報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“戦う社長の物語” 「劇団ロイド休業」

2017-10-23 10:12:45 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月14日17:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー会議室]

 敷島孝夫:「……結局、舞台は大失敗。セットも大崩壊で、修理が完了するまでは公演中止と……。物凄い損害だ」

 バンッ!と机を叩くシンディ。

 シンディ:「ミク!どうするの、この責任!?」
 初音ミク:「……すみませんでした……」
 シンディ:「『すみません』で済めば、ケーサツは要らないってことよ!!」

 シンディ、ミクを強く責める。

 村上:「まあ、待ちなさい待ちなさい。舞台は初演中の初演なのじゃろう?撮影のやり直しが利く映画やドラマじゃあるまいし、そういうNGは却って付き物なんではないかな?」
 平賀:「そうだよ。歌舞伎や宝塚などでは、むしろそれを期待してやってくる観客もいるって話だぞ?」
 シンディ:「付き物ですって……?あれだけの失敗、付き物どころではありませんわ!正にロボットテロ並みの崩壊ですわよ!」
 エミリー:「シンディ、落ち着け。こう言っては何だが、私やシンディならともかく、ミクがぶつかったくらいで倒壊する柱というのも問題だったと思うぞ」
 敷島:「ああ、そうそう。それなんだけど、人間の役者に合わせたセットだったんだ。柱の強度や固定具合も、他の人間の役者がやっているのを想定したものだったんだ。いくら戦闘力は持たないボーカロイドとはいえ、頑丈さは人間よりかなり上だから、それがぶつかった時の強度は想定していなかったらしい。後で、大道具係の責任者が謝りに来ていたよ」
 平賀:「確かに、あれがもし人間の役者であったら、命に関わる事故でしたもんね」
 シンディ:「社長も社長ですわ!素直に私達を主演にして下さっていれば、あんなことは無かったというのに!ミュージカルでも主演を張れなかった(※)ミクに主演をやらせるなんて無茶ぶりもいい所ですわ!!」

(※悪ノP先生作“七つの大罪シリーズ”においては“眠らせ姫からの贈り物”で主役を張っていたが、当作ではまだそのミュージカルは行われていないという設定。理由は、歌を歌わないミクの演技力に難がある為)

 エミリー:「社長、そこだけはシンディの言う通りだと思います。確かに私達に演劇は用途外かもしれませんが、敷島俊介社長の仰る『あらゆる可能性にチャレンジする』というスタンスであるならば、それで良かったのではないでしょうか」
 敷島:「……どこの会社に、秘書に演劇やらせる所があるよ?」
 平賀:「芸能事務所の社長らしくない発言ですよ、敷島さん?芸能界では“野猿”みたいに裏方さん達がデビューした例もありますし、本来テレビに出ることのないマネージャーがテレビ出演していたり(ホリプロの南田祐介氏など)、色々とやってるじゃないですか」
 敷島:「うーん……」

 何故か渋い顔をする敷島だった。

 平賀:(自分もあまり人のことは言えないけど、敷島さんも保守的になったか?独身の時と、まだボカロが売れない時はガンガンやっていたものだが……。会社が安定期に入って、あまり冒険したくなくなったと見える)
 シンディ:「ミク!あのセットを壊したのはあんたよ。だから責任取って、1人で直して来なさい!」
 村上:「おいおいおい!そりゃ無茶じゃよ。業者を呼んで修理させるほどのレベルじゃよ?」
 シンディ:「博士は黙ってて!!」
 村上:「ひいっ!はいっ!……け、血圧が……」
 ロイ:「博士!お薬を……!」
 鏡音レン:「血管圧力、上昇しています!」
 鏡音リン:「了解!降下剤、投入!」
 レン:「降下剤、投入!」
 エミリー:「遊ぶな」
 敷島:「今度はSFものでもやるか?」
 平賀:「既にこの世界観がSFですがね」
 敷島:「え?何ですか?」
 平賀:「何でも無いです」
 ミク:「あの……皆さん。本当に、申し訳ありませんでした。わたし……次こそは絶対に失敗しませんから……」
 巡音ルカ:「構わないわ。別に、あなたがワザと失敗しただなんて誰も思ってないから」
 MEIKO:「そうよ。それより、あのNGで右足を損傷したでしょ?ちゃんと博士に修理してもらいなさい」
 平賀:「そうだ。まだ応急処置しかしていない。修理するから、後で都心大学まで来い」
 ミク:「はい……」
 リン:「おやおや〜?MEIKOりんも、みくみくに対してかなりブチギレてませんでしたかなー?」
 MEIKO:「私よりもっと怖いお姉さんがいつまでもブチキレてるから、いい加減萎えたわよ」
 シンディ:「あ?何だって?それは誰のことだ、ああっ!?」
 MEIKO:「エミリー。あなたのことだって、怖い妹が言ってるわよ?」
 エミリー:「ほお?」
 シンディ:「違うって言ってるでしょ!だいたい、MEIKOだって後半棒読みだったじゃない!」
 MEIKO:「どこが棒読みよ!義姉なんて目立たない役なんだから、むしろあれくらいでいいのよ!」
 シンディ:「ドラマと演劇は違うって、演出家さんも言ってたでしょ!」
 平賀:「ああっ、もう!お前らケンカやめろ!」
 村上:「ま、とにかく初音ミクや。そんなに気を落とさんことじゃ。今日のところは、平賀君に足の修理をしてもらえ」
 ミク:「はい……」

[同日18:00.天候:晴 東京都23区内某所 東京都心大学]

 タクシーで大学へ向かった4人。
 すなわち、敷島、平賀、ミク、エミリーである。

 ミク:「せっかくの主役だったのに……。どうしてわたしったら、あんなにドジなんだろう……」
 平賀:「足の調子が悪いみたいだな。恐らく、階段落ちの際に小さな損傷があって、それで起きた事故だと思う」

 平賀はミクの足を修理しながら言った。

 敷島:「階段落ちか……。ああいうアクティブなシーンについては、調整とかそういう話じゃないですからね」
 平賀:「ええ。そのロイドの身体能力に賭けるしか無いわけです」
 敷島:「参ったなぁ……。何せ、シンデレラがガラスの靴を落として行くというシーンは鉄板ですからね。あそこをカットするわけにはいきませんからね」
 エミリー:「いっそのこと、シンデレラの役をシンディにしてしまうというのは如何でしょう?」
 敷島:「あのな、今さら配役は変えられんよ。ポスターやらパンフレットやら、全部作り直さなくちゃいけなくなるんだぞ」
 平賀:「別の意味で損害ですね」
 敷島:「とにかく、ミクには次で頑張ってもらうしかない」
 ミク:「はい……頑張ります……」
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“戦う社長の物語” 「劇団ロイド撃沈」

2017-10-22 20:22:40 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月14日 昼の部 東京都豊島区 敷島エンター劇場]

 前回の続きと行こう。

 ナレーター:「一夜が明け、お城の中はもちろん、国中が大騒ぎでした。王子様はガラスの靴の片方を手に、シンデレラの一斉捜索を始めたのです。それは、王宮の近衛騎士団すらも動員されるほどのものでした」

 騎士団長(エミリー):「皆の衆!緑色の髪をした女性だ!直ちに緑色の髪をした女性を捜し出せ!速やかに発見し、近くの兵士または騎士に通報せよ!無事に発見した者には褒美を与える!良いか?下手に隠し立てしたり、危害を加えた者は第2級国家反逆罪と見なし、捕縛する!」

 ナレーター:「騎士団長が町の人々を集め、王子様のお触れを発表していました。シンデレラの捜索に当たっていたのは、何も兵士や騎士達だけではありません。王子様直属の召使も動員されていました」

 召使(鏡音レン):「ふぇーっ!結構キツいなぁ!国中を捜すったって、結構広いもんなぁ……。しょうがない。ボクの担当する地域はここだし、この家々を片っ端から当たってみるか」

 ナレーター:「召使の少年は、与えられた捜索地域を一軒一軒訪ねて回りました。そして、シンデレラの家に辿り着いたのです」

 召使:「こんにちはー!ごめんくださーい!KAITO殿下の直属召使の者ですがぁーっ!どなたかいらっしゃいますかー!?」
 継母:「何だい?朝っぱらから騒々しい」
 召使:「お邪魔しまーす!」
 継母:「邪魔するなら帰っとくれ」
 召使:「はーい!……って、いやいやいや!ちょっとボクの話を聞いてくださいよ!」
 継母:「新聞や浄水器なら要らないよ」
 召使:「違います!妙観講の訪問折伏です!」
 継母:「まずは日蓮大聖人がどうして御本仏なのか証明しておくれ」
 召使:「騎士団長さーん!捜索に協力しない不届き者がいますけどー!?」
 継母:「あっあっ、待っとくれ!姉さん……もとい、騎士団長さんは怒らせると怖いんだよ!今のはほんの冗談さ。で、何を聞きたいんだい?」
 召使:「こちらのお宅に、緑色の髪をした女性はいませんか?」
 継母:「みっ、緑色の髪だって!?」

 ドサーッ!

 義姉:「キャハハハハ!また灰かぶってるー!ほんとにドジなんだから!見て見て、お母様!シンデレラのヤツ、またかまどの掃除の最中に灰を被りやがったよ!」
 継母:「ああ、うん……。お、お前はシンデレラを連れて、奥へ行ってなさい」
 義姉:「えっ、どうして?」
 継母:「いいから早くおし!」
 義姉:「わ、分かったわよ」
 召使:「あの人は……?」
 継母:「う、うちの娘達だわさ!でも、全然似てないでしょ?1人は黒髪だし、もう1人は灰色の髪だわさ」
 召使:「そりゃだって今、『灰を被った』って……」
 継母:「と、とにかく、うちには緑色の髪の娘なんておりませんよ。ちょっと、立て込んでいる最中ですので、これにして失礼」
 召使:「あっ、ちょっと……!」

 ナレーター:「継母は慌てて召使を追い出してしまいました。しかし、これが却って不審を呼んだのです」

 召使:「何だか今の家、怪しいなぁ……。うん。この辺りの家は粗方捜したし、一旦広場に戻ろう」

 ナレーター:「広場に戻ると、騎士団長が待機していました」

 騎士団長:「おお、レン。ご苦労だった。首尾はどうだった?」
 召使:「いえ、あいにくと見つかりませんでした。ただ、1つ怪しい家が……」
 騎士団長:「怪しい家?」

 ナレーター:「と、そこへ騎士団長の部下の兵士達がやってきました」

 兵士A(マリオ):「閣下!ご報告がございます!」
 騎士団長:「何だ?」
 兵士B(ルイージ):「付近住民に話を聞いたところ、あちらの地区より王宮へ向かった馬車を目撃したそうです」
 騎士団長:「昨夜は盛大な舞踏会だ。その参加者を乗せた馬車が国中から殺到した。それだけでは有力な情報ではないぞ」
 兵士A:「ごもっともであります。ですが、更に詳しく話を聞いたところ、その馬車に緑色の髪をした女性が乗り込んでいたとの目撃証言があります」
 騎士団長:「何だと!?場所はどこだ!?」
 兵士B:「はっ、向こうであります!」

 ナレーター:「その兵士が指さした所には、シンデレラの家があります」

 召使:「あそこはボクが捜した地域ですよ!」
 騎士団長:「レン。確か先ほど、怪しい家があったと言っていたな?」
 召使:「はい」
 騎士団長:「案内しろ!」
 召使:「ははっ!」
 騎士団長:「皆の者!捜索地域を絞る!我に続け!」

 ナレーター:「騎士団は一斉にシンデレラの家に向かいました」

 召使:「この家です!」
 騎士団長:「ご苦労」

 騎士団長エミリー、馬から降りてシンデレラの家の玄関の前に立つ。

 騎士団長:「我々は王宮近衛騎士団の者である!ここを開けろ!話がある!」

 ナレーター:「しかし、騎士団長がいくらドアをノックしても、誰も出て来ません」

 騎士団長:「レン、この家で間違いないのだな?」
 召使:「もちろんです」
 兵士A:「入れ違いで、留守になってしまったのかな?」
 召使:「……いえ、それは無いです。僅かに……微かに家の中から機体反応がします」
 騎士団長:「うむ。私も感じる。これは明らかに居留守を使っている」
 兵士B:「我ら崇高な王宮騎士団に対し、居留守を使うとは何たる無礼!」
 召使:「団長さん、どうしますか?」
 騎士団長:「聞くまでもない。我らは偉大なるKAITO第一王子殿下より命ぜられた内容を遂行するのみ」

 ジャキッ!……ガチャガチャ……ガチャッ!

 ナレーター:「何ということでしょう。騎士団長の右手が、見る見るうちにグレネードランチャーに変形したではありませんか」

 騎士団長:「お前達、下がっていろ」
 召使:「だ、団長さん、もしかして……」
 兵士A:「もしかすると……」
 兵士B:「もしかしなくても……」
 騎士団長:「もしかするぞ!……ファイヤー!」

 ガァァァァァン!!

 敷島俊介:「こ、これはやり過ぎではないのかね?」(;一_一)
 敷島孝夫:「え、えーと……まあ、台本には書いてあったのですが……」(;´Д`)
 俊介:「キミの秘書はドアの向こうを確認もせず、いきなりグレネードを発射するのかね?」(;一_一)
 孝夫:「KR団との戦いの時は、そんなことしていたような……。そ、それにまあ、これはお芝居ですから……ハハハハ……」('◇')ゞ

 騎士団長:「突入だ!皆の者、続け!」

 ナレーター:「王宮騎士団は、シンデレラの家に強制捜索に入りました。すると何ということでしょう。家の奥に、継母と義姉がシンデレラを緊縛して監禁していたのです」

 騎士団長:「2人とも!第2級国家反逆罪の現行犯で逮捕する!ひっ捕らえよ!」
 兵士A:「ははっ!」
 兵士B:「第2級国家反逆罪は尖閣諸島へ島流しだヨ」
 継母:「ど、どうかお許しを!」
 義姉:「尖閣諸島なんて嫌だーっ!」
 兵士B:「それなら竹島送りだ」
 騎士団長:「ええい、うるさい!後でたっぷり尋問してやる!連れて行け!」
 召使:「団長さん!やっぱりこの人、あの緑色の髪の人ですよ!」
 騎士団長:「そうか。……あなたが、シンデレラですね?」
 シンデレラ:「はい……」
 騎士団長:「此度はお騒がせしました。あなたを虐待していた不届き者共は、あの通り逮捕して連行しました。さ、こちらへ。あなたが本当に、昨夜の舞踏会で殿下と踊られていた女性かどうかの確認を致しましょう。レン、例の物をここへ」
 召使:「はい!」

 ナレーター:「召使が差し出したガラスの靴が、シンデレラの足とピタリはまったのは言うまでもありません」

 大臣:「あの……殿下。本日の公務、そろそろ専念して頂けませんでしょうか?本日は国境警備隊の視察がございます。その後で隣国大使との会談、その後……」
 王子:「やりたくない」
 大臣:「は?」
 王子:「あの緑の美しい女性。あの方が見つかるまで、何も仕事が手に付かぬ。全て予定はキャンセルしてくれ」
 大臣:「で、ですが、殿下!」
 王子:「くどい!何の為に国中捜索に当たっていると思うのだ!?見つかるまで私は一切ここを動かぬ!」
 大臣:「殿下……」

 そこへ、王子専属のメイドが入って来る。

 メイド(鏡音リン):「失礼します!殿下、大変です!」
 大臣:「これ!騒がしい!宮中であるぞ!静かにせんか!」
 メイド:「も、申し訳ありません!」
 王子:「まあ良い。何があった?」
 メイド:「朗報にございます!殿下と昨夜お踊りになった女性が見つかりました!」
 王子:「何だと!?」
 大臣:「おおっ、見つかったか!でかしたぞ!」
 王子:「すぐ迎えに行く!馬を引けい!」
 大臣:「ははっ!」
 メイド:「それには及びません、殿下。既に同僚のレンと、騎士団長のエミリー様がお連れしてございます」
 王子:「すぐにホールへ案内しろ!私も向かう!」

 俊介:「おお、いよいよ大団円だな」
 孝夫:「脚本によれば、宝塚にも負けないとても印象的なラストを迎えることになっていますよ」
 俊介:「ほおほお。……おおっ、既にドレスを身にまとい、ガラスの靴をはいたシンデレラが!」
 孝夫:「劇の内容によっては王子様がシンデレラの家に迎えに行き、灰かぶり姿のシンデレラにそのままプロポーズして終わるというやり方もあるようですが、こちらはもう少しベタな終わり方にしました」
 俊介:「まあ、こちらの方が分かりやすいかな」
 孝夫:「さあ、いよいよ感動の御対面です!」

 王子:「シンデレラ……。おお、正にあの時の貴女だ。会いたかったよ……」
 シンデレラ:「王子様……私もです……。私も会いたかったです……」
 王子:「さあ、私の胸に飛び込んできておくれ!」
 シンデレラ:「王子様ぁぁっ!!」

 シンデレラ役の初音ミク、王子様役のKAITOに向かって走る。
 が!

 グキッ!

 ミク:「!!!」
 KAITO:「!!!」

 ハイヒール型のガラスの靴は、ミクにも履き慣れていないものだ。
 それでバランスを崩したミク、危うく転びそうになる。

 ミク:「わっ、たっ、たっ……!たっ!」

 ドーン!(舞台セットの王宮の柱に激しくぶつかる)

 メキメキメキメキ……!(王宮の柱が傾き始める)

 平賀:「ああっ、ヤバい!」

 ガーン!(ミクがぶつかった王宮の柱が倒れ、隣のもう片方の柱に激突する)

 メキメキメキメキ……!(もう片方の柱もショックで倒れて来る)

 村上:「い、いかん!こっちに倒れて来るぞ!」
 平賀:「村上教授、逃げましょう!」

 舞台袖でロイド達の動きの監視と調整をしていた場所に、セットの柱が倒れて来た。

 ズゥゥゥン!
 ズズゥーン!!
 ガラガラガラ……ガッシャーン!!
 バリーン!

 孝夫:「オーマイガッー!!」
 俊介:(ムンクの叫びを上げる俊介)

 ロイ:「こ、これは反乱だ!ついに民衆の怒りが爆発し、王宮を破壊するに至ったのだ!何と恐ろしいことだ!!」

 村上:「やめさせろ!幕じゃ!早く幕を下ろすんじゃ!」

 急いで幕が下ろされる。
 あまりの事態に、客席も静まりかえっていたという。

 シンディ:「初音ミク……きさま……!!
 ミク:「は……はい〜……」

 プシューッ!

 平賀:「あ……ミクのバッテリー上がった……」(-_-;)
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“戦う社長の物語” 「劇団ロイド始動!」 2

2017-10-21 19:18:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月14日11:00.天候:晴 東京都豊島区 敷島エンター劇場(旧・ミュージックホール四季)]

 劇団アンドロイド(仮称)の初演が行われている劇場。
 ここはかつて四季グループの創業者である敷島孝之亟が、その屋台骨である四季エンタープライズの基礎を築いたストリップ劇場があった場所である。
 もちろん当時のストリップ劇場は取り壊され、今では四季グループの演劇部門が使用する劇場へと建て直されていた。

 継母(シンディ):「シンデレラ!シンデレラ!」
 シンデレラ(初音ミク):「は、はい!何でしょうか、お母様?」
 継母:「何度も呼ばせないで!呼ばれたらすぐに返事をおし!」
 義姉(MEIKO):「もう!グズでノロマなんだから。おー、ヤダヤダ。こんなのが義妹(いもうと)だなんて」
 シンデレラ:「申し訳ありません」
 継母:「あーら、シンデレラ。まだ汚れてるじゃないの。かまどの掃除はどうしたの?」
 シンデレラ:「あ、はい。あの……お母様のお部屋のお掃除がまだ終わってなくて……それから……」
 継母:「何ですって!?言い訳はやめなさい!あんたはいつも私に叱られる度に言い訳ばっかりして!そんなんだから……」

 VIPルームで観劇するは敷島孝夫と四季エンタープライズ社長の敷島俊介。
 敷島孝夫の伯父である。

 俊介:「なかなか好調の出だしじゃないか。これなら盛り上がりそうだ」
 孝夫:「恐れ入ります。シンデレラは小学校の学芸会から宝塚まで、幅広く公演されている演目です。それだけに、公演する劇団の個性が滲み出るものです」
 俊介:「うむ。それでは今日、その劇団アンドロイドの個性を拝めるというわけだな?」
 孝夫:「そういうことです。しかし、驚きましたよ。あの主催者さんが、まさか伯父さんの差し金だったなんて……」
 俊介:「はっはっはっ!私が直接口を出すのも何だと思ってね。知り合いの劇場関係者に話をしてみたってわけさ。KR団とやらの戦いも無事終了したことだし、そろそろあのロボット達の平和的利用を探るべきじゃないかと思ってね。ちょいとお節介させてもらった」
 孝夫:「な、なるほど」
 俊介:「この日本がロボットテロに晒されているのなら、彼女達はその対策に当たらせるべきだ。しかし今、その先陣を切っていた組織は完全に崩壊した。実は前々から考えてはいたのだが、そろそろ頃合いじゃないかと思ってね」
 孝夫:「さすがは伯父さん。だけど、何だか寂しくなりますなぁ……」
 俊介:「何がかね?」
 孝夫:「エミリーとシンディが、私の手から離れてしまうのが……」
 俊介:「いや、別にキミの秘書を辞めさせろと言ってるんじゃない。あくまで、新しい試みをしてみるのもまた一興ではないかということだ」
 孝夫:「ま、たまにならいいかもしれませんね」
 俊介:「そうだろう。……さ、しばらくは素直に観劇を楽しもうじゃないか」
 孝夫:「はい」

 ナレーター(アルエット):「……そんなある日のこと、国中にお触れが出されました。この国では毎年、王子様の誕生日を祝う舞踏会が盛大に行われるのですが、何と今年はその王子様の結婚相手を舞踏会の参加者の中から選ぶというのです。もちろん、シンデレラの家でもそのことについて大盛り上がりでした。……たった1人、シンデレラを除いて」

 義姉:「お母様、今度の舞踏会にはどのドレスを着て行ったらいいかしら?」
 継母:「安心おし。全て超一流のお店で選んだドレスよ。ホント、あなただったら何を着ても美しいわ。どこぞの薄汚い灰かぶりと違ってね!」

 舞台袖では平賀と村上が調整用の端末を確認しながら見ている。

 村上:「シンディはハマり役じゃの」
 平賀:「ドSな女王様ですから。是非とも次の公演があったら、シンディは悪役でいいくらいですよ」
 村上:「んふふふ……そうかね?では今度は“西遊記”でもやらせてみて、羅刹女の役でもやらせるかね?」
 平賀:「いいと思いますが、入力と調整が大変です」
 村上:「む、それは確かに……」

 ナレーター:「……そんなシンデレラの元に、ミステリアスな魔法使いが現れました。そして、シンデレラに魔法を掛けたのです」

 魔法使い(巡音ルカ):「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!この哀れな灰かぶりに一晩の夢を与えよ!はーっ!」
 シンデレラ:「なに?このどこかで聞いたことあるような呪文は?……ああっ!?」

 ナレーター:「何ということでしょう。それまで見すぼらしい恰好だったシンデレラの服が素敵なドレスに、カボチャが馬車に、ネズミが御者に変わったではありませんか」

 俊介:「おおっ、衣装の早着替えもバッチリ!これは期待が持てそうだ」
 孝夫:「ありがとうございます」

 魔法使い:「……だけど、油断してはいけない。この魔法はあなたに一晩の夢を見せる為のもの。従って、12時になったらこのガラスの靴以外は全て魔法が解け、あなたは元の灰かぶりに戻ってしまう。だから、十分にお気をつけなさい」
 シンデレラ:「はい!ありがとうございます!」

 村上:「しかし、鐘が12回鳴り終わるまでの間に広い城から脱出を図らねばならんとは……結構ハードな展開じゃの」
 平賀:「考察によれば、実際は23時45分に鳴る予鈴のことらしいですよ。シンデレラが聞いたのは」
 村上:「それでも15分か。15分の間に、ディズニーランドのシンデレラ城のてっぺんから外に脱出できるかね?」
 平賀:「大抵、舞踏会が行われるのはエントランスホールに近い大食堂でしょうから、恐らく可能かと」
 村上:「なるほど」

 ナレーター:「……こうして、シンデレラは無事にお城の舞踏会に参加することができたのです。しかし、当の王子様は乗り気ではありませんでした」

 王子(KAITO):「大臣、大臣はいるか!?」
 大臣(ロイ):「はっ、ここに」
 王子:「今回の舞踏会、私の誕生日パーティー以外の要素もあるということは知っているな?」
 大臣:「ははっ、この私めの提案にございます」
 王子:「何故そのような余計なことを!?結婚相手くらい自分で探す!」
 大臣:「も、申し訳無いことでございます。国王陛下は殿下が適齢期をお迎えになったことを大変お喜びになってございますが、しかしそれと同時に殿下のご成婚相手につきましては、とても御腐心あそばされてございます。そこで不肖、私めが提案させて頂いた次第でございます」
 王子:「言い訳は良い!とにかく、こんな下らぬ催事に付き合うつもりは私は無い!」
 大臣:「で、殿下!お待ちを!せめてパーティーにお顔をお出しになられては?本日は国中より諸侯が参加してございます。恐らくその中には、殿下のお好みの令嬢も参加なさっているはずです。どうか陛下の御腐心に報いる為にも、好みの女性と踊られては如何でございましょうか?」
 王子:「フン、何を抜かす。好みの女性など、あの中には……むっ!?」

 ナレーター:「その時です。王子様の目がシンデレラをロックオンしました」

 俊介:「おいおいおい!本当に目が光っているぞ!?」
 孝夫:「す、すいません。そういう仕様なもので」

 王子:「失礼、そこの美しい貴女。私と踊って頂けないでしょうか?」
 シンデレラ:「わ、私とですか!?ね、ね、願ってもない光栄です!」

 プシューッ!(ミクの両耳から煙が噴き出した)

 村上:「い、いかん!出力を下げるんじゃ!」
 平賀:「承知!」

 俊介:「あ、あれも演出……または仕様かね?」
 孝夫:「えっと……」

 しかし、科学者2人の調整によりミクの故障は免れた。

 ナレーター:「……こうして、2人は時が経つのも忘れて踊り続けたのであります。しかし、時間は止まってくれません。ついに、舞踏会の終わりを告げる鐘が城中に鳴り響きました」

 シンデレラ:「いけない!もうすぐ12時だわ!帰らなきゃ!」
 王子:「どうしてだい?舞踏会はまだまだ続くよ」
 シンデレラ:「ごめんなさい、王子様!早く帰らないと終電無くなっちゃう!」

 平賀:「あ、あれ?ミクの台詞が……!」
 村上:「さっきのオーバーヒートのせいか!?早く修正するんじゃ!」
 平賀:「やってますよ、さっきから!」

 王子:「待ってください!終電逃しても、まだ深夜急行バスがありますよ!」

 平賀:「か、KAITOまで!?」

 それでも何とか、舞踏会終了までは漕ぎ付けた。
 尚、シンデレラを舞台演劇する際、必ず演じるのが、シンデレラがガラスの靴を片方落としてしまうことである。
 もちろんこの公演でもそれが行われたのだが……。

 シンデレラ:「きゃーっ!」

 何とミク、ガラスの靴を片方落としたのはいいのだが、そこから派手に階段落ちをやらかしてしまった!
 頭から落ちたのだが、そこは人間よりも頑丈なボーカロイド。
 階段の踊り場に穴を開けただけで済んだという。

 第一幕終わり!
 次回、第二幕、舞踏会から一夜明けた城下町のシーンからスタートする!
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“戦う社長の物語” 「劇団ロイド始動!」

2017-10-21 14:23:29 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月3日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー会議室]

 村上:「むぅ……?このワシが審査員とな?」
 ロイ:「いきなりな話ですねぇ……」
 平賀:「正確には審査員長です。自分だけでは心許ないので、せっかく上京されたのですから、よろしくお願い致します」
 村上:「しかし、アンドロイド達だけで演劇をやるとは、面白い試みじゃ。そういうことなら、付き合わせてもらおう」
 ロイ:「では司会進行は不肖、この私が……」
 平賀:「ロイ、お前も出ることになってるぞ?」
 ロイ:「ええっ!?」
 村上:「せっかくの機会じゃ。どうせ主演では無いじゃろうし、お前もデータ蓄積(経験)の為に参加してみい」
 ロイ:「はあ……。博士がそう仰るのでしたら……」
 村上:「芝居と言っても、何をするのじゃ?」
 平賀:「それが、まだ脚本が出来上がっていないらしいんですよ。西洋の古典文学的なものらしいですけど……」
 村上:「何じゃいな?“不思議の国のアリス”とか、“赤ずきんちゃん”でもやらせるつもりか?」
 ロイ:「“小公女セーラ”かもしれませんよ?」
 平賀:「取りあえず、“マッチ売りの少女”で演技力を試したいと考えています」
 村上:「なるほど。それは面白い」
 平賀:「それじゃ、早速始めてもらおう」

 シンディ:「1番!シンディ・サードです!よろしくお願いします!」
 平賀:「じゃ、始めて」
 シンディ:「マッチ……マッチは要りませんか?」
 村上:「くだらん!」
 シンディ:「そうですか?」
 村上:「お前には見えているか?目の前を行き交う薄情な人々の姿が。お前の感情レイヤーはそんなものではないはず。感じるのじゃ。そうすれば、自慢のAIに自然と台詞が浮かんで来るはずじゃ」
 シンディ:「感じる……」

 ピー!(シンディの体内からアラームが鳴る)

 シンディ:「下等で愚かな人間どもよ!この私を無視するとはいい度胸だ!マシンガン掃射で蜂の巣にしてくれよう!!」
 平賀:「失格。次」
 ロイ:「でも右手のマシンガンは良いネタになりそうです」
 村上:「作者みたいなことを言うではない」

 エミリー:「2番。エミリー・ファーストです。よろしく頼みます」
 平賀:「よし。始めてくれ」
 エミリー:「マッチ。マッチは要りませんか?」
 村上:「要らん」
 エミリー:「お願いします!話だけでもいいんです!全部売れるまで会社に帰れないんです!!」(←全力Orz)
 平賀:( ゚д゚)ポカーン
 村上:「……何かね、それは?」
 エミリー:「この会社に来る営業さんは、だいたい皆こんな感じなのですが……?」
 村上:「世知辛い!次じゃ!」
 平賀:「営業の闇はNGだな」
 ロイ:「随分ブラックな営業ですね」

 アルエット:「3番!8号機のアルエットです!よろしくお願いしまーす!」
 平賀:「……だ、大丈夫かな?」
 村上:「“マッチ売りの少女”に、あんな明るいコを使うのはどうかと思うが……」
 アルエット:「マッチ、マッチは要りませんか?今ならタイムセール、5個セットでたったの250円!これはお買い得です!……ちょっと待った!今なら同じものをもう一セットお付けしちゃいます!さあ、いらっしゃいませ!いらっしゃいませ!」
 平賀:「……おい」
 村上:「これは……テレビショッピングとディカウントストアーの融合かね?」
 ロイ:「明る過ぎるので失格です!」
 アルエット:「えー?」

 平賀:「ていうか、マルチタイプ達に演技なんて、こちらとしても想定外ですよ」
 村上:「ホントにのぅ……」

 ズズズとお茶を啜る科学者2人。

 村上:「じゃが、上手く行けばこれほどのことはあるまい。どうじゃろう?少し、彼女らのAIを改良してみるか?」
 平賀:「どうしろというんですか?」
 村上:「それは……」

 と、そこへ会議室のドアがノックされた。

 井辺:「失礼します」
 平賀:「井辺プロデューサー」
 井辺:「大変お待たせ致しました。脚本が刷り上がりましたので、お持ちしました」

 井辺が差し出した台本に、科学者達はフリーズした。

 平賀:「“シンデレラ”ですか!?」
 村上:「むぅ……。ある意味では難しいのが来たのぅ……」
 井辺:「何とか社長が主催者の方に掛け合って、マルチタイプの主演は回避してもらいました」
 平賀:「でしょうな」
 村上:「それが無難じゃ。して、主演のシンデレラは誰がやるのかね?」
 井辺:「初音ミクさんです。そして、王子様役はKAITOさんです」
 平賀:「よしよし。無難路線だな」
 村上:「うむ。さすがは敷島社長」
 平賀:「ロイド達に舞台稽古は必要ありません。すぐに台詞を入力して記憶させ、あとは動きを端末から入力してやればOKです」
 村上:「ちょっと待て。その入力は誰がやるのかね?」
 平賀:「敷島さんでしょう?“悪ノ娘と召使”は敷島さんがほぼお1人でされましたから」
 井辺:「別の意味で死に掛けたとのことです。私や専属マネージャー達で台詞の入力は行いますので、教授方は演出家さんの指示通りにロイドの皆さんが動けるように調整をお願いできますでしょうか?」
 平賀:「うわっ!そっちか!」
 村上:「メンドいのキターッ!!」

[同日17:00.天候:曇 敷島エージェンシー]

 敷島:「ただいまぁ……」
 井辺:「お帰りなさい、社長。いかがでした?」
 敷島:「んー?まあ、最終的にはうちらに完全に任せてくれるってさ」
 井辺:「それは良かったですね」
 敷島:「何か今さらシンデレラなんかやることになっちゃたけど、大丈夫かな?平賀先生に、余計な手間を取らせてしまって申し訳無い」
 井辺:「そのことですが、平賀教授は、『敷島さんとは長い付き合いだから、これくらいどうってことない』とのことです」
 敷島:「そうか。さすがは平賀先生だ。村上名誉教授は?」
 井辺:「平賀教授よりもノリノリです。どういうわけか……」
 敷島:「何でああいう科学者のお年寄りは、変なノリかねえ……。まあ、いいや。変な改造さえしなければ……」
 井辺:「…………」
 敷島:「な、何だ?」
 井辺:「村上名誉教授ですが、ボーカロイドの皆さんのAIを改造する気だったそうです」
 敷島:「ちょっと、都心大学行ってくる」
 井辺:「私もお供致します」

 こうして始まったロイド達の演劇。
 果たして、どうなることやら……。

 劇団アンドロイド(仮称)

 演目:初音ミクのシンデレラ

 主演:シンデレラ…初音ミク 王子様…KAITO

 助演:継母…シンディ 義姉…MEIKO 魔法使い…巡音ルカ 大臣…ロイ 召使…鏡音レン メイド…鏡音リン ナレーション…アルエット 騎士団長…エミリー

 協力:敷島エージェンシー、デイライト・コーポレーション・ジャパン、四季エンタープライズ
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連日の雨に伴い、笑い話を1つ。

2017-10-20 23:29:39 | 日記
 最近、憂鬱な雨ばかりが続いている。
 雨だけならまだしも、底冷えの寒さが門番勤務の私にはとてもキツい。
 それはさておき、実はそれで1つ思い出したことがあったのでご紹介したいと思う。

 皆さんは相合傘をしたことがあるだろうか?

 いや、別に若い男女でなくてはダメということではないよ。
 例えば女性の場合なら、仲の良い友達と相合傘をすることがあるだろう。
 何せ、バレンタインデーに「友チョコ」が流行るくらいだからね。

 それで、だ。

 相合傘というのは通常、1つの傘に2人の人間が入ることを言うね。
 その際、傘を持つのはどちらになるだろう?
 男女ペアの場合、ほぼ絶対男性が持つことがセオリーになっているようだ。
 昔の浮世絵を見ても、最近のマンガやアニメを見ても、普通は男性が持つことになっている。
 それがどうしてかの理由については、後述する。
 それを踏まえた上で、だ。

 これは私が実際に体験した話。
 それはちょうど今くらいの時期だった。
 本当にあった話といっても、怖い話じゃないよ。
 この記事のタイトルにある通り、私の失敗談にして笑い話だ。

 実は私の場合、相合傘をしたことは何度かある。
 但し、それは子供の頃、母親にしてもらっただとか、従姉にしてもらったとか、そういう身内ネタだ。
 本当に他人の女性としたことがあるのは、たったの1度だけ。
 どういう経緯でそうなったのかは申し訳無いが、説明は省く。
 強いて言うならば、もしこんな失敗などしていなければ、もしかしたら私は法華講を辞めるに至ることは無かったのかもしれない。

 私の身長は162cm〜163cmほど。
 一部のスピンオフ作品を除く“ユタと愉快な仲間たち”シリーズ主人公の稲生勇太より2〜3cmほど低く、“アンドロイドマスター”シリーズ主人公の敷島孝夫より10cmちょっと低い。
 対する相手の女性は170cmほど。
 この時点でピンと来た人がいれば、その人は勘の鋭い人か、既に何度も相合傘を異性としている人だろう。

 その人と待ち合わせをして、まずは軽くお茶でもしようと駅の外に歩き出した。
 すると、突然雨が降り出してきた。
 私は傘を持っていた。
 しかし、女性は持っていなかった。
 すると、選択肢はほぼ1つしか無いね。
 私は傘を差し、良かったら一緒に入りましょうと誘った。
 そこまでは良かったのだが、しばらく一緒に傘に入って歩くと、どうも据わりが悪い。
 腕を挙げてみたり、私と女性の位置を変えてみたりしたのだが、どうもしっくり来ない。
 何だろう、この違和感?と思っていると、女性の方が気づいてくれた。
 そして、こう言った。

「あの……私、(傘を)持ちましょうか?」

 そう。
 他人の女性と相合傘などしたことが無かった私は、正にマンガやアニメのキャラクターのマネをして失敗したのだ。
 相合傘で傘を持つのがどうして男性なのか?
 それは相手の女性の方が、身長が低いからである。
 だからこそ成り立つ、ほのぼのした情景なのである。

 仏法でも自分の身長は上げられないからねぇ……。

 もちろん、この女性とはその日限りであった。
 その人、法道院支部の……おっと、名前は出せない。当たり前だ。
 もしこのままお付き合いできていたら、辞めるに至ることは無かったんだろうなと、今でも相合傘をしている人達を見ると思い出すのである。

 もしあの時、雨が降らなかったら?
 もしあの時、相手の女性の身長が私より低い人だったら?
 宿命は転換できても、運命は変えられない。
 万能ではない仏法に完全に見限りを付けた瞬間。

 それが昨年の今月である。
 離檀してから、凡そ1年が過ぎた。

 ま、単なる失敗談だ。
 笑い話になるかどうか分からんが、笑えたら笑ってください。
 あと、相合傘をする時は自分の身長と隣の人の身長差に注意だ。
コメント (2)
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