報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「翌日に向けた動き」

2022-08-16 20:27:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月16日21:00.天候:曇 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 

 公衆電話から再び着信音が鳴る。

 勇太:「さすがにまた横田ってことは無いよね?」
 マリア:「多分」
 勇太:「よし。取ってみるよ」

 勇太は受話器を取った。

 勇太:「もしもし?」
 ???:「我々ハ“噂の委員会”ダ」
 勇太:「は!?」

 まるでボイスチェンジャーで、わざと太い男の声にしているかのような音声が聞こえて来た。

 ???:「オ前達ガ魔王城ニ行ク事は叶ワヌ」
 勇太:「な、何で僕達が魔王城に行くことを知ってるんだ!?」
 ???:「嘘ダト思ウナラ、魔王城ニ行ク前ニ、モウ1度魔界共和党ノ事務所ヲ訪ネルノダ」
 勇太:「ど、どういうことだ?!」
 ???:「健闘ヲ祈ル」
 勇太:「ちょっと待ってくれ!アンタは誰だ!?“噂の委員会”って何だ!?」
 エレーナ:「“噂の委員会”?」

 だが、電話は切れてしまった。

 勇太:「な、何なんだよ、もう!」

 勇太も電話を切った。

 マリア:「誰なんだ?」
 勇太:「知らない。名前は名乗らなかったし、ボイスチェンジャーの声っぽい声で、男か女かも分からないんだ。フザけてるよ」
 エレーナ:「“噂の委員会”……どこかで聞いたような……」

 エレーナは腕組みをして首を傾げた。

 エレーナ:「マリアンナは聞いたこと無ェか?“噂の委員会”って」
 マリア:「聞いたことないよ。何なんだ?」
 勇太:「エレーナは聞いたことがあって、マリアは聞いたことない?」
 マリア:「私は無い」
 エレーナ:「私はどこかで聞いたことあるんだよなぁ……。どこだったっけなぁ……?」
 マリア:「まさか、金を出せばすぐに思い出すパターンじゃないだろうな?」
 エレーナ:「そうかもしれん。が、今回はガチの天然だぜ。もっとも、出してくれたら案外早く思い出したりしてな?」
 マリア:「ちゃんと思い出したら、払ってやるよ」
 勇太:「さすがに、いつ思い出せるか分からない状態で、先払いはできないねぇ……」
 エレーナ:「そりゃそうだ。で、“噂の委員会”は何て言ってたんだぜ?」
 勇太:「『僕達が魔王城に行く事は叶わない。嘘だと思うなら、魔界共和党の事務所に行って聞け』だってさ」
 マリア:「何でそいつ、私達が魔王城に行こうとしているのを知ってるんだ!?」
 勇太:「気味が悪いよね」
 マリア:「いきなり魔界共和党が出て来るってことは、“噂の委員会”とは魔界共和党の関係だろうか?」
 勇太:「あ、そうか!政党組織だと、内部に『○○委員会』とかあるもんね!」
 エレーナ:「魔界共和党……だったかなぁ……?」

 エレーナは尚も首を傾げている。

 勇太:「魔界共和党でピンと来ないの?」
 エレーナ:「来ないんだぜ、これが」
 勇太:「そうなのか」
 マリア:「取りあえず向こうに行ったら、魔界共和党を訪ねてみよう。その時、“噂の委員会”について聞いてみればいい」
 勇太:「それもそうか」
 エレーナ:「で、結局、イリーナ先生からは電話が来なかったと」
 勇太:「そういうことになるね」
 マリア:「一体、何をしているんだか……」
 勇太:「ま、いいや。今夜のところは部屋に行って休もう」
 エレーナ:「コンドーム、買い足しといたか?」
 勇太:「ええっ!?」
 マリア:「エレーナ!……まだ、『多い』からムリ」
 勇太:「薬が効いてるんじゃないの?」
 マリア:「あの薬は、あくまで体調不良を抑える薬であって、経血とかを止める薬じゃないからな?」
 エレーナ:「それは残念だったな」
 勇太:「それじゃ、映画を観るのはどう?」
 マリア:「それならいいかも」
 エレーナ:「そっちに有料チャンネルのカードの自販機があるんだぜ?1枚1000円だぜ。毎度ありー」
 勇太:「はいはい」

 勇太は公衆電話や自動販売機が並んでいる所に置いてある、有料チャンネルのカード販売機に1000円札を突っ込んだ。

 マリア:「ずっと寝てたから、あまり眠くなくてね。悪いね、付き合わせて」
 勇太:「僕は全然構わないよ」

 勇太とマリアは、エレベーターに乗り込んで行った。

 エレーナ:「やれやれ、展開的には『結局ヤる』パターンだろうな、ありゃ」

 エレベーターが勇太達の泊まっている3階まで上がった後、今度は下に降りてくる。

 エレーナ:「ん?」

 誰か宿泊客でも下りてくるのかと思ったエレーナだったが、地下1階まで下りて行った。
 その後、またエレベーターが1階に上がって来る。
 そして、ドアが開いた。

 リリィ:「エレーナ先輩」
 エレーナ:「どうした、リリィ?部屋に戻って、さっさと寝ろと言っただろう?明日は稲生氏達より先に、魔界に行かなきゃなんないんだぜ?」
 リリィ:「学校の宿題。学校に提出する書類に、保護者のサインが必要なんです」

 この場合、エレーナが代行している。

 エレーナ:「何だよ、宿題って……」
 リリィ:「“噂の委員会”の調査票です」
 エレーナ:「あーっ!そうだった!やっと思い出したぜ!リリィの学校の宿題じゃん!」
 リリィ:「フヒッ!?な、何かマズかったですか?」
 エレーナ:「オマエ、もっと早く上がってこいよ!」
 リリィ:「フヒーッ!?ご、ごご、ゴメンナサイ……」
 エレーナ:「オマエの学校の委員会活動?ということは……」
 リリィ:「これは魔法学科の宿題です」
 エレーナ:「当たり前だ。一般教養の宿題なワケねーだろ。こういう宿題を出すのは、うちの一門から派遣されているマスタークラスで、この委員会に参加しているのは……」
 リリィ:「フヒヒ……」
 エレーナ:「もしかして、イリーナ先生も関係してねぇ?」
 リリィ:「はい。イリーナ先生は“噂の委員会 粛清部”です。あの……呪い針を討ち込むヤツの……」
 エレーナ:「あー、そうなんか。やっと思い出したぜ……」
 リリィ:「何かあったんですか?」
 エレーナ:「いや、何でもねぇ。今、あの2人はいいトコロだろうから、明日でもいいか」
 リリィ:「???」
 
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“大魔道師の弟子” 「電話に関する怪談話も多い」

2022-08-16 14:40:12 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月16日20:00.天候:曇 東京都江東区森下 ファミリーマート森下2丁目店]

 エレーナが言うには、電話の相手は普通にイリーナの声だったという。
 何気ない会話といった感じで、特段何か異常を感じるような喋り方ではなかったとのこと。

 マリア:「師匠が魔法で電話線をジャックしたんだ。また、掛かって来るかもしれない」

 と、しばらく待ってみたが、音沙汰は無かった。
 取りあえず、マリアが買い物したいというので、駅近くのコンビニに一緒に行くことにした。

 勇太:「ここで、リリィとランチをしたんだ」

 勇太は店に入る前、隣の喫茶店を指さした。

 マリア:「そうなんだ。後で、私も連れて行って」
 勇太:「ああ、分かった」

 店に入ると、勇太は威吹らに渡す土産を見繕った。
 菓子折りを持って行けば喜ぶだろう。
 威吹達には、魔法陣を守ってもらっているという借りもある。
 一方マリアはというと、生理用品とショーツ、コスメを選んでいた。

 勇太:「まとめて買おうか?」
 マリア:「いい。自分で買う」

 マリアは自分のクレカを出して購入していた。

 勇太:「それじゃ、戻ろうか」
 マリア:「うん。もしかしたら、師匠から電話が来ているかもしれない」
 勇太:「そうだね」

 雨は止んでいるが、湿気は凄い高い。
 店の外に出ると、湿気を多く含んだ風が2人に纏わりついて来た。
 この道は都道50号線、新大橋通り。
 片側2車線の幹線道路であり、都営バスの路線にもなっている。
 この道を菊川方向に歩き、途中の路地に入れば、すぐにワンスターホテルだ。

 勇太:「やたら、血が出たの?」
 マリア:「だから辛かったんだよ。起きた時、血がドバッと出て、下に漏れてないかヒヤッとした経験、勇太には分からんだろう?」
 勇太:「う、うん……、そうだね。パンツを買い足したのは?」
 マリア:「横田に取られたから」
 勇太:「魔界で会ったら、僕もボコすの手伝うよ」

 ベージュと黒があるが、マリアは黒を購入した。
 横田に取られたショーツも、その色だったからだろうか。

 勇太:「ん?」

 途中に公衆電話がある。
 電話ボックスではなく、店先に構えられた公衆電話である。
 何の変哲も無い公衆電話であり、普段は気にも留めないことである。
 ところが、今回は違った。
 まるで勇太達を待ち構えているかのように、呼び出し音が鳴ったのである。

 マリア:「こ、これは……!?」

 公衆電話から呼び出し音が鳴るのは珍しい。
 いや、絶対に無いというわけではない。
 実は公衆電話にもそれぞれ電話番号が振り分けられていて、そこに掛けることができるのである。
 しかし、あえて一般には使われない不吉な数字(例えば、03-○○○○-4444とか、045-××××-4949とか)がわざと振られるのだという。
 それが転じて、1990年代のオカルトブームにあっては、『不吉な電話番号の振られた公衆電話の呼び出し音が鳴った時、それに出ると呪い殺される』というヨタ話があったものだ。
 殆どが不吉な番号が振られているし、稀に呼び出し音が鳴るのは、NTT側でメンテナンスの一環である。
 その為、一介の通行人がもちろん出る必要は無いし、出たところで呪われるわけではない。
 因みに出たところで、無言電話のような感じとのことだ。
 それもまた不気味なので、上記のような噂が立ったのかもしれない。

 勇太:「NTTのメンテナンス……かな?」

 マリアは魔法の杖を取り出して、それを電話に向けた。
 電話は赤く光った。

 マリア:「魔法の反応がする!きっと師匠からだ!」
 勇太:「ほんと?!」

 マリアは電話に出た。

 マリア:「もしもし、師匠ですか!?」
 横田:「ハァ、ハァ……!そ、その声はマリアンナさん……!今日のパンティの色は、何色ですか……!?で、できればブラの色と形状もお願いします……ハァ、ハァ……!」(*´Д`)
 マリア:「

 マリアはガチャンと電話を切った。

 勇太:「うわ、びっくりした!」
 マリア:「さっさと行こう!」

 それまで勇太に手を引かれていたマリアだったが、今度は逆に勇太の手を引っ張った。

 勇太:「え、なに!?どうしたの!?一体誰から!?」
 マリア:「あのヘンタイ理事!下着の色、聞かれた!!」
 勇太:「電話ジャックの魔法使えるの、あの人?!」
 マリア:「ったく、無駄な能力ばっかり使いやがって!」
 勇太:「あれもケンショーの『魔の通力』……」
 マリア:「違うでしょ!」
 勇太:「そうかな?それにしても横田のヤツ、変態行為もいい加減にして欲しいよね」
 マリア:「全くだ!」
 勇太:「電話ジャックの魔法を使えるくらいなんだから、マリアのパンツの色が黒だってことくらい、どうせ分かるだろうに……」
 マリア:「あえて女に聞いて、その反応を楽しむ変態なんだろ!?」
 勇太:「そうだ!きっとそうだよ!」
 マリア:「……ん?」

 その時、速足で歩いていたマリアがピタッと止まった。

 勇太:「なに?」
 マリア:「勇太、どうして私の下着の色、知ってるの?」
 勇太:「え、だってさっき、黒いパンツ買ってたじゃない?で、横田に取られたパンツも黒かったし、だから、そうじゃないのかなーって……」
 マリア:「んん?」

 マリアはジト目で勇太を見据えた。

 勇太:(い、言えない!『さっき風でスカート捲くれた時に見えた』って……言えない)
 マリア:「怪しい……」
 勇太:「そ、それより、早く戻ろう!今度は先生から電話来てるかもしれないし!」

[同日20:30.天候:曇 同地区 ワンスターホテル]

 というわけで、ワンスターホテルに戻る。

 マリア:「ほら、オマエの分」

 マリアは購入した生理用品や、化粧水やらの入った袋をエレーナに渡した。
 ついでに頼まれていたのだ。

 エレーナ:「サンキューだぜ。金は後でスイス銀行に振り込んでおくんだぜ」
 勇太:「ゴルゴ13か!」
 マリア:「今すぐ現金で寄越せ」
 勇太:「それで、イリーナ先生から電話はあった?」
 エレーナ:「いや、まだだぜ。横田理事から、そっちの公衆電話に着信があったくらいだぜ」
 勇太:「下着の色を聞かれたんだね?」
 エレーナ:「『有料でなら教えてやる。因みに前払いだぜ』って言ったら、『分かりました。お支払い致します。但し、ついでにその下着もください』なんて言ってきやがった」
 マリア:「あのヘンタイ野郎……!」
 勇太:「ダダでは払わないってことか。でも、エレーナの方が上手だね。そういう返し方もあるか」
 エレーナ:「エッヘンだぜ」<(`^´)>
 マリア:「カネに汚いだけだよ」
 エレーナ:「あ、因みに横田理事には吹っ掛けてやるところだが、稲生氏には格安で教えてやってもいいぜ?」
 マリア:「おい!」
 勇太:「ハハ……遠慮しておくよ。ここでノッたら、マリアに殺されてしまう」

 そんなことを話していると、また公衆電話の着信音が鳴った。
 因みにロビーの公衆電話は1機だけ。
 しかも、町中にある緑色の物ではなく、白い電話機だった。

 

 これはかつて個人商店やクリニックなどに設置されていた、ピンク色の公衆電話の最新版である。

 勇太:「また鳴ってる!?」
 マリア:「……私が出よう」

 マリアは無表情で電話に出た。

 マリア:「Hello?」
 横田:「ハァ、ハァ……私の分析によりますれば、マリアンナさんの下着の色は黒とお見受けしますが、是非ともその下着の形状をお聞かせ願いたいのです。ハァ、ハァ……」
 マリア:「…………」

 マリアは無表情かつ無言で、受話器を勇太に渡した。

 勇太:「僕のパンツの色と形状は、黒のボクサーだよ」
 横田:「お、男の下着には興味がありませんっ!し、失礼します!!」

 ガチャンと電話を切られる。

 勇太:「なるほど。今度は僕が替わればいいんだ」
 エレーナ:「さすがの横田理事も、男には興味無ェってか!」

 エレーナは大笑い。

 勇太:「バカウケだね」

 勇太はそんなエレーナに苦笑しながら、自分も電話を切った。
 と、その直後!

 勇太:「うわっ!?」

 また、着信音が鳴った。
 今度は誰からだろうか?
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