報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵の富士旅情」 高野芽衣子の正体

2020-01-20 20:27:38 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日15:30.天候:晴 静岡県富士宮市上条 大石寺宝物殿前]

 高野:「何のことでしょうか?起動キーのようなものでしたら、恐らく家にあると思いますので、探して提出しますよ」
 善場:「どうあっても、正体について話さない気ですか?」
 高野:「私は高野芽衣子ですよ?このように免許証もあります。お疑いでしたら、いくらでも調べて頂いて構いません」

 どうやら善場主任は何の証拠も持っていないらしい。

 善場:「……今はCウィルスを使用して、クローンを造ることが可能になっていますからね」
 高野:「さっきから何のお話しですか?」
 愛原:「Cウィルス。Tウィルスよりも使用する側にとっては『安全な』ゾンビウィルスだと聞いているが……」

 霧生市やラクーン市でバイオハザードを引き起こしたTウィルスが発生当初は空気感染し、その後は接触感染や血液感染してパンデミックを引き起こすのに対し、Cウィルスは空気感染しかしない。
 しかも、Tウィルスが人から人へ感染していくのに対し、Cウィルスは空気感染を起こすクリーチャーからでしか感染しない。
 その為、そのクリーチャーが活動している間しかパンデミックが起こらない。
 一見、Tウィルスより使い勝手が悪そうだが、使用者側からすれば想定外の事態が起こりにくく、ゾンビもTウィルス感染者よりも若干の知性が残っていて(凶器を持ったり、フェンスによじ登る程度だが)、肉体的劣化も小さくて済む(見た目は腐乱死体になる所は同じだが、走ったり、ジャンプしたり、高い所へよじ登るなどの身体能力は残る)。
 ぶっちゃけ、インフルエンザよりも感染力が弱いのがCウィルスだ(Cウィルス感染者も初期症状はヒドい咳が起こるが、そこから感染者が発生した記録が無い)。
 で、そのCウィルスはTウィルスよりも汎用性があって、使い方によってはクローン技術に使えるという。
 一見首を傾げる話だが、Tウィルスだって、それでいろいろな化け物が作れるのだから、それよりもずっと新しいCウィルスなら、クローン技術にも使えるという話は頷ける。
 ただ、相当高度な技術が必要らしく、その技術者達は『策士、策に溺れる』ではないが、自ら感染してクリーチャーになったそうなので、この世にはいないことになっている。

 高野:「私がサナギから生まれたとでも思っているのですか?」
 善場:「少なくとも、私はそう思っています」
 愛原:「サナギ?」
 善場:「失礼ですが愛原所長、もう少し世界で起きたバイオテロのことを学ばれた方が宜しいかと思いますよ?」
 愛原:「はあ、すいません」
 高野:「確たる証拠を突き付けられたら、認めましょう。でも、私は否定します」
 善場:「それでは仕方無いですね」
 高野:「とにかく、捨てた記憶は無いので、家を探せば出てくると思います。可及的速やかに提出しますので、しばらくお待ちください」
 善場:「……分かりました。そろそろ、リサ・トレヴァー達を迎えに行かなくてはなりませんね」
 部下:「……はっ」

 善場主任が目配せすると、黒スーツ姿の男性部下が頷いて駐車場の所へ走って行った。

 善場:「車を回してもらいます。ここから駐車場まで歩くと遠いので」
 愛原:「すいませんね。善場さん達も東京へ帰るんですか?」
 善場:「いえ。私達はまだ調査があるので、市内に残ります。新富士駅までお送りしますので」
 愛原:「こりゃどうも、気を使ってもらっちゃって……」
 善場:「いいえ。調査に協力して頂いたのですから、当然です。本当は東京までお送りしたいのですが……」
 愛原:「いえいえ、そんな。帰りの新幹線のキップはもうもらっているので……」

 私は自分のスマホを取り出すと、それでリサに電話を掛けた。

 愛原:「……おかしいな。電話に出ないぞ?」
 高橋:「おおかた、エレンとイチャラブセッ○スなうじゃないスか?」
 愛原:「どこでだよ?」
 高橋:「そりゃもう、青姦……ぎゃん!」

 私は高橋の頭を引っ叩いた。

 愛原:「教育的指導が必要だな?あぁ?」
 高橋:「し、幸せです……」
 高野:「いいから、早く歩きなさいって」

 私が数歩歩きだした時だった。

 愛原:「そういえば善場さん」
 善場:「何ですか?」
 愛原:「昨日のハンターを積んでたトラック、あれは何だったんですか?」
 善場:「ああ、そういえばまだ話してませんでしたね。あれは日本アンブレラの生き残りが運んでいたものです」
 愛原:「まだいたんですか、生き残り!?」
 善場:「ええ。あのトラックが出発した場所は摘発したんですが、到着予定の場所がまだ押さえられてなくて……」
 愛原:「何か、逆のような気がしますけどね」
 善場:「この市内のどこかだとは思うんですけど、それを調べているうちにこのお寺に行き着いたのです。大山寺とそっくりな構造の境内を持つお寺なら、何か関連性は無いかなと……」
 愛原:「なるほど」

 そんなことを話しながら、公道に出た時だった。
 善場主任の部下が回して来た黒塗りのハイエースが私達の前に止まった。
 しかし乗り込んだ私達に対し、部下の男性が切羽詰まった顔で言った。

 部下:「主任、大変なことが起こりました」
 善場:「え?なに?ガソリンなら、まだだいぶあると思うけど?」
 部下:「違います!バイパスが大変なことになっています!」

 部下がインパネの横にあるナビの画面をテレビ画面に切り替えた。

〔「……繰り返しお伝えします。今日午後3時頃、静岡県富士宮市の国道139号線上で、謎の化け物が通行する車を襲撃し、多大な被害が出ています。……」〕

 高橋:「先生、ヘリの大軍が!」

 高橋が指さした先は市街地の方角だった。
 そこを私達のいる山寺の位置にまで低空飛行しているヘリコプターが何機も飛んでいた。

 愛原:「高橋、双眼鏡を貸せ!」
 高橋:「はい!」

 私は高橋が持っている双眼鏡を借りた。

 愛原:「あれは“青いアンブレラ”!」
 善場:「すぐに問い合わせてみます!」

 善場主任は自分のスマホで“青いアンブレラ”に連絡した。

 善場:「どうやらハンターを積んでたトラックは、昨日の1台だけではなかったようです!」
 愛原:「えっ?だって、トラックが出発した所は摘発したって……」
 善場:「複数あったようなんですよ!どうせそこも摘発するのは時間の問題だったんですが、我々の網をかい潜って逃げ出したのがいたみたいです。それが国道上で事故に遭って、積んでいたBOWが暴れ出したと……」
 愛原:「何たるちゃあ……!」

 と、そこへ私のスマホに電話が掛かって来た。
 相手はリサだった。

 愛原:「リサか!?今どこにいる!?」

 電話の向こうから大きな叫び声や、何かが壊れる音などが聞こえてきた。

 リサ:「先生!大変なことになった!ハンターが暴れてる!」
 愛原:「おまっ……!まかいの牧場にいたはずじゃ!?」
 リサ:「ごめんなさい。どうしても寂しくなって……そしたら、サイトーがタクシーでお寺まで行こうって言ってくれて……。向かってる最中、前を走ってたトラックからハンターが飛び出して来て……」

 昨日遭ったのはハンターが1匹だったが、今度は大型トラックに積まれていたこともあって、5~6匹はいるらしい。
 それもスタンダードタイプだけでなく、色違いの透明になる奴とか、爬虫類ではなく両生類タイプとか、赤いタイプとか、何かもう色々いるらしい。

 愛原:「絵恋さんは!?絵恋さんは無事なのか!?」
 リサ:「サイトーは大丈夫!だけど、もうコンテナが持たない!」

 リサ達は咄嗟に別のトラックのコンテナの中に隠れたらしい。
 リサの力を持ってすれば、ハンターが5~6匹いようが、簡単に八つ裂きにできるだろう。
 だが、それは周囲に隠している正体を明かすことになる。
 絵恋さんには一応正体は明かしているようだが、それでも第1形態の鬼の姿までである。
 相手が1匹や2匹だけなら第1形態で十分勝てるだろうが、5~6匹となると第2形態まで変化しないとキツそうだという。
 第2形態ともなると、触手を出したりするので、さすがに誤魔化しが効かなくなる。

 愛原:「待ってろ!“青いアンブレラ”が向かってるから、それで何とか……!」

 だが、電話の向こうから大きな音が聞こえてきた。
 そして、絵恋さんの悲鳴も。

 リサ:「コンテナが破られた!こうなったら……!」
 愛原:「おい、リサ!リサーっ!」

 私がリサと通話している間、善場主任も電話していた。

 善場:「BSAAにも出動要請を。恐らく今、富士演習場にて自衛隊と合同訓練を行っているはずですので……」
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の富士旅情」 多宝富士大日蓮華山 3

2020-01-20 10:47:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日15:00.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺 宝物殿前]

 

 私の名前は愛原学。
 仕事で静岡県までやってきた。
 今は政府エージェントの善場主任と共に、大石寺という大きな寺の境内を探索している。
 私も入ってみてビックリしたのだが、これはバイオハザードが起きた大山寺に造りがよく似ているのだ。
 しかし、私も大山寺は境内の全てを歩いたわけではない。
 にも関わらず、善場主任は私達をある場所へと連れて行った。

 愛原:「何ですか、あれは?」
 善場:「あれは宝物殿と言うそうです。信徒などの関係者にだけ公開している寺宝などが展示されています」
 愛原:「あ、なるほど。このお寺の宝物は別に保管しているわけか。でも、信徒オンリーなら俺達は入れないな?」
 善場:「ええ。何しろこの建物は大山寺にはありませんから、入る必要は無いでしょう」
 愛原:「あ、そうなの」
 善場:「この宝物殿は、元々『富士美術館』という建物でした」
 愛原:「美術館?お寺の中に?」
 善場:「はい。何でも、日蓮正宗最大の信徒団体だった創価学会が建てたものだとか……」
 愛原:「へえ、あの創価学会がねぇ……」
 高橋:「俺がいた少年院で、御経唱えてた奴いましたよ。そいつのことですね」
 愛原:「まあ、日本でも大きい宗教団体だしなぁ……」
 善場:「私が見て頂きたいのは、この池です」
 愛原:「ん?」

 宝物殿の前には、何か仕掛けがありそうな池があった。
 しかし大山寺を歩いた時には、こんな所は通らなかった。

 愛原:「これが何だと?」
 善場:「これは大山寺にもあるものです」
 愛原:「へえ!」
 善場:「大石寺には宝物殿がありますが、大山寺にはただの監視小屋みたいなものしかありません」
 愛原:「それで?」
 善場:「監視小屋の中には仕掛けを起動させる装置がありまして、その装置を作動させると、寺の地下に行けるようになっていたようです。池の水が全部抜かれて、底に地下への階段が現れるという仕掛けですね」
 愛原:「そりゃ凄い。何か、ゲームみたいだねぇ。……こっちにもあるんじゃないの?」
 善場:「恐らくあったのでしょう」
 愛原:「過去形?」
 善場:「恐らくは、創価学会の関係者だけが通行できるような地下通路が」
 愛原:「今もあるんじゃないの?」
 善場:「今は分かりませんね。どうしても調べたい場合は捜査令状を持って来ませんと」

 今は奉安堂となっている建物。
 あれもかつては正本堂という別の建物だったそうだ。
 あれが取り壊されて、その跡地に奉安堂という今の建物が建ったそうだが、その際に秘密の地下通路が見つかったのだという。
 秘密というのは、お寺の関係者ですら正体不明の通路のこと。
 正本堂の建設には創価学会が大きく関わっていたことから、学会関係者が秘密裏に作ったものではないかとされる。
 そしてそこから宝物殿(旧・富士美術館)は近い。
 大山寺がそうであったように、ここにもそこに通じていた秘密の入口があってもおかしくはない。
 だが今、創価学会は去り、その秘密を知る者は境内にはいないと。

 善場:「ここの場合は単なる宗教団体関係でのお話しで完結するでしょうが、大山寺は違います」
 愛原:「ああ。どういうわけだか信仰心の欠片も無いような日本アンブレラの関係者が、大山寺に多大な御布施を出していたって話でしょ?」
 善場:「それ故、あそこの場合は日本アンブレラの研究施設か何かに繋がっていた可能性は高いのです」
 愛原:「何とか調査できないのか?」
 善場:「BSAAの権限で封鎖されてますので、いくら私達が調査に入りたいと申し出ても却下されるのです」
 愛原:「日本政府の国家権力を持ってしてでも、国連の権限には逆らえないか」

 すると高橋が口を挟んできた。

 高橋:「さっきから黙って聞いてりゃよ、だったら結局ここに来た意味無いんじゃね?」
 愛原:「まあまあ」
 善場:「もちろん、ここで話を終わらせればあなたの言う通りです。もちろん、話にはまだ続きがあります。聞いてください」
 愛原:「高橋」
 高橋:「大丈夫です。ちゃんとオチまで聞きます」
 善場:「大山寺への調査、私達はできませんでしたが、代わりにBSAAが行いました」
 愛原:「あ、何だ。BSAAは入ったんだ」
 善場:「そこで色々なものを見つけたそうですが、その中に、私達が期待していた物がありませんでした」
 愛原:「期待していた物?」
 善場:「先ほど言った、池の仕掛けを起動する装置。その為の起動キーです」
 愛原:「増田さんが持ってたのかな?」
 善場:「いえ。警備室にも防災センターにも、そして確認できた境内警備員の全員もそれを持っていなかったそうです」
 愛原:「んん?」
 善場:「その後、新日蓮宗に確認したところ、起動キーは警備員ではなく、設備員が持っていた可能性が高いのです。管理は警備部門ではなく、設備部門の管轄だったそうなので」
 愛原:「防災センターは探索しなかったし、設備員のゾンビなんていたかなぁ?」
 高橋:「作業服を着たゾンビなら、何人かいましたけどね」
 愛原:「その中にいたのかなぁ?」
 善場:「ええ。その中にいたようです。こちらの調査で、池を管理していた者の動向を把握することに成功しました」
 愛原:「おおっ、さすが!で、その人はどこでゾンビになっていたんです?」
 高橋:「もしくはゾンビかハンターにブッ殺されたか……」
 善場:「大恩坊ですよ」
 愛原:「えっ!?」

 私は高野君を見た。

 善場:「池の管理員が大恩坊に行った際、そこでゾンビ化した信徒に襲われ、自分もゾンビ化したようです。そこに現れたのが……」
 高野:「……ま、私が犯人ということになりますかね」
 愛原:「高野君がキーを持っていたとは……!」
 高野:「取材の一環ですからね。私が抵抗している時、作業服を着たゾンビが落としたんですよ。それを咄嗟に拾ったんですけどね。その後、トイレに追い込まれて窮地に立たされていたところ、先生方に助けて頂いたんです」
 愛原:「鍵を手に入れたら、教えてくれても良かったのに……」
 高野:「すいません。あの時は気が動転していまして、あの後も色々とありましたから、すっかり忘れていました」
 善場:「その後も色々と聞き取り調査が行われたはずです。にも関わらず、あなたは起動キー以外の物は提出したのに、それだけは提出されませんでしたね?それは何故ですか?」
 高野:「だから忘れてたんですって。手に入れたはいいものの、全く使わなかったわけですし……」
 善場:「……まあ、いいでしょう。それでは起動キーを提出してください」
 高野:「今は持ってませんよ?」
 善場:「帰ってからで結構です。それとも、そもそも今は保管すらしていませんか?所属する組織に、先に提出しましたか?
 高野:「!!!」
 愛原:「な、なんだってー!?」

 高野君がどこかの組織に所属していたスパイだと!?
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