報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「前泊」

2020-03-15 15:06:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月4日18:00.天候:雨 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センター本館1F食堂]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は研修センターに前泊することになっていたのだが、何と前泊は食堂で夕食が出ないという事態に遭遇した。
 どうするかというと……。

 愛原:「昼間は本格的なラーメンで、夜はカップ蕎麦か……うーむ……」
 高橋:「先生をナメてますね。ここは1つ、マグナムで抗議を!」
 愛原:「ここから一生出れなくなるからやめろ」

 自販機コーナーに行くと、飲み物の自動販売機の他にカップラーメンの自動販売機があった。
 ラーメンだけでなく、蕎麦やうどんもある。

 高野:「先生。こっちにおつまみが売ってますよ」

 高野君が指さした所には缶ビールや缶チューハイの自動販売機があり、そこで柿の種やカシューナッツなんかも売られていた。
 他にはカロリーメイトとかソイジョイとか……。
 いずれにせよ、夕食にしては侘しいものになることは否めない。

 愛原:「しょうがない。明日からの食事に期待して、今夜はこれで我慢しよう」

 私達はカップラーメンやおつまみ、飲み物を買って食堂へ向かった。
 食堂は食事が出ない時間帯であっても、談話室として利用できるそうだ。
 部屋のテレビは小さいサイズだが、さすが食堂にあるテレビはサイズが大きい。

 高野:「明日から検査なのに、今アルコールを飲んでも大丈夫なんですか?」
 愛原:「資料にはそんなこと書いてなかったぞ?」
 高野:「でも、飲み過ぎには注意した方がいいですよ」
 愛原:「分かってるって」

 自動販売機の中にも給湯器はあった。
 だがその給湯器、罠が仕掛けられている。
 扉を閉めないと、ボタンを押してもお湯が出ないのだ。
 ところが、扉を閉めてしまうと、中の様子が分からない。
 結果的にお湯の量の調整が難しく、失敗してしまうこともあるのだ。
 作者の先輩がこの失敗をやらかしてしまい、お湯を入れ過ぎて具材が全部流れ出てしまい、天ぷらそばが掛けそばへと変貌してしまったという。
 私は管理人さんに確認し、食堂内にも給湯器があることを知ったので、そこを使わせてもらうことにした。

 高橋:「こんなことなら、昼にラーメン食うんじゃなかったっスね」
 愛原:「いや、全く」

 私と高橋は天ぷらそば、昼にラーメンを食べなかった女性陣はラーメンを選んだ。

 愛原:「カップ麺ができるまでの間、カンパーイ」

 私は缶ビールの蓋を開けると、それで乾杯した。
 もちろん、JC2人はジュースである。

〔「……中国・○○省××市で起きましたバイオハザード事件に対し、国連組織BSAAは、××市の保健担当者を違法薬物投与の疑いで拘束しました。また、中国政府は××市長に対し、事態を悪化させた責任を追及し、近く更迭する方針です。……」〕

 愛原:「おい、本当にゾンビが出たのか?」
 高橋:「どうなんスかね?」

〔「こちら、中国・○○省××市内です!御覧の通り、市中心部に向かう道は全て地元警察や軍隊によって封鎖され、一切の通行ができなくなっています!上空には国連組織BSAAのヘリコプターが何機も往来し、市中心部にある××市臨時病院に突入しているとのことです!この臨時病院は××市が新型コロナウィルス患者を隔離する為に急遽建設した医療施設で、中には感染の疑いで検査待ちの市民も含めて、凡そ100人ほどの患者が収容されていたと見られています」〕

 テレビの映像からは、患者がどのような化け物になったのかは映っていなかった。

〔「……BSAAの発表では『新薬治療と称して、院内で違法薬物の投与が行われていた。その結果、一部患者がBOW(化け物)化し、院内がパニックになったことで出動した』としています。中国政府はこのことは否定していません。それどころか市の担当者に対し、責任を追及して拘束や更迭の処分を行っていることから、BSAAの発表については信憑性があると思われます」〕

 愛原:「新型コロナウィルスを最初隠蔽しようとして失敗し、批判が出たから、今回はさっさと担当者の首を切って早めに事態を収束させようという政治的意図かな」
 高橋:「どこの国でも政治家ってのは、マジパねぇっスね」
 愛原:「BSAA初代代表のクライブ・R・オブライエン氏は、『事態を政治で解決しようとするから、バイオテロ組織が現れる。BSAAは政治的解決を是としない』と言っていたらしいからね」
 高橋:「カッコイイっスね!まるで先生みたいっス!」
 愛原:「おいおい。それはオブライエンさんに失礼ってもんだ。俺はそんなに偉くないよ。なあ、高野君?」

 私は高野君を見た。

 高野:「…………」
 愛原:「高野君?」

 何故か高野君はテレビ画面を睨み付けるように見ていた。

 愛原:「高野君!」
 高野:「……えっ?あ、はい!何でしょうか?」
 愛原:「どうしたんだい?画面を食い入るように見て……」
 高野:「あっ、いえ、ヒドい事件だなぁと……」
 愛原:「さすが中国クォリティってところだな。まあ、どんなBOWが出たんだか知らないが、さすがに日本に流入はしてこないだろう」
 高野:「そ、そうですね」
 高橋:「先生、他にBSAAみたいな組織は無いんスか?」
 愛原:「“青いアンブレラ”とか?」
 高橋:「いや、それ以外っス」
 愛原:「それ以外ねぇ…¨…。確か、テラセイブっていう組織があったって聞いたけど、今でもあるのかなぁ?最近聞かないんだよなぁ……」
 高橋:「影薄いんスか?」
 愛原:「いや、2011年くらいまではよく出て来てたんだけど、内部不祥事があって、それから影が薄くなったって感じだ。2011年にはテラセイブの幹部がバイオテロに加担していたことが発覚したしね」
 高橋:「最悪っスね!でも、そんな事件聞きませんでしたね」
 愛原:「そりゃそうだろう。こちとら東日本大震災で、それどころじゃなかったんだから。あれは確か、ヨーロッパのどこかで起きた事件だよ」
 高橋:「さすが先生!詳しいっスね!」
 愛原:「あのな、世界探偵協会の研修でやってただろ?」
 高橋:「座学は苦手なんス」

 いっつも居眠りしていた高橋であった。
コメント
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