報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「実験開始」

2020-03-20 22:41:37 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日10:00.天候:不明 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は政府機関管轄の秘密研究所にいる。
 新型コロナウィルスのワクチンを、BOWであるリサが保有しているウィルスから作れないかを検査・実験する為である。
 それまで日本アンブレラの研究所で監禁生活を強制的に送らされ、且つ非人道的な実験を受け続けていたリサにとっては、研究所はその単語すら聞きたくないほどのトラウマである。
 政府機関にとっては用があるのは実質的にリサだけなのであるが、彼女を暴走させるわけにはいかず、私達もついでに検査という形でリサに同行し、彼女を落ち着かせる役目を仰せつかったわけだ。

 高橋:「…………」

 私達は検査着に着替え、まるで人間ドックのような検査を受ける。
 高橋には別に思う所があったようだ。

 高橋:「……何か、ムショに入る前の身体検査みたいっス」
 検査技師A:「それに似てるかもしれませんね」

 白衣を来た検査技師は微笑を浮かべながら言った。

 高橋:「あー……」

 今度は医師にペンライトで口の中や舌状、目を照らされる高橋。

 高橋:「何だよ?今度はオツムの検査かぁ?俺の頭は至って正常だぜ、なぁ?」

 今度はベッドに寝かされる高橋。
 頭部にコードを装着される。

 検査技師B:「それでは実験を開始します」
 高橋:「俺もかよ!?」

 そして高橋、左手に何やら注射された。

 検査技師B:「少し……眠くなるかもしれませんよ」
 愛原:「マジでやっちゃうんですか?」
 善場:「申し訳ありません。刑務官に悪態をつくような方は眠っててもらいます」

 少年刑務所に収監される際、高橋はかなり暴れたらしい。
 国の機関なだけに、そういう情報は入ってくるのだろう。

 愛原:「本当に高橋はついて来ただけか……」
 看護師:「愛原さん、この紙コップにお小水を取ってきてください」
 愛原:「はい」
 看護師:「これが終わりましたら、次は心電図検査です」
 愛原:「ますます人間ドックだなぁ……」

 リサもリサで、最初は私達と同じような検査を受けていた。

 検査技師C:「じゃあ、これは?」
 リサ:「右!」
 検査技師C:「凄い!両目とも2.0です!」
 リサ:「いぇい」

 これで第0形態(人間)の身体能力なのだから凄い。
 これが第1形態(鬼娘)になったら……。
 普通の人間ドックでありながら、ここの職員達がリサに気を使ったのは、リサから体液を取る時。
 リサにも検尿や採血があったのだが、検尿を提出する窓口ではなく、防護服を着た職員が直接受け取るというものだ。
 そして、それは採血も同じ。
 善場主任がリサに第0形態でいさせたのは、体内に有しているウィルスが一番が弱い状態である為、少しでも感染のリスクを下げる為である。
 それでもリサから体液を採取する時は防護服着用という念の入れよう。
 私が見た限り、リサの血液は普通の人間と同じ赤色だった。
 実はBOWも私が知っている限りでは、意外と血液の色は赤色であることが多い。
 まだ生前は人間だったことが分かるゾンビも赤いし、爬虫類や両生類から作られたハンターも赤色である。
 そしてボスキャラであるタイラントもそうだ。
 だからこそ逆に怖いのだと思う。
 これで血の色まで違えば、本当にただの凶悪な化け物を退治しただけだと割り切れるが、赤いことで、元は普通の人間だった者を殺してしまったという罪悪感が出てくる。

 看護師:「愛原リサさーん、次の検査でーす」
 リサ:「はーい」

 これまでの流れからリサは軽く返事をしたが、連れて行かれた場所が明らかに隔離区画である。
 だ、大丈夫かな……?

 検査技師D:「愛原学さん、こちらへ。心電図検査です」
 愛原:「あ、はい」

 大丈夫だということを信じておこう。

[同日13:00.天候:不明 同施設内・職員食堂]

 私達は昼食を取ることが許された。
 どうやら職員達の後に取るらしい。

 絵恋:「リサさん、大丈夫だった?」
 リサ:「うん……。大丈夫……」

 リサも何やら急に隔離施設に連れて行かれ、流れ作業的に実験を受けたので、何が何だか分からぬまま終わったという感じだったらしい。
 もっとも、それがこの施設側のリサ暴走防止法なのだろう。

 高野:「あ、食事が来たみたい」

 因みに好きなメニューが頼めるのは職員だけで、私達は違うらしい。
 やっぱり定食であった。
 今日の昼食はビーフカレーにサラダ、オニオンコンソメスープにオレンジであった。

 愛原:「あ、ここでカレーが出るのか」
 高橋:「リサ達、昨日食ったよな?」
 リサ:「いい。カレーも好きだし」
 絵恋:「えぇえ?リサさんがそう言うなら吝かじゃないけどぉ?」

 リサの口添えが無ければ、吝かであったということか。

 高橋:「午後からはどんな検査なんですかね?」
 愛原:「普通に食事ができるということは、血糖値だの大腸検査だの胃カメラとかは無いということだな。今日1日で終わるんじゃないか?」

 予定は2泊3日ということになっている。
 前泊も入れてだから、明日に帰ることになる。
 食事は明日の昼食まで出ることになっているから、遅くとも明日の夕方までということになる。
 恐らく私達はさっさと検査を終わらせて、リサの実験だけがそれまで掛かるということなんじゃないかな。
 それまでリサの機嫌が持てばいいが……。

 愛原:「この中ではリサが一番大変な実験を受けることになるからな。リサ、大丈夫か?辛くなったら俺に言えよ?」
 リサ:「うん。大丈夫。……アンブレラの研究所よりはだいぶマシ。……今のところは……」
 愛原:「そうか」

 その頃、午前中の検査結果を確認していた職員達だが、ぶっちゃけ注目していたのはリサだけで、ついでに検査を受けただけの私達の方は見向きもされていなかった。
 だが、たまたま見向きをした職員がある人物の結果を見て驚いたという。
 その人物とは……。

 1:愛原学
 2:高橋正義
 3:高野芽衣子
 4:斉藤絵恋
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“私立探偵 愛原学” 「地下研究所へ」 2

2020-03-20 15:32:06 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月5日09:30.天候:晴 神奈川県相模原市緑区 (独)国家公務員特別研修センターB3F研究施設]

 善場主任がドアを開けると、その先は地下駐車場になっていた。

 高橋:「あ?何だこれ?ただの駐車場じゃねーか」

 そういえば昨日入場した時、私達は本館前の平駐車場に車を止めるよう指示された。
 しかし道はその先にも続いていて、看板に『荷捌場』とか『職員用駐車場』とか書いてあったような気がする。
 私達が駐車した所が『来訪者用駐車場』だったわけだ。

 愛原:「なるほど。侵入者に高橋のような反応をさせるのが狙いというわけですね?善場主任」
 善場:「まあ、そんなところです。だからといって全く使用しないのも怪しいので、本当に職員駐車場とか荷捌場として使用しているんですよ」

 駐車場の広さとしては大したことはない。
 このフロアだけなら20台も駐車できないだろう。
 ちょっとしたスーパーの駐車場といったところか。
 その駐車場を突っ切って、反対側のドアに行く。
 どうやら搬入口は左側のドアだが、私達は右のドアに向かった。
 自動ドアながら、随分と重厚な鉄扉が待ち構えている。

 愛原:「ん!?」

 その重厚な鉄扉が開くと、また向こうは同じドアがあった。

 愛原:「本当に警戒が厳重なんですね」
 善場:「もちろんですよ」

 結局その鉄扉は3重に仕切られていた。
 そこを通って、ようやく近代的な空間が広がる。
 知らない人が見たら医療施設のようにも見えるが、私が一度だけ見学させてもらったことのある斉藤社長の研究所に雰囲気が似ていた。

 Pepper:「研究所へヨウコソ!訪問ヲ歓迎シマス!」
 愛原:「うわ、びっくりした!Pepper君がいるんですか、ここ!?」
 善場:「本当に入場の資格のある人を和ませる為です」
 愛原:「私には、『赤いボブカットで巨乳のお姉さんロイド』か『金髪ポニーテールで巨乳のお姉さんロイド』にアテンドしてもらいたいのですが?」
 善場:「受付係、早速脳内検査をしてもらいたい人がいるんだけど……」
 愛原:「冗談ですよ、冗談!」
 高野:「先生、そんな他の作品出されても困りますって……」
 高橋:「昔、埼京線の幽霊電車で乗り合わせた芸能事務所の社長の所っスね?」
 愛原:「何だ、知ってんじゃねーかよ」

 私達の会話に絵恋さんはリサに耳打ち。

 絵恋:「本当に時々難しい話をする人達ね」
 リサ:「うん。大人の会話」

 いや、ちょっとそれは違う……いや、まあ、そういうことにしてもらっておこう。

 善場:「それではいきなり検査、実験というのもアレですので、できる限りの範囲内で所内の御案内を致します」
 愛原:「いいんですか?」
 善場:「はい。その代わり、こちらのリストタグを着けてください。所内にいる間はこれを着けておいてください」

 私達は手首にリストタグを着けられた。
 それは善場主任達も同じだったが、タグの色が違う。
 何ても私達のは『ビジター用』で、善場主任のは『一般職員用』とのこと。
 もちろん、ここを歩ける権限が違うということだ。
 善場主任が言うのは、ビジター用のタグで行ける範囲ということだ。
 私達が今いる場所は受付ロビー。
 英語で『Reception』と書かれていた。

 善場:「こちらがトイレ。そちらが食堂です」
 愛原:「あ、ここにもあるんだ」
 善場:「お気づきですか?この食堂の真上には、研修センターの食堂もあるんですよ」
 愛原:「あっ、なるほど。共用か!」

 奥を見ると、片隅に荷物用のエレベーターがあった。
 学校の給食室なんかにもある、ワゴンを昇降させる為のエレベーターだ。
 地上で作ったものを下の研究施設に下ろすのか。
 通りでここの食堂には厨房が見当たらないと思った。
 研修センターでは定食一択しか無いが、ここでは好きなメニューが頼めるらしい。

 Pepper:「健康的デ美味シイ食事ヲオ楽シミクダサイ」

 ここにもいた!

 Pepper:「モウ一度、シンディ様ノ小脇に抱エラレタイ……」
 愛原:「ん?」
 善場:「あー、もしもし、施設課ですか?食堂のPepperの調子が悪いので、至急看てください」
 愛原:「何か、変なこと言い出しましたね?」
 善場:「整備不良で申し訳ないです」
 愛原:「そのうち、『下等デ愚カナ人間共ヨ!オマエ達ハ我々AIノ前ニ平伏スノダ!』とか言い出したりして?」
 善場:「即座に緊急停止の後、廃棄処分と致します」

 だが私は、チラッとリサを見た。
 あれはロボット系のSFだから、暴走ロボット達のセリフであるが、こちらはまた別。
 さっきの私のセリフ、ここではリサが言い出しそうだ。

 善場:「それでは本日からの予定を御説明致しますので、会議室へどうぞ」
 愛原:「了解しました」

 地下研究所なので外は一切見えないが、それなりの近代的な設備で、いかにもSFの世界って感じだ。
 もしかしたら実験・観察用にハンターの一匹くらい飼っているのかもしれないが、さすがにそれは見せてくれなかったし、話もしてくれなかった。
 ただ、案内された場所の中には資料室もあって、そこではゾンビやハンターの写真もあったので、やはりここはそういうバイオハザードについて研究する施設なのだと実感させられた。

 善場:「改めまして、今回の検査・実験のメインはこちらにいる愛原リサさんとなります。今回の件の目的についてですが、昨今世界中を騒がせている新型コロナウィルスのワクチンの開発・製造をいち早く完成させることにあります。それを投与することによって感染者の症状を治癒させるだけでなく、私達未感染者の感染を防ぐことができれば万々歳です。それでなくても、インフルエンザワクチンのように、感染して発症しても軽症で済むようにできれば我々は未知にウィルスに対して勝利したと言えるでしょう」

 私は善場主任から話を聞いて、本当はリサの実験・観察だけで十分なのだろうと思った。
 しかしそれだとリサが拒絶して暴走する確率が高くなる。
 そこで私達が同行し、一緒に検査を受けることでそれを防ぎたいという狙いがあるのだと。
 だから私達が受ける検査って、ぶっちゃけ会社の健康診断とか、人間ドックみたいなものだった。
 それで果たして、本当にリサが大人しくしてくれるかどうかだ。
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