報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「特急きぬがわ5号 再び」

2022-08-04 20:10:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日13:00.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→湘南新宿ライン1085M列車6号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。6番線に停車中の列車は、13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。発車まで、しばらくお待ちください。次は、池袋に止まります〕

 コンコースで駅弁と飲み物を買い、5番線・6番線のホームに向かう。
 最大15両編成が停車できる有効長を持つホームであるが、特急“きぬがわ”号は6両編成しか無く、ホームの真ん中に停車している。

 勇太:「えーと……6号車だね」

 最後尾の車両である。
 車両はJRの車両253系で、かつては“成田エクスプレス”として運転されていた車両を改造したものである。
 他には長野県の長野電鉄にも、中古車として売られている。
 外観の塗装はもちろん、車内の内装に至るまでリニューアルされており、かつてのボックスシートや集団見合いシートは無く、普通の水色のモケットが掛かったリクライニングシートが並んでいる。
 全車両指定席なので、指定された座席に座る。
 座席そのものが交換されたせいか、1号車から5号車のそれは座席の位置と窓の位置が合わない。
 場合によっては窓が小さかったり、窓と窓の間の部分だったりと、景色が殆ど見えない席まであったりする。
 しかしながら、6号車にあっては元々グリーン車(元からリクライニングシート)だった為か、そのような当たり外れは無い。
 人形の入ったバッグは荷棚に置き、あとは駅弁などはテーブルの上に置く。
 車内は空いていて、確かにこれから温泉まで行くのだろうという乗客は見受けられたが、いわゆるインバウンド客は全く見かけなかった。

〔「お待たせ致しました。13時ちょうど発、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行き、まもなく発車致します」〕

 ホームからは明るい曲調の発車メロディが聞こえて来る。
 東京駅中央線ホームで流れていたのは曲名が無く、単なる記号だが、こちらは“See you again”という曲名が付いている。
 勇太がそれをマリアに説明すると、

 マリア:「確かに。この駅とは、お別れだ」

 という反応。
 これから食べる駅弁の方に、関心が高い様子。
 そして、電車は定刻通りに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は特急“きぬがわ”をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東武線直通、特急“きぬがわ”5号、鬼怒川温泉行きです。これより、鬼怒川温泉に向かいます。座席は全て指定席となっておりますので、お手持ちの特急券をお確かめください。【中略】次は、池袋に止まります〕

 車内チャイムはオリジナルのものだろうか。
 一瞬何となく、小田急ロマンスカーの車内チャイムかと思った。
 しかし、それにしても地味である。
 小田急ロマンスカーの30000系EXEでも6両編成はあるのだが、あれと比べても地味である。
 多分、東武スペーシアの車両ならそんな風には思わなかったのだろうが……。
 自動放送の声優は、新幹線や他の在来線特急と同じ人。
 しかし、何だか言い回しが違う。
 他の鉄道会社に乗り入れるからだろうか。
 勇太は特急券を取り出した。

 勇太:「これで行けば、鬼怒川温泉には15時4分に着く。あとは日帰りできるかどうかだけど……」

 温泉が目的ではないので、温泉に浸かって……という気持ちは一切無い2人。
 余裕があれば、足湯に入るくらいはするかもしれない。

 マリア:「最悪、現地で一泊か……。ただでさえ、師匠は連絡が取れないってのに……」
 勇太:「まだダメなんだ?」
 マリア:「ダメだね。後でもう1回やってみるけど、交信は無理かもしれない」
 勇太:「先生ともあろう御方が……」
 マリア:「師匠自身、“魔の者”に狙われて、姿を隠しているのかもしれない」
 勇太:「せめて先生のブラックカードが使われているかどうか確認できれば、先生の安否が分かるのにな……」

 一時期、都市伝説で『戦車まで買える』と噂されたブラックカードは、色々な意味で特別だ。
 戦車が買えるというのはさすがに誇張し過ぎではあったようだが、勇太達が預かっているプラチナカードですら、一般庶民には雲の上の存在だというのに、更にその上を行くブラックカードは、勇太達のような関係者ですら履歴を追うことはできないのである。

 マリア:「1つ言えることは、少なくとも経済制裁は受けてないってこと。もしそうなら、プラチナカードも使用不可になるはず」
 勇太:「確かに……」

 今日はワンスターホテルから東京駅までのタクシー代、東京駅から鬼怒川温泉までのキップ代に使用したが、普通に使えた。
 もしイリーナが経済制裁を受けるようなことがあれば、ここまでスムーズではなかっただろう。
 最悪、マリアのグリーンカードや勇太のSuicaビューカードまたはdカードを使うしか無くなる。
 それを未だに使用せずに済んでいるのは、偏にイリーナのプラチナカードが無事に使えるからである。
 因みに今、食べている駅弁も、カードで購入した。

 勇太:「すると、やっぱり身を隠す必要があって、そうしているだけなのかも……」
 マリア:「そうだといいんだけどな……」

[同日15:04.天候:曇 栃木県日光市鬼怒川温泉大原 東武鉄道鬼怒川温泉駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日は特急“きぬがわ”をご利用くださいまして、ありがとうございました。まもなく終点、鬼怒川温泉に到着致します。川治温泉、湯西川温泉、会津田島方面は、お乗り換えです。お忘れ物の無いよう、お気をつけください。どうぞ、楽しい旅をお続けください〕

 大宮駅まで湘南新宿ライン、大宮駅からJR宇都宮線を走行した列車は、途中の栗橋駅で、東武線に転進した。
 栗橋駅は東武鉄道の栗橋駅と併設されており、その橋渡しとなる渡り線が設けられている。
 乗務員達は、その渡り線の途中に停車して、交替するのである。
 この際、いずれかの駅に停車して客扱いを行うようなことはしない。
 あくまでも時刻表上では、通過扱いである。
 そして乗務員を交替すると、今度は東武鉄道の線路を進むわけである。
 自動放送は相変わらずJRのままだが、やはり言い回しが独特である。

〔「まもなく終点、鬼怒川温泉、鬼怒川温泉です。1番線に入ります。お出口は、右側です。鬼怒川温泉から先、普通列車の新藤原行きをご利用のお客様は、3番線から15時52分の発車です。……」〕

 鬼怒川温泉に着く頃には、空が曇って来た。
 今すぐ雨が降るといった感じではないのだが、これが自然現象によるものなのか、“魔の者”の恣意的な操作によるものなのかは分からない。

 マリア:「例のホテルは、駅から近いの?」
 勇太:「歩くと遠いみたいだね。だから、駅前からタクシーで行こう」
 マリア:「分かった」

 鬼怒川温泉に無事に着いた2人。
 果たして2人は、横田理事に会えるのだろうか。
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“大魔道師の弟子” 「JR中央線」

2022-08-04 16:03:42 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月15日11:45.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

 勇太達を乗せたタクシーは、東京駅八重洲中央口に到着した。
 料金はイリーナのカードを使った。
 相変わらず天気は晴れ。
 “魔の者”の監視が無くなったのか、それとも天候悪化だけではどうしようもないと判断したのかは分からない。
 とにかく、打って変わって熱い太陽が照り付けていた。

 勇太:「そういえば、魔界と少し時間がズレてるね?」
 マリア:「魔法陣を使えば時差は無くなるはずなんだけど、やっぱりまだ私は未熟みたい」
 勇太:「それでもこの程度で済んでいるんだから、素晴らしいと思うよ」
 マリア:「ふふっ……褒めても何も出ないよ?」
 勇太:(カワイイ……

 マリアの照れ笑いに萌えながら、勇太は八重洲中央口の指定席券売機の所に行った。
 この辺りはJR東日本とJR東海が入り混じっていて、JR東日本の指定席券売機がJR東海側にあったり、JR東海の『忘れ物取扱所』がJR東日本の改札口の横にあったりと複雑である(分割民営化するに当たり、東京駅をどこでぶった切るか迷いに迷ったのだろうと推測される場所)。

 勇太:「まずはJR新宿駅から出発する電車の座席が空いているかどうかだ。金曜日の午後だし、通常なら既に満席になっていてもおかしくないであろうこの状況で、今から空席確認をするのは無謀とも言える今日この頃なのですが……」
 マリア:「何が言いたい?」
 勇太:「バッチリ席空いてました。さすがコロナ」
 マリア:「確保するの?」
 勇太:「します!」

 勇太は早速、座席を隣同士で確保した。

 勇太:「マリア、先生のカードを」
 マリア:「ああ」

 運賃・料金はイリーナのカードで支払う。
 暗証番号を入力すると、キップが4枚出て来た。
 指定席特急券と乗車券である。
 この中には、東武鉄道側のものも含まれている。

 勇太:「これでよし。それじゃ、新宿に行こう」
 マリア:「分かった」

[同日12:02.天候:晴 JR東京駅・中央線ホーム→中央快速線1295T電車10号車内]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の電車は、12時2分発、快速、立川行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 ホームに行くと、既にオレンジ色の帯を巻いた10両編成の電車が発車を待っていた。
 魔界高速電鉄にも中央線はあるが、そちらは焦げ茶色の旧型電車で運転されている。

〔この電車は中央線、快速、立川行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、中野から先の各駅です〕
〔This is the Cyuo line rapid service train for Tachikawa.〕

 電車に乗り込んで、空いている座席に座る。

 マリア:「ランチはどうする?」
 勇太:「駅弁を買って食べよう」
 マリア:「やっぱり、そうなるか」

 マリアはニヤッと笑った。
 すると、ホームから賑やかな発車メロディが聞こえて来る。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 半自動ドアボタンの付いている車両。
 しかしそれは使わず、電車のドアは自動で閉まった。
 これは高尾駅以西の区間で使うので、中央快速線しか利用したことの無い利用客には意味不明だろう。
 もっとも、今はコロナ禍で高尾以西でも使用されていない。

〔この電車は中央線、快速、立川行きです。停車駅は神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野、中野から先の各駅です。次は神田、神田。お出口は、右側です。地下鉄銀座線は、お乗り換えです〕

 杉並3駅問題について。
 いや、何でもない。

 マリア:「横田理事、ちゃんといるかな?」
 勇太:「坂本所長の話では、1週間くらい休暇を取ってるらしいから、大丈夫だと思うよ」
 マリア:「1週間もあそこにいるのか。……いや、あのホテルは確かにそれくらい泊まってもいい所だった」
 勇太:「昔、顕正会の夏合宿の時に、会員の宿泊施設として、いくつかのホテルが貸切になったことがあるんだ」
 マリア:「景気いいな!」
 勇太:「そう。あの頃は、まだバブル崩壊後の大不況の時期だったらしいから、例え新興宗教であっても、ホテルを貸し切りにするなんて、超上客だったらしいよ」
 マリア:「Hum Hum...」
 勇太:「集会などで会員が出払おうとすると、ホテルのスタッフ一同で見送ってくれたり、逆に戻って来ると出迎えてくれたりしたんだそうだ」
 マリア:「VIPだな」
 勇太:「ところがその後、いくつかのホテルは潰れちゃってね。今でも廃墟になっている建物とかあるわけなんだけども、そのうちの1つをケンショーレンジャーが秘密基地として買い取ったとか……」
 マリア:「分かった。私の魔法でぶっ潰す!」
 勇太:「気持ちは分かるけど、潰すのは推薦状をもらってからにしてくれよ?」
 マリア:「分かってるって」

[同日12:15.天候:晴 東京都新宿区新宿 JR新宿駅]

〔まもなく新宿、新宿。お出口は、右側です。中央・総武線各駅停車、山手線、埼京線、湘南新宿ライン、京王線、小田急線、地下鉄丸ノ内線、都営地下鉄新宿線と都営地下鉄大江戸線はお乗り換えです。新宿の次は、中野に止まります〕

 ソッカー総本部創価学会の本部がある信濃町を軽やかに通過し、電車は山手線の対岸である新宿駅に接近した。
 魔界高速電鉄ではインフェルノタウンという駅に相当しており、やはり山手線に相当する環状線や地下鉄線との乗換駅になっている。
 但し、その駅は日本の新宿駅と比べれば、まだまだ規模は小さい。

〔しんじゅく~、新宿~。ご乗車、ありがとうございます。次は、中野に止まります〕

 東京駅から15分ほどで到着する。
 やはりこの区間の利用者は多い。
 ぞろぞろと降りて行く乗客に混じり、勇太達も電車を降りた。

 勇太:「特急は6番線から出るから、そっちに向かおう」
 マリア:「まだ時間ある?」
 勇太:「13時ちょうど発だからね、十分だよ」
 マリア:「だったらトイレに行きたい」
 勇太:「ああ、分かった。コンコースにあるから」

 というわけで2人は、エスカレーターで2階コンコースに向かった。
 そこはトイレもあるし、駅弁販売の売店もある。
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