パンパスグラスの穂が一つだけ、薄曇りの陽を受けて鈍く光っていた。
灼熱の草原に限りなく広がる、パンパスグラスの輝く穂波を見たいものだが、狭い日本の国土では無理な注文というものだ。アルゼンチンの大草原・パンパスに大群落があると伝えられているが、朝日に輝く様、夕陽に染まる穂波はどんなであろうか。
日本に持ち込まれてからは、和名を「白銀葭・しろがねよし」と名付けて、大きな穂を楽しんで来た。ここの株にも、毎年沢山の穂が出て愉しませて貰ったが、今年はたった一つとは如何したことだろうか。時節がまだ早いので、これから出揃うのかも知れないが。
色々な草花を見るに付け、
彼らの育った環境に思いを
馳せ、想像を巡らせるのも
愉しみの一つだ。
お付き合い願っている方々
も、それぞれに独自の道と
環境を歩んでこられて、そ
こから限りないものを吸収
して来られた。
花からも友人知人からも、
様々なことを汲み取らせて
頂いて、感謝せずにはおれ
ないこの頃である。
ただ独り白銀葭は蓬髪を
もたげて立ちぬ異国にありても
見晴るかすパンパグラスの穂波染めて
夕陽落ちゆくパンパス想ひぬ
海原を遥かに越えて自ずから
根をはる吾娘を思ひぬるかな