報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「中央高速を往く」

2020-03-12 20:03:12 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月4日12:00.天候:晴 東京都八王子市 中央自動車道・石川パーキングエリア]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから神奈川県山間の町まで向かう所だ。
 電車よりも車の方が便利である為、レンタカーを借りて向かっている。

 
(写真はウィキペディアより拝借)

 ラジオニュースからは相変わらず新型コロナウィルスの話しか出てこない。
 それほどまでに深刻な事態なのだろう。
 中央高速だって混む道路なのに、今はガラガラだ。
 走っているのはトラックや高速バスくらいだ。
 それも、高速バスを見るとガラガラであった。
 そして何より、遊びに行く普通乗用車や観光バスの姿を見ない。

 リサ:「先生、お腹空いた」

 リサがペロッと舌を出して言った。
 上目遣いなんかして、まるで私を性的に誘っているかのようだ。
 そういう年頃なのだろう。

 愛原:「ああ、分かった。お昼にしよう。高橋、次のパーキングに寄ってくれ」
 高橋:「了解っス」

 高橋は左ウィンカーを上げると、石川パーンキングエリアに入った。
 ここは東京都下の高速自動車国道では唯一の休憩施設である(首都高速は高速自動車国道ではない)。
 で、しかもパーンキングエリアでありながら、そこそこの大きさを誇る。
 サービスエリアではないので、ガソリンスタンドは無い。
 この法則は東名高速や東北自動車道にも言える。
 都内を出発して、最初のパーキングエリアは広い法則だ。
 東名高速の港北パーキングエリアしかり、東北自動車道の羽生パーンキングエリアしかりだ。

 愛原:「どうせチェックインの時間まで、かなり余裕があるんだ。この際、ここでゆっくりして行こう」
 高野:「もうボスへのお土産買っちゃいます?」
 愛原:「まだ都内だろ?」
 高野:「八王子ですね」
 愛原:「都内を出てからでいいだろう」
 高野:「ぶっちゃけボスも都内在住という噂ですから、案外この近くに住んでるかもですね」
 愛原:「可能性はあるな」

 高橋が駐車場に車を止めた。

 高橋:「到着っス」
 愛原:「ありがとう。それじゃ2人とも、ここで昼食タイムだよ」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「はーい」

 私達は車を降りた。

 絵恋:「先にお手洗いに行っていいですか?」
 リサ:「私も行くー」
 愛原:「もちろんだとも。俺も行こう」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「そんな、便所くらいで大声出すなって。それにしても、八王子市も結構広いだろ?八王子のどの辺なんだろうな?」
 高野:「最寄り駅はJR八高線の小宮駅みたいですね」
 愛原:「ふーん……」
 高野:「もっとも、歩いて行ける距離かどうかは【お察しください】」
 愛原:「なるほどなw」

 さもありなん。
 都内のJR線でもローカル線に当たる八高線が最寄りという時点で、確かに【お察しください】。

 高橋:「どうせ女は時間が掛かるでしょうから、俺は一服させてもらいます」
 愛原:「ああ、行ってこい」

 確かに先にトイレから出て来たのは私達だった。
 高橋が喫煙所に向かい、私は中を見てみる。
 フードコートがあるから、そこで昼食が取れるな。

 高野:「お待たせしました」
 愛原:「おう」

 皆が戻って来るのを待ってからフードコードに入った。

 高橋:「先生は何にします?」
 愛原:「八王子ラーメンか。そういえば八王子なんて滅多に来ないから、八王子ラーメン食べる機会が無いな」

 もっとも私の中で八王子ラーメンというと、具材が長ネギではなく玉ねぎのみじん切りくらいしか思いつかないのだが。

 愛原:「チャーシュー麺にするか」
 高橋:「俺も同じので!」
 愛原:「あいよ」
 高野:「先生、リサちゃんは別の物を食べたいようです」
 愛原:「そうなのか。いいよ。好きなの食べて」
 リサ:「じゃあ、これ」

 リサはハンバーグカレーを指さした。

 愛原:「ははは、リサはハンバーグが好きだなぁ」
 リサ:「うん、大好き」
 絵恋:「リサさん、今度うちに遊びに来た時、メイドに作らせるからね」

 その時、私の頭にとあるデータがよぎった。
 これは信憑性のある話ではないのだが、アメリカのオリジナル版リサ・トレヴァーは、女性の顔の生皮を剥がした後、残った頭部はミンチにして食べていたという。
 ハンバーグも肉をミンチにしたもの。
 まさか、な……。
 因みに少女陣はカレー、絵恋さんは普通のカレーを頼んだ。
 高野君は味噌ラーメンである。

 愛原:「高橋は八王子ラーメンは食べたことあるのか?」
 高橋:「中央高速も結構走り込みましたんで、ここにもよく寄ったものです。でも、あんまり食わなかったっスね。下の国道沿いにあるラーメン屋には、仲間と何回か入りましたけど」

 街道レーサーだった高橋も、高速はただ飛ばすだけの道路であり、本当にドライブを楽しむなら下道ということか。

 愛原:「なるほどな」

 しばらくして注文したものができた旨のアナウンスが流れ、高橋が取りに行った。

 高橋:「先生、どうぞ」
 愛原:「ありがとう」

 チャーシュー麺だから、なかなかのボリュームだ。

 高野:「先生、向こうでは食事は出るんですよね?」
 愛原:「一応な。3食出ることになってる」

 表向きは政府機関の研修所ということになっている。
 合宿所のような所だと思って行けばいいのだろう。

 愛原:「味については期待しない方がいいかもな。今のうちに、この美味いラーメンでも食べておこう」
 高橋:「確かに。合宿所の麺類は不味いですよ。まだ少年院で出たヤツの方が美味かったです」
 愛原:「少年院の飯は意外と美味いらしいな」
 高橋:「そうなんですよ。何しろ、量も1食分を3食に分けてもいいくらいで……」
 愛原:「そんなに出るのか!」
 高橋:「さすがの俺も太りましたよ」
 愛原:「だろうなぁ……」

 被害者の浮かばれないこと浮かばれないこと。
 もっとも、高橋の場合はケンカで相手をボッコボコにして、それで逮捕されて収監されたんだっけか?
 あとは道路交通法違反しまりくとか。
 ケンカ相手も似たようなヤンキーばっかりだったらしいから、高橋の場合はお互い様だろう。

 愛原:「高橋と一緒に収監されてた中に、一般人相手に犯罪してた奴とかいなかったか?」
 高橋:「いや、いましたよ、ガッツリ」
 愛原:「そいつらもたらふく飯を食えたんだろうなぁ」
 高橋:「まあ、そうっスね。俺もそいつらは相手にしませんでしたよ」
 愛原:「そこは偉いな」
 高橋:「何か、自販機荒らしとか車上荒らしで捕まったヤツにその方法とかは教わりましたけど」
 愛原:「オマエのピッキング技術も少年院で習ったんかーい」

 それがバイオハザード事件の最中で役に立っちゃうんだから、世も末だ。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の出張」

2020-03-12 15:08:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月4日11:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから車で、神奈川県にある政府機関の研究所に向かう予定だ。
 新型コロナウィルスのワクチンを製造するに当たり、リサが体内に有しているTウィルスやGウィルスなどが転用できないかを実験したいらしい。
 また、霧生市のバイオハザード事件生還者で、Tウィルスに抗体のある私達も検査を受けることとなった。
 エージェントの善場主任は何も言っていないが、これってつまり、遠巻きに新型コロナウィルスはやはり生物兵器だったということで良いのだろうか?
 そして、『目には目を、生物兵器には生物兵器を』ということで、リサのウィルスを使うつもりだろうか。

 高橋:「お待たせしましたー」

 高橋がレンタカー屋に行って、車を借りて来た。
 日産NV200バネットだ。
 4ナンバーの商用バンが多い中、5ナンバーの乗用ワゴンタイプもある。
 タクシーなどは後者がお馴染みだ。
 これも、我が事務所の経費節減の故……。
 昔は本当に4ナンバーのライトバンで地方に行ったりしたものだ。
 商用バンタイプと違うのは、リアシートの仕様。
 バンはヘッドレストが無く、折り畳みタイプであるが、ワゴンはヘッドレストがある。
 しかもレンタカー屋から借りたからか、最初からシートには白いカバーが付いていた。
 こうしてみると、ますますタクシーのようだ。

 高橋:「ちょっと後ろ畳みますんで、待っててください」
 愛原:「後ろ?」

 高橋は運転席から降りると、ハッチを開けた。
 シートは2列シートの5人乗りではなく、更にその後ろに2人席のある7人乗りであった。
 高橋はその3列目のシートを折り畳み始めた。

 愛原:「今日は絵恋さんも入れて5人だから、ちょうど5人乗りタイプで良かったのに、どうして7人乗りだったんだ?」
 高橋:「予約したら、これしか無かったんスよ。レンタカー屋がサービスしてくれて、5人乗りと同じ料金でいいそうです」
 愛原:「そうなのか」

 高橋は3列シートを折り畳んだ。

 高橋:「じゃ、ここに荷物を入れてください」
 愛原:「おう」

 私はボストンバッグを乗せた。
 何しろ泊まり掛けになるからな、着替えとか色々ある。
 高橋が一番軽装で、高野君やリサなどが重装備であった。
 やはり女性は何かと持って行くようである。
 だが、うちの事務所の場合……。

 高野:「マサ、ライフルの弾、余ってる?」
 高橋:「アネゴ、俺はライフルなんか使わねーよ。ハンドガンとマグナムの弾だけだ」
 高野:「マジか……。そろそろ残弾数少ないんだよなぁ……。先生はお持ちじゃないですよね?」
 愛原:「あ、ああ。俺はショットガン派だから……」
 高野:「しゃあない。現地調達で行くか」
 高橋:「善場のねーちゃん辺りが持ってんじゃね?」
 高野:「それもそうね。向こうに着いたら聞いてみよう」

 最早バイオハザード事件に巻き込まれる前提の準備。
 どうやらやっぱり、私は普通の日常から片足を踏み外してしまったようだ。

 愛原:「使用許可証を忘れるな。こういう時に限って、警察が嗅ぎつけて来るからな」
 高野:「分かってますよ」

 もちろんこちらには政府機関から超法規的措置で出された許可があるから、何も臆することはない。
 警視庁管内はそれだけ見せればOKなのだが、今度行くのは神奈川県だ。
 そもそも許可証が本物かどうかから調べられるだろうから、面倒臭いことこの上ない。
 もっとも、銃火器なんかまだ可愛い方だ。
 自分で言うのも何だけど。
 こっちには更にその上を行く生物兵器が一緒だからな。

 リサ:「先生、着替えは3日分くらいでいい?」
 愛原:「大丈夫だろう。向こうにはコインランドリーもあるから、それで洗濯できるしな」

 結局リサは学校の制服を着て来た。
 服を選べない時、学生は制服という手が使えるから便利だ。

 高橋:「あれ、先生?あのクソビアンはまだなんスか?」
 愛原:「そういう言い方やめろよ。そういう言い方良くないよ。あれでもうちの事務所の大口顧客の娘さんだぞ?」
 高野:「何気に先生の言い方も失礼だと思います」
 リサ:「私、サイトーのマンション知ってる。マンションまで迎えに行こう」
 愛原:「それでもいいか。よし、そうと決まったら行くぞ、今すぐに」
 高橋:「えー?」
 高野:「マサ、自分で言ってたじゃんか。『先生の決定は絶対』って。今、先生は斉藤さんのマンションに行くことを決定されたよ?」
 高橋:「先生、今すぐ向かいましょう!」

 高橋はササッと運転席に座った。
 全く、こいつは……。
 事務所で出発準備をし、それから絵恋さんのマンションに行くから、出発時間は11時15分くらいになりそうだった。
 車が絵恋さんのマンションに向かう間、運転席の後ろに私が座っていたのだが、その横にリサがスススッとやってきて、私にピトッとくっついた。
 なるほど。
 今から研究所に行くのが不安なんだな。
 その時、私はそう思っていた。

 斉藤絵恋:「リサさーん、遅れてごめんなさーい」
 リサ:「サイトー、おはよー」

 事務所からマンションまでは、車で5分くらい。
 絵恋さんもまた制服を着ていた。
 服のセンスならさすが御嬢様ということもあって、リサより優れている。
 いっそのこと絵恋さんにコーディネートしてもらえばいいのかもしれないが、さすがに昨日はそこまで思いつかなかった。

 絵恋:「愛原先生も、私の勘違いで申し訳ありません」
 愛原:「いや、いいんだよ。それより、早く荷物を積んで」
 絵恋:「はーい」

 高橋がハッチを開けると、ボーイッシュな感じの専属メイドが絵恋さんの赤いキャリーバッグを積み込んだ。
 御嬢様だからか、絵恋さんの荷物が一番大きい。

 メイド:「それでは御嬢様をよろしくお願い致します」
 愛原:「ええ。斉藤社長によろしくお伝えください」

 それからメイドさんは高橋にあえて声を掛けた。

 メイド:「安全運転でお願い致しますよ」
 高橋:「分かってるって」

 高橋は運転席に乗り込んだ。

 高橋:「てか、何でアネゴが助手席なんだよ?」
 高野:「は?知らないの?先生はこの中の責任者だよ?」
 高橋:「んなこた分かってる!」
 高野:「車の中の上座は、運転席の後ろって相場が決まってるんだからね?だから先生には、マサの後ろに乗ってもらってるのよ」
 高橋:「くっ……!」
 愛原:「ははは……」

 私は苦笑した。
 もっとも、高橋と2人で行動する時は、私も助手席に座るがな。
 別に、私も車の免許は持っている。
 ただ、高橋が車好きで自分で運転したがるので任せているだけだ。
 今回もそうである。

 愛原:「このように、タクシーで使われるタイプの車で申し訳ないね」
 絵恋:「いえ、いいんです。リサさんと出掛けられるのなら……」

 ちょうど通りを同じ車種のタクシーが通り掛かったので、私はそれを指さして絵恋さんに言った。
 絵恋さんは助手席の後ろに座った。

 愛原:「それじゃ高橋、出してくれ」
 高橋:「はいっ!高速使っていいんですね!?」
 愛原:「もちろんだ。ETCのカードは大丈夫か?」
 高橋:「もちろんです」

 最近のレンタカーはETC搭載はもちろんのこと、カードまでレンタルできるからな。
 便利になったものだ。
 私達は早速、目的地へと出発した。
コメント (2)
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