報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「リサの荒療治」

2020-01-24 19:59:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月4日01:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「やっぱ向こうで、もう一泊するべきだったかなぁ?子供にとって、いい夜更かしだぜ?」
 高橋:「そうッスね……」

 新幹線の終電で帰京することを決めたのは愛原だったので、高橋としては何とも言えない。

 リサ:「お風呂上がった」
 絵恋:「お風呂……頂きました」
 愛原:「ああ。もう夜も遅いからさっさと寝るんだ。明日……っと、もう日付変わってるか。まあ、ゆっくり寝てていいから。俺達はいつも通り、事務所に行くけどな」
 リサ:「明日、明後日は土日だよ?」
 愛原:「零細事務所に土日も無いの。土曜日に仕事始めっていう事務所、結構多いんだから」
 高橋:「その通り」φ(`д´)メモメモ...

 何故か愛原の言葉を自分のノートにメモする高橋。

 愛原:「俺達に気にせず、ゆっくり寝てていいから」
 高橋:「いい身分だぜ」
 愛原:「そういうこと言うなっての。学生はまだ冬休みなんだから、特権だよ」
 高橋:「俺は冬休みでも仕事してましたよ?」
 愛原:「刑務作業だろ、どうせ?」
 高橋:「ま、まあ……」
 愛原:「いいから、次はオマエ入れ」
 高橋:「えっ、先生、そりゃ……」
 愛原:「いいんだよ。俺はまだやることがある」
 高橋:「こいつらと同様、俺達も一緒に入りましょうよ?」
 愛原:「アホか!そういうのは温泉だけにしとけ!」
 高橋:「さ、サーセン……」
 リサ:「歯磨きしてから寝る」
 愛原:「そうしてくれ」

 高橋が先に入浴し、リサ達も歯磨きが終わると……。

 リサ:「それじゃ、おやすみなさい。水のペットボトルだけ持って行くから」
 絵恋:「おやすみなさい……」
 愛原:「ああ、おやすみ。……ちょっとリサ、話がある。……ああ、絵恋さんは先に部屋に入ってて」

 リサは愛原に呼ばれた。

 リサ:「なに、先生?」
 愛原:「絵恋さん、相当精神的ダメージを受けている。そこでリサ、キミが治してやるんだ」
 リサ:「私が?そんなことできるの?」
 愛原:「恐らく……あってはならないことだが、俺達と同様、もしかしたら絵恋さんも今後ともBOWに襲われるかもしれない。だから、絵恋さんには早く立ち直ってもらう必要がある。幸い、オマエもBOWだ。BOWのことは、BOWに任せようと思う」
 リサ:「何をすればいい?」

 リサは愛原から具体的な方法を聞いた。

 愛原:「……と、いうわけだ。できるか?」
 リサ:「分かった。やってみる」
 愛原:「頼むぞ」

 リサは頷くと、自分の部屋に向かった。

 リサ:「お待たせ」
 絵恋:「リサさん、ごめんなさい。私のワガママのせいで……。で、でも私、どうしても怖くて……怖くて……」
 リサ:「別にいい。前にも言ったと思うけど、サイトーは私が守る」
 絵恋:「ありがと……」
 リサ:「サイトー、そのパジャマ、よく似合う」
 絵恋:「あ、ありがとう。リサさんはTシャツに短パンなのね。寒くないの?」
 リサ:「別に。じゃ、電気消すよ」
 絵恋:「う、うん……」

 リサはリモコンで部屋の照明を消灯した。

 絵恋:(大丈夫。ここはリサさんの家だし、リサさんがいるもの。こ、怖くなんか……)

 セミダブルベッドに横になっている絵恋。
 その隣にリサが入ってきた。
 リサの部屋だけセミダブルベッドというのもおかしい話だが、これはリサが同居するとなった際、リサイクルショップに行ったらそのサイズしか無かったからである。
 つまり、愛原と高橋のはシングルでも新品、リサのはセミダブルでも中古というわけである。

 リサ:「サイトー、あの時は怖かった?」
 絵恋:「怖かったわ……。あんな恐ろしい化け物、初めて……。愛原先生達はよく平気だよね」
 リサ:「うん。だから私みたいな化け物も、こうして受け入れてくれてる」
 絵恋:「リサさんは化け物じゃないよ」
 リサ:「そう?私達を襲ったハンターはBOW。そして、私もBOWなの。下級か上級かの違いだけ」
 絵恋:「リサさんは人間の姿になれるじゃない。でも、あの化け物達は違うでしょう?」
 リサ:「だからあいつらは下級なの。……てかサイトー、人間の姿になれるBOWなら平気なの?」
 絵恋:「えっ?」
 リサ:「じゃあ、私の正体を見せてあげる」

 リサはガバッと布団を被ると、第1形態の姿になって見せた。
 全身が赤鬼のように赤銅色の肌になり、額に一本角が生える。
 両耳は長く尖り、両手の爪は鋭く伸びた。
 瞳は金色に光る。

 リサ:「これが私の普段の姿……。本当はさっきの人間の姿が正体だったんだけど、ウィルスの影響でこっちが正体になっちゃった。だってこの姿の方が落ち着くから。そして……この姿の私はお腹が空きやすい。つまり、場合によってはサイトーを食べてしまうかもしれないってこと。……どう?私と一緒に寝るより、自分の家で1人で寝た方が安全だと思わない?私にはテレポートする能力は無いから、サイトーの家にまで行って人間を食べようとは思わないよ?」

 リサは更に鋭くなった犬歯を覗かせて見せた。

 リサ:「私はあのハンター共も素手で倒せる。私はハンターより強い。だから、私は……」
 絵恋:「あ……あ……あ……!」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
 リサ:(まずい。さすがに怖がらせ過ぎちゃったかな?)

 だが、リサの予想に反して……。

 絵恋:「リサさんになら食べられてもいい!」

 ガバッと絵恋はリサに抱き着いた。

 リサ:「ちょ……サイトー!?」
 絵恋:「リサさんはあの化け物達と違うもん!」
 リサ:「いや、そんなことない。本当ならもっと異形の化け物に変化もできるんだけど、それは禁止されてる。私と同種のリサ・トレヴァーが、このマンション(5階建て25世帯)くらいの大きさにまで変化して、BSAAが出動したくらいだから。私も……暴走したら、きっとあんな風になる……!私は……それが怖い。サイトーはBOWに食われるのが怖いだろうけど、私は……食べることにしか興味の無い化け物になって、BSAAに殺されるのが怖いの」
 絵恋:「分かったわ。私、もう怖がらない。リサさんは私を守ってくれる。だったら、私もリサさんが暴走しないように守ってあげる」
 リサ:「ありがとう。(これで良かったのかな?)」
 絵恋:「何がきっかけで暴走しちゃうの?」
 リサ:「分かんないけど、私の仲間は……多分、ブチキレて暴走したと思う」
 絵恋:「リサさんを怒らせなければいいのね。確かにリサさん、滅多に怒んないもんね。そういう人に限って、怒らせると怖いっていうもんね」
 リサ:「それとも違うような……。とにかく、分かんないの。ね?だから最初から化け物な奴らも怖いとは思うけど、私みたいに自分のこともよく分かっていない奴の方がよっぽど……」
 絵恋:「リサさんなら大丈夫。もし暴走したら、私が先に食べられてあげる」
 リサ:「いや、あの……」

 愛原:(いや、その手はアリかも……)

 部屋の外で立ち聞きしていた愛原。

 愛原:(アニメなんかでも、暴走して異形の者になったキャラクターが、かつて親しくしていた人間が現れた際、一瞬だけでも正気を取り戻す的なシーンがよく見受けられる。絵恋さんがその役をやってくれるだろうか……)

 もちろん、リサが暴走して異形の者にならぬことを祈る愛原であった。
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“私立探偵 愛原学” 「探偵の富士旅行」 帰京

2020-01-24 16:08:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日23:14.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅→東京駅八重洲パーキング西駐車場]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。【中略】お降りの時は、足元にご注意ください。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 車内に最後の自動放送が流れると、リサは隣で寝ている斉藤絵恋さんを揺り動かした。

 リサ:「サイトー。そろそろ着くよ。起きて。サイトー」
 絵恋:「!!!」

 絵恋はビクッと体を震わせて起き上がった。

 絵恋:「化け物が……!」
 リサ:「サイトー、平気。もう化け物はいない」

 どうやらクリーチャーに追い掛けられる夢を見てしまったようだ。

〔「……17番線到着、お出口は左側です。この電車は東京駅に到着後、回送となり、車庫に入ります。お忘れ物ございませんでしょうか?もう1度よくお確かめください」〕

 愛原:「大丈夫かい?」
 絵恋:「大丈夫……です」
 愛原:「明日、斉藤社長……キミのお父さんが迎えに行くそうだ。その時、心療内科に連れて行ってくれるらしい」
 絵恋:「先生達はお強いんですね。あんな怖いことを何回も体験されてるんでしょう?」
 愛原:「好きで体験したわけじゃない。それに、強くならざるを得なかったんだ。そうでないと生き残れない世界だったからね。確かにメンタルは強くなったと思うけど、失ったものもあるかな」

 どこへ行ったか。
 私の平和な日常……。

〔東京、東京です。東京、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕

 列車がホームに着いてドアが開くと、私達はホームに降り立った。
 当たり前だが、寒風が私達を襲う。
 それでもガタガタ震えるほどではないのは暖冬のせいか。
 これでは雪が無くて、今回の旅行も……って、今冬が暖冬じゃなかったらスキーに行けて、バイオテロに巻き込まれずに済んだんだろうなぁ……。

 高橋:「それで先生、東京駅からは?」
 愛原:「運転手の新庄さんが迎えに来てるってよ。至れり尽くせりだ」

 5人なので普通のタクシーに乗り切れない為、多分それで迎えに来てくれたのだろう。

 愛原:「八重洲中央口で待っててくれてるみたいだから、そこへ行こう」
 高橋:「はい」

 リサを見ると、やはり表情を失ってしまった絵恋さんの手を引いていた。
 まずいな。
 度重なる死への恐怖で、感情に影響が出てしまったら……。

 東海道新幹線の八重洲中央南口改札を出ると、そこに新庄運転手が待っていた。

 新庄:「お疲れ様でございました」
 愛原:「新庄さん……」
 新庄:「お車を用意してございますので、どうぞこちらへ……」
 愛原:「こりゃどうも気を使って頂いて……」
 新庄:「いいえ。私は旦那様の言い付けで、お迎えに参ったのです」

 車は八重洲パーキングに止めているという。
 さすがだ。
 東京駅に最も近い駐車場に止めてあるとは……。

 高橋:「何か地下駐歩いてると、何か出るかもって思っちゃいますね」
 愛原:「何かって、何だよ?」
 高橋:「そこの柱の陰から、ゾンビがわんさか……」
 絵恋:「いやあっ!」
 リサ:「お兄ちゃん!」

 絵恋さんが叫び声を上げてリサにしがみ付いた。
 リサが抗議の声を上げる。

 愛原:「高橋、ちょっと黙ってろ」
 高橋:「さ、サーセン」
 愛原:「確かに雰囲気はそうかもって思うけどな。こんな東京のど真ん中でバイオテロなんか起きたら、日本は終わりだぞ」
 高橋:「わ、分かりました」

 車は黒塗りのアルファードだった。
 ミニバンタイプのハイヤーによく使われる車種で、今やVIPでも普通に乗る車だと思う。
 ヤの付く自由業の人達も、今やベンツではなく、こういう車に乗るらしいし。

 新庄:「どうぞ」

 新庄運転手がスライドドアを開けた。

 リサ:「サイトー、乗ろう」
 絵恋:「うん……」

 先にリサと絵恋さんが乗り込む。
 その後ろに私達が乗り込んだ。

 新庄:「それでは出発します」
 愛原:「お願いします」

 車は駐車場内を走り出した。

 新庄:「先に愛原様のお宅まで参りますので」
 愛原:「いいんですか?先に絵恋さんのマンションでも……」
 新庄:「いいえ。これも旦那様の言い付けでございます」
 愛原:「そうなんだ」

[1月4日00:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 愛原:「やれやれ。最後の最後でとんでもないことになってしまったな」
 高橋:「そうですね。今、風呂沸かしますので」
 愛原:「おーう」

 高野君のマンションにて先に高野君を降ろし、その後で私のマンションに寄ってもらった。
 何だか絵恋さんが震えながらリサから離れようとしなかったが、新庄運転手が何とか説得して引き離した。

 リサ:「サイトー、何だかかわいそう」
 愛原:「そうだな。皆が皆、強いわけじゃないんだ。絵恋さんには早く病院に行って、一刻も早く精神的ダメージを治してもらわないとな」

 そう言った後で私は、リサの頭を撫でた。

 愛原:「絵恋さんを助けてくれてありがとうな。BOWも使い方によっては正義の為に役に立つってことだ」
 リサ:「むふー」

 リサは第1形態の姿をしている為、耳は所謂エルフ耳になっていたが、私が頭を撫でてやるとその両耳をパタッと伏せた。

 リサ:「サイトーは私の親友。だから、何があっても助ける」
 愛原:「その意気だぞ」

 と、そこへ私のスマホが鳴った。
 こんな時間に誰だろう?

 新庄:「あ、愛原様!」
 愛原:「新庄さん?どうしたんですか、こんな時間に?」
 新庄:「夜分遅くに申し訳ございません。御嬢様のことなんですが……」
 愛原:「えっ?」

 何でもすぐ近くにリサがいないことで夜の闇の恐怖に怯え、錯乱しているのだという。

 新庄:「このままでは御嬢様が危険です!」
 愛原:「で、では救急車を……」
 高橋:「プッ、ヤベェ!イエローピーポーだw」
 リサ:「イエローピーポー?」
 高橋:「頭のイッちまった奴が乗せられる、黄色い救急車のことだぜ。もちろん、精神病院直行だ。逆らう奴は拘束、通報したら報酬がもらえるんだとよ」
 リサ:「おー!お小遣い!」
 愛原:「ちょっと2人とも、黙っててくれ。……あ、すいません。それで、斉藤社長は?……あー、そうですか。まあ、社長が良いと仰るのでしたら、私も別に構いませんが……はい。……ええ、分かりました。では、お待ちしております。……はい」

 私は電話を切った。

 高橋:「せ、先生、もしかして?」
 愛原:「ああ。絵恋さんが臨時に今夜だけ泊まりに来る。どうしてもリサが横にいないと不安で眠れない……どころか、むしろ錯乱するんだってさ」
 高橋:「いや、だから先生、そんな奴ぁイエローピーポーにブチ込んで……」
 愛原:「オマエ、それ都市伝説だからな?」

 もちろん、精神病患者専用の黄色く塗装された救急車などこの世に存在しない。
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