これまでに分かったことは、福島原発の原子炉がこのたびの東北地方太平洋沖地震で眼に見える構造的破壊を免れたということである。これから細かい損傷が見つかっていく可能性はあるだろうが、まずはその耐震性が実証されたと言える。ところが原子炉の安全性を確保する上で、思いがけぬ伏兵が現れた。地震が発生したのは11日午後2時46分ごろであるが、その午後3時42分に東京電力から経済産業省の原子力安全・保安院へ、福島第一原子力発電所の1、2号機で、炉心を冷やす緊急炉心冷却システム(ECCS)が動かなくなったという連絡が入ったのである。地震による停電に加えて、13機ある非常用のディーゼル発電機もすべてが停止したのでECCSを動かすことが出来なくなったのである。そこで東電は電源車51台を同原発に向かわせることにした。以上はおもにasahi.comのニュースであるが、一方、このようなニュースがあった。
ともに第一原発1号機についての記述で、格納容器内の圧力についての評価が微妙に変わっている。一方、1号機の炉心の水位についての続報である。
実はいろいろと問題点があるのだが、この「電源」と「水」に限っても理解出来ないことが多い。私は原子力発電について、一般教養的知識しかないので、そういう意味では多くの国民の皆さんと同じレベルにあると思っている。したがって常識的な見方しか出来ないのであるが、その常識で考えて分からないことに誰も答えてくれないのである。
まずは「水」である。東京電力福島第一原発1号機の炉心は、水位低下が止まらずとのことであるが、炉心の水位低下が燃料棒を水面から露出させることになり、これが危険だから水を供給して水面を上昇させようとしているはずなのに、なぜ水位低下がとまらないのかが分からない。地震で容器かパイプ類にヒビがはいり、そこから漏れ出したのだろうか。私が取材者ならそれを問いただすだろうにと思った。
さらにその「水」のことである。この「水」とは真水のことだろうが、水道栓を開いて給水する仕組みだけしかなかったのだろうか。地震で給水管が破壊されうる可能性を想定すれば当然プールのような貯水槽が設置されている筈だと思う。だからこのニュースには驚いた。
これが本当なら開いた口がふさがらない。2万1千リットルとは21トン。大型タンクローリー1台分ではないか。それで水が無くなってしまった?そしてとどのつまりが海水の注入とは!
「電源」もそうである。電気をつくる発電所でも停電することはあるだろう。その緊急時に備えて予備電源を設置するのは当たり前のことであろう。現に木造家屋がほとんど津波に奪い去られ、孤影悄然と建っているコンクリート造りの病院の窓が、自家発電で明々としている光景をテレビで眼にしたばかりである。それなのに原発では13機ある非常用のディーゼル発電機がすべてが停止してしまったとは誰が信じるだろう。
そしてこれからが本題なのであるが、この危機を乗り越えるために福島原発ではどのように意思決定がなされたのであろうか。
非常事態に際してどのように行動するのか、もちろん日常定期的に訓練はなされていただろう。では今回のように非常時電源まで使用不能になった際の訓練は出来ていたのだろうか。出来ていなかったような気がする。伝えられる限りではあるが、対応があまりにもスローモーだったからである。恐らく「想定外」であったのだろう。もし緊急事態での意思決定が現場でなされたのなら、対処は迅速に行われたに違いない。それが現場では意思決定ができず、東電本社、さらには経産省に原子力安全・保安院といちいちお伺いを立てていたのではなかろうか。そのうえ、厄介なことに菅総理までヘリコプターでやってこられてはたまったものでない。これが現場の声ではなかろうか、と私は思いたい。いずれ事後検証がなされるであろうが、意思決定を現場にまかせてそれを関係者全員が後押しをする、これが最善の危機克服の手段であると思う。
現場の方々は必死の取り組みをなさっていることであろう。なんとかして危機を脱していただきたい。
経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後2時すぎに記者会見を開き、東京電力福島第一原子力発電所の1号機(福島県大熊町)で、原子炉内の燃料の溶融が進んでいる可能性が高い、と発表した。(中略)
1号機の燃料Aの水位は、マイナス90センチがマイナス170センチまで下がり、燃料が水面から露出しているとみられる。燃料Bの水位についても、80センチから145センチまで下がっていることが確認されたという。格納容器内の圧力は750キロパスカルが754キロパスカルで、圧力は比較的安定している。
1号機の燃料Aの水位は、マイナス90センチがマイナス170センチまで下がり、燃料が水面から露出しているとみられる。燃料Bの水位についても、80センチから145センチまで下がっていることが確認されたという。格納容器内の圧力は750キロパスカルが754キロパスカルで、圧力は比較的安定している。
(asahi.com 2011年3月12日14時22分)
さらに 原子力安全・保安院は12日午後3時すぎ、東京電力福島第一原発の1号機の配管の弁を開放した結果、炉心の圧力容器を覆う「格納容器」の圧力が低下し始めた、と発表した。格納容器内は通常、400キロパスカル(約4気圧)で運転されているが、1号機は大地震による自動停止後、800キロパスカル超の圧力を記録し、損傷の恐れがあった。
(asahi.com 2011年3月12日15時43分)
ともに第一原発1号機についての記述で、格納容器内の圧力についての評価が微妙に変わっている。一方、1号機の炉心の水位についての続報である。
原子力安全・保安院によると、東京電力福島第一原発1号機の炉心は、水位低下が止まらず、現在、自衛隊のタンク車やポンプ車が計3~5台出動し、給水をして冷却している。また、外務省を通じて米軍からも協力すると打診されているという。
(asahi.com 2011年3月12日14時55分)
実はいろいろと問題点があるのだが、この「電源」と「水」に限っても理解出来ないことが多い。私は原子力発電について、一般教養的知識しかないので、そういう意味では多くの国民の皆さんと同じレベルにあると思っている。したがって常識的な見方しか出来ないのであるが、その常識で考えて分からないことに誰も答えてくれないのである。
まずは「水」である。東京電力福島第一原発1号機の炉心は、水位低下が止まらずとのことであるが、炉心の水位低下が燃料棒を水面から露出させることになり、これが危険だから水を供給して水面を上昇させようとしているはずなのに、なぜ水位低下がとまらないのかが分からない。地震で容器かパイプ類にヒビがはいり、そこから漏れ出したのだろうか。私が取材者ならそれを問いただすだろうにと思った。
さらにその「水」のことである。この「水」とは真水のことだろうが、水道栓を開いて給水する仕組みだけしかなかったのだろうか。地震で給水管が破壊されうる可能性を想定すれば当然プールのような貯水槽が設置されている筈だと思う。だからこのニュースには驚いた。
経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後、福島第一原子力発電所1号機の炉心を冷やす冷却水が不足してきたため、自衛隊に協力を要請したことを明らかにした。炉心が高温のままだと燃料棒の損傷が続く恐れがあるためだ。自衛隊が近郊の水源地から水を集め、給水車で運ぶ。
現在は消火用の配管を炉心を冷やす配管と接続し、炉心の温度を下げるために使っている。保安院によるとこれまでに合計で2万1千リットルを投入したという。
現在は消火用の配管を炉心を冷やす配管と接続し、炉心の温度を下げるために使っている。保安院によるとこれまでに合計で2万1千リットルを投入したという。
(日本経済新聞 電子版 2011/3/12 15:00)
これが本当なら開いた口がふさがらない。2万1千リットルとは21トン。大型タンクローリー1台分ではないか。それで水が無くなってしまった?そしてとどのつまりが海水の注入とは!
「電源」もそうである。電気をつくる発電所でも停電することはあるだろう。その緊急時に備えて予備電源を設置するのは当たり前のことであろう。現に木造家屋がほとんど津波に奪い去られ、孤影悄然と建っているコンクリート造りの病院の窓が、自家発電で明々としている光景をテレビで眼にしたばかりである。それなのに原発では13機ある非常用のディーゼル発電機がすべてが停止してしまったとは誰が信じるだろう。
そしてこれからが本題なのであるが、この危機を乗り越えるために福島原発ではどのように意思決定がなされたのであろうか。
非常事態に際してどのように行動するのか、もちろん日常定期的に訓練はなされていただろう。では今回のように非常時電源まで使用不能になった際の訓練は出来ていたのだろうか。出来ていなかったような気がする。伝えられる限りではあるが、対応があまりにもスローモーだったからである。恐らく「想定外」であったのだろう。もし緊急事態での意思決定が現場でなされたのなら、対処は迅速に行われたに違いない。それが現場では意思決定ができず、東電本社、さらには経産省に原子力安全・保安院といちいちお伺いを立てていたのではなかろうか。そのうえ、厄介なことに菅総理までヘリコプターでやってこられてはたまったものでない。これが現場の声ではなかろうか、と私は思いたい。いずれ事後検証がなされるであろうが、意思決定を現場にまかせてそれを関係者全員が後押しをする、これが最善の危機克服の手段であると思う。
現場の方々は必死の取り組みをなさっていることであろう。なんとかして危機を脱していただきたい。