報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夕方の出発」

2019-07-15 20:48:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月12日16:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はいよいよ出発の日だ。
 クライアントの依頼で、霧生市まで行って来る。
 正確に言えば霧生市の隣町のトンネル工事現場である。
 しかしながら山1つを隔てただけの町であり、よくゾンビやクリーチャーが山を越えて行かなかったものだとつくづく思う。
 そんな町に行こうとしている。

 高橋:「先生、お待たせしました」

 高橋がレンタカーショップで、日産NV200バネットを借りて来た。
 事務所の裏に車を止める。

 愛原:「おう、ご苦労さん」
 高橋:「運転も俺に任せてください」
 愛原:「大丈夫か?煽り運転禁止だぞ?」
 高橋:「分かってますって」
 愛原:「早いとこ荷物を積み込もう」
 高橋:「はい。……リサはどうしました?」
 愛原:「学校から帰って来て、制服から私服に着替えさせている所さ。クリーチャーに対して『リサ・トレヴァー』であるところの脅威を見せてもらう為に、あの時着ていたセーラー服と仮面でも着けてもらいたいところだ」
 高橋:「逆に俺達が危なくないスか、それ?」
 愛原:「冗談さ。だけど仮面の方は制御装置の意味合いもあるらしいので、それは必要じゃないかなと思ってる」

 と、そこへ……。

 リサ:「お待たせ」

 リサがやってきた。

 高橋:「遅かったじゃねーか。先生を待たせてんじゃねーぞ、コラ」
 愛原:「そういう高橋も、今来たところだろうが」
 高橋:「サーセン」
 愛原:「仮面は持って来たか?」
 リサ:「うん」
 愛原:「セーラー服は着てこなかったか」
 リサ:「着てみたら少しキツかった。私、太った?」
 愛原:「違うよ。体が成長してるんだよ。初めてリサと会った時、いくつだった?」
 リサ:「確か、12歳くらい……」

 あれから1年半くらい経っている。
 成長期の子にあっては、十分なギャップだろう。
 アメリカにいたオリジナル版は14歳でクリーチャー化したものの、実年齢(40代半ばから後半くらいらしい)に見合わず、肉体は殆ど老化していなかったという。
 ここにいるリサはそのウィルスを更に改良したものを投与した派生版ということだが、基本は同じである為、リサももしかしたら不老不死くらいの勢いなのかもしれない。
 にも関わらず、肉体の成長は常人と同じようだ。
 もしかしたら派生版というのは、オリジナル版より人間の面影を残す為に却って弱体化しているのかもしれない。
 いや、よくは分からないが。

 愛原:「それじゃしょうがないよ。正直な話、リサ、少し背が伸びたぞ?」
 リサ:「ほんと!?」
 愛原:「ほんとほんと。高橋もそう思うだろ?」
 高橋:「それはまあ、そうですけど……」

 その時、高橋の脳裏にフラッシュバックが……。

『背が伸びたなぁ、お前』
『お兄ちゃんより高くなるかもね!?』
『アホかw』

 愛原:「どうした、高橋?」
 高橋:「あ、いえ、何でも……」
 愛原:「いいから早いとこ荷物を積み込んで出発しようよ?殆どがお前の秘密兵器だぞ?」
 高橋:「あ、はい。サーセン」

 ぶっちゃけ、職務質問でも受けて車の中を詮索されたらヤバそうなものを高橋は積み込んでいたが。

 高橋:「大丈夫です。これらの銃はモノホンではありませんので」

 とか言ってるが、実態は【お察しください】。

 高橋:「全部アキバで調達したものです」
 愛原:「それを違法改造したってわけか」
 高橋:「そこは【お察しください】」
 愛原:「全く……。あ、リサ。お前は車に乗ってていいぞ。リアシートでいいか?」
 リサ:「うん」

 高橋が借りて来たのは5ナンバーのワゴンタイプだった。
 タクシーで使われるタイプだと言えば分かるだろう。
 但し、本当のタクシー仕様ではないので、車椅子を乗せられるリフトが付いているわけではない。
 車高の低いライトバンと比べれば積み込めるスペースは大きいので、高橋の秘密アイテムの数々が乗せられるわけだ。

 高橋:「お待たせしました。それでは行きましょう」

 高橋はバンッとハッチを閉めると運転席に乗り込んだ。

 愛原:「一応、ナビはセットしておいた」
 高橋:「さすが先生!あざっす!」
 高野:「気をつけて行って来てくださいね」
 愛原:「ああ。事務所の方はよろしく」
 高野:「この前の時みたく、関係無さそうに見えて実はバイオハザードだったってこともありますから。ましてや今度の行き先は、あの霧生市との市境ですからね」

 バイオハザードに直面しそうな町でありながら、現場自体は無関係だったら楽なんだけどな。

 愛原:「こっちにはトゥルーエンドを迎えた高橋と、ラスボスを張れる勢いのリサがいるから大丈夫だ」
 高橋:「先生のおかげです」
 リサ:「元ラスボスの意地、任せて」
 高橋:「『元ラスボス』って……。ガチの御本人が言うことじゃねーからな?」
 愛原:「リサ、ちゃんとシートベルト締めてな?」
 リサ:「はーい」

 どんな大事故でも恐らくリサだけは生き残るだろうが、さすがに道路交通法ってもんがあるからな。

 高橋:「それじゃ出発していいっスか?」
 愛原:「頼むよ。安全運転でな?」
 高橋:「任せてください」

 高橋は車を走らせた。

 高橋:「高速行きますよね?」
 愛原:「当たり前だよ。高速で行っても2〜3時間掛かる距離だぞ?高速代とかも、ちゃんとクライアントに請求するから。そういう契約になってるからな」
 高橋:「サーセン。いや、ナビが『一般道優先』になってたもんで」
 愛原:「あ、マジで!?ゴメン、俺がミスってた」

 私は急いで『高速優先』に設定を変えた。

 愛原:「これで大丈夫だ」
 高橋:「了解です。あとは俺に任せてください」
 リサ:「夕ご飯はどうするの?」
 愛原:「途中で食べるさ。高速のサービスエリアか、パーキングエリアにでも止まった時でいいだろう」
 高橋:「どこのパーキングがいいか、先生の指示でお願いします」
 愛原:「分かったよ。リサもトイレとか行きたくなったら言ってくれよ?」
 リサ:「うん、分かった」

 こうして私達は夕方の都道を、まずは首都高速目指して走った。
コメント (2)
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