報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「ですから、これは“私立探偵 愛原学”ではありません」

2020-01-31 22:02:45 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月28日10:00.天候:雨 埼玉県さいたま市中央区 稲生家]

 探偵:「フム……。どうやら、この家に間違いない」

 ワンスターホテルを訪れ、エレーナを買収した探偵がついに稲生家までやってきた。
 この雨の中、傘を差していない。
 そういえば探偵と同じ格好をしたマフィア(ゴッドファーザー風)も、雨の中、傘を差す描写が無い。

 探偵:「それでは……」

 探偵は早速、門扉の横にあるインターホンを押した。

 稲生佳子:「はい、どなたですか?」

 稲生勇太の母親の佳子がインターホンに出た。

 探偵:「ごめんください。私、匿名希望のペンネーム、『愛原学』と申しますが、こちらに金髪の魔女の方はおいでですか?」

 探偵は流暢な日本語で話した。

 佳子:「……キリスト教関係の方ですか?あいにくと、息子が日蓮正宗の信仰をしておりますので……」
 探偵:「あ、いえ、魔女狩りに来たわけではありません!私はその……探偵の者でして、とあるクライアントの依頼で金髪の魔女を探しているのですよ。こちらにいらっしゃるという話を伺い、お邪魔した次第でございます」
 佳子:「今はいませんよ。息子と出掛けました」
 探偵:「なにっ!?…¨あ、いや、失礼。もし宜しかったら、どちらに行かれたか教えて頂けないでしょうか?」
 佳子:「都内ですよ。埼京線に乗ると言ってましたから、恐らく池袋の正証寺じゃないでしょうか」
 探偵:「魔女がお寺に!?」
 佳子:「仏教は魔女狩りの歴史が無いし、お寺にはキリスト教関係者が入って来れないので却って安全だそうですよ」
 探偵:「なるほど!池袋ですね!?ありがとうございます!」
 佳子:「あ、でも、恐らくそうじゃないかと思っただけで、確実とは……あれ?」

 だが、探偵は既に稲生家から離れていた。
 そしてどうやら稲生勇太、佳子にはバスタ新宿に行くとは伝えていなかったようである。

[同日10:22.天候:雨 東京都新宿区新宿 JR新宿駅→バスタ新宿]

〔しんじゅく~、新宿~。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 稲生とマリアを乗せた埼京線電車は、無事に新宿に到着した。

 稲生:「既にバスの乗車券を買ってしまったという既成事実を作ってから、父さんに報告したいと思うので……」
 マリア:「そこまでしてバスで帰りたい?」
 稲生:「夜行の方が旅している気分になれるんですよ、最近は」
 マリア:「まあ、いいけど。私も隣に勇太が座ってくれる方が安心だから」
 稲生:「ありがとうございます」

 ホームからコンコースに上がる。

 マリア:「トイレに行きたい」
 稲生:「どうぞどうぞ」

 コンコースの中にあるトイレに向かうマリア。

 稲生:「……ってか、僕も行こう」

 稲生は男子トイレに入る。
 しかし同じ小用でも、やっぱり女性の方が時間が掛かるものである。
 稲生はすぐに出てきた。

 稲生:「おや?母さんからだ」

 母親の佳子からメールが来ていたことに気付いた稲生。

 稲生:「ファッ!?」

 家に他作品の主人公を名乗る探偵が現れ、池袋の正証寺に向かったという情報がもたらされた。

 稲生:(母さぁん……)

 実はこの後、正証寺に立ち寄ろうかと考えていた稲生だったが、これのせいで豪快に挫折することとなった。

 稲生:(でも逆に言えば、今急いで帰れば安全だということだな)
 マリア:「お待たせ」

 そう考えていると、マリアもトイレから出てきた。

 稲生:「いえ、行きましょう」

 稲生はマリアの手を取って、バスタ新宿に向かった。
 改札口を出てバスタ新宿の乗り場へ向かうエスカレーターの前を見ると、発車案内の電光掲示板が目に入ってくる。

 稲生:「いつ見ても、まるで空港みたいですね」
 マリア:「だけど、実際に乗るのは飛ばないわけだ」
 稲生:「そういうことです」

 4階の乗り場に行くと、多くの乗客達で賑わっていた。
 昼間の便でさえこうなのだから、夜行便はもっと賑わうこととなる。
 で、チケットカウンターも空港のようである。

 係員:「いらっしゃいませ」

 カウンターの列に少し並び、有人窓口で買うことにした稲生。

 稲生:「すいません。バスタ新宿から白馬へ向かう夜行バスを予約したいんですが。大人3名で」
 係員:「かしこまりました。御出発の希望日はございますか?」
 稲生:「いえ、特に何日とは……。ただ、なるべく3人一緒に固まれる席が確保できる日で、一番早い日がいいです」
 係員:「かしこまりました。少々お待ちください」

 係員が端末を操作する。

 係員:「お待たせ致しました。それでは3日後の31日にお取りできますが、よろしいですか?」
 稲生:「取れるんですか?」
 係員:「はい。1のAとBとC席です」
 稲生:「1番前ですね」

 昼間の便ならバスファンがホイホイと喜んで乗る席だが、夜行便だと前展望はカーテンで仕切られる為に望めず、また、車種などによっては足が伸ばせないハズレ席である為、指名買いする者はいないのだろう(かくいう作者も夜行便だけは後ろの席に座る)。
 また、衝突事故や横転事故の際に一番氏ねる席でもあるからだ(運転席の後ろは除く)。
 あとは後ろの席が女性専用席に指定されることも多々あるので、稲生の名前で予約しようとすると弾かれるというのもある。

 稲生:「まあ、いいか。じゃあ、そこでお願いします」
 係員:「よろしいですか?ありがとうございます」

 最近まで雪が少なかったので、利用客も少ないのだろうと思う。
 正直、本当に取れるとは思わなかった稲生だった。

 係員:「お支払いは如何なさいますか?」
 稲生:「カードでお願いします」

 稲生は父親から借りたゴールドカードを取り出した。

 稲生:「これでよしっと……」
 係員:「それでは稲生様、1月31日23時5分発のアルピコ交通便、白馬八方バスターミナルまでで大人3名お取りしました」
 稲生:「ありがとうございました」

 稲生はチケットを受け取った。

 稲生:「それじゃ帰りましょう」
 マリア:「うん」

 バスタ新宿から再びJR新宿駅へと向かう。

 マリア:「せっかくだから都内を一緒に歩きたかったのに、残念だったなぁ……」
 稲生:「不審者が家にまで来たとなると、のんびりもしていられませんからね。その不審者が母さんの言葉を信じて、正証寺に行っている間がチャンスですよ。急いで帰って、先生と善後策の話をしませんと。さすがにもう起きてらっしゃるでしょう」
 マリア:「そうだね。まあ、もし寝てたとしても、私が叩き起こすから安心して」
 稲生:「お手柔らかに、お願いします」

 再び埼京線に乗り込んだイリーナ組の2人だったが、そこで思わぬ事態に見舞われることとなる。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする