報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「怒れる8号機」

2015-07-30 20:16:34 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月22日14:00.天候:雨 東京都墨田区 敷島エージェンシー 敷島孝夫]

 雨が降る中、傘を差して事務所に戻る敷島。
「ただいまァ……」
「あ、お帰りなさい、社長」
 事務作業ロボットの一海が出迎えた。
「ったく、鷲田警視のオッサンよォ、俺達が犯人みたいな扱いしやがって」
「一体、どうしたんですか?」
「荒らされた仏壇の中にあった仏像が無くなってるんだとよ。……おっと、仏像じゃないか。“御本尊”ってヤツだ。どこの宗教だ?」
「それより社長、井辺プロデューサーも任意で事情を聞かれているらしいですね?」
「レイチェルと知り合いだったってのがバレたんだ。まあ、知り合いってなだけで共犯じゃないだろ。まあ、MEGAbyteのプロデュースは俺が引き継ぐさ」
「アルちゃんは?」
「再起動するたんびに感情レイヤーに不具合が発生するもんだから、アリスの所に預けてるよ。後で様子を見てくる。念の為、シンディを護衛に付かせてるさ。あの研究所、何回かレイチェルに襲撃されてるし……」
「そうですねぇ……」
 と、その時、一海の机の上の電話が鳴った。
「お電話ありがとうございます。敷島エージェンシーでございます。……あ、アリス博士。……はい、社長でしたら、すぐに……」
「あ?アリスからか?」
「はい」
「よう、どうした?」
{「アンタのケータイ繋がんないから、会社に電話させてもらったよ」}
「……ヤベッ、地下鉄で帰ってたもんで、音消したまんまだった。ワリぃ、ワリぃ。で、なに?」
{「念の為、アルエットの修理をしていたら、左足の脛から巻物が出て来たんだけど、何か知ってる?」}
「巻き物ぉ?横山大観か?」
{「知らないわヨ!誰、それ!?」}
「何だ?墨絵じゃないのか?」
{「何か、難しい書体の漢字の羅列が書いてあるのよ。昔、京都のお寺に行った時に見た御経みたい」}
「アルエットは何て言ってる?」
{「だから!まだ起動させてないって!アンタは何か知ってるのかって思って電話したの!」}
「あー、悪かったよ。……そういえば鷲田警視、達夫爺さんちの仏壇の中から“御本尊”とやらが無くなってるって言ってたな」
{「そうなの?」}
「ああ。もしかして、その巻き物が“御本尊”なんじゃないのか?」
{「どうする?」}
「取りあえずそれは、アルエットの足の中に戻しておいてくれ。恐らく達夫爺さんが仕掛けただろうから、達夫爺さんの家からそれらしい資料が見つかればいいんだが……」
{「分かったわ。因みに後で、アルエットをもう1度再起動してみるから」}
「分かった。再起動はともかく、再稼働には俺も立ち会おう」
{「タカオが?」}
「ああ。こうなったら、乗り掛かったバスだ。やるしかないな」
{「乗り掛かったshipでしょお?」}
 敷島は電話を切った。
「お帰りなさい、社長」
 奥からMEGAbyteの結月ゆかりがやってきた。
「おう」
「プロデューサー、警察に行ったんですか?」
「ああ。たまたま、あのレイチェルと昔会ってたってことでな。会ってただけで、別に一緒に悪い事していたわけじゃなし、すぐに帰って来るよ」
「だといいんですけど……」
「ま、その間、俺がプロデュース業務代行するから、お前達は何も心配しなくていい」
「はい」
「えーと……今日は、ゆかりは仕事は無いのか」
「そうなんです」
「なるほど。もしかしたら夕方、俺と一緒に来てもらうことがあるかもしれない」
「えっ、お仕事ですか?分かりました!すぐにLilyと未夢にも……」
「いや、お前1人だけでいい」
「どういうことですか?」
「いいから。夕方までに何も無かったら、この件は一旦キャンセルだ」
「えっ???」
 ゆかりは首を傾げた。

[同日15:00.埼玉県さいたま市西区 デイライト・コーポレーション埼玉研究所 アリス・シキシマ、アルエット、シンディ]

「アルエット、再起動します」
 アリスが修理したばかりのアルエットの電源を入れた。
「……!」
 寝台の上で寝かされていたアルエットが目を開く。
「感情レイヤー、数値が上がってます」
 アリスは主任研究員。
 室内には他に部下の研究員が何人もいる。
 1人はアルエットの状態を遠隔で監視する端末モニタを見ていた。
 アルエットは虚ろな目で起き上がると、寝台に腰掛けた。
「気分はどう?」
 アリスが聞くと、アルエットは、
「博士は……?」
「残念だけどね……」
 アリスが答えると、俯いて、
「ううう……博士……!どうして……!」
 ポロポロと涙を流した。
 と、そこへ、
「アリス博士!」
 部屋の外で警備に当たっていたシンディが飛び込んできた。
「レイチェルが襲撃に来ました!急いで待避してください!」
「レイチェルが!?かなりタイムリーね……」
「アタシが応戦します!アルエットも避難所へ!」
「…………」
「さっ、行くわよ」
 アリスがアルエットの手を引いて、地下の避難所に向かった。
「アルエット!あなたのドクターの無念はアタシが晴らしてあげるわよ!」
 そう言って、シンディはバージョン4.0が迫って来る研究所の外で、レイチェルを迎え撃つことにした。

[同日17:50.JR上野駅・低いホーム 敷島孝夫&結月ゆかり]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。14番線に停車中の列車は、18時ちょうど発、特急“スワローあかぎ”1号、本庄行きです。発車まで、しばらくお待ちください。……〕

「社長、一体わたし、どうして連れて行かれるんですか?」
「付いてくれば分かる」
「?」
 敷島とゆかりは特急列車の先頭車に乗り込んだ。
「まあ、着くまで適当に寛いでくれ。恐らく、KR団は襲って来ないと思う」
「どうしてですか?」
「着いたら教えてやるよ」
「???」
「ちょっと電話してくるから、このまま待っててくれ」
「はい」
 敷島はケータイ片手に、まだ発車まで時間のあるホームで電話を手に取った。
{「もしもし!?」}
「アリスか。今、どんな状況だ?」
{「バージョンの軍団が研究所内に入り込んでるのよ!」}
「はあ!?シンディのヤツ、何やってんだ?まずそのザコ共全滅させてからだろうが!」}
{「マリオとルイージをこちらに向かわせてるけど、何かどこかに潜んでいたらしく、結構数があるみたい。さすがのシンディもレイチェルと戦いながら……ああっ!?」}
「何だ、どうした!?」
{「アルエット!やめなさい!ここにいなさ……」プツッ!}
「お、おい!」
 敷島はびっくりした顔で、スマホから顔を離した。
 電話は切れてしまい、もう1度掛けたが、研究所のアンテナが破壊されたのか繋がらなくなった。
「そ、そうか!ぶっちゃけ、マルチタイプは2機もいるんだよな、あっちに……!」

[同日同時刻 天候:雨 デイライト・コーポレーション アルエット]

「目標発見!直チニ捕獲……ワアアアッ!!」
 アリスの制止を振り切って、避難所を飛び出したアルエット。
 すぐに所内に入り込んでいたバージョン達に捕捉される。
 が、
「うおおおおおっ!!」
 マルチタイプの本領発揮で、体当たりや殴り掛かったりして、簡単に破壊した。
「撃テッ!撃テッ!」
 マシンガンやショットガンを放つバージョン軍団。
 だが、旧型マルチタイプでもロクに効かないそんな銃火器、当然、最新型マルチタイプのアルエットにも効かなかった。
(許さない!よくも!よくも博士を!復讐してやる!復讐だ!フクシュウ……!!)

[同日18:00.JR高崎線特急“スワローあかぎ”1号・7号車内 敷島孝夫&結月ゆかり]

 電車がゆっくりと低いホームを発車すると、大きな窓に雨粒が当たった。
「くっそ!雨かよ。ツイてねぇ……」
「関東南部に注意報が出ていますよ、社長?」
「あー、そうかよ、ゲリラ豪雨か?」
「多分……。あの、どうしてわたしだけ連れて行かれるんですか?」
「修理だよ、修理」
「えっ?」
「もちろん、お前のな」
「ど、どういうことですか?」
「向こうに着いて、シンディとアルエットが勝ってたら教えてやるよ」
 敷島はぶっきらぼうに言うと、テーブルの置いた夕食、駅弁(深川めし)に箸をつけた。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする