炎天下の草原は、草いきれしていた。
はびこる草叢に、足を踏み入れてほどなく、あれ「おなら」かな、と思われる匂いがして辺りを見渡した。もとより人影は見える筈もないのに、と思いつつ数歩進んで、はたと気がついた。「へくそかずら」だ! 案の定、つつじに「屁糞葛」が絡み付いて花を咲かせていた。
離れて見れば可憐な小花が、あちこちに咲いている。もっとよく見ようと近づいたら、あの「おなら」とは少し違うが、何とも個性的な「匂い」が鼻をついた。カメラに収める間だけ我慢したが、それにしても「花の香り」とはとても思われない異臭である。「屁糞葛・へくそかずら」とは、誰が付けたか誠にヒドイ名前ではあるが、匂いからすれば当に「打って付け」の名前だ。
例によって、念のため花図鑑のお世話になった。別名を「灸花・やいとばな」、また「早乙女花・さおとめばな」と書いてあった。
誰ならむ 花の名前を付けかねて
余りに酷し「屁糞葛」は
さは言えど花の香りにあらずにや
人くさきかな屁糞葛は
いと惜しき小花なるかも紅の
こころを壺に秘めて咲くとは