日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

入試問題ネット投稿事件は試験監督が甘かったせい?

2011-03-03 09:34:30 | 学問・教育・研究
京大の入試問題がネット上の掲示板に投稿された事件に関わったとして、仙台の予備校生が警察から事情聴取を受けることになった。ここまでは予想された成り行きである。こうした行動に走った動機、その手口を含めて、事件の全容が明らかにされることを期待したい。それにしても朝日新聞の朝刊には「京大答案、ネットと酷似」と大きく出ていたのが気になる。やはりこの予備校生がネットの掲示板を見ながら答案用紙に解答を書き込んだのだろうか。もしそうだとすると、私が案じていたように大学側全般の対応と試験監督の手落ちがこの事件を引き起こしたとも考えられるので、この事件は別の様相を帯びてくる。

私は入試問題ネット投稿事件対策は監督強化で十分で次のように述べた。

今回の出来事でも、どのように試験時間内に問題がネットに投稿されたのか興味があるが、今や「スパイ機器」が容易に入手出来るご時世である。試験問題の映像を外部に送信するのはちょっと頭を働かせば誰にでも出来るように思う。ましてや入試に合格するのが目的でないのなら、堂々とやってのけることも可能である。しかし監督者が絶えず受験者の挙動に目を光らせておれば、ネットに掲載された答案を見ながらその目を盗んて答案用紙に書き込むことは至難の業であろう。滅多にないことではあったにせよ、監督者が本や論文を読んでいたり、外の景色をうっとりと眺めていたり、椅子に座って居眠りなどはもってのほかである。絶えず受験者の挙動に目を光らせるためには、試験監督者としての職業的訓練が必須になる。

大学入試の監督をした経験者なら、監督者が絶えず受験者の挙動に目を光らせておれば、ネットに掲載された答案を見ながらその目を盗んて答案用紙に書き込むことは至難の業であろうと思われるに違いない。だからもし現実にこの受験生がそのように答案に書き込んだのであれば、残念ながら試験監督の失態を疑わざるをえなくなる。しかも京大では英語と数学の2科目で同じようなことが行われたとすると、それぞれ異なったチームが試験監督に当たっていただろうから、同じような失態をしでかしたことになる。またそれに先立ちこの予備校生が同志社大学、立教大学、早稲田大学でネット掲示板に入試問題を投稿したにもかかわらず、表沙汰にならなかったことで手口に自信を持ちだしたのであれば、大学側の対応の検証が必要になってくる。

ネット掲示板に入試問題が掲載されたことをもって、国立大学協会は「入試の公平性、信頼性を損なう由々しき問題」とコメントしたが、どのことを指すのか私にはもう一つピンと来ない。もし京大入試に先立って、Yahoo掲示板に入試問題の解答が出るから覗きに行こう、なんてアングラ情報が一部の受験生に流れて、彼・彼女らが一斉に試験会場で掲示板を開き、それを見ながら答案用紙に書き込むようなことがあれば、これは確かに「入試の公平性、信頼性を損なう由々しき問題」になる。しかしまさかそのような事態が現実に起こるだろうとは私には考えられない。とするとこれは個人的な行為で、私の言うIT時代の新しいカンニングに過ぎないことになり、ことさら「入試の公平性、信頼性を損なう由々しき問題」を強調する必然性は何もない。カンニングは科挙の時代から延々としてあったのだから。

それよりも問われるべきは試験監督のあり方なのではなかろうか。同じく朝日新聞の社会面に次のような記事が出ていた。

 今年の入試で監督を務めた立教大の30代の男性准教授は、「残念」と漏らした。准教授は「不正を見抜くために監督しているのではない」とした上で、「受験生が安心して力を発揮できるように見守るのが仕事。こういうことが起こると、監督を強化せねばならず、双方にとって不幸なことになる」と話した。
その通りである。不正を見抜くために監督しているのではないが、受験生が安心して力を発揮できるように見守るのが仕事なのである。だからこそ不正行為を摘発するというよりは、起こさせないことに試験監督は全力を傾注すべきなのである。その任務が厳正に遂行されていたなら、今回の事件は必ずや防げた筈である。これが入試問題ネット投稿事件対策は監督強化で十分の要点であった。

失態があったのかなかったのか、冷や冷やの思いで成り行きを注目している。