報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「仙台入り」

2015-07-19 23:31:16 | アンドロイドマスターシリーズ
[7月17日14:30.天候:晴 東北新幹線“はやぶさ”23号8号車・デッキ 敷島孝夫]

 列車が地下深くの上野駅を発車し、地上に出ると敷島はデッキに出て電話を始めた。
「……もしレイチェルが不意を突いて、そちらに向かっても動じないように」
 という内容から始まった。
 それは何故かというと、実際に戦ってみたシンディの見立てでは、レイチェルはそんなに強化されていないようだとのことだ。
 シンディもエミリーもボディの交換は済んでいる。
 シンディの場合、スペックは前期型と大して変わらないが、アリスがこつこつと改造しているらしい。
 シンディが得意とするのは狙撃。
 同じく狙撃を得意とするレイチェルの動きが読めるのはその為。
 ライフルの命中精度を上げたりしているらしい。
 エミリーにあっては平賀独自の技術も盛り込まれており、エミリーが得意とする白兵戦において更に強化改造されている。
 基本的にあまり使用しないライフルやマシンガンは取り外し、代わりに近距離攻撃で効果を発揮するショットガンと、マグナム弾を使用するハンドガンに交換した。
 アルエットにあっては最新型ということもあり、光線銃が取り付けられているようで、あえて改造の必要は無いようだ。
 いずれにせよ、シンディにも負けたレイチェルが更にエミリーもいる所に飛び込んでくるかということだ。
 だったら、手薄になった都内。
 つまり、井辺達を襲って来るのではないかということだ。
「もし何だったら、アリスに頼んでマリオとルイージに護衛してもらおうか?」
{「そうなると、今度は奥様と御子息の警備が手薄になってしまいます。MEGAbyteにあっては元マルチタイプ亜種の未夢もいますし、私としましてはこのままで構わないと思っています」}
「そうか?何だか心配だなぁ……」
{「先ほど事務所に、奥様から色々と自衛の道具を届けて頂きました」}
「あっ?」
{「ロボット・デコイが30個くらい入ってますね。さすが奥様苦心の発明品です」}
「いいか!それ絶対、サツに見つかるなよ!?鷲田警視も嫌な顔する代物だからな!?」
 何度も説明するように、ロボット・デコイとは時限式の手榴弾を改造したものである。
 爆破スイッチを入れると、特殊な信号音と光を発し、バージョン・シリーズを中心とするテロ用ロボットをおびき寄せ、集まった所で爆発して一気に吹き飛ばす物だ。
 高性能の人工知能を搭載したマルチタイプやボーカロイド、メイドロボットには効かない(信号音や光におびき寄せられることはないが、元が爆弾なので、もちろん近くにいたら被爆する)。
 但し、故障などでそれが低下してしまった場合は除く。
「あくまで政府関係機関から超法規的な措置を受けているのは、マルチタイプに関わることだけなんだからな?」
 経済産業省からは50億円の値がついているが、防衛省からはもっと高い値が付けられそうだ。
 厚生労働省は高過ぎると手を引いた。
 代わりに、メイドロボットを介護ロボットとして開発して欲しいとの依頼が財団時代あったくらいだ。
 メイドロボットなら、億単位の金は掛からない……と思う。
{「レイチェルはやはり破壊ですか?」}
「向こうがボーカロイドを破壊するつもりで来たのなら、それも止むを得ないだろうな」
{「分かりました」}
 あとは互いの予定を確認しあう内容で終わった。

 電話を終えて座席に戻ると、
「はい、社長」
 シンディが車販からアイスコーヒーを購入していた。
「おっ、気が利くな」
「ガムシロップだけ入れる派でしょ?」
「そうだ」
 敷島はシンディの隣に座り直した。
 シンディがガムシロップを入れてかき混ぜる。
「何かメイドロボットみたいだな」
「アタシはあいつらと同じことができるからね。でも『おいしくなーれ』とか『萌え萌えキューン(はあと)』はやらないよ」
「どこの店のメイドだよ!」
 そういえばエミリーやシンディが着ている衣装は、メイド服がモチーフなんだとか聞いたことがあると敷島は思った。
 エミリーは濃紺、シンディはライトブルーの衣装を着ている。
 ノースリーブのワンピースで、スリットの深いロングスカートだ。
 これにメイドが着けている白いエプロンを着けると、なるほど、何となくしっくり来る。
「マシンガンぶっ放すメイドがどこにいるよ?」
「ロアナプラにいる、猟犬と呼ばれたメイド」
「……ロ◯ルタか!」
 その様子を見ていたアルエットは、
(ユーザーとの良好な関係を築く為のコミュニケーションか……)
 と、学習した。
 余計な学習かもしれないが。

[同日15:52.JR仙台駅付近 敷島孝夫、シンディ、鏡音リン・レン、アルエット]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線はお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。仙台の次は、盛岡に止まります〕

 列車が市街地付近を走る頃には、だいぶ減速している。
「何か、帰ってきたって感じだねー」
 と、リン。
「ボク達、最初はこの町で活動してたもんね」
 双子の姉機の発言に、弟であるレンも同調する。
「この後はどうするの?科学館に行く?」
「いや、先にホテルに行って荷物を置いて来るさ」
「そう。面白い部屋割りになりそうね」
「そうか?」

[同日16:15.仙台市青葉区・ホテル法華クラブ仙台 上記メンバー]

「何だか知らんが、喜劇曲の“天国と地獄”の最後のトリの部分が頭でループしてやがる」
 と、敷島。
「オッフェンバック作の?何で?」
 シンディも目を丸くする。
「なになに?社長、運動会やるの?」
「“秋のボーカロイド運動会”なら、まだ先ですよ、社長?」
「あの、トランペットなら、わたし吹けますけど?」
 と、アルエットが手を挙げる。
「いや、何だかよく分からんが……。アルエット、そうなのか?じゃあ明日は、トランペット吹いてもらおうかな」
「で、部屋割りは?言っとくけど、社長のシングルはダメだよ。アリス博士から、アタシは社長と同室で護衛をするように言われてるんだからね。オーナーの命令は絶対。ユーザーの命令は相対」
「護衛っつーか、監視だろ?……こっそり国分町に遊びに行ってやろうと思ったのに」
「あ、今の、録音したから。後で博士に送信しておくね」
「こらァ!」

 敷島とシンディ、リンとレンにアルエットという2部屋割りになった。
 レンはいいのかと思われるだろうが、人間ではないのでOK。
 科学館においては展示期間中、ずっと置きっ放しにすることができない(セキュリティ上の問題)そうである。
「じゃ、荷物置いたらちょっと行ってみるぞー。多分、そろそろ設営始めると思うから」
「はーい」
コメント (2)
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