報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“新アンドロイドマスター” 「秩父路快速急行」

2015-07-02 19:24:03 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月21日06:15.天候:晴 JR大宮駅・埼京線ホーム 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ]

〔おはようございます。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の20番線の電車は、6時15分発、快速、新宿行きです〕

 休日朝の地下ホームで大きな欠伸をする白人女性が1人。
「何だって、こんな朝早くから……」
「しょうがないだろ。池袋発の快速急行が7時過ぎに発車するんだからさ」
 敷島は肩を竦めた。
「この朝一の快速で行くとちょうどいいんだ」

〔まもなく20番線に、快速、新宿行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 地下ホームに接近放送が鳴り響く。
「着いたら起こして……」
 と、敷島の腕を掴むアリス。
「さっきもタクシーの中で寝てなかったか、おい?ブクロ止まりじゃないんだから、ちゃんと起きてくれよ。シンディ、起こす時にちょっとアリスに電流よろしくな?」
「いいんですか?」
「タカオにしてやって」
「了解しましたー!」
「何でだよ!」

〔おおみや、大宮。ご乗車、ありがとうございます。次は、与野本町に止まります〕

 平日のこの時間帯なら、既に座席が満席の状態でやってくるが、休日ともなればガラガラだ。
 それでも大宮駅で結構な数の乗客が降りてくる。
 中にはスーツ姿の男女がいたりするが、この後、東武野田線に乗り換える組だろうか?

〔この電車は埼京線、快速、新宿行きです〕

 電車に乗り込む3人。
 アリスをドア脇の座席に座らせる。
 白い仕切り板に凭れさせて、その分敷島が広く使うつもりだったが、
「俺にかよ!」
 その逆隣に座る敷島に寄り掛かるという……。
 シンディはその2人の脇、ドアの前に立って微笑ましく見ていた。

〔「この電車は埼京線、快速電車の新宿行きです。次は与野本町に止まります。北与野駅は通過致しますので、ご注意ください。まもなく発車致します」〕

 早朝や深夜、住宅街にある駅などは騒音防止の為か、放送や発車メロディの音量を下げているが、地下ホームだと気兼ねないのか、かなりがなり立てている。

〔20番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

 電車は時刻通りに発車した。
 地下ホームに新型のインバータの音を響かせて、電車が走り出す。

〔この電車は埼京線、快速、新宿行きです。停車駅は与野本町、武蔵浦和、戸田公園、赤羽です。赤羽から先は各駅に止まります。次は、与野本町です。……〕

「ああ、そうそう。8号機のアルエットは、どうして遠くまで移動したの?」
 と、アリスが思い出したかのように言った。
「いや、それは俺も知らんよ。直接本人に聞くしかないな」
「アルエットはフランス語で“雲雀”という意味ですから、雲雀を追って行ったのかもしれませんね」
 と、シンディが言った。
「んなワケないだろー」
 敷島は苦笑いをした。
「荒川の上流……てか源流というか……ま、とにかくその辺りに何かあるかもしれない。KR団の施設とか……」
「だったらレイチェルが知らないなんてことは無いんじゃない?」
「う……」
 アルエットがバージョン・シリーズと共に動いているのは確かだ。
 千葉の警察署を襲撃し、そこから脱出したのだから。
「幸い、状況からして、サツを襲ったのはそのバージョン連中だけのしわざってことにできそうだ。アルエットが“味方”だといいんだがな」
「そのドクター・タツオ・ジュウジョウとやらは、KR団の仲間じゃないんでしょう?」
「……ということにはなってるが、そもそもレイチェルを使役できる立場というだけで怪しいんだがな」
 シンディとの戦闘の時、達夫がレイチェルに中止命令を出さなかったのは、レイチェルが達夫に寄り過ぎたと伝助に憤怒され、破壊処分を免れさせる為だった。
 レイチェルはレイチェルで、伝助の為にも動いている所を見せる必要があった。
 だからレイチェルも、苦しい立場なのだ。
 オーナーとユーザーがケンカ別れしているのだから。
「本当にレイチェルって悪いヤツなのかなぁ……」
「俺達を襲ったんだぞ?悪いに決まってるだろうが」
「でもねぇ……」
 シンディがレイチェルから奪った情報には、アメリカ・イリノイ州のオレンジスター・シティの事件のこともあった。
 それによると、襲われた研究所はデイライト・コーポレーションのライバル企業で、『電子機器メーカーのアンブレラ』と呼ばれるほどに悪名高い企業であった。
 事実、研究所では実験で使われた汚水が下水道に垂れ流しになっており、今では合衆国政府から事業停止命令を食らうほどまでになっている。
 KR団の指針は、『ロボットは人間の奴隷である』『ロボットが人間に勝ってはいけない』『その為の環境破壊には断固反対であり、神への冒涜である』『これらの指針を守れぬ者は直接神の裁きを受ける義務があり、我等はその代行者である』とのことだ。
 元々はキリスト教の一団体だったらしく、その名残で日曜日は一切のテロ活動を行っていない。
 鷲田警視や村中課長らのチームがデータを取ってみて分かったことだ。
 だから行動するなら、今だということだ。
「日本の神仏は土曜も日曜も関係無いもんねー」
 と、敷島は嘯いた。
「月月火水木金金だよ」
「?」

[同日同時刻 東京都墨田区菊川 敷島エージェンシー 初音ミク]

「朝だ♪夜明けだ♪潮の息吹き〜♪ぐんと吸い込む♪銅色(あかがねいろ)の〜♪」
 ミクは何故か軍歌“月月火水木金金”を歌いながら、今日の仕事の準備をしていた。
「なぁに、その歌?」
 準備を手伝う事務作業ロイド、一海が不思議そうな顔をした。
「何だかよく分かりませんが、たかおさん……社長がリクエストしたような気がしたんです」
「ええっ?」
 尚、戦後になってもザ・ドリフターズが歌っていたもよう。

[同日06:50.西武池袋駅 敷島孝夫、アリス・シキシマ、シンディ]

〔「今度の5番ホームに参ります電車は、7時5分発、秩父鉄道線直通の快速急行、三峰口行きと長瀞(ながとろ)行きです。前4両が三峰口行き、後ろ4両が長瀞行きです。途中、横瀬で切り離しを致します。お乗り間違えの無いよう、ご注意ください」〕

「どっちに乗ればいいの?」
「なるべく荒川の上流に行きたいから、三峰口行きの方だな。先頭車に乗ろう」
 ホームには既に行楽客の姿が多く見受けられる。
 観光地を持つ鉄道路線の休日ならではの光景だ。

 先頭車が来る辺りで電車を待っていると、接近放送が鳴る。
 池袋駅に入線してきた電車は、他の通勤電車とは一線を画していた。
 周囲の電車が4ドア車なのに対し、その半分の2ドアしか無い。
 しかもドア横や連結器付近以外は、4人用の向かい合わせ席が並んでいる。

〔「7時5分発、秩父鉄道線直通、快速急行、三峰口行きと長瀞行きです」〕

「シンディ、アリスの横に座ってくれ」
「ええ」
 ボックスシートに向かい合って座る3人。
 いつもは立つシンディも、敷島の命令で着席。
「この方が相席になりにくい」
「なるほど」

〔「ご案内致します。この電車は7時5分発、西武秩父線、秩父鉄道線まで参ります快速急行、三峰口行きと長瀞行きです。前4両が三峰口行き、後ろ4両が長瀞行きです。停車駅は石神井公園、ひばりヶ丘、所沢、小手指(こてさし)、入間市、飯能、飯能から先の各駅です。途中の横瀬で切り離しを行います。西武秩父へおいでのお客様、前4両にご乗車ください。後ろ4両は西武秩父駅には参りませんので、ご注意ください。……」〕

 窓際にはテーブルがある。
 そこに飲み物のペットボトルを置いた。
 敷島は途中の売店で買ったおにぎりを、アリスはサンドイッチを食べ始めた。
「三峰口駅に着いたら、シンディに周囲をスキャンさせてみる。達夫博士から、アルエットの個体情報は貰っているからな。それをシンディに読み込ませている」
「これでどこに隠れていても、見つけ出すことができるわ」
 シンディは大きく頷いた。
「うん、頼もしい。とにかく、KR団より先に見つけ出す必要がある。奴らの信条からして、今日はテロ活動は行わないはずだが、一応、シンディには警戒してもらう」
「了解」
「じゃ、食べたら寝るから起こしてね」
「お前、俺の話聞いてたか?てか、せっかくの行楽列車なんだから、景色楽しむとかしろよ」
 敷島はアメリカ人妻の言動に呆れた。
コメント (9)
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本日の雑感 0702

2015-07-02 17:43:28 | 日記
 再び厳虎独白が盛り上がっている。
 山門入り口さんの所でも取り上げられているが、女人救済の話。
 法華経ではものの見事に否定されている?
 日蓮正宗系では勤行で読誦しない部分に書いてあるようだ。
 茜オバハン、また何だかAKB叩きをしているようだが、経文に書いてある通り、どうあがいても絶望ルートしか用意されていないようなので、諦めてくれ。
 どうして日蓮正宗に尼僧がいないのかの理由が分かった。
 ただ宗史上、尼僧がいなかったわけではない。
 “妙教”には明治時代に活躍した(何て名前だったっけ?)尼僧のことが書かれていたし(だいぶ前)、日顕上人の御母堂様が宗史上、最後の尼僧であることは有名だ。
 さてさて、このような尼僧の方々はちゃんと成仏できたのだろうか。
 それが気になる。
 もちろん、経文の壁をブチ壊して成仏されたと信じたい。

 前記事でもつぶやいたが、私が埼玉県の秩父地方に行ったのは短大生の頃。
 鉄ヲタ仲間と数人で乗り鉄しに行った記憶がある。
 西武池袋駅を出発し、秩父鉄道に乗って、最後は寄居から東武東上線の特急で池袋に戻ったはずだ。
 ところが記憶を思い返してみても、西武池袋駅から4000系に乗った記憶が無い。
 4000系というのは飯能(はんのう)駅から西北、普段は西武秩父線を走る2ドア、セミクロスシートの電車である。
 4両で1台、2台繋いで8両編成で運転することもある。
 特別料金不要の電車ながら、車内にトイレや自動販売機があったが、だいぶ前に自動販売機は撤去されたらしい。
 仕方が無いので、当時を知る鉄ヲタ仲間で今は都営地下鉄職員のT氏に尋ねてみた。
 そしたら、

「土休日の秩父鉄道乗り入れ快速急行の癖に、101系で運転しやがって思いっ切り悔しがったじゃないか!」

 そうだった!
 今でも土休日ダイヤで池袋を朝に出発し、秩父鉄道に乗り入れる快速急行は2本ある。
 私達は後発に乗ったのだが、101系という3ドアの通勤電車が何故かやってきて、旅情ゼロの思いをしたものだ(先発はちゃんと4000系で運転されていた)。
 元からそういう運用だったのか、それとも後発用の4000系が検査か何かで使えず、101系を使ったのかは分からない。
 当時ひばりヶ丘に住んでいて、普段から西武池袋線を利用していた私は、101系にも通学でよくお世話になっていた。
 4ドアよりも着席定員の多い電車として、普段は当たりの電車なのだが、この時ばかりは思いっ切りハズレと思ったものである。
 今と比べても(大して変わらないが)、福運に恵まれなかった顕正会員だった。
 え?顕正会員の癖に土休日の折伏をサボって遊びに行くからこんなことになったんだって?
 ……仰る通り!

 秩父鉄道では今はもう運転されていない1000系(元・旧国鉄101系)のオンボロさ加減を楽しんだものだ。
 秩父鉄道で運用されてからなのか分からないが、今でも覚えている出来事がある。
 その1000系のボロさ加減を実感したのは走行中だ。
 この電車の運転室と客室との境の窓、運転席直後の窓が開く構造になっているらしい。
 それも、運転席側の方に開く。
 線路状態の良くない地方ローカル線の電車ならではの大きな揺れで、その窓が勝手に開いた。
 で、運転士の脳天を直撃。
 しかし運転士は、
「いてっ!」
 と言っただけですぐにその窓を閉め、ブラインドを下ろして、また開いたりしてもぶつかってこないようにした。
 で、また開いた。
 今度はブラインドに引っ掛かって運転士の頭にぶつかることは無かったが。
 どんだけオンボロなんだよ〜wという記憶が今でもある。

 寄居駅からは東武東上線の特急、池袋行きに乗った。
 10000系(ステンレス車体にあずき色の帯を巻いたヤツ)の6両編成だ。
 今なら自動放送付きなのだろうが、当時の東上線にそんなものを搭載した電車は無い。
 たったの6両でブクロまで向かうのか。メチャ混みにならないかなと思ったが、夕方の上りなので、そもそもそんなに乗らないというのもあっただろう。
 最後尾に乗ったが、そんなに混んだ記憶は無い。
 川越駅からブクロ駅までノンストップとのことで、当時の顕正会班長(もち、私の顕正会紹介者)に、ときわ台スルーするからw旨のメールを送った。
 そしたら確か、
「ときわ台駅に差し掛かったら飛び降りなさい。御本尊様に日曜勤行サボッて申し訳ありませんと懺悔しなさい。今月までに折伏5人は決めなさい」
 みたいな返信があったと思う。
 その班長も鉄ヲタで、ときわ台駅は速度制限が掛かって(時速55キロだか60キロくらい)そんなに高速で通過しないことを知っての返信だろうが、その何年も後に自殺志願者のオバちゃんを制止しようとした警察官が、電車に轢かれて死んでいる速度であることに変わりはない。
 昔から顕正会という所は人命軽視の団体であるようだ。
 で、私は当時から不良信心だったと。
 いやいや、少しくらい信心不良の方が却って長く信心できるよ。
 無理なく信心していたから、トチロ〜さんから折伏されるまでの10年間信心できたわけだからさ。
 この事実、武闘派には耳が痛いだろうな。
 皆が皆、武闘派になれるわけじゃないんだよ。

 実に懐かしい思い出だ。
 当時は今よりもガッツと根性があったらしい。
 仮にその頃既に法華講に入っていたら、大石寺登山はひたすら東海道線や中央本線、身延線の普通列車乗り継ぎなんかをやっていただろう。
 今では高速バスか新幹線だが。

 というわけで次回の“新アンドロイドマスター”は、当時の記憶を頼りながら作成したいと思います。
 とはいえ、15年も前のこと。
 ネットで可能な限り現在の状況を調べた上で書きますが、時代錯誤の所がありましたら、そこはフィクションということで、何卒ご了承のほどを<m(__)m>
コメント (14)
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“新アンドロイドマスター” 「8号機のアルエットを捜せ」

2015-07-02 11:22:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[6月20日15:11.天候:晴 JR藤野駅→上り普通列車内 敷島孝夫、初音ミク、シンディ]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の2番線の列車は、15時11分発、普通、立川行きです。この列車は3つドア、6両です〕

 藤野駅ホームで電車を待つ3人。
 あの後、レイチェルが復活して襲ってくることは無かった。
 ただ、シンディや達夫の見解では、あれくらいで壊れるマルチタイプではない、一時的にダウンしているだけだろうとのことだ。
「衣装、乾いたか?」
「何とかね」
 ノースリーブで、スリットの深いロングスカートが特徴のワンピースが特徴の衣装。
 これ自体が防護板みたいなもので、ケプラー材が多く使用されており、防弾や防刃性に優れている。
 その下に着用しているチューブ・ブラやビキニショーツも同じ材質の為、装甲版としての機能は十分だ。

〔まもなく2番線に、普通、立川行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この列車は3つドア、6両です〕

「おっ、やっと来た。この電車なら、八王子まで乗り換え無しで行けるからな」
 かつて東京駅や上野駅を発着していた中距離電車、211系と呼ばれる電車。
 今では中央本線に転属されている。

〔ふじの〜、藤野〜。ご乗車、ありがとうございます〕

 最後尾の6両目に乗り込む。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください〕

「高尾駅まで警戒だな」
「了解」

〔「次は相模湖、相模湖です」〕

 先頭車に乗らなかったのは、何も混んでいるからではなく、トンネルが断続的に続く区間では、運転士が昼間であっても運転室のブラインドを閉めるので、そもそも客室から前方の視界が悪い。
 車掌側は閉めることは無いので、後方視野は広い。
 外を確認しやすい為であった。
「あとはシンディに任せよう」
「は、はい」
 敷島はそう言って、ロングシートの空いている席に座った。
 ミクの髪と同じ色合いの座席である。
 向かい合わせの座席は無く、これで甲府や松本から乗ってくるのは苦行かもしれない。
 その間、敷島は八王子にいる井辺と連絡。
 メールでのやり取りだが、その中に重要案件とも取れる内容があった。
 いや、見た目には意味が分からないかもしれない。
『シンディの予備バッテリーを充電しておいてくれ』
 である。

 相模湖、高尾と電車はダイヤ通りの運行を続けて行くが、復活したレイチェルやその他バージョン・シリーズが襲ってくることは無かった。
 最近のバージョン4.0はシンディの睨みが効かず、闇雲に襲ってくることが多い為、厄介な……というかメンド臭い存在になっている。

[同日19:00.八王子市内ショッピングセンター 敷島孝夫、初音ミク、井辺翔太、MEGAbyte、シンディ]

「皆さーん、御心配お掛けてしてごめんなさーい!わたし、初音ミクは今日から復活しまーす!」
 後輩ユニット、MEGAbyteのミニライブに突如として出演したミク。
 しばらく休業という知らせが出回っていただけに、これに驚いた来場者は多かった。
(これでミクの注目度を上げ、明日からミク達には都心を中心に活動してもらう。KR団の目も、そっちに向くはずだ。そして、俺達は……)
 敷島は舞台裏でミクの活躍を見ながら、チラッとスマホを見た。
 相手はアリス。
「トニー(敷島夫妻の息子)を置いて旅行だなんて、とんだ父親ね」
 と、書いてあった。
(だから、旅行じゃねぇっての!)
 恐らくアメリカンジョークのつもりなのだろうと思われ、マジレスするのはやめたが、心の中では突っ込んだ。
(8号機のアルエットを回収するチャンスだ。明日は日曜日だしな)
 明日が日曜日だと、どうしてチャンスなのだろう?

 その後、敷島は事務所にいる一海達に命じて、マスコミにミク復活に関する声明をファックスで送らせた。
 敷島はマスコミのインタビューに際しては、
「優秀な科学者の皆様方の修理により、思ったより早く復帰に至ることができました。これにこの場を借りて感謝申し上げると共に、御心配をお掛けした大勢のファンや関係者の皆様にお詫び申し上げ、今後の活動にご理解とご助力のほど、よろしくお願い申し上げます」
 と、答えた。

「社長はJRでお帰りですか?」
 ライブ会場から駅に向かう時、井辺は敷島とシンディが別ルートで行くと聞いた。
「ああ。明日に備えて、今日は大宮に直帰することにするよ。幸い八王子なら、八高線経由で帰れるからね」
「明日というのは……」
「ちょっと、荒川の上流まで行ってくるよ」
 シンディがレイチェルに組み付いた理由は、もう1つある。
 一部を除いて、マルチタイプなどのロイドの右の掌には赤外線通信のレンズがあることは先述した。
 初対面のロイドはそれで赤外線通信を行い、互いの個体情報を交換し合うことで挨拶とすると。
 マルチタイプはもう1つ特殊なことができて、その赤外線通信を流用(悪用?)し、相手のロイドから情報を盗み取ることはも可能。
 ただ、その代わり、こちらの情報も漏れるリスクのある、諸刃の剣であるが。
 シンディはレイチェルと組み付いた際、その機能を使った。
 その結果、レイチェルが志木市の荒川に何故いたのかの理由が分かった。
 『埼玉県内の荒川河川敷』という情報しか得ていなかったレイチェルは、下流側からアルエットを捜しており、たまたまそこでミクを発見したというオチであった。
 そして敷島的には、既にさいたま市や川越市付近の荒川は、奇しくも捜索済み。
 つまり、さいたま市・川越市から下流域は実質的に捜索済みであるため、捜索域はそこから上流ということになる。
 そこへ、あのアリスの情報だ。
 上流どころか、源流域にアルエットがいる可能性が出て来た。
「川ってのは上流へ行けば行くほど幅が狭くなって、流れも速いからな。幸い、川沿いに鉄道も通っているからさ。また井辺君には仕事を押し付けて悪いけど……」
「いえ。初音さん達、ベテラン組はご自分でスケジュール管理ができますし、私も何となく要領は得てきましたので……。明日はMEGAbyte中心に、初音さん達の動きを見ていれば良さそうです」
「そうか。それは良かった」

 敷島とシンディはJR八王子駅に、残りのメンバーは京王八王子駅に向かった。
 敷島達のルートは八王子→川越→大宮。
 井辺達のルートは八王子→調布→菊川ということになりそうだ。

「孤独な爺さんが発狂する前に、何としてでも8号機を捜すぞ。ああいうタイプは緩衝材が必要だ」
「了解!」
 緩衝材どころか、むしろその反対の役割をウィリーに果たしてしまったシンディ。
 その贖罪の1つとなるか。
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