[10月14日17:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー会議室]
敷島孝夫:「……結局、舞台は大失敗。セットも大崩壊で、修理が完了するまでは公演中止と……。物凄い損害だ」
バンッ!と机を叩くシンディ。
シンディ:「ミク!どうするの、この責任!?」
初音ミク:「……すみませんでした……」
シンディ:「『すみません』で済めば、ケーサツは要らないってことよ!!」
シンディ、ミクを強く責める。
村上:「まあ、待ちなさい待ちなさい。舞台は初演中の初演なのじゃろう?撮影のやり直しが利く映画やドラマじゃあるまいし、そういうNGは却って付き物なんではないかな?」
平賀:「そうだよ。歌舞伎や宝塚などでは、むしろそれを期待してやってくる観客もいるって話だぞ?」
シンディ:「付き物ですって……?あれだけの失敗、付き物どころではありませんわ!正にロボットテロ並みの崩壊ですわよ!」
エミリー:「シンディ、落ち着け。こう言っては何だが、私やシンディならともかく、ミクがぶつかったくらいで倒壊する柱というのも問題だったと思うぞ」
敷島:「ああ、そうそう。それなんだけど、人間の役者に合わせたセットだったんだ。柱の強度や固定具合も、他の人間の役者がやっているのを想定したものだったんだ。いくら戦闘力は持たないボーカロイドとはいえ、頑丈さは人間よりかなり上だから、それがぶつかった時の強度は想定していなかったらしい。後で、大道具係の責任者が謝りに来ていたよ」
平賀:「確かに、あれがもし人間の役者であったら、命に関わる事故でしたもんね」
シンディ:「社長も社長ですわ!素直に私達を主演にして下さっていれば、あんなことは無かったというのに!ミュージカルでも主演を張れなかった(※)ミクに主演をやらせるなんて無茶ぶりもいい所ですわ!!」
(※悪ノP先生作“七つの大罪シリーズ”においては“眠らせ姫からの贈り物”で主役を張っていたが、当作ではまだそのミュージカルは行われていないという設定。理由は、歌を歌わないミクの演技力に難がある為)
エミリー:「社長、そこだけはシンディの言う通りだと思います。確かに私達に演劇は用途外かもしれませんが、敷島俊介社長の仰る『あらゆる可能性にチャレンジする』というスタンスであるならば、それで良かったのではないでしょうか」
敷島:「……どこの会社に、秘書に演劇やらせる所があるよ?」
平賀:「芸能事務所の社長らしくない発言ですよ、敷島さん?芸能界では“野猿”みたいに裏方さん達がデビューした例もありますし、本来テレビに出ることのないマネージャーがテレビ出演していたり(ホリプロの南田祐介氏など)、色々とやってるじゃないですか」
敷島:「うーん……」
何故か渋い顔をする敷島だった。
平賀:(自分もあまり人のことは言えないけど、敷島さんも保守的になったか?独身の時と、まだボカロが売れない時はガンガンやっていたものだが……。会社が安定期に入って、あまり冒険したくなくなったと見える)
シンディ:「ミク!あのセットを壊したのはあんたよ。だから責任取って、1人で直して来なさい!」
村上:「おいおいおい!そりゃ無茶じゃよ。業者を呼んで修理させるほどのレベルじゃよ?」
シンディ:「博士は黙ってて!!」
村上:「ひいっ!はいっ!……け、血圧が……」
ロイ:「博士!お薬を……!」
鏡音レン:「血管圧力、上昇しています!」
鏡音リン:「了解!降下剤、投入!」
レン:「降下剤、投入!」
エミリー:「遊ぶな」
敷島:「今度はSFものでもやるか?」
平賀:「既にこの世界観がSFですがね」
敷島:「え?何ですか?」
平賀:「何でも無いです」
ミク:「あの……皆さん。本当に、申し訳ありませんでした。わたし……次こそは絶対に失敗しませんから……」
巡音ルカ:「構わないわ。別に、あなたがワザと失敗しただなんて誰も思ってないから」
MEIKO:「そうよ。それより、あのNGで右足を損傷したでしょ?ちゃんと博士に修理してもらいなさい」
平賀:「そうだ。まだ応急処置しかしていない。修理するから、後で都心大学まで来い」
ミク:「はい……」
リン:「おやおや〜?MEIKOりんも、みくみくに対してかなりブチギレてませんでしたかなー?」
MEIKO:「私よりもっと怖いお姉さんがいつまでもブチキレてるから、いい加減萎えたわよ」
シンディ:「あ?何だって?それは誰のことだ、ああっ!?」
MEIKO:「エミリー。あなたのことだって、怖い妹が言ってるわよ?」
エミリー:「ほお?」
シンディ:「違うって言ってるでしょ!だいたい、MEIKOだって後半棒読みだったじゃない!」
MEIKO:「どこが棒読みよ!義姉なんて目立たない役なんだから、むしろあれくらいでいいのよ!」
シンディ:「ドラマと演劇は違うって、演出家さんも言ってたでしょ!」
平賀:「ああっ、もう!お前らケンカやめろ!」
村上:「ま、とにかく初音ミクや。そんなに気を落とさんことじゃ。今日のところは、平賀君に足の修理をしてもらえ」
ミク:「はい……」
[同日18:00.天候:晴 東京都23区内某所 東京都心大学]
タクシーで大学へ向かった4人。
すなわち、敷島、平賀、ミク、エミリーである。
ミク:「せっかくの主役だったのに……。どうしてわたしったら、あんなにドジなんだろう……」
平賀:「足の調子が悪いみたいだな。恐らく、階段落ちの際に小さな損傷があって、それで起きた事故だと思う」
平賀はミクの足を修理しながら言った。
敷島:「階段落ちか……。ああいうアクティブなシーンについては、調整とかそういう話じゃないですからね」
平賀:「ええ。そのロイドの身体能力に賭けるしか無いわけです」
敷島:「参ったなぁ……。何せ、シンデレラがガラスの靴を落として行くというシーンは鉄板ですからね。あそこをカットするわけにはいきませんからね」
エミリー:「いっそのこと、シンデレラの役をシンディにしてしまうというのは如何でしょう?」
敷島:「あのな、今さら配役は変えられんよ。ポスターやらパンフレットやら、全部作り直さなくちゃいけなくなるんだぞ」
平賀:「別の意味で損害ですね」
敷島:「とにかく、ミクには次で頑張ってもらうしかない」
ミク:「はい……頑張ります……」
敷島孝夫:「……結局、舞台は大失敗。セットも大崩壊で、修理が完了するまでは公演中止と……。物凄い損害だ」
バンッ!と机を叩くシンディ。
シンディ:「ミク!どうするの、この責任!?」
初音ミク:「……すみませんでした……」
シンディ:「『すみません』で済めば、ケーサツは要らないってことよ!!」
シンディ、ミクを強く責める。
村上:「まあ、待ちなさい待ちなさい。舞台は初演中の初演なのじゃろう?撮影のやり直しが利く映画やドラマじゃあるまいし、そういうNGは却って付き物なんではないかな?」
平賀:「そうだよ。歌舞伎や宝塚などでは、むしろそれを期待してやってくる観客もいるって話だぞ?」
シンディ:「付き物ですって……?あれだけの失敗、付き物どころではありませんわ!正にロボットテロ並みの崩壊ですわよ!」
エミリー:「シンディ、落ち着け。こう言っては何だが、私やシンディならともかく、ミクがぶつかったくらいで倒壊する柱というのも問題だったと思うぞ」
敷島:「ああ、そうそう。それなんだけど、人間の役者に合わせたセットだったんだ。柱の強度や固定具合も、他の人間の役者がやっているのを想定したものだったんだ。いくら戦闘力は持たないボーカロイドとはいえ、頑丈さは人間よりかなり上だから、それがぶつかった時の強度は想定していなかったらしい。後で、大道具係の責任者が謝りに来ていたよ」
平賀:「確かに、あれがもし人間の役者であったら、命に関わる事故でしたもんね」
シンディ:「社長も社長ですわ!素直に私達を主演にして下さっていれば、あんなことは無かったというのに!ミュージカルでも主演を張れなかった(※)ミクに主演をやらせるなんて無茶ぶりもいい所ですわ!!」
(※悪ノP先生作“七つの大罪シリーズ”においては“眠らせ姫からの贈り物”で主役を張っていたが、当作ではまだそのミュージカルは行われていないという設定。理由は、歌を歌わないミクの演技力に難がある為)
エミリー:「社長、そこだけはシンディの言う通りだと思います。確かに私達に演劇は用途外かもしれませんが、敷島俊介社長の仰る『あらゆる可能性にチャレンジする』というスタンスであるならば、それで良かったのではないでしょうか」
敷島:「……どこの会社に、秘書に演劇やらせる所があるよ?」
平賀:「芸能事務所の社長らしくない発言ですよ、敷島さん?芸能界では“野猿”みたいに裏方さん達がデビューした例もありますし、本来テレビに出ることのないマネージャーがテレビ出演していたり(ホリプロの南田祐介氏など)、色々とやってるじゃないですか」
敷島:「うーん……」
何故か渋い顔をする敷島だった。
平賀:(自分もあまり人のことは言えないけど、敷島さんも保守的になったか?独身の時と、まだボカロが売れない時はガンガンやっていたものだが……。会社が安定期に入って、あまり冒険したくなくなったと見える)
シンディ:「ミク!あのセットを壊したのはあんたよ。だから責任取って、1人で直して来なさい!」
村上:「おいおいおい!そりゃ無茶じゃよ。業者を呼んで修理させるほどのレベルじゃよ?」
シンディ:「博士は黙ってて!!」
村上:「ひいっ!はいっ!……け、血圧が……」
ロイ:「博士!お薬を……!」
鏡音レン:「血管圧力、上昇しています!」
鏡音リン:「了解!降下剤、投入!」
レン:「降下剤、投入!」
エミリー:「遊ぶな」
敷島:「今度はSFものでもやるか?」
平賀:「既にこの世界観がSFですがね」
敷島:「え?何ですか?」
平賀:「何でも無いです」
ミク:「あの……皆さん。本当に、申し訳ありませんでした。わたし……次こそは絶対に失敗しませんから……」
巡音ルカ:「構わないわ。別に、あなたがワザと失敗しただなんて誰も思ってないから」
MEIKO:「そうよ。それより、あのNGで右足を損傷したでしょ?ちゃんと博士に修理してもらいなさい」
平賀:「そうだ。まだ応急処置しかしていない。修理するから、後で都心大学まで来い」
ミク:「はい……」
リン:「おやおや〜?MEIKOりんも、みくみくに対してかなりブチギレてませんでしたかなー?」
MEIKO:「私よりもっと怖いお姉さんがいつまでもブチキレてるから、いい加減萎えたわよ」
シンディ:「あ?何だって?それは誰のことだ、ああっ!?」
MEIKO:「エミリー。あなたのことだって、怖い妹が言ってるわよ?」
エミリー:「ほお?」
シンディ:「違うって言ってるでしょ!だいたい、MEIKOだって後半棒読みだったじゃない!」
MEIKO:「どこが棒読みよ!義姉なんて目立たない役なんだから、むしろあれくらいでいいのよ!」
シンディ:「ドラマと演劇は違うって、演出家さんも言ってたでしょ!」
平賀:「ああっ、もう!お前らケンカやめろ!」
村上:「ま、とにかく初音ミクや。そんなに気を落とさんことじゃ。今日のところは、平賀君に足の修理をしてもらえ」
ミク:「はい……」
[同日18:00.天候:晴 東京都23区内某所 東京都心大学]
タクシーで大学へ向かった4人。
すなわち、敷島、平賀、ミク、エミリーである。
ミク:「せっかくの主役だったのに……。どうしてわたしったら、あんなにドジなんだろう……」
平賀:「足の調子が悪いみたいだな。恐らく、階段落ちの際に小さな損傷があって、それで起きた事故だと思う」
平賀はミクの足を修理しながら言った。
敷島:「階段落ちか……。ああいうアクティブなシーンについては、調整とかそういう話じゃないですからね」
平賀:「ええ。そのロイドの身体能力に賭けるしか無いわけです」
敷島:「参ったなぁ……。何せ、シンデレラがガラスの靴を落として行くというシーンは鉄板ですからね。あそこをカットするわけにはいきませんからね」
エミリー:「いっそのこと、シンデレラの役をシンディにしてしまうというのは如何でしょう?」
敷島:「あのな、今さら配役は変えられんよ。ポスターやらパンフレットやら、全部作り直さなくちゃいけなくなるんだぞ」
平賀:「別の意味で損害ですね」
敷島:「とにかく、ミクには次で頑張ってもらうしかない」
ミク:「はい……頑張ります……」