報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「初日の検査終了」

2020-03-21 19:48:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日17:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 本日の私の検査は終了した。
 ところが絵恋さんに何か悪いものが見つかったらしく、彼女とBOWたるリサは検査続行となった。
 私達は先に地上の研修センターに戻っても良かったらしいが、リサが寂しがるので、彼女らが終わるまでそこに留まることにした。
 で、ただ待つのもヒマなので、資料室を使わせてもらうことにした。

 職員:「失礼します。まもなくお時間ですので、退室をお願いします」
 愛原:「あ、はい」

 私はとある記録映像を観ていたのだが、ヘタなホラー映画よりも不気味で怖い映像であった。
 バイオハザードたけなわの霧生市を私達は駆けずり回って生き延びたわけだが、霧生市の別の場所ではどんな感じだったのかがまとめられている資料があったので。
 要は市内の防犯カメラの映像とか、地元マスコミが撮影したテレビカメラとか、車のドライブレコーダーの映像とか、そういうものだ。
 ハンターに投げ飛ばされた人が防犯カメラに当たり、カメラが壊れて砂嵐になるところとか、地元のマスコミが暴動事件として報道していたところ、リポーターの後ろから噛み付いてきたゾンビの映像とか、車で逃げようしたものの、ゾンビの大群に突っ込んでしまい、ゾンビに車から引きずり出される人の映像とかがあった。

 愛原:「よくあれだけの映像をまとめましたねぇ。まるでYouTubeを観ているようだ」
 職員:「政治家に惨状を報告するには、ただの文書だけではダメなのですよ」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「おい、これ、アネゴじゃねーのか!?」

 高橋が一枚の写真を出してきた。
 そこには大火災を起こした市街地を歩くゾンビ達に向かって、ライフルを放つ女性の横顔が写っていた。
 だが、写真はどうも霧生市ではないような気がする。
 英語の看板とかが目立つから、アメリカのどこかだろう。
 恐らく、ラクーン市かトールオークス市ではなかろうか。

 職員:「申し訳ありませんが、お時間ですので……」
 高野:「だってさ。早いとこ元あった場所にしまいなよ」
 高橋:「あの善場のねーちゃん、本当に嘘言ってるのか?」
 高野:「ええ。本当に冗談が好きな公務員さんね」
 愛原:「多分その写真、高野君じゃなく、本物のエイダ・ウォンじゃないの?」

 資料室の中にはBSAAの幹部職員の名簿や、それに関わる重要人物についての資料もあった。

 高野:「きっとそうですよ」

 私達は資料を片付けて、資料室を出た。

 愛原:「いやあ、勉強になりました。ありがとうございました」
 職員:「いえ……」

 レセプションに行くと、リサと絵恋さんが待っていた。
 もちろん、善場主任もいる。

 愛原:「よお、リサ。どうだった?」
 リサ:「私は運動能力とか、第3形態まで変身させられた」
 愛原:「第3形態!?大丈夫なのか!?」
 リサ:「はい、これ。先生にあげる」

 そう言ってリサは私に黒い羽根を渡してきた。
 カラスの羽根か?ん?それにしては、少し大きいな。

 愛原:「何これ?」
 リサ:「羽根」
 愛原:「いや、分かってる。何の?」
 リサ:「私の」
 愛原:「リサの!?」
 善場:「リサさんの第3形態、凄かったですよ」
 愛原:「やっぱその……『異形の者』になるんでしょ?」

 一瞬『化け物』という言葉が出かかったが、さすがにリサに悪いのでそれは引っ込めた。

 善場:「後で写真はお見せします。むしろ第3形態の方を第2形態にした方がいいかもしれませんね」
 愛原:「一体、どういうことなんだ?」
 善場:「こちらのリサ・トレヴァーはまだまだ進化できるようです。背中に翼を生やして飛ぶことができました」
 愛原:「な、何だってー!?」

 空を飛ぶBOWなんて聞いたことないぞ!
 ヘリコプターなどに便乗して襲ってくるBOWの映像ならさっき観たけど!

 リサ:「今度、先生を抱えて飛んであげるね」
 愛原:「凄いな!ヘリコプター要らずじゃん!」
 善場:「明日、写真や映像をお見せします。……問題は斉藤絵恋さんの方なんですが……」
 愛原:「そんなに凄いものが?」
 善場:「どう検査しても、彼女からはBOWの反応しかしないんです」
 愛原:「は!?」

 私は絵恋さんを見た。
 絵恋さんは青ざめた様子で呆然としていた。

 愛原:「いや、だって彼女、普通の人間ですよ。私はリサのBOWとしての能力は何度も見ていますが、絵恋さんは変化すら見たことがない」
 善場:「ええ。今のところはまだ変化すらできないでしょう。しかし、その能力の片鱗は出ているようです」
 愛原:「何のBOWですか!?」
 善場:「それは分かりません。ですが富士宮市におけるバイオテロ事件において、リサ・トレヴァーだけではなく、斉藤絵恋さんも狙われた理由がそれであると考えると、こちらも捜査はしやすくなります。引き続きの御協力をお願いします」

 リサに関しては保護者の私に一任されているが、絵恋さんに関しては斉藤社長という立派な父親がいるのだから、そちらに同意を取り付けてもらいたいものだ。

[同日18:00.天候:晴 同センター2F食堂]

 研究施設をあとにした私達は一旦部屋に戻ると、再び食堂に集まって夕食を取ることにした。

 高橋:「何だァ?自分が化け物だと知ってショックを受けて、メシも喉を通らなくなんねーのか?」
 絵恋:「うるっさいわね!あんなの何かの間違いよ!こうなったら、食べて食べて食べまくってやるんだから!」
 リサ:「サイトー、その意気」
 愛原:「おいおい。食べ放題じゃないんだから、程々に頼むよ」

 夕食はチキンカツに生野菜、サバの味噌煮に味噌汁、漬物に御飯と味噌汁がお代わり自由というものだった。

 高橋:「先生、ビール買って来ました」
 愛原:「おっ、ありがとう」

 高橋が自販機コーナーで缶ビールや缶チューハイを買って来た。

 愛原:「じゃあ皆、今日は御苦労さん。検査は明日で終わりだから、それまで頑張ろう」
 高橋:「はい!」

 食堂のテレビでは相変わらず新型コロナウィルスのことばかりが取り上げられていた。
 中国で起きたバイオハザード事件についてはあれ以来何も報道されていない。
 それにしても、絵恋さんからBOWの反応があったなんて意外な展開だ。
 私達も霧生市でTウィルスには感染しただろうが、どうやら私には最初から抗体があったらしいのと、高橋と高野君にあってはワクチンを接種したことで、やはり免疫力が付いている。
 そういうことではないのだろうかと思ったが、いきなりBOWという単語が出て来たのだから、やっぱり……。
 いや、よく分からん。
 リサの新しい能力についても意外だったし、明日になればもう少し分かるのだろうか。
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“私立探偵 愛原学” 「午後の検査」

2020-03-21 11:43:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日14:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 昼食を終えた私達は、午後からの検査に取り掛かった。
 しかし、連れて行かれたのは会議室だった。

 善場:「午後からもよろしくお願いします。但し、午後の検査は文書による聞き取り調査と致します」

 机の上には文書が置かれていた。
 そこには質問項目がずらずらと並べられていて、それに記述式や選択式で答えるというものだった。

 高橋:「飯食った後で座学じゃ、眠くってパネェぜ」
 愛原:「お前は午前中寝てたろ」
 高橋:「あれは一服盛られたんですって!なぁ、おい!?」

 高橋は善場主任を睨み付けた。
 しかし善場主任は咳払いをしただけだった。

 善場:「とにかく、この時間はこれと致します。時間は1時間、15時までとしましょう。それでは始めてください」

 私が問題文を見ると、そこには私が探偵を始めたきっかけだとか、霧生市のバイオハザード事件をどうやって生き抜いたかを問う内容になっていた。
 何だこりゃ?
 過去に善場主任に聞き取り調査をされて、それで答えた内容と重複していると思うが……。
 私のペンが止まったのは、豪華客船“顕正号”におけるバイオハザード事件だった。
 これについては私の場合、殆ど答えることができなかった。
 乗船したきっかけだとか、そこまでである。
 しかし、これは……皆、同じ問題なのだろうか?
 少なくともリサや絵恋さんに同じ問題を出しても、殆ど答えられないと思うが……。

 それから1時間後……。

 善場:「お疲れ様です。予定時間となりましたが、回答は終了しましたでしょうか?」
 愛原:「ええ、一応」
 高橋:「先生の顔を立てて、一応真面目に答えてやったぜ」
 善場:「ありがとうございます」

 私が回答用紙を提出した時、善場主任に聞いてみた。

 愛原:「この問題文、1人1人内容が違うのか?」
 善場:「ええ、その通りです。愛原所長もお気づきだと思いますが、所長に出した問題をリサ・トレヴァーは答えられないでしょうから」
 愛原:「それもそうだ」

 ではリサには、どんな問題が出されたのだろうか。

 善場:「皆さん、ご協力ありがとうございました。愛原所長以下3名の方々は、これで本日の検査を終了致します」
 愛原:「えっ、もう終わり?」
 高橋:「やっと地上に出れるぜぇ~」
 高野:「以下3名?愛原先生と、あとは誰ですか?」
 善場:「高橋助手と高野事務係です」
 愛原:「リサはともかく、絵恋さんもまだ続くのか?」
 善場:「ええ、そうなんです」

 リサはともかく、絵恋さんまで何故?

 善場:「むしろ我々としては斉藤絵恋さんを調べたいと思っています」
 愛原:「な、何だって!?」

 絵恋さん、検査で何か見つかったのか?

 愛原:「絵恋さん、検査で何か見つかったのか?」
 善場:「はい。ですが、それが何かはお教えできません」
 愛原:「そんなに!?」
 善場:「そういうわけです。斉藤絵恋さん、ご協力願えますね?」
 絵恋:「わ、私は……リサさんと一緒ならいいです」
 善場:「もちろんリサさんはリサさんで、引き続き検査がありますので、それは可能ですよ」
 高橋:「俺達は帰っていいんだな?」
 善場:「もちろん。但し、地上の宿舎までですよ?本当に帰宅はしないでくださいね」
 高橋:「ちっ……」
 愛原:「高橋」
 リサ:「やー!先生も一緒にいてくれなきゃ、や!」

 リサは私に抱き着いた。

 高橋:「リサ、先生に何てことしやがる!?そこ代われ!」
 愛原:「高橋、お前少し黙ってろ」
 高野:「せめて先生にくらい、絵恋さんのどこが悪いのか教えてあげてもいいんじゃないですか?」

 すると善場主任、冷たい目を高野君に向けた。

 善場:「個人的にはあなたの検査も続行したいくらいです。明らかに、『エイダ・ウォン』の遺伝子情報があなたの中に入っています」
 高野:「! さすがは国家公務員さんは、御冗談もインテリですねぇ」
 愛原:「高野君、それは本当なのかい?」
 高野:「先生。世の中にはそっくりな人間が3人いるというじゃありませんか。その程度のレベルですよ」
 愛原:「……そうかい」
 善場:「いかがなさいますか?宿舎に戻られてもいいですし、ここに留まって頂いても構いません」
 愛原:「今日のこのコ達の検査は何時ごろまで掛かりますか?」
 善場:「夕食の時間には間に合わせたいと思いますので、17時くらいには終わらせたいと思います」
 愛原:「17時か。あと2時間くらいはあるな。このビジター権限で、資料室や映写室には入れましたね?」
 善場:「それは可能です」
 愛原:「ちょっと気になる物があるので、資料室の資料閲覧と映像観賞をしてもいいですか?」
 善場:「分かりました。すぐ担当部署に許可させましょう」

 善場主任、リストタグの権限は『一般職員』扱いだが、実際は上級職員くらいの立場にあるのではないかと思った。

 愛原:「それじゃリサ、俺達はお前達が戻って来るまで、この施設で待ってるから。それならいいだろ?」

 リサとしては検査場まで一緒に来てもらいたかったようだが、忍耐力のあるコなのだろう。
 少し考えてから首を縦に振った。

 善場:「あなたは所長達を資料室に案内して」
 部下:「分かりました」

 善場主任は一緒に来ている部下の男性職員にそう指示した。

 善場:「じゃ、あなた達は私についてきてください」
 リサ:「はい」
 絵恋:「はい」
 部下:「では愛原所長方は、こちらへ」
 愛原:「お手数お掛けします」

 私達は黒スーツを着た善場主任の部下に付いて行った。

 愛原:「高野君」
 高野:「何でしょうか?」
 愛原:「人には秘密の1つや2つ、当たり前に存在する。キミの正体が何であろうと、俺はキミをうちの事務所の事務係として扱うよ」
 高野:「ありがとうございます」
 高野:「先生、俺は!?俺は先生には既に秘密を暴露して……!」
 愛原:「あー、分かった分かった。俺はお前を助手として扱うよ」
 高橋:「嫁でもいいですよ!?」(*´Д`)
 愛原:「あー、聞こえねぇ聞こえねぇ!聴力検査、もう一回やってもらった方がいいかな?」
 高野:「頼めばやってもらえるかもしれませんね?」

 私達はそういうやり取りをしながら、資料室へと向かった。
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