報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「探偵の富士旅情」 戦いの後で

2020-01-23 20:05:54 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日22:04.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日から仕事で富士山の麓の町に来ていたのだが、その旅行も間もなく終わろうとした時、バイオテロに巻き込まれてしまった。
 私達は間接的なもので済んだが、リサと斉藤絵恋さんが直接的に巻き込まれてしまった。
 幸いリサの活躍により、絵恋さんにこれといったケガは無くて済んだ。
 私達は絵恋さんが運ばれた病院に行って、やっと合流できたわけだ。
 しかし、バイオテロとあっては、ケガが無いからと言って安心はできない。
 リサはともかく、無傷の絵恋さんも様々な検査を受けさせられた。
 で、ウィルスへの感染も陰性が確認できたということで、ようやっと退院できた頃には夜になっていた。
 そして、善場主任らに送られて新幹線の駅までやってきたというわけだ。
 善場主任らはその後の調査の為、富士宮市に残るという。
 斉藤社長からはホテルを取るので、もう一泊休んでから帰京しても良いと言われた。
 しかし、絵恋さんは肉体的なケガは無くても、精神的なケガはしていた。
 即ち、スプラッターホラー映画でしか見れない光景をリアルで見てしまったという重大な精神的ダメージだ。
 さすがにそれは、地元の救急医療センターでは治療できない。
 一刻も早く帰京して受けさせるべきと私が判断したものだ。

〔♪♪♪♪。新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく1番線に、“こだま”684号、東京行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に停車致します。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車までと、13号車、14号車、15号車です。尚、全車両禁煙です。お煙草を吸われるお客様は、喫煙ルームをご利用ください。……〕

 愛原:「新幹線の終電に乗るのも2回目だ。東海道新幹線は初めてかな」

〔「……当駅発車の“こだま”号、東京行きの最終電車です。ご利用のお客様は、お乗り遅れの無いよう、ご注意ください」〕

 N700系がポイントを渡って、副線上りホームに入ってくる。
 夜の上り電車、しかも“こだま”号ということもあって、列車は空いていた。
 これなら自由席でも、余裕で座れるな。

〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 往路と同じ、1号車に乗り込んだ。
 往路では先頭車だったが、今度は最後尾ということになる。
 別に某魔導士見習いのようなことをしたわけではなく、いざという時、最後尾の方が安全だと思ったからだ。
 あの埼京線最終電車の時も、最後尾に乗ったから助かったようなものだし。

 愛原:「リサは絵恋さんと一緒に乗ってやってくれ」
 リサ:「うん、そうする」

 リサは絵恋さんを窓側に座らせると、自分は通路側に座った。
 私達は3人席に座る。
 往路と同じでこんな時間でも後続の“のぞみ”などに抜かれるらしく、停車時間が5分ほど取られていた。

 愛原:「高橋」
 高橋:「何でしょう?」
 愛原:「ホームの自販機で飲み物を買って来てくれないか?俺はホットの缶コーヒーでいい。俺が好きな味は分かるな?」
 高橋:「もちろんです」
 愛原:「このコ達にも買って来てあげて。リサは何がいい?」
 リサ:「オレンジジュース」
 絵恋:「…………」
 リサ:「サイトー」
 絵恋:「……はっ!あ、あの……わ、私もリサさんと同じので」
 愛原:「そういうわけだ。頼むぞ」
 高橋:「分かりました」

 高橋は頷くと、ホームに降りた。
 と、同時に後続列車が轟音を立てて私達の列車を揺らしながら通過していった。

 高野:「絵恋ちゃん、結構ショックを受けてますよ。ああやってボーッとしているのも、精神的ショックを受けた時の症状の1つです」
 愛原:「いい思い出作りをするはずが、とんでもないことになってしまったな。こりゃ、報酬はカットされるかもしれん」
 高野:「まさかあのタイミングでバイオテロが起きるなんて、誰も想像しませんでしたから。しょうがないですよ」
 愛原:「それより、善場主任の指摘は本当に間違いなんだろうな?」
 高野:「当たり前ですよ。私がエイダ・ウォンなわけないじゃないですか」
 愛原:「いや、誰もそんなこと言ってねーし!」

 しばらくして発車時刻になると、列車は定刻通りに走り出した。
 と、高橋が戻ってくる。

 高橋:「結構ギリギリでした!」
 愛原:「いや、すまんね」

 私は高橋から缶コーヒーを受け取った。

 愛原:「サンクス」
 高橋:「お安い御用です。……ほら、アネゴ」
 高野:「あら?私にも買って来てくれたの?」
 高橋:「後でゴネられると困るからな。アネゴは午後ティーでいいだろ」
 高野:「そうね。ありがとう」
 高橋:「ほらよ、オメーラ」
 リサ:「ありがとう、お兄ちゃん。ほらサイトー、ジュース」
 絵恋:「リサさん、もうこれで安心なんだよね?東京に帰れば、もう安全なんだよね!?」
 リサ:「そのはず。それにもし奴らが現れたとしても、好き勝手させない。サイトーは私が守るもの」

 もちろんリサの台詞は頼もしいものである。
 だが、私の性格が悪いのだろうか。
 当たり前と言えば当たり前なのだが、リサがどうもBOW視点で喋っているような気がしてならなかったのだ。
 BOWの中には殺戮欲や食欲よりも独占欲が強い者もいて、リサ・トレヴァーもそうではないかと言われる。
 アメリカのオリジナル版は気味の悪いマスクを被って、突入した特殊部隊の前に現れたとのことだが、このマスクは何人もの人間の女性の顔の生皮を剥いで繋ぎ合わせたものだという。
 こっちのリサはそんな趣味は無いが、明らかに身近にいる私達を獲物として見ることがある。
 まだ常識的な範囲ではあるが、ある程度食欲が強く、独占欲も強いようである。
 前者は大の大人である私や高橋よりも食事量が明らかに多く、後者はこうして絵恋さんを独占しようとしているし、私もその候補に入っていて、高橋のいない所では結構ベッタリくっつかれていることも多々ある。
 まだ御愛嬌の範囲で済んでいるが、度が過ぎると、さすがに注意しなくてはならないだろう。

 絵恋:「ありがとう。リサさんなら絶対助けてくれると思った……」

 絵恋さんが突然眠りに入った。

 リサ:「! 先生、サイトーが気絶した!」
 愛原:「大丈夫。怖い目に遭った場所からどんどん離れて、安全な所に向かっているという安心感で寝ちゃったんだよ」
 高野:「そうよ。リサちゃんのことを全面的に信頼してるんだから、必ず守ってあげてね」
 リサ:「なるほど。分かった」

 リサは大きく頷くと、絵恋さんの手を握った。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“愛原リサの日常” 「国道139号線の戦い」 2

2020-01-23 15:15:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[1月3日16:00.天候:晴 静岡県富士宮市 国道139号上]

 隠れていたトラックのコンテナのドアがこじ開けられ、そこから一匹のハンターがやってきた。
 緑色の鱗に覆われ、明らかに爬虫類を思わせるその風貌だが、大人のゴリラのような体形で、太い両手の先には鋭い爪が生えている。
 アンブレラ全盛期の頃に造られたスタンダードタイプのαである。
 とはいえ、リサから見れば下級のBOW(Bio Organic Weapon.生物兵器のこと)。
 上級のBOWであるリサが一睨みすれば、怯むのである。

 リサ:「私を誰だと思ってるんだ?」
 ハンター:Σ(゚Д゚)
 リサ:「でやぁーっ!」

 リサは第1形態の姿(鬼娘)になると、その力を利用してハンターを殴りつけた。
 ハンターはトラックから落ちる。

 リサ:「サイトー、今のうちに!」
 絵恋:「う、うん!」

 リサは絵恋を背負うと、それでトラックの上にヒラリと跳び上がった。
 トラックの周りにはハンターだけでなく、ハンターによってゾンビにされた人々もいた。
 “青いアンブレラ”のヘリが上空を旋回しているが、恐らく生存者がいるものと思って、攻撃できないのだろう。
 リサはそのまま、立ち往生している車の屋根を飛び移って市街地の方向に走り出した。

 “青いアンブレラ”ヘリパイロット:「至急!至急!現場より、リサ・トレヴァーの反応あり!目視の限りでは、生存者を1名連れ出したもよう!」
 本部:「リサ・トレヴァーが暴走したのか!?」
 同パイロット:「そこまでは確認できず。しかし、ハンターや感染者達はリサ・トレヴァーを攻撃対象としているもよう!」
 本部:「恐らく連れ出している生存者が目的だ。リサ・トレヴァーの行動を監視しつつ、生存者の確保を優先に当たれ」
 同パイロット:「了解!」

 1機のヘリコプターがリサ達を追う。

 リサ:「? どうして下りて助けてくれないの?」
 絵恋:「リサさん!後ろから化け物が!」
 リサ:「!」

 リサが振り向くと、ハンターが数匹リサ達を追跡して来ていた。

 リサ:「あいつら!」
 ハンターβ:「ガァァァァッ!(美味そうな人間がいるぞ!)」
 ハンターγ:「ヒューッ!(俺んだ!)」
 ハンターα:「……!……!!」(←リサの顔面パンチのせいで歯を折られ、声にならない叫びを上げている)
 リサ:「お前ら!誰の命令でこんなことやってるの!?」
 絵恋:「命令?」

 ヘリパイロット:「報告!どうやらハンター達はリサ・トレヴァーへの攻撃を命令されているもよう!しかし、その理由は不明!」
 本部:「リサ・トレヴァーを倒すにはロケットランチャーが必要だ。それも、一発だけで倒せるかどうかの保証も無い。にも関わらず、何故リサ・トレヴァーにとってはザコ同然のハンターを投入したのか……」
 ヘリパイロット:「背中には相変わらず生存者を背負っている。リサ・トレヴァーごとハンターを攻撃することは可能だが、生存者が人質状態である為、攻撃は不可能。本部よりの指示を待つ」
 本部:「了解。リサ・トレヴァーは他の生存者を襲っているか?」
 ヘリパイロット:「確認できない。ハンターは通過の際、逃げ遅れた生存者を襲ったりはしているが……」
 本部:「了解。可能ならば、リサ・トレヴァーと生存者を確保せよ」
 ヘリパイロット:「無理だ!ハンター達を駆除しないと、こちらの安全が確保できない!しかし、まだ一般人の避難は完了していない!このまま攻撃すると、一般人を巻き添えにする恐れがある」

 絵恋:「きゃああっ!リサさん!化け物が!化け物がーっ!!」
 リサ:「!!!」

 ハンターβという赤いタイプのハンターの手が絵恋に届きそうだった。
 実はリサ・トレヴァーというBOWは、そんなに動きが速くない。
 瞬発力や跳躍力に優れてはいるのだが、アメリカのオリジナルタイプはそうだった。
 なので突入した特殊部隊員達を翻弄しつつも、彼女が退却する彼らに追い付いたという記録は無い。
 こっちのリサは、日本アンブレラがアメリカ本体の背中を見ながら開発した為それよりは足が速いはずだが、やはり絵恋を守りながら移動している為、遅くなっているのだ。

 ヘリパイロット:「本部!ハンターβがリサ・トレヴァーを確保したもよう!」
 本部:「いかん!生存者を救出せよ!」
 ヘリパイロット:「了解!直ちに降下する!……あっ!?」
 本部:「どうした!?」

 ヘリパイロットが見たのは、絵恋に手を掛けようとしたハンターβが感電する所だった。

 ヘリパイロット:「報告!ハンターβが感電したもよう!」
 本部:「は?どういうことだ?」
 ヘリパイロット:「詳細は不明。ハンターβが生存者に触れた途端、感電したもよう」
 本部:「まさか!?リサ・トレヴァーに高圧電流を放つという能力は無いはずだ!」

 リサもリサで驚いたらしい。

 リサ:「!? 今、何が起きた!?」
 絵恋:「リサさぁん!怖いよぉぉ!」
 リサ:「わ、分かった。ここで奴らを迎え撃つ!」

 リサは絵恋を地面に下ろした。

 リサ:(電線か何か、この近くに?いや、だったら私やサイトーも感電したはず……)

 近くに感電しそうなものは無かった。
 しかし実際、ハンターβは明らかに感電死している。

 “青いアンブレラ”隊員:「伏せろ!」

 ヘリから降下した“青いアンブレラ”の隊員が、ハンター達に向かって銃を放つ。

 本部:「本部から全隊員に連絡。BSAAが現着した。現時点を以って、我々はオブザーバー側に回る。交戦中の隊員以外は、一旦本部へ帰隊せよ。繰り返す」
 隊員:「了解!……早く、こっちへ!」
 リサ:「ハンターを倒さないの!?」
 隊員:「我々はあくまでも民間軍事会社だ。国連軍が投入された以上、俺達も民間人のようなものだ!」

 BSAAは正式には国連軍ではないのだが、その軍事的組織からそのように見られる節がある。
 また、紛争地帯にてバイオテロの発生やBOWの投入が確認された場合は、国連軍と協力して軍事活動をすることもある為、一概に違うとは言い切れない。
 追い掛けてくるハンター達に対し、“青いアンブレラ”隊員は煙幕弾を放って目くらましさせたり、それが効かないタイプには電撃グレネードを放ったりして動きを止めた。

 隊員:「リサ・トレヴァーと生存者を確保!」
 ヘリパイロット:「了解!離陸する!」

 リサ達がヘリに乗り込むと同時に、ヘリが離陸した。

 ヘリパイロット:「報告!リサ・トレヴァーの確保と生存者を1名救助した。直ちに本部に帰隊する。尚、生存者には外見上の外傷は見当たらず」
 本部:「よくやった。吉報に感謝する」
 隊員:「本当にキミが、あのリサ・トレヴァー?」
 リサ:「はい。サイトー……友達の前では、あまり私の正体について言わないでください」
 隊員:「友達なのか?このコもBOW?」
 リサ:「いえ。このコは人間です」

 リサが絵恋を見ると、絵恋は意識を失っていた。

 隊員:「ハンター達はキミへの攻撃を命令されていたようだ。何か心当たりは無いか?」
 リサ:「私への攻撃ですか?サイトーへの攻撃じゃなく?」
 隊員:「何だって!?このコは一体誰なんだ?」
 リサ:「大日本製薬の社長さんの娘さんです」
 隊員:「あのダイニチの。それなら……いや、しかし……」

 隊員は一瞬納得しかけたが、やはりどこか腑に落ちないらしい。
 大企業家の令嬢ともなれば、誘拐の対象になったりすることもあるだろう。
 それにしたって、さすがにBOWの投入はやり過ぎだと思うからだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする