[3月6日13:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
Tアビスワクチンを投与されている絵恋さんは、未だに研究室のベッドで眠っている。
善場主任曰く、狙いが当たったようである。
愛原:「まあ、とにかく昼飯でも食おう」
高橋:「はい」
12時から13時の間は施設職員が使用するので、私達来訪者はその後の13時に昼食を取ることとなる。
閑散としている職員食堂で出された給食は、豚肉のカツ煮定食だった。
愛原:「皆、元気出せよ。今、絵恋さんは人間に戻るかBOWになるかの瀬戸際なんだから」
高橋:「俺は元気ですよ!」
高野:「そういうのを空元気って言うの」
〔「今日午前、成田空港を出発した大日本製薬代表取締役社長の斉藤秀樹氏は……」〕
その時、食堂のテレビから斉藤社長の名前が出て来た。
愛原:「ん!?」
高野:「斉藤社長!?」
高橋:「あ?国外逃亡か?」
〔「……もしかしたらヨーロッパの現地法人に、新型コロナウィルスのワクチンが作れる物があるかもしれないんですよ。それを直接確かめに行こうと思いましてねぇ……」〕
と、マスコミのインタビューに答える斉藤社長が映し出されていた。
どうやらもう機上の人らしい。
愛原:「え?なに?どゆこと?」
高橋:「いや、だから国外逃亡っスよね?」
高野:「国外逃亡……かなぁ?体のいい」
〔「その物とは何なんでしょうか!?」「過去にバイオテロで使われたウィルスを応用するということですか!?」「すいません。そろそろ保安検査の時間ですので……」「社長!出張はいつまでですか!?」「社長自身、感染のリスクは!?」〕
高野:「もし切り札があるのなら、娘さんをここに送ったりはしないですよねぇ?」
高橋:「ガチの国外逃亡っスよ!ゴーンといい、金持ちは都合が悪くなると外国に逃げやがりますね!」
しかし私には、社長ほどの者が国外逃亡しても無駄なような気がした。
そしてそれはバイオテロに対し、新薬開発という形で協力している社長自身が知っているはずだ。
今やバイオテロの首謀者達は、BSAAや“青いアンブレラ”によって次々と摘発されている。
もしも新型コロナウィルスまで生物兵器だったとしたら、BSAAが突入するはずだ。
それだけの機動力を持つBSAAから逃れられると思うほど、斉藤社長もバカではない。
今までBSAAに追い詰められた者達はそう思ったバカか、自分の策略で何とかできると思い込んで策に溺れて自滅した頭の良過ぎた者達だ。
愛原:「本当に切り札があるのかもしれないなぁ……」
私は首を傾げた。
善場:「お食事中、申し訳ありません!」
そこへ善場主任が駆け込んできた。
愛原:「善場主任、どうしました?」
善場:「今テレビでやっているので御存知かとは思いますが、斉藤社長が国外へ脱出しました!」
愛原:「そのようですね。拘束でもするつもりだったんですか?」
善場:「状況によってはそれも有り得ました。仕方が無いので捜査令状を取り、社長の自宅や会社を捜索しようかと思います」
愛原:「何の容疑で!?対バイオテロ特措法か何かですか?」
善場:「それは……」
部下:「主任!ちょっと……」
善場主任の部下の男性職員がやってきて、何やら耳打ちした。
善場:「お騒がせしました。失礼します」
バタバタと出て行く善場主任と部下の職員。
高橋:「何なんだ、あのねーちゃん」
高野:「女の慌てん坊はウザいだけですね」
愛原:「まあまあ。タッチの差で斉藤社長の国外逃亡……もとい、海外出張を許してしまったんだから焦ったんだよ。あの様子じゃ、第二のカルロス・ゴーンが現れても、また国外逃亡を許しちゃいそうだねぇ」
高橋:「日本の政治と法律は腐ってます!」
高野:「組織のトップを貶める為にコロナ感染拡大を喜んで利用する奴と、対立する政党を貶める為にコロナ感染拡大を喜んで利用する奴がいるくらいだからね」
高橋:「先生、午後はどうします?リサも寝てるんじゃ、何もすることないっスよ?」
愛原:「そうだなぁ……。もしかしたら、また動きがあるかもしれない。善場主任に聞いてみよう」
私はそう言って、食事を続けた。
それから1時間経ち、昼食を片付けると、また善場主任がやってきた。
善場:「すいません。お話があるので、また会議室に来て頂けますか?」
愛原:「いいですよ」
食堂から会議室へ移動する。
高橋:「食った後の会議は眠くなりますよ」
愛原:「ただの会議じゃないと思うぞ」
会議室に入って適当に席に着くと、善場主任が言った。
善場:「実は先ほど、斉藤社長からファックスがこちらに届きました」
愛原:「ファックスが!」
高野:「で、何ですって?」
善場:「斉藤絵恋さんには、確かに予防接種としてウィルスを投与したとのことです。だからあのコには、様々な抗体があったんですね」
愛原:「しかし実際、BOW化しかかってることは?」
善場:「これは迂闊なことだったということです。生まれつき抗体を持っているならまだしも、後天的にウィルスを投与して抗体を作っても、他のウィルスとケンカして変異する恐れがあると最近知ったとのことです」
愛原:「そんなことがあるんですか?私だって毎年インフルエンザのワクチンを打ってますけど、そんな話聞きませんよ?」
善場:「それは1年空けてるからですよ。しかし、不思議ですね。BSAAの関係者などは、過去の兵器ウィルスの予防接種を受けているのです。もちろん、それまで世界を騒がせたウィルス全てです。にも関わらず、BSAAの関係者にはそのような変異の現れた者の報告は出ていないのです」
愛原:「よほどのレアケースかな?」
高野:「電気を発生させるものといったら、TとGの混合とか、強化型Cウィルスとかですよね?」
善場:「そうですね。……ん?Cウィルス?」
高野:「Cウィルスにもワクチンはあるでしょ?」
善場:「ありますけど……」
善場主任は考え込んだ。
何かか繋がりそうな感じがするのだが、上手く繋がらないといった感じだった。
善場:「ちょっと、CウィルスとTアビスの検査を絵恋さんにするよう伝えてくれない?」
部下:「了解しました」
部下は大きく頷くと、会議室を出て行った。
愛原:「何か思い当たる節が?」
善場:「ええ。気のせいだといいんですけど……」
生物兵器としてのウィルスは、ワクチンも危険物であったか。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
Tアビスワクチンを投与されている絵恋さんは、未だに研究室のベッドで眠っている。
善場主任曰く、狙いが当たったようである。
愛原:「まあ、とにかく昼飯でも食おう」
高橋:「はい」
12時から13時の間は施設職員が使用するので、私達来訪者はその後の13時に昼食を取ることとなる。
閑散としている職員食堂で出された給食は、豚肉のカツ煮定食だった。
愛原:「皆、元気出せよ。今、絵恋さんは人間に戻るかBOWになるかの瀬戸際なんだから」
高橋:「俺は元気ですよ!」
高野:「そういうのを空元気って言うの」
〔「今日午前、成田空港を出発した大日本製薬代表取締役社長の斉藤秀樹氏は……」〕
その時、食堂のテレビから斉藤社長の名前が出て来た。
愛原:「ん!?」
高野:「斉藤社長!?」
高橋:「あ?国外逃亡か?」
〔「……もしかしたらヨーロッパの現地法人に、新型コロナウィルスのワクチンが作れる物があるかもしれないんですよ。それを直接確かめに行こうと思いましてねぇ……」〕
と、マスコミのインタビューに答える斉藤社長が映し出されていた。
どうやらもう機上の人らしい。
愛原:「え?なに?どゆこと?」
高橋:「いや、だから国外逃亡っスよね?」
高野:「国外逃亡……かなぁ?体のいい」
〔「その物とは何なんでしょうか!?」「過去にバイオテロで使われたウィルスを応用するということですか!?」「すいません。そろそろ保安検査の時間ですので……」「社長!出張はいつまでですか!?」「社長自身、感染のリスクは!?」〕
高野:「もし切り札があるのなら、娘さんをここに送ったりはしないですよねぇ?」
高橋:「ガチの国外逃亡っスよ!ゴーンといい、金持ちは都合が悪くなると外国に逃げやがりますね!」
しかし私には、社長ほどの者が国外逃亡しても無駄なような気がした。
そしてそれはバイオテロに対し、新薬開発という形で協力している社長自身が知っているはずだ。
今やバイオテロの首謀者達は、BSAAや“青いアンブレラ”によって次々と摘発されている。
もしも新型コロナウィルスまで生物兵器だったとしたら、BSAAが突入するはずだ。
それだけの機動力を持つBSAAから逃れられると思うほど、斉藤社長もバカではない。
今までBSAAに追い詰められた者達はそう思ったバカか、自分の策略で何とかできると思い込んで策に溺れて自滅した頭の良過ぎた者達だ。
愛原:「本当に切り札があるのかもしれないなぁ……」
私は首を傾げた。
善場:「お食事中、申し訳ありません!」
そこへ善場主任が駆け込んできた。
愛原:「善場主任、どうしました?」
善場:「今テレビでやっているので御存知かとは思いますが、斉藤社長が国外へ脱出しました!」
愛原:「そのようですね。拘束でもするつもりだったんですか?」
善場:「状況によってはそれも有り得ました。仕方が無いので捜査令状を取り、社長の自宅や会社を捜索しようかと思います」
愛原:「何の容疑で!?対バイオテロ特措法か何かですか?」
善場:「それは……」
部下:「主任!ちょっと……」
善場主任の部下の男性職員がやってきて、何やら耳打ちした。
善場:「お騒がせしました。失礼します」
バタバタと出て行く善場主任と部下の職員。
高橋:「何なんだ、あのねーちゃん」
高野:「女の慌てん坊はウザいだけですね」
愛原:「まあまあ。タッチの差で斉藤社長の国外逃亡……もとい、海外出張を許してしまったんだから焦ったんだよ。あの様子じゃ、第二のカルロス・ゴーンが現れても、また国外逃亡を許しちゃいそうだねぇ」
高橋:「日本の政治と法律は腐ってます!」
高野:「組織のトップを貶める為にコロナ感染拡大を喜んで利用する奴と、対立する政党を貶める為にコロナ感染拡大を喜んで利用する奴がいるくらいだからね」
高橋:「先生、午後はどうします?リサも寝てるんじゃ、何もすることないっスよ?」
愛原:「そうだなぁ……。もしかしたら、また動きがあるかもしれない。善場主任に聞いてみよう」
私はそう言って、食事を続けた。
それから1時間経ち、昼食を片付けると、また善場主任がやってきた。
善場:「すいません。お話があるので、また会議室に来て頂けますか?」
愛原:「いいですよ」
食堂から会議室へ移動する。
高橋:「食った後の会議は眠くなりますよ」
愛原:「ただの会議じゃないと思うぞ」
会議室に入って適当に席に着くと、善場主任が言った。
善場:「実は先ほど、斉藤社長からファックスがこちらに届きました」
愛原:「ファックスが!」
高野:「で、何ですって?」
善場:「斉藤絵恋さんには、確かに予防接種としてウィルスを投与したとのことです。だからあのコには、様々な抗体があったんですね」
愛原:「しかし実際、BOW化しかかってることは?」
善場:「これは迂闊なことだったということです。生まれつき抗体を持っているならまだしも、後天的にウィルスを投与して抗体を作っても、他のウィルスとケンカして変異する恐れがあると最近知ったとのことです」
愛原:「そんなことがあるんですか?私だって毎年インフルエンザのワクチンを打ってますけど、そんな話聞きませんよ?」
善場:「それは1年空けてるからですよ。しかし、不思議ですね。BSAAの関係者などは、過去の兵器ウィルスの予防接種を受けているのです。もちろん、それまで世界を騒がせたウィルス全てです。にも関わらず、BSAAの関係者にはそのような変異の現れた者の報告は出ていないのです」
愛原:「よほどのレアケースかな?」
高野:「電気を発生させるものといったら、TとGの混合とか、強化型Cウィルスとかですよね?」
善場:「そうですね。……ん?Cウィルス?」
高野:「Cウィルスにもワクチンはあるでしょ?」
善場:「ありますけど……」
善場主任は考え込んだ。
何かか繋がりそうな感じがするのだが、上手く繋がらないといった感じだった。
善場:「ちょっと、CウィルスとTアビスの検査を絵恋さんにするよう伝えてくれない?」
部下:「了解しました」
部下は大きく頷くと、会議室を出て行った。
愛原:「何か思い当たる節が?」
善場:「ええ。気のせいだといいんですけど……」
生物兵器としてのウィルスは、ワクチンも危険物であったか。