報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ベイカー組の宿泊」

2020-01-01 20:30:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[11月26日18:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷1F大食堂]

 マリアの屋敷へ到着した稲生達。
 夕食はベイカー組の滞在の歓迎会を兼ねるものとなった。
 屋敷の視察と言っても、イリーナ達が魔道師として相応しい使い方をしているか確認するだけであり、1期生の中でも古参のベイカーは既にそれが無意味なものだと分かっていたので、せいぜいイリーナの部屋だとか図書室などを見て回っただけであった。
 あとは晩秋に停電したこともあって、発電機みたいな魔法具とか。
 これについてはもうダンテから、取り換えの許可は出ている。

 稲生:「ルーシー、写真できたよ」
 ルーシー:「ありがとう」

 稲生はルーシーから借りたデジカメを持って、ルーシーが撮った写真を印刷した。
 その中には新幹線の写真もある。

 稲生:「新幹線どうだった?」
 ルーシー:「最高だったわ。また乗ってみたいね」
 稲生:「明日、帰ることになるんだよなぁ……」

 結局、滞在期間が1日延びただけであった。
 もっとも、そのおかげで北陸新幹線に乗れたのだから、良しとするべきか。

 イリーナ:「じゃあ、これで視察は終了ということでよろしいですわね?」
 ベイカー:「まあ、いいでしょう」
 イリーナ:「後で確認書にサインを頂けます?」
 ベイカー:「明日の出立までにはしておきます」
 稲生:「先生方、どうぞ」

 稲生はイリーナ達を上座に案内した。
 大きな長方形のテーブルであり、上座はエントランスから最も離れた短辺部分である。
 しかしそこにイリーナはもちろんのこと、その先輩のベイカーですら座ろうとしない。
 そこはダンテの席だと認識されているからだ。
 もっとも、結局今回の“囲む会”においては、この屋敷が使用されることは無かったが。
 大魔道師達が座ったのは、その短辺部分に最も近い長辺部分の席である。
 そこに向かい合って座った。
 自然とイリーナの隣にマリア、マリアの隣に稲生が座り、向かい側のベイカーの席にルーシーが座ることになる。

 稲生:「あ、ベイカー先生。これ、明日の航空チケットです」
 ベイカー:「ありがとう」

 代わりにルーシーが受け取った。
 チケットは信州まつもと空港を11時35分に離陸する新千歳空港行きの物と、そこからウラジオストクへ行く乗継便のチケットだった。

 稲生:「ウラジオストクまで行かれるんですか」
 ベイカー:「ええ。あそこにはナディアがいるからね。あのコの魔法具を譲ってもらおうかと思って」
 稲生:「ナディアさんですか!」
 ベイカー:「知ってるの?」
 稲生:「日本で何度かお会いしたのと、僕の従兄と結婚したんですよ!」
 ベイカー:「まあ、そうなの。あのコも素直な入門者だったから、いわゆる性的なトラウマは無いって聞いてたから、いずれは結婚するものとは思っていたけど……。あなたの従兄なら、きっと素敵な人ね」
 稲生:「はあ……。(見た目は僕よりも更にヲタクなんだけど……)」
 マリア:「ミスター悟郎は運のいい人間だったんです。これが他の魔女なら、とっくにこの世から消えていたことでしょう」
 ベイカー:「運の良さも才能のうちだからね。稲生君みたいに」

 だが、稲生悟郎も勧誘されるほどの才能は持ち合わせていなかった為か、ダンテ一門内における位置付けは『協力者』である。
 『たまたま門内の弟子と結婚できて、たまたまその弟子の仕事の手伝いができて、たまたまその弟子の住む町(ウラジオストク)で上手く生活できているだけの普通の人間』と、門内の資料には書かれている。

 稲生:「ありがとうございます」
 イリーナ:「空港まで車を出しましょうか?」
 ベイカー:「いえ、この家の最寄りの駅まで乗せてってちょうだい。そこからは電車とバスで行くわ」
 稲生:「そうなると、松本駅ですね。多分、途中で乗り換えることになると思いますけど、大丈夫ですか?」
 ベイカー:「ええ、大丈夫よ。ただ、時刻とか乗り場を教えてくれると助かるわ」
 稲生:「分かりました。僕に任せてください」
 ベイカー:「頼むわね」

 稲生は食事を終えると急いで部屋に戻り、ベイカー組が白馬駅から松本空港に向かう為の詳しい資料を作った。

[11月27日:02:00.天候:晴 マリアの屋敷1F西側・マリアの部屋]

 マリアの部屋にはベッドが2つある。
 普段は1人で使うのだが、今回は隣にルーシーが寝ていた。
 因みにイリーナとベイカーは、2階のスイートルームで寝ている。
 ダンテ用に遠慮しないのかと思うが、ここは普段から使っておかないと部屋が傷んでしまうという理由で使っている。

 マリア:「ルーシー、ルーシー」

 マリアはルーシーが変な声を上げているので目が覚めた。
 それはまるで悪夢にうなされているようであり、しかし性的に気持ちの良い声を上げているかのようでもあった。

 ルーシー:「!!!」

 バッとルーシーが飛び起きる。

 マリア:「どうした?変な夢でも見た?」
 ルーシー:「マリアンナ!?……あ、うん。そうみたい」
 マリア:「汗びっしょりだよ?」
 ルーシー:「ご、ゴメンね。汗でベッド汚しちゃって……」
 マリア:「いや、これくらい、いいけどさ。それより着替えて、シャワー浴びて来たら?」
 ルーシー:「う、うん。そうするね」

 ルーシーは白いTシャツに黒いショートパンツをはいている。

 マリア:「人形に言って、急いで洗っておくよ」
 ルーシー:「ゴメンね、ありがとう」

 ルーシーは自分の荷物の中から着替えを出すと、それでバスルームに向かった。
 着替えの中にシャツだけでなく、ショーツも含まれていた。

 マリア:「ルーシーのヤツ……!」

 マリアはルーシーが退出すると、彼女に怒りの感情を見せた。
 実はルーシーは寝言も言っており、それから推察すると、どうやらルーシーは夢の中で稲生に抱かれていたようなのだ。
 どうやら稲生から迫ってきたという設定だったようで、ルーシーとしては、『嫌よ嫌よも好きのうち』の感情だったようである。
 さすがに夢を見ただけとしては直接文句を言えるわけもなく、それで呟くしか無かったというわけだ。
 ショーツまで交換するのは、何も汗で濡れたからだけではなく、もう1つ別の理由で別の部分が濡れたからだろう。

 マリア:(勇太がアスモデウスなんかと契約したら、どうなるんだろう……?)

 キリスト教における“七つの大罪”のうち、“色欲”を司る悪魔である。
 今は奥手の稲生が、女たらしになるという予想をエレーナはしているが……。
 マリアには稲生が自分にだけそうしてくれるとありがたいが、他の女にはして欲しくないと素直に思った。

 マリア:(大丈夫。勇太なら大丈夫……)

 マリアは布団を頭から被って寝入ることに集中した。
 次に意識が戻ったのは起床時刻で、今度は逆にルーシーに起こされた。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする