報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「朝の一時」

2019-07-12 21:01:10 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月10日07:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 枕元の目覚まし時計がけたたましいベルを鳴らす。

 愛原:「うーん……」

 私は手を伸ばして目覚まし時計を止めた。

 愛原:「もう朝か……。あの仕事の依頼、どうしようかなぁ……」

 そんなことを考えていると、ふと布団の中がゴソゴソ動いた。

 愛原:「……って、うぉっ!?リサ!またか!」

 私が掛け布団を跳ね上げると、リサが中にいた。
 頭に角を2本生やし、体の色も赤銅色に変化した“赤鬼娘”の姿で……。
 これが適度に力を解放し、落ち着く形態なのだという。
 私はこれを『第一形態』と呼んでいる。
 因みに、完全に人間の姿に戻る時は『第0形態』と呼ぶ。

 リサ:「お腹空いたら、いつの間にか愛原さんのベッドの中に潜り込んでた」
 愛原:「俺を食う気か!」
 リサ:「お腹空いた……」
 愛原:「分かった分かった。高橋が朝飯作ってるだろうからもうちょっと待て」

 このままでは本当に私が食い殺されてしまう。

 リサ:「お腹空いた……」

 リサは足を崩し、右手の指を噛んで目を潤ませた。
 もしかして、空腹というのは性的な意味で!?

 リサ:「お腹一杯にさせて……?」
 愛原:「早く着替えて朝飯だ!」

 私はリサを追い出すと部屋の鍵を掛けた。
 部屋の鍵を掛けるのを忘れてしまっていたか。
 もっとも、リサが本気を出せばドアを破ることなど容易いことだろう。
 そう言えば中学生と言えば、とっくに異性を意識する年頃だ。
 リサの中学校は共学校だから男子生徒もいるはずだが、リサに告るヤツとかいないのだろうか?
 あ……いや、1人いた。
 だが残念なことに、それは斉藤絵恋さんという女子生徒であるのだ。
 善場氏からはリサの恋愛に関して、特に禁止命令は聞いていない。
 むしろ政府関係者や研究者からは、恋愛感情における形態の変化という実験でもしたいのではなかろうか。
 少なくともムラムラしている時点では、せいぜい第一形態が……って!
 学校でムラムラして第一形態にでもなったら大騒ぎだぞ!?大丈夫なんだろうか。

 高橋:「先生!大丈夫ですか!?」

 そこへ高橋が飛び込んで来た。

 愛原:「あ、いや、大丈夫だ」
 高橋:「リサのヤツ、先生に何てことを……!」
 愛原:「言っておくが、マグナム程度では効かないからな?」
 リサ:「ううん。愛原さんの『マグナム』なら効くと思う」

 リサは私の下半身を指さして言った。

 愛原:「やめなさい!そういう言葉、どこで覚えて来るんだ!?」
 リサ:「学校で男子達が喋ってた」
 愛原:「なにぃっ!?」

 しかし、高橋は意外にも大きく頷いた。

 高橋:「そういうのを勉強するのも、中学校って所です。そして、それを実践するのが高校という所……」
 愛原:「高橋はちょっと黙っててくれ。リサ、取りあえずその男子達が喋っていたこと、一旦全部リセットしようか?」
 リサ:「うん?どうして?」
 愛原:「そ、それは……」
 高橋:「先生の御命令だ!文句あっか!」
 愛原:「そ、そう。俺の命令……じゃダメかな?」
 リサ:「うん、分かったっ!愛原さんの言う事なら何でも聞く」
 愛原:「そ、そうか。偉いぞ」

 私は取り繕うようにリサの頭を撫でた。
 その時、角にも触れたが、角は想像していたよりも柔らかく、まるで軟骨のようだった。
 これが第二形態、第三形態とかになると触手が生えてくるんだっけか。
 そして最終形態は、もはや原型を留めないほどの化け物と化すと……。
 今はまだ一応、誤魔化せる姿形ではあるが……。

 愛原:「じゃあ、早速朝飯にしようか。高橋、飯できてる?」
 高橋:「バッチリです!今日はベーコンエッグにキャベツ、御飯と味噌汁です」
 愛原:「和洋折衷だな。だが、それもいい。リサ、取りあえず食べるぞ」
 リサ:「はーい……」
 高橋:「おい、学校で女子達とは喋んねーのか?」
 リサ:「喋る」
 高橋:「エロい話とかしねーのか?」
 リサ:「しようとすると、何故かサイトーが割って入って来る」
 高橋:「先生、普通は女子もこの時くらいにオ○ニーを他のヤツから聞いたりするものです。リサのヤツ、ムラムラしてもオ○ニーの方法を知らないが為にあんなことになるんですよ」
 愛原:「お前も朝から堂々とそういう話をするなぁ。てか、何でそんな話知ってるんだよ?」
 高橋:「俺がゾッキーやってた頃、仲間内の女がそう言ってたんです」

 今は暴走族も数少ない集団になり、多くは解散したが、残りは旧車會として残ったり、半グレになったりしている。
 昔の暴走族は男女別れているのが普通だったが、今は男女混合になることもしばしばのようだ。

 高橋:「あの女に邪魔させず、リサも自然と他の女子達の輪に入れば先生を襲うことも無くなりますよ」
 愛原:「対策が分かっても、俺達じゃ何にもできないだろう」

 と、その時、リサのスマホが鳴った。

 リサ:「あっ、食事中……」
 愛原:「いいよ。電話は急用だろうから出て」
 リサ:「うん」

 食事中のスマホ禁止を私が命令した経緯がある。
 高橋もそんなことしていたので、私が一斉に注意した。

 リサ:「はい、もしもし?……あ、はい」

 恐らく相手は噂をすれば何とやらで斉藤さんかと思ったのだが、どうやら違うようだ。
 学校からの連絡網だろうか?

 リサ:「……分かりました。それじゃ、お大事に」

 リサは電話を切った。

 愛原:「誰からだった?」
 リサ:「サイトーの所のメイドさん。サイトー、今日は具合悪いから休むって」
 愛原:「ほお。そりゃ心配だなぁ……」
 高橋:「生理にでもなったんですかね?」
 愛原:「オマエ、特異菌に感染してから少し変わったな。以前なら、『リサが何か感染させたんじゃないですか』とか言いそうなのに」
 高橋:「昔の俺とは違います」
 愛原:「その程度の違いで済むならいいんだけどな」

 私は味噌汁をズズズと啜った。
 少年刑務所で習ったとされる料理のスキルについては、感染後も大して変わっていない。
 さて、事務所に行ったら仕事を受けるかどうか決めないとな。
コメント (2)
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