報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「イリーナ組も帰途へ」

2019-07-07 19:38:35 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月21日17:20.天候:曇 埼玉県さいたま市西区 湯快爽快おおみや]

 稲生:「先生、そろそろ送迎バスの出発する時間です」
 イリーナ:「んん……?そうかい。じゃあ、そろそろ行こうかねぃ……」

 午前中はイオンモールで爆買いしたイリーナ組。
 午後は市内の日帰り温泉に出向いていた。

 イリーナ:「しばらくはまた屋敷に引き籠る日が続きそうだよ。今のうちに外の空気でも吸っておきな」
 稲生:「敷地内でしたら、外には出られるでしょう?」
 イリーナ:「まあ、それはそうなんだけど……」

 因みに支払いはイリーナが持ってくれた。
 もっとも、風呂上がりのマッサージなど、イリーナが1番利用額が高い。
 支払いが終わって外に出た。

 稲生:「何だか降りそうですねぇ……」
 イリーナ:「降るよ。駅に着くまで持ってくれるといいねぇ……」

 空はどんより曇っていた。
 これから夏至に向けて日が長くなってくるのに、もう外は薄暗い。
 行きと同じく、送迎用のマイクロバスに乗り込む。
 1番後ろの席に並んで座った。
 因みに爆買いした物をしまい込んだバッグは、大宮駅のコインロッカーに置いてある。
 イオンから大宮駅を経由したのはその為。

 運転手:「それでは出発します」

 発車時刻の17時30分になり、運転手がエンジンを掛けてドアを閉めた。
 エアブレーキではないマイクロバスなので、ドアの開閉もエアではなく電動である。

 稲生:「それにしても、イオンでだいぶ買い込まれるとは……。仙台の三越でだいぶ買われたイメージなんですが……」
 イリーナ:「いやいや。アタシゃそんなに買ってないよ。ベイカーさんの買い物に付き合っただけ。ベイカーさんはだいぶ買ってたけどね」
 稲生:「なるほど……」

 車内のスピーカーからはラジオが流れている。
 ニュースが流れていた。

〔「……今朝、日本時間の○○時××分頃、イギリスのロンドンヒースロー空港で起きましたブリティッシュエアウェイズ機の着陸失敗事故ですが……」〕

 そのうちNHKはラジオでも受信料を取りそうな気がしてしょうがない。
 まだテレビが無かった頃は、ラジオで受信料を取っていたのだろうか。

 稲生:「このニュースを聞いた時にはびっくりしましたよ。確かルーシー達が乗ったのはJALだから違うとすぐに分かりましたけど……」
 イリーナ:「近しいけど無関係な飛行機や列車を事故らせることで、私達に警告を発する手法ね。ほんと卑劣だわ」

 ルーシー達は無事に帰国できたらしい。
 向こうは向こうで“魔の者”対策をするとのこと。

[同日17:45.天候:雨 さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 送迎バスが大宮駅西口のロータリー手前に到着する頃、雨が降り出して来た。
 幸い、まだ傘がいるほどのものではない。

 稲生:「急ぎましょう。強くなる前に」
 イリーナ:「そうね」

 バスを降りて高架歩道への階段を登る。

 稲生:「新幹線の時間も迫っているから、ちょうど良かったかもですね」
 イリーナ:「駅弁買う時間は?」
 稲生:「それはあります」

 駅構内に入る頃には傘が必要なほどに強くなってきた。
 哀れ傘を持っていない人々は、出入口付近で雨宿りを余儀無くされている。

 稲生:「長野は降ってないといいんですけどねぇ……」
 イリーナ:「何とかバスに乗り換えるまでは持ちそうだよ。でも、白馬に着く頃には降っているね」
 マリア:「白馬のバスターミナルに迎えを寄越させますから大丈夫ですよ」

 一旦、在来線改札口からコンコースに入る。
 再び今度は新幹線改札口からもう1つのコンコースに入った。
 尚、大宮駅には直に新幹線コンコースに入る改札口は無い。

 稲生:「ここで買えます」
 イリーナ:「おお〜」

 ホームには駅弁の売店がある。
 但し、需要のある下りホームのみ。

 イリーナ:「遠慮しないで好きな物買いなよ」
 稲生:「ありがとうございます」
 マリア:「…………」

 とは言いつつ、師匠より高い物は頼めない。
 イリーナが何を買うかを上手く見極めないといけない。
 イリーナが手にしたのは、“北海うまいもん弁当”である。

 イリーナ:「勇太君、白ワイン買ってきて」
 稲生:「あ、はい」

 稲生は“あったか牛タン弁当”とお茶を手にすると、イリーナにお使いを頼まれた。
 駅弁の売店ではワインまでは売っていない為、同じホーム上にあるNEWDAYSで買って来いということなのだろう。
 これから稲生達が乗る“あさま”号でも車内販売は無い為、全て駅構内で買い揃える必要がある。

〔18番線に17時58分発、“あさま”623号、長野行きが12両編成で参ります。この電車は熊谷、高崎、安中榛名、軽井沢、佐久平、上田、終点長野に止まります。グランクラスは12号車、グリーン車は11号車、自由席は1号車から7号車です。まもなく18番線に、“あさま”623号、長野行きが参ります。黄色いブロックまでお下がりください〕

 稲生がミニボトル入りの白ワインと、マリアの人形達にカップアイスを買っていると接近放送が流れた。

 稲生:「おっ、来た来た」

〔「18番線、ご注意ください。北陸新幹線“あさま”623号、長野行きが参ります。……」〕

 稲生は買い物を済ませると、ホームに出た。

 稲生:「先生、白ワインです」
 イリーナ:「ありがとう。海鮮系は白がいいのよね」
 稲生:「さすがです。あと、マリアさん、これミク達に」
 マリア:「おー、さすが勇太。分かるようになったね」

 E7系電車が青白いヘッドライトを光らせてホームに入線してくる。

〔「大宮、大宮です。18番線の電車は17時58分発、北陸新幹線“あさま”623号、長野行きです」〕

 イリーナ組は11号車のグリーン車に乗り込んだ。
 車内はE5系のそれとは違い、青いシートが目立つ。
 スペックはE5系と同じ。
 イリーナはA席に座り、稲生とマリアはその後ろのA席とB席に座った。
 イリーナの隣は空席になっている。

〔18番線から、“あさま”623号、長野行きが発車致します。次は、熊谷に止まります。黄色いブロックまでお下がりください〕

 ホームから発車ベルが響いて来る。

 稲生:「こうして紐を引き抜くと温かくなるシステムです」
 マリア:「凝ってるね。私のは?」
 稲生:「マリアさんのはそのままですね」

 マリアは味噌カツ・ひつまぶし風弁当を購入していた。

 稲生:「そのままでも美味しいですよ。駅弁って本来、そういう風に作られてますから」
 マリア:「本当にきれいな御弁当ね。イギリスじゃこういうの売ってないよ」
 稲生:「その代わり、食堂車が付いてるじゃないですか」

 そんなことを話しているうちに列車は走り出した。
 駅を出ると窓ガラスに雨粒が当たる。

 稲生:「雨に当たる前に乗れて良かったですねぇ……」
 マリア:「いや、全く」

 デッキに出るドアの上には大きな電光表示板が設置されていて、右から左へと列車の案内が流れている。
 最初は日本語で、次に英語で。
 ところが、何故かこの後でキリル文字、つまりロシア語が流れて来た。
 それを和訳すると、『極東の島国が本当に安全なのか確かめてやろう』というもの。
 明らかに“魔の者”からの宣戦布告であった。

 イリーナ:(ふっ。あの世界地図で描かれた日本の姿をそのまま信じている“魔の者”の方が哀れね)

 ヨーロッパやアフリカを中心に描かれた世界地図で見ると、確かに日本は1番東に小さく描かれているが……。

 イリーナ:(でも教えてやらない。だからこそ、あいつは日本海を越えてやってこれないのだから)

 いいか?東海(トンヘ)じゃなく、日本海だからな?
 朝鮮人達の戯れ言に耳を傾けてはならない。
コメント (1)
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“魔女エレーナの日常” 「障魔は来ないで欲しいし、仏敵(てき)も来ないで欲しい」

2019-07-07 10:18:43 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月21日02:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 エレーナ:「飛行機は離陸したか……」
 マモン:「また、例の寺周辺に“魔の者”の眷属が現れたらしい。もちろん、こんな時間に魔道士なんかいないだろうけどね」

 エレーナは夜勤でホテルのフロントにいた。
 こんな真夜中に出入りがあるわけでもないし、ロビーに誰かいるわけでもない。
 話し相手は契約悪魔の“物欲の悪魔”マモンである。
 キリスト教における七つの大罪の1つを司る悪魔だ。
 金銭欲の強いエレーナにはピッタリの契約悪魔というわけである。

 エレーナ:「凄いリドル(謎掛け)だ。大魔王が知らなくて、あんた達も知らないと……」
 マモン:「私らは別次元の悪魔じゃないかと思ってる。……おっ、ルーシーが泣いてるぞ」
 エレーナ:「やれやれ。そんなに日本が好きになったかねぇ……」
 マモン:「それはエレーナも変わらないのでは?」
 エレーナ:「ふっ……」
 マモン:「とにかく夜中の便を狙ったのは、裏の裏をかいたということかな。ややもすると、夜中の便が狙われることもあるのだが」
 エレーナ:「あれか?何年か前、東南アジアのどこかから中国へ向かう飛行機が真夜中に行方不明になったヤツ」
 マモン:「そうだ。あの中には東アジア魔道団の幹部が搭乗していて、それが狙われたと言われている。結局はインド洋辺りに墜落したと言われているが……」
 エレーナ:「“魔の者”が狙うのは魔道士全般で、何もダンテ一門だけってわけではないか……」
 マモン:「ダンテ門流が一番デカいから、それだけ狙われやすくなる。何しろ的が大きいから」
 エレーナ:「だろうな。……ルーシー達は本当に大丈夫なんだろうな?」
 マモン:「先ほども言ったように、眷属が大石寺に現れた。今の“魔の者”は複数の眷属を同時多発的に派遣する力は残っていないだろうから、恐らく大丈夫だ。ベイカー師もそれを見越して、あえて深夜便にしたのだろう」
 エレーナ:「確か東アジア魔道団の中には、ボンさんのフりしているのもいるって話だな?」
 マモン:「元々は修行僧とか破戒僧とか、そういうのから入門したパターンが多いらしいよ、向こうは」
 エレーナ:「寺の周辺に現れた眷属……ボンさんが狙われた飛行機……。“魔の者”って何気に、仏教に近い所にいるんじゃないのか?」

 ズシン……!

 エレーナ:「おっ!?」

 下から突き上げるような揺れが発生したかと思うと、ユラユラと縦揺れと横揺れが発生した。

 エレーナ:「地震か。このタイミングで」
 マモン:「ククク、分かりやす過ぎる警告だ。エレーナ、どうやらあなたの発言は“魔の者”にとって地雷だったようだよ」
 エレーナ:「と、いうことは……」
 マモン:「エレーナの発言は正解であり、“魔の者”は今あなたを監視中ということだ」
 エレーナ:「ちっ、人の仕事ぶり勝手に覗いてるんじゃねーぜ。……ってか、マモンは気配を感じないのか!?」
 マモン:「実はその通り。“魔の者”ってのは本当に悪魔なのかい?」
 エレーナ:「んん?そういえばマリアンナ達が戦った時も、ベルフェゴール達は殆ど役に立たなかったというぜ!?」
 マモン:「うちの同僚達が役立たずで申し訳無いねぇ。でも、きっとそういうことだよ」
 エレーナ:「何かが繋がりそうだぜ……」
 マモン:「……東京は震度2だって。警告にもなりゃしない震度だね」
 エレーナ:「だが、地震なんか珍しい国から来た魔女をビビらせるには十分だぜ。私には効かないけどな。こう見えても私はマリアンナより長く日本にいて、しかも地震なんか関係無いホウキ乗りだぜ」

 但し、来日した時期がマリアより早いという意味であり、その後、エレーナに襲い掛かって来た“魔の者”の眷属と戦う為、すぐに渡米していたので、実際の在日歴はほぼ同じである。

 鈴木:「凄い揺れだったねぇ……」

 その時、エレベーターのドアが開いた。
 今日は鈴木が宿泊している。
 部屋備え付けの寝巻の上からジャケットを羽織っていた。

 エレーナ:「寝巻のまま部屋から出て来るんじゃねーぜ」
 鈴木:「緊急の場合は別だよ」
 エレーナ:「地震発生してる時にエレベーター乗るんじゃないっての」
 鈴木:「凄い揺れだったよ。震度4くらい?」
 エレーナ:「2だよ。日本人のくせに震度2くらいでビビってんじゃないぜ」
 鈴木:「全く。眠れないから部屋で唱題していたってのに邪魔されたよ。これは魔だな、魔」
 エレーナ:「鈴木の唱える御経ってのは、羊を数える感覚なのか」
 鈴木:「寝付きが良くなるのも功徳だし、悪くなるのも魔の働きだ」
 エレーナ:「都合の良い解釈しやがって。それだから宗教ってのは……ん?」

 その時、エレーナはハッと気づいた。

 エレーナ:「鈴木、今あんた『魔』って言ったよな?」
 鈴木:「言ったけど?」
 エレーナ:「魔って何だぜ?」
 鈴木:「おっ?エレーナもついに仏法に興味が?」
 エレーナ:「いいから答えろ!」
 鈴木:「魔というのは障魔のことだ。顕正会では魔障と呼んでいるがね。仏道修行を妨害する様々な障害のことを、全部ひっくるめて魔と呼ぶんだ」
 エレーナ:「ん?すると、それは悪魔の一種ではないのか?」
 鈴木:「全部ひっくるめるとおかしくなるね。でも、中には人の心に入り込んで妨害するタイプもある。ぶっちゃけ、同じ信徒が魔の手先として怨嫉してくる場合もある。だから油断ならないんだよ。……みーんな、敵ぞ……“あっつぁの顕正会体験記”……名無し氏ね……」
 エレーナ:「今最後、作者の恨み節出てたぜ?ポリ銀さんだけは作者に謝ってくれたらしいけどな……って、いや、そんなことより、私達は“魔の者”と戦ってるんだぜ。私達は悪魔の一種だと思っているんだが、当の悪魔達は知らないというぜ。鈴木は何か知らないか?あんたも寺で眷属に襲われただろ?」
 鈴木:「いや、ゴメン。そこまでは知らないなぁ……。あの時は俺も何が何だかワケ分からん状態で……」
 エレーナ:「そうか……」
 鈴木:「悪いね、お役に立てなくて。でも、エレーナが仏法に興味を持ってくれるなんて嬉しいなぁ。今度、エレーナも大石寺に連れて行ってあげるからね」
 エレーナ:「別にいいよ。てか、私は一度行ってるんだが……」

 まだエレーナがイリーナ組と敵対していた時の話だ。
 登山中の稲生を襲う一環でエレーナ、何と御開扉中に奉安堂を爆破しようとしていた。
 屋根に上って爆裂魔法(イオナズン?)を使用する直前、稲生の護衛として一緒に来ていた威吹の妖刀に背中から体を貫通されて阻止された。
 もちろんそこは魔道士。
 それだけで死ぬことは無かったが、その時に使用していた体はもう使い物にならなくなってしまった。
 その後、しばらくエレーナが物語から退場することになったのは、体を交換しにウクライナへ強制送還されていたからである。

 鈴木:「えっ?」
 エレーナ:「あ、いや、何でもないぜ」
 鈴木:「稲生先輩もマリアさんに折伏しているみたいだけど、けんもほろろに断られているらしいんだ」
 エレーナ:「そりゃそうだろ」
 鈴木:「マリアさんの場合、何でもイギリスにいた時、既に折伏されたことがあったらしいんだ。だから少しは稲生先輩の信仰について知っていたんだね」
 エレーナ:「何だって!?」

 エレーナはいきなり核心に触れたことを実感した。
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