報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「業務終了直前に……」

2019-07-11 19:33:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 事務所の掛け時計が終業のチャイムを鳴らした。
 一応、タイマーで始業時間と終業時間にチャイムが鳴るよう設定している。

 愛原:「今日の仕事、終わりかぁ……」
 高野:「今日は依頼、来ませんでしたね」
 愛原:「また最近、不景気になってきたかなぁ……」

 まあ、うちはリサを成人までBOWとバレずに面倒を看れば高額の報酬が政府から入る契約を結んでいるから、おまんまの食い上げってことは無いのだが……。
 と、そこへ事務所の電話が鳴った。

 高野:「はい、愛原学探偵事務所でございます」
 ボス:「私だ」
 高野:「渡田さん、どうもいつもお世話になっておりますぅ」
 ボス:「誰が渡田さんだ!全く、毎度毎度……」
 高野:「いい加減、名前を名乗って下さいな」
 ボス:「いいから、愛原君に変わってくれ」
 高野:「少々お待ちください。先生、ボスからお電話でーす」
 愛原:「了解」

 まあ、高野君の電話のやり取りで、ほぼ100パー予想はついたが。

 愛原:「はい、もしもし。お電話代わりました。愛原です」
 ボス:「私だ。まずは高橋君の退院、おめでとう」
 愛原:「おかげさまで」
 ボス:「営業時間外で申し訳無いのだが、そちらに依頼書をファックスさせてもらう。興味があったら、明日までに返信してくれ」
 愛原:「探偵業界、絶対こういう依頼システムじゃないですよね?」
 ボス:「うるさい!フィクションなんだからいいんだ!とにかく、着信したファックスを確認してくれたまえ。以上!」
 愛原:「仕事の斡旋、ありがとうございます」

 私は電話を切った。
 尚、サスペンス映画などで、よくミッション内容とかをカセットテープで送るという描写がある。
 そしてお決まりのセリフ、『尚、このテープは自動的に焼却処分される』という言葉の後に発火するというもの。
 あれの仕組みが未だに分からない。
 うちのボスでさえそんな依頼方法をしてこない所を見ると、インチキな描写なのだろう。

 高橋:「先生、ファックス着信です」
 愛原:「おう」

 私はファックスを見た。
 そこに書いてあったのは……。

[同日19:00.天候:晴 同地区 とある飲食店]

 愛原:「それでは高橋君の退院と快気を祝って、カンパーイ!」
 高野:「カンパーイ」
 リサ:「かんぱーい」

 私達は近所の飲食店に移動し、そこで高橋の快気祝いを行うことにした。
 リサも一緒だが、もちろん彼女だけジュースである。
 1度帰宅し、それからまた集合した。
 リサは中学校の制服から私服に着替えている。

 愛原:「どうだ、高橋?久しぶりの酒は?」
 高橋:「マジパねぇ味っス!最高っス!でも先生の盃を受けられたらもっと最高ッス!」
 愛原:「調子に乗んな」
 店員:「お待たせしました!こちらカルビとロースの盛り合わせになります!」
 愛原:「おっ、来た来た。さ、どんどん肉焼こう」
 高橋:「先生!俺に任せてください!」
 高野:「リサちゃん、そのお肉は生で食べちゃダメよ」
 リサ:「えっ?」

 生肉にがぶりつこうとしているその姿は、獲物を捕らえて食い付く直前のBOWであった。

 高野:「ちゃんと焼いてから食べなさい」
 リサ:「はーい……」
 高橋:「それで先生、ボスからの仕事は受けるんですか?」
 愛原:「まあ、返事は明日でいいって言うからな、明日まで考えてみるよ」
 高橋:「俺は何でもOKっスよ!」
 愛原:「それは頼もしい」

 仕事の内容はとても不可解な内容のものだった。
 見た目には簡単そうな内容なのだが、とても不可解。
 それで他の探偵会社には断られ、うちに回って来たらしい。
 依頼料は高額なものではあるのだが……。
 それと、これは善場氏と昼間話したことであるのだが……。
 もしも、今後の仕事の中において、バイオハザード絡みのものがありそうなら、リサを連れて行くと良いということだ。
 群馬県のバイオハザード事件だって、リサがいればまた違った結果になったであろうと……。
 それは確かにそうなのだが、強いBOW同士で戦わせてデータを取りたいという魂胆が見え見えだ。
 さすがにそれはリサにとっては酷ではないかと思う。
 もっとも、今回の場合はバイオハザードは関係無さそうだがな。

 愛原:「じゃんじゃん持って来てくれ。こいつら物凄く飲み食いするから」
 店員:「かしこまりました」

 まあ、今晩の所は盛り上がるとしよう。

 リサ:「私にもお兄ちゃんの飲み物、ちょっとだけちょうだい」
 高橋:「あぁ?ガキの飲むモンじゃねーよ。あと7年は待て」
 リサ:「ケチー」
 高橋:「教育だ、教育」

 何だかんだいってリサも高橋君には馴れたようだし、少しは安心である。
 それにしても本当、仕事の依頼どうしよう?

[同日22:00.天候:晴 同地区 愛原のマンション]

 リサ:「愛原さん、お風呂出たよー」
 愛原:「おーう」
 高橋:「先生より先に入るとは……」
 愛原:「まあまあ。子供は寝る時間だ」

 私が子供の頃はこの時間に塾から帰って来たものだが、塾通いしていないリサにはさっさと風呂に入ってもらおう。
 知能が高いのか、リサが殆ど家で勉強している所を私はあまり見たことが無い。
 せいぜい、事務所に寄って斉藤さんと宿題をやっているくらいだ。
 斉藤さんは習い事として空手と学習塾に通っており、リサと事務所に来るのは週1か2のペースだ。
 それでも斉藤さんがリサより良い点を取ることは無いという。

 リサ:「もう宿題は終わったよ」
 愛原:「知ってる。斉藤さんと一緒にやってただろ。……ところで、テスト勉強とかしていないみたいだけど、テストの点数とかはどうやって取ってるんだ?」
 リサ:「どうやってって……フツーに問題解いてるだけ。そしたら当たってるだけ」
 愛原:「授業で聞いた内容がそのまま頭の中に入ってるのか?」
 リサ:「多分……」
 高橋:「いるんスよねぇ。勉強しているように見えないのに、いっつもいい点取りやがるヤツ」
 愛原:「俺の時にもいたけど、そういうヤツは陰で必死に勉強していたというオチが付いている。リサの場合、本当にIQが高いからすぐに授業の内容を覚えてしまうんだろうな」
 高橋:「その割に金田一少年は赤点ばっかじゃないですか」
 愛原:「金田一一はそもそも勉強する気ゼロだからIQ180でも赤点続きなんだよ」

 リサには愛原達が何を話しているか分からなかった。

 リサ:「愛原さんの仕事に協力できるなら、私も喜んで協力するから。いつでも声を掛けてね」
 愛原:「あ、ああ。ありがとう」
 リサ:「おやすみ」
 愛原:「おう、お休み」
 高橋:「スマホ使い過ぎんじゃねーぞ」
 愛原:「そういう高橋はタブレットの使い過ぎに気をつけろ」
 高橋:「さ、サーセン!」

 かくいう私もPCの使い過ぎを高野君に注意されてしまっていた。
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“私立探偵 愛原学” 「都心からの帰宅」

2019-07-11 14:49:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月9日12:00.天候:晴 東京都千代田区丸の内 東京駅八重洲地下街]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 群馬県山中の屋敷において新型BOWによる特異菌に感染させられ、3ヶ月の入院を余儀なくされた高橋がようやく退院することになり、私と高野君とで迎えに行った。
 しかし病院で政府エージェントの善場氏達に捕まり、彼らの事務所がある都内の一等地のビルにて事情聴取を受けていたというわけだ。
 で、今は昼休み。
 昼食代をもらった私達はすぐ近くにある東京駅の地下街の1つ、八重洲地下街を訪れたというわけだ。
 平日の昼間ということもあり、近隣のビルや東京駅で働く人々で飲食店はどこも混雑している。

 店員:「お待たせしました!3名でご来店の愛原様、ご案内致します!」

 で、ようやく席に着く。

 愛原:「遠慮しないで好きなもの頼んでいいからな。よーし、俺はオールスター天丼だな」
 高橋:「俺も同じので!……できれば先生の食べ残しで」
 愛原:「おい、やめろ」
 高野:「私は上天丼で」
 高橋:「アネゴ、そこは空気読んで先生と同じものを……」
 高野:「別にいいじゃない。ねぇ、先生?」
 愛原:「そうだぞ。高橋、俺は最初に何て言った?」
 高橋:「先生!?今頃、特異菌の影響が!?」
 愛原:「そういうことじゃねぇ!……遠慮しないで好きな物頼んでいいって言ったろが!だから高野君の行動は正しいの!」
 高野:「そういうことよ。じゃ、注文しますね」
 愛原:「ああ、よろしく」

 高野君が店員を呼んで注文した。

 愛原:「本当に高橋、見た目が少し変わったな」
 高橋:「やっぱそうですか?」

 別に顔や体型が変わったわけではない。
 何というか、体の色素が抜けた感じになっている。
 元々高橋は色白な男だった。
 髪も金髪に染めていたのだが、今はそれが銀色に染めたかのような色になっているし、肌の色も余計に白くなっている。
 瞳の色も黒が抜け落ち、グレーに近い色になってしまった。
 つまり、アルビノのようになってしまったということである。
 実際、強い光の所ではサングラスが必要になってしまっている。
 私が地下街を狙ったのは、そういう太陽の光を避ける為でもあった。

 高橋:「俺も人間じゃなくなったんですかね?」
 愛原:「いや、そんなことはないと思うけど……」

 別に、リサみたいにBOWに変化するわけではない。
 それに、善場氏の話では、アメリカでも同じようなBOWが暴れ出し、危うくその特異菌によって死亡寸前までいった被害者がいたそうだ。
 その被害者は死亡する直前にワクチンを投与したことにより生還を果たしているが、やはり高橋と同じように髪の色が抜けたり、虹彩の色が抜けたりしたそうだ。
 これは特異菌が死滅する際、石灰化する現象があり、その影響であるという。
 石灰は白いので、そういうことだと。

 高橋:「まあ、いいです。これでリサがワガママ言い出しやがったりしたら、俺が対処できるということですよ」
 愛原:「……まあ、いざとなったらよろしく」

 ワガママ座敷童のエヴリンより、うちのリサ・トレヴァーの方がよっぽど素直でいいコだと思うのだが。

[同日15:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 車が都道50号線(新大橋通り)沿いにある私の事務所の前に止まる。

 善場:「それでは、今後とも御協力をお願い致します」
 愛原:「分かりました。できることなら、協力させて頂きます」
 高橋:「先生の貴重なヒマな時間を無駄に使わせたんだから、報酬はちゃんともらうぞ?」
 愛原:「高橋、日本語おかしいぞ。……それじゃ、送って頂いてありがとうございました」

 運転席と助手席には善場氏の部下と思しき黒スーツの男2人が座っている。
 彼らと比べると善場氏は華奢な女性のように思えるが、高野君曰く、なかなか隙の無い武闘派のように見えるという。
 ゾンビが1人や2人やってくる程度では、簡単に振り払って逃げられるくらいのスキルはあるだろうと。
 なるほどなぁ……。

 高野:「先生、事務所はどうなさいますか?」
 愛原:「いや、今から開けるさ。数時間程度でも、1件くらい依頼があるかもよ」
 高野:「あるといいですねぇ……」

 事務所に戻って来た。

 愛原:「どうだ、高橋?3ヵ月ぶりの事務所はァ……」
 高橋:「いや、マジで懐かしいですね。まあ、3ヶ月くらいじゃそうそう変わらない……ん?」

 その時、高橋は何かを見つけた。
 スーッとキャビネットの上を指で擦る。

 高橋:「アネゴ!埃が溜まってんじゃんかよ!?先生の事務所を埃塗れにしやがって!」
 高野:「お姑さんかオマエは!?」
 高橋:「先生!すぐに掃除します!」
 愛原:「いや、いいよ。明日からで」
 高橋:「いいえ!俺に任せてください!」
 愛原:「あ、そう。退院したばっかりなんだから、無理すんなよ」
 高橋:「はいっ!」

 と、そこへエレベーターが5階に到着する音が聞こえた。

 高野:「ん?誰か来ましたよ?」
 愛原:「おっ、依頼者かな?」
 リサ:「ただいま」
 斉藤絵恋:「お邪魔しまーす!」

 そうではなかった。
 BOWであるがちゃんと自己制御できている稀有な例、リサ・トレヴァーの亜種である。
 日本政府としては是非ともエージェント候補として囲い込みたいらしい。
 日本は核兵器を保持することができない(ことになっている)為、それに代わる軍事力の確保を模索しているようなのだ。
 核兵器がダメならBOWといったところか。
 そしてそれは、他国も同じことらしい。
 その為、リサは数少ない成功例として是非とも政府で管理したいということなのだ。
 但し、リサはまだ10代前半。
 しかも生い立ちが、元々人間だったものをアンブレラ・ジャパンが非人道的な方法で人体実験したものの産物である。
 バレたらそれを利用した政府も世論から非難轟々になることは明らかである。
 その為、成人になるまで私達が面倒看ることになった。
 まさか、名も無き探偵が管理しているとは誰も思わないだろう。
 で、今では近くの中学校に通っているというわけである。

 リサ:「お兄ちゃんが退院したって聞いて、家庭科でパウンドケーキ焼いたの。食べてください」
 高野:「あら、美味しそう」
 高橋:「食ったら即効ゾンビ化決定、ウィルス入りケーキじゃねーだろうな?」
 愛原:「高橋!」
 斉藤:「いーえ!リサさんの愛情てんこ盛りケーキでーっす
 高橋:「食ったのか!?」
 リサ:「お兄ちゃんの為に焼いたのに、サイトーが全部食べちゃったから作り直した」
 斉藤:「リサさん、お代わりちょうだい!お代わり早よ!」
 リサ:「ダメ。これはお兄ちゃんと愛原先生達用」
 高橋:「お、おい!オマエ、大丈夫か?体の方は何とも無いのか!?」
 リサ:「リサさんの愛情で、体がすっごい熱いんですよ……」
 高橋:「先生!こいつゾンビ化寸前です!早いとこ射殺を!」
 愛原:「落ち着け、高橋。ていうかお前、射殺の前にワクチンという発想が無いのか!」

 まあ、斉藤さんの場合、本当に感染したわけではなく、違う意味でゾンビ化寸前だろう。

 高野:「まあまあ、お茶入れるから皆で食べましょうよ」
 愛原:「そうだな。リサ、俺達も食べていいんだろう?」
 リサ:「うんうん」
 高橋:「お、俺もですか?」
 愛原:「オマエなぁ、こういう時こそ空気読むんだよ」

 高橋の場合、特異菌に感染したことで、それまでに世界を震撼させたゾンビウィルスのほぼ全てを無力化させるほどの抗体が付いたそうだ。
 凄い副産物である。
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