報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「探偵の富士旅情」 多宝富士大日蓮華山 3

2020-01-20 10:47:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日15:00.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺 宝物殿前]

 

 私の名前は愛原学。
 仕事で静岡県までやってきた。
 今は政府エージェントの善場主任と共に、大石寺という大きな寺の境内を探索している。
 私も入ってみてビックリしたのだが、これはバイオハザードが起きた大山寺に造りがよく似ているのだ。
 しかし、私も大山寺は境内の全てを歩いたわけではない。
 にも関わらず、善場主任は私達をある場所へと連れて行った。

 愛原:「何ですか、あれは?」
 善場:「あれは宝物殿と言うそうです。信徒などの関係者にだけ公開している寺宝などが展示されています」
 愛原:「あ、なるほど。このお寺の宝物は別に保管しているわけか。でも、信徒オンリーなら俺達は入れないな?」
 善場:「ええ。何しろこの建物は大山寺にはありませんから、入る必要は無いでしょう」
 愛原:「あ、そうなの」
 善場:「この宝物殿は、元々『富士美術館』という建物でした」
 愛原:「美術館?お寺の中に?」
 善場:「はい。何でも、日蓮正宗最大の信徒団体だった創価学会が建てたものだとか……」
 愛原:「へえ、あの創価学会がねぇ……」
 高橋:「俺がいた少年院で、御経唱えてた奴いましたよ。そいつのことですね」
 愛原:「まあ、日本でも大きい宗教団体だしなぁ……」
 善場:「私が見て頂きたいのは、この池です」
 愛原:「ん?」

 宝物殿の前には、何か仕掛けがありそうな池があった。
 しかし大山寺を歩いた時には、こんな所は通らなかった。

 愛原:「これが何だと?」
 善場:「これは大山寺にもあるものです」
 愛原:「へえ!」
 善場:「大石寺には宝物殿がありますが、大山寺にはただの監視小屋みたいなものしかありません」
 愛原:「それで?」
 善場:「監視小屋の中には仕掛けを起動させる装置がありまして、その装置を作動させると、寺の地下に行けるようになっていたようです。池の水が全部抜かれて、底に地下への階段が現れるという仕掛けですね」
 愛原:「そりゃ凄い。何か、ゲームみたいだねぇ。……こっちにもあるんじゃないの?」
 善場:「恐らくあったのでしょう」
 愛原:「過去形?」
 善場:「恐らくは、創価学会の関係者だけが通行できるような地下通路が」
 愛原:「今もあるんじゃないの?」
 善場:「今は分かりませんね。どうしても調べたい場合は捜査令状を持って来ませんと」

 今は奉安堂となっている建物。
 あれもかつては正本堂という別の建物だったそうだ。
 あれが取り壊されて、その跡地に奉安堂という今の建物が建ったそうだが、その際に秘密の地下通路が見つかったのだという。
 秘密というのは、お寺の関係者ですら正体不明の通路のこと。
 正本堂の建設には創価学会が大きく関わっていたことから、学会関係者が秘密裏に作ったものではないかとされる。
 そしてそこから宝物殿(旧・富士美術館)は近い。
 大山寺がそうであったように、ここにもそこに通じていた秘密の入口があってもおかしくはない。
 だが今、創価学会は去り、その秘密を知る者は境内にはいないと。

 善場:「ここの場合は単なる宗教団体関係でのお話しで完結するでしょうが、大山寺は違います」
 愛原:「ああ。どういうわけだか信仰心の欠片も無いような日本アンブレラの関係者が、大山寺に多大な御布施を出していたって話でしょ?」
 善場:「それ故、あそこの場合は日本アンブレラの研究施設か何かに繋がっていた可能性は高いのです」
 愛原:「何とか調査できないのか?」
 善場:「BSAAの権限で封鎖されてますので、いくら私達が調査に入りたいと申し出ても却下されるのです」
 愛原:「日本政府の国家権力を持ってしてでも、国連の権限には逆らえないか」

 すると高橋が口を挟んできた。

 高橋:「さっきから黙って聞いてりゃよ、だったら結局ここに来た意味無いんじゃね?」
 愛原:「まあまあ」
 善場:「もちろん、ここで話を終わらせればあなたの言う通りです。もちろん、話にはまだ続きがあります。聞いてください」
 愛原:「高橋」
 高橋:「大丈夫です。ちゃんとオチまで聞きます」
 善場:「大山寺への調査、私達はできませんでしたが、代わりにBSAAが行いました」
 愛原:「あ、何だ。BSAAは入ったんだ」
 善場:「そこで色々なものを見つけたそうですが、その中に、私達が期待していた物がありませんでした」
 愛原:「期待していた物?」
 善場:「先ほど言った、池の仕掛けを起動する装置。その為の起動キーです」
 愛原:「増田さんが持ってたのかな?」
 善場:「いえ。警備室にも防災センターにも、そして確認できた境内警備員の全員もそれを持っていなかったそうです」
 愛原:「んん?」
 善場:「その後、新日蓮宗に確認したところ、起動キーは警備員ではなく、設備員が持っていた可能性が高いのです。管理は警備部門ではなく、設備部門の管轄だったそうなので」
 愛原:「防災センターは探索しなかったし、設備員のゾンビなんていたかなぁ?」
 高橋:「作業服を着たゾンビなら、何人かいましたけどね」
 愛原:「その中にいたのかなぁ?」
 善場:「ええ。その中にいたようです。こちらの調査で、池を管理していた者の動向を把握することに成功しました」
 愛原:「おおっ、さすが!で、その人はどこでゾンビになっていたんです?」
 高橋:「もしくはゾンビかハンターにブッ殺されたか……」
 善場:「大恩坊ですよ」
 愛原:「えっ!?」

 私は高野君を見た。

 善場:「池の管理員が大恩坊に行った際、そこでゾンビ化した信徒に襲われ、自分もゾンビ化したようです。そこに現れたのが……」
 高野:「……ま、私が犯人ということになりますかね」
 愛原:「高野君がキーを持っていたとは……!」
 高野:「取材の一環ですからね。私が抵抗している時、作業服を着たゾンビが落としたんですよ。それを咄嗟に拾ったんですけどね。その後、トイレに追い込まれて窮地に立たされていたところ、先生方に助けて頂いたんです」
 愛原:「鍵を手に入れたら、教えてくれても良かったのに……」
 高野:「すいません。あの時は気が動転していまして、あの後も色々とありましたから、すっかり忘れていました」
 善場:「その後も色々と聞き取り調査が行われたはずです。にも関わらず、あなたは起動キー以外の物は提出したのに、それだけは提出されませんでしたね?それは何故ですか?」
 高野:「だから忘れてたんですって。手に入れたはいいものの、全く使わなかったわけですし……」
 善場:「……まあ、いいでしょう。それでは起動キーを提出してください」
 高野:「今は持ってませんよ?」
 善場:「帰ってからで結構です。それとも、そもそも今は保管すらしていませんか?所属する組織に、先に提出しましたか?
 高野:「!!!」
 愛原:「な、なんだってー!?」

 高野君がどこかの組織に所属していたスパイだと!?

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