報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「初日の出」

2020-01-04 20:46:56 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月1日00:30.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 初詣に皆で行った後、私のマンションに集まった。
 帰った後、JC2人は着物から私服に着替える。

 斉藤絵恋:「ちぇっ、もう少しリサさんの着物姿、見ておきたかったのに」

 絵恋さんが頬を膨らませる。

 メイド:「お嬢様、もう十分眼福だったではありませんか。お写真も沢山撮りましたし」

 リサのスマホにも、随分と斉藤さんとのツーショット写真が保存されている。

 絵恋:「まあ、そうだけど」
 メイド:「またお部屋をお借りします」
 愛原:「どうぞどうぞ」
 絵恋:「今度はリサさんの水着姿が見たい……」

 斉藤さんが言い終わらぬうちに、メイドさんはドアを閉めた。

 新庄:「それでは彼女が作ったお節料理は、ここに置いておきますので……」
 高野:「わざわざすいませんねぇ……。新庄さんも召し上がって行かれたらどうですか?」
 新庄:「いえいえ。私は運転手として、車の中で待っております」
 高野:「ほらマサ、テーブルに並べるの手伝いな!」
 高橋:「言われなくても分かってるって」

 高橋が高野君に逆らわないのは、高野君が怖いからだな。
 弟をいなしてしまうお姉さんか。
 何だか羨ましい限りだ。

 愛原:「高野君、着物だと動きにくいだろう。俺がやるよ」
 高野:「いいえ。先生はどうぞゆっくりなさってくださいな。だからマサに手伝わせるんですから」
 高橋:「アネゴ、てめ、いい加減に……!」

 ゴッ……!(高野君から高橋にゲンコツ)

 高野:「あぁ?」
 高橋:「サーセン、すぐやります」

 実に頼もしいお姉さんだ。

 リサ:「わぁ、美味しそう!」

 着替えの終わったリサが、お節料理を見て目を輝かせた。

 愛原:「ここまで本格的なお節料理、久しぶりに見たなぁ。まるで実家に帰ったみたいだ」
 高野:「ホントですねぇ。一体、どこでこんな技術を?」
 メイド:「女子少……いえ、女子商……業高校の時に習いました」

 何故かメイドさんは答えを噛んだ。
 何だろう?私、地雷踏みかけた?

 高橋:(この女、まさか……!)
 絵恋:「あれ?アンタって、商業高校卒だったっけ?」
 メイド:「え、ええ。まあ、一応……。あ、あの、お雑煮もございますので」

 メイドさんはそそくさと席を立った。

 絵恋:「確か、定時制の高校を苦労して卒業したって聞いたような……?」
 愛原:「商業高校なら夜間部もあるだろう。なぁ?高橋君」
 高橋:「俺は工業高校卒です!」

 せっかく高卒の資格を取ったのに、どうしてその直後、少年刑務所の世話になったかなぁ……。
 まあ、中卒ばかりの少年受刑者の中にあっては、例え工業高校であっても高卒者は無条件でインテリ扱いされるらしいが。

 高橋:「それにあの女、ちょっとヤバいですよ?」
 愛原:「なに?お前、あのメイドさんのこと、気になるのか?」
 高橋:「ええ。何か、俺と同じ目をしてやがるとは思ったんです」
 絵恋:「確かにちょっと目つきが怖い所はあるけど、何でもできるし、空手有段の私よりも強いから、ボディガードの代わりもしてくれるんですよ」
 高橋:「ケンカが強いねぇ……。萌え子ちゃんよ、悪いこと言わねぇから、あのメイドには気をつけ……」

 高橋が勝手に斉藤さんにあだ名を付けて呼んだ。
 で、言い終わらぬうちに、件のメイドさんが戻ってきた。

 メイド:「…………」

 高橋を鋭い目つきで見据えている。

 高橋:「あ?」

 しかし、先にメイドさんの方が目を逸らして笑みを浮かべた。

 メイド:「お待たせ致しました。お雑煮が温まりましたので、どうぞお召し上がりください」
 愛原:「おお、美味そうだ。そうだ。お雑煮で思い出した。もし良かったら、うちでついたお餅、持って行ってくださいよ」
 リサ:「私がこねたの。サイトーも是非食べて」
 絵恋:「り、リサさんの愛情たっぷりお餅ぃ!?も、萌えぇぇぇぇぇっ!」

 なるほど。
 それで、『萌え子』ちゃんか。

 メイド:「それではお嬢さまの為にも、お言葉に甘えて……」
 愛原:「リサと斉藤さんは、これを食べたらお風呂に入って寝なさい」
 リサ:「はーい」
 絵恋:「り、リサさんと一緒にお風呂&一緒のベッド……!」

 再び萌え子ちゃん……もとい、絵恋さんが萌え絶叫を上げたのは言うまでもない。

[同日06:30.天候:晴 愛原のマンション]

 あのメイドさんが帰ってから、高橋はしきりに彼女が元女子少年院上がりであると主張した。
 確かにあの目つき、高橋君に似て、『流血の惨を見る事、必至であります』ことも辞さなかった……というか、実行に移したことがあったのかもしれない。
 しかし、それが何だと言うのだろう?
 今では立派に斉藤家の絵恋さん専属メイドとして、真面目に働いているみたいではないか。
 その点は高橋君も他人のことは言えないぞ。
 そう言ったのだが、彼は仕切りに自分と一緒にするなと主張した。
 とにかく、メイドさんが帰り、JC2人も就寝した後で、高橋が作ってくれたお汁粉をデザートに、私達はゲームなどをして過ごした。
 で、いつの間にか眠ってしまい、起きた時には6時半になっていた。

 愛原:「ん……?」

 カーテンの隙間から差し込む日光が目に刺さり、それで目を覚ました。

 愛原:「ああっ!」

 私は急いで周りで寝ている高橋や高野君を起こした。
 もちろん、リサ達も。
 その目的はただ1つ。

 高橋:「初日の出っすか。さすが先生、パねぇッス!」

 屋上に上がり、私達は初日の出を拝んだ。
 突然起こされた絵恋さんは大きな欠伸をしていたが、リサは目を輝かせていた。

 リサ:「私、初日の出、初めて見た」
 愛原:「そうかい」
 リサ:「ずっと、地下の研究所にいたし、その前は記憶が無いし……」
 愛原:「リサがずっといい子にしていれば、来年もまた再来年も見れるよ」
 リサ:「うん!」
 絵恋:「その時は私も誘ってください……ふぁぁぁ……!」

 斉藤さんはまた大欠伸をした。

 愛原:「分かったから、皆でもう一眠りしよう。初詣にも行ったし、初日の出も拝んだ。あとは寝正月を決め込んでもバチは当たらんだろ」
 高野:「そうですね。私は帰ることにします」
 愛原:「おっ、そうだな。お疲れさん」
 高野:「今年の初仕事は、斉藤さんをまた旅行に連れて行ってあげること、ですわね?」
 愛原:「ああ。この前みたいに、またハードな仕事になるかもしれん。けして、準備を怠るな」
 高野:「はーい、先生」

 もう一眠りした後は、政府エージェントの善場さんに新年の挨拶のメールでも入れておくことにしよう。
コメント (1)
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