日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

事実を伝えることの難しさ 取材・解説者に望むこと

2011-03-14 18:07:00 | 社会・政治
11時過ぎにある民放テレビ(?)が福島第一原発3号機の建物が11時01分に爆発する瞬間を何度も何度も繰り返して放映していた。閃光と炎に続いて黒煙が勢いよく上がり、やがて吹き上げられた外壁なのだろうか構造物の破片が幾つも落ちてきるとともに白煙が横に広がった。私が観たのとは異なるようであるが、爆発の瞬間がこのYoutubeに記録されている。閃光と炎を最初は29秒あたりで見ることができるが、1分10秒からの映像の方が見やすいと思う。



その後東京電力の会見発表があったが「爆発で白煙があがった」という内容であった。「閃光と炎」に「黒煙」を見ていただけに、「白煙」とはこれいかに、との思いを抱いた。

「大丈夫です、心配はありません」のメッセージを「白煙」に託したと思えないこともないが、「閃光と炎」を眼にした多くの視聴者が、東京電力は「白煙」と誤魔化すことでなにか重大なことを隠そうとしているのではないかと疑っても仕方がないような状況であった。東電のこの発表は一体どのような経緯で行われたのだろうか。事実を可能な限り正確に公表するという基本姿勢がまったく欠けているように感じた。

原子力安全・保安院の記者会見もひどいものであった。第一原発1号機の格納容器内の圧力が上昇して危険なので弁を開いて蒸気を放出するする手順を説明する際にも、自分たちが日常使っているのであろう、「ベント」「ベント」という術語を繰り返すのみ。話の筋で「ベント」とは弁のことか、と推測はついたものの、国民に分かりやすく説明するという姿勢を感じとることは出来なかった。

あれもこれもこの未曾有の災害に平静さを失い、伝えるべき内容を落ち着いてまとめられなかったのかも知れない。不断からの準備が無かったせいなのかも知れない。たとえば1号機にせよ3号機にせよ、燃料棒がなぜ水面上に露出するのか、水をどのように供給するのか、それを説明する模型図すら公表されていないのではないか。少なくとも私が調べた限り見当たらなかった。テレビ、新聞などで確かにそれらしき模式図が描かれているが説明がほとんどないものだから、ただの判じ物に終わっている。


これは1号機が問題になった時の朝日新聞の図であるが、どこにも「ベント」が見当たらない。さらに「スプレー装置」などがあるが、何をどういう目的でどのように水をスプレーするものやら、何一つ分からない。元来は福島原発か東京電力が提供すべき模式図であるが、マスメディアが積極的に取材をして、取材者がその模式図を見ながら原発側の説明を聞いて、それを理解出来ることを確認した上で視聴者に提供すべきなのである。その基本的なところを消化不良のまま残して、一般教養の持ち主より3本ほど毛の多いだけの「解説者」をテレビに並べたてての報道番組なんて無意味である。

私が望むような取材、解説が出来るのではないかと思ったのがNHK科学文化部の山崎記者である。原子力担当ということで短い間にお馴染みになったが、生の情報に接して常識的に考えて疑問が生じたらそれを解き明かして聴視者に伝ようとする姿勢を感じたからである。この山崎記者にもう一歩踏み込んで1号機、3号機の模式図を準備してもらい、それを使ってその時々の問題点を懇切に解説して貰いたかった。自分が納得出来て始めて視聴者に伝え、そして疑問を疑問として残さない。これがプロの取材・解説者に求められる資質ではなかろうか。

そして、最後に一言。情報を提供する側も取材する側も、民度の極めて高い日本国民に対して、いかなる意図であれ情報操作は、結局は自分の首を絞めることになることを銘記すべきである。