[7月12日20:00.天候:雨 某県山中 妖伏寺トンネル工事現場]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は仕事で地方の山中へやってきた。
何でもトンネル工事現場で、クリーチャーの目撃例が多発しているらしい。
私は高橋とリサを伴って、現場へとやってきた。
トンネルの外側までは工事が進んだものの、肝心の中が掘り進められず困っているとのこと。
現場監督との最中調整を終えた私達は、そのトンネルへと向かった。
東京から乗って来た車は工事事務所に置いて、今度は工事車両であるトラックに乗り換える。
リアシートの付いたダブルキャブだ。
監督の運転でトンネルに向かったのだが、途中で三重ものバリケードを開けなければならなかった。
あの、ビル建設工事現場でよく見かける、蛇腹状のバリケードだ。
愛原:「ここまで厳重にしなければならないとは……」
山辺監督:「実は私、一度だけ化け物を見たことがあるんです。あれはまるで、黒い植物のような化け物でした」
愛原:「黒い植物!?何ですか、それは!?」
山辺:「私にも分かりませんよ。もちろん私だけでなく、他の作業員も目撃しているんです。気のせいなんかじゃなく、奴らに重機を壊されたり、作業員が襲われてケガをしたりしているんです。もちろん警察には通報しましたが、警察が来ると奴らは現れないんです。このままでは、現場の私達の責任にされてしまいます。だからどうか愛原さん、何とかお願いします」
愛原:「分かりました。警察にはビビッている奴らでも、探偵には襲って来るでしょうからね。私達にお任せを。因みにその黒い化け物、他に何か特徴はありませんでしたか?」
山辺:「特徴ですか?人型であるとしか……。ああ、あと、他の作業員からは、四つん這いに這って来たヤツに襲われたなんて話もあります」
愛原:「リッカーかな!?」
私は霧生市の大山寺という寺で遭った化け物、リッカー達を思い出した。
人間のゾンビが更に進化したヤツであり、四足歩行で行動する。
しかもヤモリのように壁を張ったり、天井に張り付いたりすることもできる。
私達はそんな奴らの女ボス、“逆さ女”とも対峙した。
アメリカでは“サスペンデッド”とか言うらしいが、日本では妖怪・逆さ女でいいだろう。
愛原:「この近くにあるのが逆女峠というくらいだから、逆さ女が潜んでいるのかもしれないな。その目撃例は?」
山辺:「ありません」
愛原:「あらっ!?」
私はズッコケた。
愛原:「ま、まあ、誰も見ていないから絶対いないとも言い切れませんからね」
山辺:「その通りです。あとは、その黒い化け物からはカビの臭いがしたということですかね」
愛原:「カビ!?」
黒い人型のクリーチャーで、カビの臭いを放つ者に私は心当たりがあった。
愛原:「モールデッド!?」
アメリカのルイジアナ州に現れた新型BOW“エブリン”が駆使した特異菌とは、新型のカビであるとされる。
それに感染した者の中には、全身が黒カビに覆われ、最後は男か女かも分からないほどに転化するのだという。
私達が群馬県で襲われたのはその亜種ではないかとされるが、もしかしてモノホンがここに投入されていたのだろうか。
愛原:「新型のクリーチャーがいるのか……」
高橋:「先生、大丈夫です!俺に任せてください!」
高橋はそう言うと、手持ちのマグナムに弾を込めた。
もちろん本物ではなく、改造エアガンであるが、しかし恐らく高橋のことだ。
殺傷能力を持たせた違法改造エアガンであろう。
ここに来るまで、警察の職務質問に遭わなくて良かった。
まあ、いざとなったら善場氏に国家権力を発動してもらうけどw
愛原:「本当か?」
高橋:「モールデッドだかゴールデンバットだか知りませんが、俺のマグナムで蜂の巣にしてみせます!」
リサ:「私も頑張るー」
まあ、この2人がやる気を出せば何とかなるだろう。
高橋:「先生。先生も一応、持っててください」
愛原:「お、おう」
高橋は私にショットガンを持たせた。
因みにこのショットガン、猟銃用のもので本物である。
ああ、そうとも。
この仕事の為だけに、わざわざ許可取ったよ。
高橋の場合は前科があり過ぎて、許可が取れなかった。
霧生市で拾ったものはポンプアクションの為、慣れないとリロードに時間が掛かってしまっていたが、こちらはセミオートである。
これでだいぶリロードが楽になった。
高橋:「それじゃ早速、中に入りましょう」
愛原:「大丈夫か、高橋?モールデッドは今、BSAAで確認されたクリーチャーの中でも一番新しいタイプだ。ヘタすりゃ更に進化して、そこでもデータに無い新型がいるかもしれないぞ?」
高橋:「大丈夫です!どんな新型が出ても、あの“座敷童”を倒した先生が御一緒なら心強いです!」
愛原:「いや、実際に倒したのは俺じゃないんだが……」
リサ:「じゃあお兄ちゃん、逃げちゃダメだよ?」
高橋:「分かってるって!それはオマエもだぞ?先生をお守りするんだ。逃げたら罰金ってことでどうだ?」
リサ:「オッケー」
愛原:「おいおい、危なくなったら逃げていいんだぞ?俺らはBSAAでもテラセイブでもないんだから……」
私は半ば呆れながらトンネルの中に入った。
愛原:「うわ、まだ全然素掘りじゃん」
入ると入口付近はコンクリートの壁が出来上がっていたものの、少し進んだだけでもう土壁が露出していた。
奥行はだいぶありそうなので、取りあえず掘り進められる所まで掘り進めたといった感じだな。
この辺りの地盤は堅固なのだろう。
落盤の心配は無さそうだが、高橋のマグナムの威力や化け物達に暴れ方によっては、それも警戒しなくてはならない。
ザザッ!
愛原:「誰だ!?」
しかしそれは影だけで、姿を現さなかった。
だが、トンネルの横坑に逃げ込んだのだけは分かった。
愛原:「高橋!そこに逃げ込んだぞ!」
高橋:「任せてください!」
私は後ろを振り向いた。
まだトンネルの入口は見えている。
そんな所でもうクリーチャーに遭遇するとは……こりゃ想像以上の大掃除になるかもしれないな。
高橋:「出て来やがれ、オラァーッ!!」
高橋は非常口である横坑のドアを蹴破った。
いや、蹴破っちゃマズいだろ、全く……。
モールデッド?:「じょうじ?」
高橋:「は!?」
それは確かに全体的に黒い人型の姿をしていた。
んでもって、確かにカビの臭いはする。
モールデッド?:「じょうじ!」
愛原:「り、リアルテラフォーマー!?」
そのテラフォーマーみたいな化け物はうずくまっていたのだが、私達の姿を見つけるとすっくと立って走って来た。
高橋:「うわ、何だコイツ!?気持ち悪ィ!」
高橋は一気に退散した。
確か高橋、虫が苦手なんじゃなかったっけ?
分かっていて現れたヤツに関しては不快な顔をし、殺虫剤を両手に持って対応するが、いきなり現れたヤツに関してはフリーズしていたように記憶している。
愛原:「おい、待て高橋!?」
高橋が退散したのを見て私も後を追った。
テラフォーマー?:「じょうじ?じょうじ!」
トンネルの外に出た私と高橋は肩で息をしていた。
高橋:「せ、先生!ゴキブリがいるなんて聞いてませんよ!?」
愛原:「もしかしたら、人型というか、ゴキブリの化け物がいたってことか!?」
高橋:「こりゃとんでもない仕事になりそうですよ!?」
愛原:「問題なのは今のテラフォーマーみたいなヤツが、“テラフォーマーズ”のゴキブリみたいな強さかどうかってことだな。特殊な人体改造や訓練を受けていた隊員達でさえ、バタバタと死んでいく漫画だぞ?素人の俺達じゃ対応しきれない」
高橋:「こりゃ一度、対応策を……って、リサがいない!?」
愛原:「なにいっ!?バカ、お前!!リサを置いて来たのか!?」
高橋:「先生だって真っ先に逃げてたじゃないスか!」
愛原:「早く戻るぞ!リサを助けに!」
高橋:「は、はい!」
ところがそこへリサがやってきた。
リサは鬼娘の姿になって、両手にあのテラフォーマーの生首を2つ持っていた。
2つ!?
やはり、どうやらいたのは一匹だけじゃなかったようだ。
リサ:「結構弱いよ、コイツら?」
愛原:「ええっ!?」
リサ:「頭をゴンって叩いてやったらすぐにノビちゃったし、もう一匹も襲って来たけど、殴ったら簡単に死んじゃったし。一応、首を引きちぎって持って来た」
愛原:「一応持って来る物じゃないからな?」
改めてリサもBOWなんだと実感させられる。
高橋:「な、何だ。それじゃ、これなら安心だな。弾切れにさえ気をつければ……」
リサ:「ていうか、お兄ちゃん?」
その時、リサが冷たい声で言った。
リサ:「逃げたよね?逃げたらどうするんだったっけ?」
高橋:「え、えーと……」
愛原:「高橋、観念してリサに有り金全部渡してやれ」
高橋:「マジっすか!?まさかのカツアゲされる側に回るとは……!」
愛原:「悪事は必ず自分に返って来るということだな」
とにかく、リサを連れて来て良かったと私は思った。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日は仕事で地方の山中へやってきた。
何でもトンネル工事現場で、クリーチャーの目撃例が多発しているらしい。
私は高橋とリサを伴って、現場へとやってきた。
トンネルの外側までは工事が進んだものの、肝心の中が掘り進められず困っているとのこと。
現場監督との最中調整を終えた私達は、そのトンネルへと向かった。
東京から乗って来た車は工事事務所に置いて、今度は工事車両であるトラックに乗り換える。
リアシートの付いたダブルキャブだ。
監督の運転でトンネルに向かったのだが、途中で三重ものバリケードを開けなければならなかった。
あの、ビル建設工事現場でよく見かける、蛇腹状のバリケードだ。
愛原:「ここまで厳重にしなければならないとは……」
山辺監督:「実は私、一度だけ化け物を見たことがあるんです。あれはまるで、黒い植物のような化け物でした」
愛原:「黒い植物!?何ですか、それは!?」
山辺:「私にも分かりませんよ。もちろん私だけでなく、他の作業員も目撃しているんです。気のせいなんかじゃなく、奴らに重機を壊されたり、作業員が襲われてケガをしたりしているんです。もちろん警察には通報しましたが、警察が来ると奴らは現れないんです。このままでは、現場の私達の責任にされてしまいます。だからどうか愛原さん、何とかお願いします」
愛原:「分かりました。警察にはビビッている奴らでも、探偵には襲って来るでしょうからね。私達にお任せを。因みにその黒い化け物、他に何か特徴はありませんでしたか?」
山辺:「特徴ですか?人型であるとしか……。ああ、あと、他の作業員からは、四つん這いに這って来たヤツに襲われたなんて話もあります」
愛原:「リッカーかな!?」
私は霧生市の大山寺という寺で遭った化け物、リッカー達を思い出した。
人間のゾンビが更に進化したヤツであり、四足歩行で行動する。
しかもヤモリのように壁を張ったり、天井に張り付いたりすることもできる。
私達はそんな奴らの女ボス、“逆さ女”とも対峙した。
アメリカでは“サスペンデッド”とか言うらしいが、日本では妖怪・逆さ女でいいだろう。
愛原:「この近くにあるのが逆女峠というくらいだから、逆さ女が潜んでいるのかもしれないな。その目撃例は?」
山辺:「ありません」
愛原:「あらっ!?」
私はズッコケた。
愛原:「ま、まあ、誰も見ていないから絶対いないとも言い切れませんからね」
山辺:「その通りです。あとは、その黒い化け物からはカビの臭いがしたということですかね」
愛原:「カビ!?」
黒い人型のクリーチャーで、カビの臭いを放つ者に私は心当たりがあった。
愛原:「モールデッド!?」
アメリカのルイジアナ州に現れた新型BOW“エブリン”が駆使した特異菌とは、新型のカビであるとされる。
それに感染した者の中には、全身が黒カビに覆われ、最後は男か女かも分からないほどに転化するのだという。
私達が群馬県で襲われたのはその亜種ではないかとされるが、もしかしてモノホンがここに投入されていたのだろうか。
愛原:「新型のクリーチャーがいるのか……」
高橋:「先生、大丈夫です!俺に任せてください!」
高橋はそう言うと、手持ちのマグナムに弾を込めた。
もちろん本物ではなく、改造エアガンであるが、しかし恐らく高橋のことだ。
殺傷能力を持たせた違法改造エアガンであろう。
ここに来るまで、警察の職務質問に遭わなくて良かった。
まあ、いざとなったら善場氏に国家権力を発動してもらうけどw
愛原:「本当か?」
高橋:「モールデッドだかゴールデンバットだか知りませんが、俺のマグナムで蜂の巣にしてみせます!」
リサ:「私も頑張るー」
まあ、この2人がやる気を出せば何とかなるだろう。
高橋:「先生。先生も一応、持っててください」
愛原:「お、おう」
高橋は私にショットガンを持たせた。
因みにこのショットガン、猟銃用のもので本物である。
ああ、そうとも。
この仕事の為だけに、わざわざ許可取ったよ。
高橋の場合は前科があり過ぎて、許可が取れなかった。
霧生市で拾ったものはポンプアクションの為、慣れないとリロードに時間が掛かってしまっていたが、こちらはセミオートである。
これでだいぶリロードが楽になった。
高橋:「それじゃ早速、中に入りましょう」
愛原:「大丈夫か、高橋?モールデッドは今、BSAAで確認されたクリーチャーの中でも一番新しいタイプだ。ヘタすりゃ更に進化して、そこでもデータに無い新型がいるかもしれないぞ?」
高橋:「大丈夫です!どんな新型が出ても、あの“座敷童”を倒した先生が御一緒なら心強いです!」
愛原:「いや、実際に倒したのは俺じゃないんだが……」
リサ:「じゃあお兄ちゃん、逃げちゃダメだよ?」
高橋:「分かってるって!それはオマエもだぞ?先生をお守りするんだ。逃げたら罰金ってことでどうだ?」
リサ:「オッケー」
愛原:「おいおい、危なくなったら逃げていいんだぞ?俺らはBSAAでもテラセイブでもないんだから……」
私は半ば呆れながらトンネルの中に入った。
愛原:「うわ、まだ全然素掘りじゃん」
入ると入口付近はコンクリートの壁が出来上がっていたものの、少し進んだだけでもう土壁が露出していた。
奥行はだいぶありそうなので、取りあえず掘り進められる所まで掘り進めたといった感じだな。
この辺りの地盤は堅固なのだろう。
落盤の心配は無さそうだが、高橋のマグナムの威力や化け物達に暴れ方によっては、それも警戒しなくてはならない。
ザザッ!
愛原:「誰だ!?」
しかしそれは影だけで、姿を現さなかった。
だが、トンネルの横坑に逃げ込んだのだけは分かった。
愛原:「高橋!そこに逃げ込んだぞ!」
高橋:「任せてください!」
私は後ろを振り向いた。
まだトンネルの入口は見えている。
そんな所でもうクリーチャーに遭遇するとは……こりゃ想像以上の大掃除になるかもしれないな。
高橋:「出て来やがれ、オラァーッ!!」
高橋は非常口である横坑のドアを蹴破った。
いや、蹴破っちゃマズいだろ、全く……。
モールデッド?:「じょうじ?」
高橋:「は!?」
それは確かに全体的に黒い人型の姿をしていた。
んでもって、確かにカビの臭いはする。
モールデッド?:「じょうじ!」
愛原:「り、リアルテラフォーマー!?」
そのテラフォーマーみたいな化け物はうずくまっていたのだが、私達の姿を見つけるとすっくと立って走って来た。
高橋:「うわ、何だコイツ!?気持ち悪ィ!」
高橋は一気に退散した。
確か高橋、虫が苦手なんじゃなかったっけ?
分かっていて現れたヤツに関しては不快な顔をし、殺虫剤を両手に持って対応するが、いきなり現れたヤツに関してはフリーズしていたように記憶している。
愛原:「おい、待て高橋!?」
高橋が退散したのを見て私も後を追った。
テラフォーマー?:「じょうじ?じょうじ!」
トンネルの外に出た私と高橋は肩で息をしていた。
高橋:「せ、先生!ゴキブリがいるなんて聞いてませんよ!?」
愛原:「もしかしたら、人型というか、ゴキブリの化け物がいたってことか!?」
高橋:「こりゃとんでもない仕事になりそうですよ!?」
愛原:「問題なのは今のテラフォーマーみたいなヤツが、“テラフォーマーズ”のゴキブリみたいな強さかどうかってことだな。特殊な人体改造や訓練を受けていた隊員達でさえ、バタバタと死んでいく漫画だぞ?素人の俺達じゃ対応しきれない」
高橋:「こりゃ一度、対応策を……って、リサがいない!?」
愛原:「なにいっ!?バカ、お前!!リサを置いて来たのか!?」
高橋:「先生だって真っ先に逃げてたじゃないスか!」
愛原:「早く戻るぞ!リサを助けに!」
高橋:「は、はい!」
ところがそこへリサがやってきた。
リサは鬼娘の姿になって、両手にあのテラフォーマーの生首を2つ持っていた。
2つ!?
やはり、どうやらいたのは一匹だけじゃなかったようだ。
リサ:「結構弱いよ、コイツら?」
愛原:「ええっ!?」
リサ:「頭をゴンって叩いてやったらすぐにノビちゃったし、もう一匹も襲って来たけど、殴ったら簡単に死んじゃったし。一応、首を引きちぎって持って来た」
愛原:「一応持って来る物じゃないからな?」
改めてリサもBOWなんだと実感させられる。
高橋:「な、何だ。それじゃ、これなら安心だな。弾切れにさえ気をつければ……」
リサ:「ていうか、お兄ちゃん?」
その時、リサが冷たい声で言った。
リサ:「逃げたよね?逃げたらどうするんだったっけ?」
高橋:「え、えーと……」
愛原:「高橋、観念してリサに有り金全部渡してやれ」
高橋:「マジっすか!?まさかのカツアゲされる側に回るとは……!」
愛原:「悪事は必ず自分に返って来るということだな」
とにかく、リサを連れて来て良かったと私は思った。