃ、お寺で待ってるからね」
勇太:「はい。お世話さまでした」
勇太はマリアの手を取って、大原タクシーを降りた。
そして、その足でホテルのロビーに入る。
オーナー:「いらっしゃいませ」
勇太:「こんばんは。遅くなりました」
オーナー:「おお、稲生さん!これはお疲れさまです。何かトラブルでもありましたか?」
勇太:「そういうわけじゃありませんが、マリアの具合が良くなくて……」
オーナー:「ええっ!?」
マリアはソファに座り込んだ。
マリア:「……病気じゃない。薬を飲まなかったせいで、一気に『重く』なっただけだ……」
マリアは自分の股間を指さして言った。
勇太:「そ、そうだったのか!」
オーナー:「エレーナなら薬を持っているでしょう。ちょっと、エレーナを起こしてきます」
勇太:「寝てるんですか?」
オーナー:「今日は魔女宅の仕事が忙しかったとかで、夜、帰って来て寝てますよ。明日は、こっちの仕事に入ってもらうことになってますから」
マリア:「……いい。今夜は寝てる。明日の具合次第だ」
勇太:「と、とにかく部屋で休もう」
勇太は急いで宿泊者カードに記入した。
オーナー:「では、どうぞ。こちらの鍵をお持ちください」
ルームキーを2つ渡される。
3階の同じ部屋だった。
もちろん、あの後でちゃんと清掃はされているだろうが。
勇太:「マリア、立てる?」
マリア:「うん……」
マリアが立ち上がると、フラッと倒れそうになる。
勇太:「おっと!」
それを勇太が支えた。
どうやら、軽い貧血を起こしたらしい。
オーナー:「ちょっと待ってください。今、車椅子を……」
勇太:「いえ、それには及びません」
オーナー:「えっ?」
勇太はマリアを負ぶった。
勇太:「よし、マリア軽い!」
オーナー:「大丈夫ですか?部屋まで御一緒に……」
勇太:「いえ、大丈夫です」
マリアのバッグから、メイド人形が出て来る。
それが人形形態から人間形態へと変わり、屋敷で働くメイドの姿となった。
勇太:「彼女達に付いてもらいますから」
オーナー:「さすがですね」
勇太達はエレベーターに乗り、それで3階へ向かった。
そして3階の、まずはマリアの部屋に入る。
勇太:「いいかい?あとはよろしく頼むよ?」
ベッドに寝かせると、あとはメイド人形のミカエラとクラリスに託した。
クラリス:「御意」
ミカエラ:「お任せください」
勇太:「それじゃマリア、ゆっくり休んでね?」
マリア:「…………」
勇太はマリアの部屋を出ると、すぐ隣の自分の部屋に入った。
部屋の造りはマリアと同じ、セミダブルベッドのデラックスシングルルームである。
但し、ベッドの配置やバスルームの位置が左右対称になっている。
スタンダードシングルルームと違うのは、そちらはベッドが本当にシングルサイズで、ライティングデスクも大きくない(パソコンデスク程度のサイズ)。
勇太:「ちょっと、勤行でマリアの具合が良くなるように御祈念しよう」
[7月16日07:00.天候:雨 同ホテル3F 勇太の部屋]
マリアの事が心配であまり寝られなかった上、スマホのアラームが鳴る前に目が覚めてしまった勇太。
外はどんよりと曇っていて、雨が降っている。
但し、雷が鳴っているわけでもなく、強い風が吹いているわけでもなく、ただしとしとと降っている感じだ。
しかし、恐らくは1日中この天気なのだろうと思わせる降り方だ。
要は、何だか梅雨に戻ったかのような天気ということである。
朝の身支度を整えてから、朝の勤行を始める。
それが終わってから、マリアの部屋に内線電話を掛けた。
すると……。
ミカエラ:「もしもし?」
メイド人形のミカエラが出た。
勇太:「あっ、ミカエラ?僕だけど……」
勇太はマリアの具合について聞いた。
ミカエラ:「あいにくですが、マスターは頭痛、生理痛などが昨夜より酷い状態です」
勇太:「そうか……」
ミカエラ:「食欲も無いので、御朝食は取れそうにもありません」
勇太:「分かった。マリアのこと、よろしく」
勇太は電話を切った。
勇太:「これは本気で、エレーナから薬を融通してもらった方が良さそうだ」
勇太はルームキーを手にすると、部屋を出て1階に向かった。
[同日07:45.天候:雨 同ホテル1階・ロビー]
エレベーターを降りると、すぐ目の前はロビーになっている。
オーナー:「あ、稲生さん、おはようございます」
勇太:「おはようございます。あの、エレーナは……?」
オーナー:「まだ、寝てると思います。マリアンナさんの具合は……?」
勇太:「昨夜よりも悪いようです。こりゃ本気で、エレーナから薬を融通してもらう必要があると思います」
オーナー:「分かりました。リリィは起きてると思うので、もしもエレーナが起きたら、すぐにフロントに来るよう伝えてもらいます」
勇太:「リリィが来てるんですか!」
オーナー:「魔界の学校は、夏休みが長いみたいですね」
勇太:「あ、そうか。日本の学校とは違うんだ」
オーナー:「そのようです。まずは、朝食を召し上がって来ては如何でしょう?」
勇太:「そうですね。ちょっと行って来ます」
勇太はフロントで朝食券を買うと、その会場であるレストランに向かった。
勇太:(マリアの具合が悪いようでは、魔界には行けない。延泊することになるのかな……)