報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「埼玉へ到着」

2019-07-31 21:13:15 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月20日09:44.天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 JR北与野駅]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 私と高橋、そしてリサを乗せた埼京線電車が北与野駅に到着した。

〔きたよの、北与野。ご乗車、ありがとうございます〕

 さいたまスーパーアリーナが近いが、そこは本当の最寄り駅であるさいたま新都心駅に譲り、埼京線でも屈指の閑静な駅であり続ける。

 リサ:「駅に着いた。早速サイトーにLINEするー」
 愛原:「仲がいいね」
 高橋:「でも先生、こいつらの仲は【お察しください】」
 愛原:「まあまあ。現在のところ、丸く収まってるんだからいいじゃないか」
 高橋:「はあ……」

 階段を下りて、1つしか無い改札口を出ると、そこに斉藤絵恋さんがいた。

 斉藤絵恋:「さいたまへようこそようこそ、リサさーん……と、リサさんの叔父さんと、リサさんのお兄さん」
 愛原:「ああ、こんにちは。あれ?家で待ってるんじゃなかったの?」
 絵恋:「えへっw、待ち切れなくて来ちゃいました」
 愛原:「おやおや」
 高橋:「けっ……」
 愛原:「それにしても、新宿駅から乗る電車までは教えていなかったのに、よくこのタイミングだって分かったね?」
 絵恋:「リサさんの行動範囲は全部GPSで把握済みですから
 高橋:「おい、犯罪者!」
 絵恋:「何ですか、元受刑者さん?」
 高橋:「このクソガキ……!」
 愛原:「まあまあ。それより早く、斉藤さんの家にお邪魔しよう。絵恋さんのお父さんをお待たせしているだろう?」
 絵恋:「それもそうですね。では、どうぞこちらへ」

 絵恋さんは白を基調としたワンピースを着ている。
 駅の外に出ると、バッと日傘を差した。
 なるほど。
 これだけ見れば、どこかの富豪の御令嬢にはちゃんと見える。

 絵恋:「リサさーん、もしよろしかったらどうぞ入ってー
 リサ:「ん!」

 リサは素直に絵恋さんの隣に入った。

 高橋:「日傘で相合傘かよ、女同士で。気持ち悪ィレズビアンだなー、あぁ?」
 愛原:「高橋君。もし俺が日傘を持っていて、それを差していたらキミはどう思う?」
 高橋:「是非とも!地獄の底まで相合傘させて頂きます!」
 愛原:「つまり、オマエのセリフは大ブーメランってことだ。少し黙っとけ」
 高橋:「ははっ!でも、やっぱりレズって気持ち悪いですよね?」
 愛原:「だからそのセリフをゲイのお前が言うからおかしいと言ってるんだ!」

 LGBTがLGBTを笑うLGBT。

 絵恋:「リサさんは何で来たの?」
 リサ:「都営新宿線と埼京線」
 絵恋:「ごめんなさいね。本当は新庄に迎えに行かせたかったのに、御祖父様がお出かけに車を使っているものだから……」
 愛原:「絵恋さん、お祖父さんが御健在なんだ?」
 絵恋:「ええ。全日本製薬の名誉会長なんです」

 創価学会の池田大作氏みたいな肩書きだな。

[同日10:00.天候:晴 同地区 斉藤家]

 絵恋:「我が家へようこそようこそー!」

 北与野駅から北西方向に歩いて10分ほど。
 閑静な住宅街の中に斉藤家はある。
 周辺の家もそこそこ規模の大きい一軒家が建ち並んでいることから、さいたま市内でも高級住宅街に分類される地区なのだろうと思われる。
 実際、駅前には何軒かタワマンも建っているくらいだし。

 愛原:「地上3階建ての屋上付きか。立派な御宅だねぇ……」
 リサ:「地下にプールもある」
 絵恋:「リサさーん、良かったらプール一緒に入らなーい?」
 リサ:「いきなりで水着持って来てない」
 愛原:「梅雨寒とかもあるのに、学校ではプール開きしたのかい?」
 リサ:「学校のプール、生ぬるいから」
 愛原:「?」
 絵恋:「うちの学校のプール、温水なんです。だから、肌寒い日も入れます」
 愛原:「さすがは私立校。愚問だったかな」
 高橋:「先生のご質問に、愚問などありません」

 高橋は私にヨイショしてきた。
 ……今のはヨイショだったのか?

 メイド:「お帰りなさいませ、御嬢様。いらっしゃいませ、愛原様」
 愛原:「こんにちは。愛原です。10時の御約束で、斉藤社長と商談に伺いました」
 高橋:「先生、ここ、オフィスビルの受付じゃないですが?」
 愛原:「うるせーな、いいんだよ」
 高橋:「は、申し訳ありません」
 メイド:「お待ちしておりました。応接室へご案内させて頂きますので、どうぞこちらへ」
 絵恋:「リサさんは私の部屋で遊びましょ!愛原さん、いいでしょ?」
 愛原:「ああ、いいよ」

 元より、リサは絵恋さんの遊び相手として連れて来たものだ。
 斉藤社長も、それをお望みだ。

 高橋:「先生、あれは性根が腐っています。俺が1度叩き直して……」
 愛原:「その台詞、全国のレズビアンを敵に回すからな?」
 高橋:「大丈夫です。こっちには全国100万人ものゲイが味方に付いていますから」
 愛原:「100万人もいるのか……」

 私は正直げんなりした。
 応接室に通され、よく冷えたウーロン茶が出された。
 そして、そこへ私服姿の斉藤社長がやってきた。

 斉藤秀樹:「やあ、どうも。愛原さん。わざわざお越し頂きまして、ありがとうございます」
 愛原:「斉藤社長、お久しぶりです」
 秀樹:「業界で伺いましたよ?またもや、バイオハザードを解決に導いたそうですね?」
 愛原:「いえいえ。結局最後にはBSAAが介入したので、私達はただ単に探検しただけのようなものですよ」
 秀樹:「BSAAに対して道標を付けてあげたという功績は大きいものです」
 愛原:「そうですかね?」
 秀樹:「凡人にはできないことですよ」
 高橋:「それは俺も同感です。先生は凡人なんかじゃない」
 愛原:「おい、高橋。やめろよ」
 秀樹:「いや。なかなかお目が高いお弟子さんだ。ちゃんと弟子入りするべき師匠を見当てている」
 高橋:「ダテにネンショー(少年院)やショーケイ(少年刑務所)に出入りはしていませんよ」
 秀樹:「札付きの極悪少年を更生させた愛原さんの功績は、もっと称えられるべきです」
 高橋:「札付きの極悪少年……!」

 だが、高橋は言い返すことができなかった。
 正しくその通りだったからだろう。
 最後には自嘲気味に笑うしかなかった。

 愛原:「社長。早速ですが、商談の方を……」
 秀樹:「おお、そうでした。愛原さん方にお願いするお仕事はただ1つ。うちの娘に、夏の思い出を作ってあげてください」

 斉藤社長の仕事の依頼内容は、だいたい想像した通りであった。
コメント
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