「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「二00六年に感謝」

2006-12-31 23:59:59 | 和歌

 色々なことがあった二00六年でした。

 それらの一つ一つが、暮れ行く年の瀬と共に思い起こされます。
リタイヤして後も、此れほどに一日一日が貴重な時を送れるとは、ついぞ思いもしませんでしたが・・・。




             
 バラエティーに富んだ皆様との交歓は、毎日の時間の経過が瞬く間のように思われ、それぞれに時間を取られて床につくのが日に日に遅くなりました。そして終には、余りの忙しさにブログ更新すらママならない日が続き、多くの方々から「倒れたのでは・・・」とか「ドウナッタノ!」とのメールを頂き、ご心配をお掛けしました。

 ブログの交歓は、思いも掛けない心の交流と出会いを創り出して呉れました。
多くの学生諸君との対話では、真摯な議論と世代を超えて滾る想いを伝えあい、市民大学の講座では、講演を聴講して下さる大勢の市民の皆様と、孫達のエネルギーと環境について一緒に考える時を共有しました。書の世界では老若男女の枠を超え、磨ぎすまされた感性の響き合いと躍動する筆跡に感動し、ゴルフでは共にプレーする友人からの気配りに学び、お仲間との飲み会では、盃を重ねつつ喧々諤々の議論を愉しませて頂きました。

 悼尾を飾る愉しみは、孫のキャメロンくんと璃華ちゃんの来訪です。
ニューヨーク・グランドゼロの至近距離に住む娘一家は、あの悲惨な現場からニュージャージーの湖畔にも寛ぎの家を得て、今回は郷里に愛息を伴って、やっと真の癒しを求めて来訪し、
ジジ・ババを喜ばせて呉れました。都内の高層マンションに住む息子は、厳しいビジネス世界に身を置き、連日深夜の帰宅を繰り返していますが、キャメロンくんの来日に合わせて、久しぶりに璃華ちゃんを伴って一家で来訪し、両腕に孫を抱ける幸せをプレゼントしてくれました。

 多くの皆様との交歓、孫達との触合いに限りない歓びを頂いた、二00六年でした。



          丙戌(ひのえいぬ) 多くのときめき給われば  

          丁亥(ひのとい)の歳 感謝で迎えむ 







「小菊と貝塚伊吹」

2006-12-11 23:42:40 | 和歌

 カイズカイブキ(貝塚伊吹)の生垣の下に、色とりどりの小菊が咲いていた。

 手入れも良く行き届いて見事な出来栄えだ。色の配列も工まず、形を懸崖に整えるのでもなく、ごく無造作に在るがままの姿に育てて、カイズカイブキの生垣とのバランスも絶妙である。

 カイズカイブキは生垣としてごくポピュラーだが、何処のお宅も手入れが頻繁には出来ないので、毎年少しづつ生垣の厚さが増して、気がつくと大幅に道路にせり出すことになる。
息が詰まるようなノッペリした緑の壁は、切り詰めれば無残な肋骨を晒すので、手がつけられない状態になるのが通例だ。このお宅のカイズカイブキの生垣は、際立って爽やかだ。
枝ごとに棚作りにしているので、息詰まる閉塞感がない。ただ残念なのは、棚作りの間が空きすぎてしまったことだ。想像ではあるが閉塞感に堪えられず、剪定の方針を変え、仕立て直したタイミングが、大きく成長した後だったのかも知れない。

 植木と言わず子育てと言わず、実にも、タイミングの大切さを訓えられるが、その後に添えて植えられた小菊に、誠に爽やかな主の「心の在りよう」を、見せて頂いた。






             彩りも姿も工まず控えめに 
  
             群れ咲く小菊の心栄えかな 



             乱れ飛ぶ貝塚伊吹の枝ごとの

             棚のつくりに憶いを観るかな 



             つらつらに思えばこの世は難きかな
 
             植木も人も時節を得るとは






「黒鉄黐・くろがねもち」

2006-12-10 22:14:02 | 和歌


 近所の椿並木が、今年の春先に「くろがねもち」に植え替えられた。

 椿並木は余り見かけないユニークなものだけに、聊か残念ではあったが、茶毒蛾が異常発生して住民に迷惑がかかるとあっては、致し方ない措置であろうか。
「くろがねもち」は、公害にもタフであることと、赤い実を長期にわたって愉しませてくれる優れものだ。赤い実をカメラに収めた記憶を辿って、画像ファイルを調べたら、
十一月四日であった。あれから既に一月以上も経っていた。


 昨日は、「もちの木」の樹皮から「鳥もち」を採ることを書いたが、この「くろがねもち」の樹皮もまた「鳥もち」の原料になる。樹皮から「鳥もち」を作るのは根気が要るが、簡便な方法としては、「強力粉」を使っても作ることが出来る。

 間もなくニューヨークの娘がキャメロン君を連れて遣って来る。幸いにも「うつろ庵」には「メジロ」が沢山遊びに来るので、
キャメロン君と「鳥もち」を作って「メジロ」捕りに挑戦するのも、ジジと孫のお遊びになるかもしれない。

 暫らくとは言え、「鳥かご」に幽閉される「メジロ」には、お気の毒ではあるが・・・。



             やがて来るキャメロン君とあれや此れ 
 
             遊ぶを思えば心たのしも



             窓近く飛び来るメジロを息つめて 

             じっと見つめる キャメロン想ほゆ 



             鳥かごは小鳥無きまま朽ちゆくに
 
             いだけよ小鳥を せめてひと時 






「もちの木」 

2006-12-09 18:20:00 | 和歌


 「もちの木」の実が、鮮やかな紅に色付いていた。
近くの蕎麦屋で「蕎麦湯割り」と「とろろせいろ」を堪能して、帰りに遠回りをしたら、旧家の門先にかなり大きな「もちの木」が沢山の紅の実を付けていた。

 実の大きさは、凡そ十ミリ程もあろうか。既に鳥が啄んだのだろうか、門辺には幾つかの紅の実が、散り敷いていた。赤く色付く木の実は、鳥達に「たべて食べて」と訴えているのだと、何処かで読んだことがあるが、「もちの木」の実を啄めるのはヒヨドリ位のかなり嘴の大きな鳥かもしれない。

 虚庵居士が子供の頃は、田舎の古老は「もちの木」の樹皮から「鳥もち」を採り、それを棒の先に巻き付けて、「メジロ」や「ホオジロ」などの小鳥を捕まえたものだった。いまのご時勢では「鳥もち」などと言っても通用しないだろうが、粘着力の極めて強い「鳥もち」は、一たび鳥が止まれば足が捕らえられ、もがけば羽毛までも貼り付いてしまうという代物だ。

 紅の木の実は鳥の好物だが、樹皮から採れた「鳥もち」は、小鳥を捕らえるのに使われるとは、何とも皮肉な取り合わせだ。世知辛い現世を、観せつけられる思いがする。






             生い茂るもちの木の枝みどり濃き 

             葉に映えるかも 実の紅は 



             物の皆枯れて失せなば鳥達の 

             啄む声ぞさぞやかしまし 



             鳥もちに捉われもがく小鳥をば
 
             優しくほぐす 爺の手 想ほゆ   






「欅並木」 

2006-12-07 00:55:03 | 和歌

 何年ぶりかで仙台を訪ねたら、青葉通りの欅並木は、今が黄葉の真っ盛りだった。





 原子力工学を学ぶ学生を鼓舞し、支援することを趣旨として、原子力学会に「シニアネットワーク」を設立して早くも半年が経過した。十二月半ばには東北大学で「シニアと学生の対話会」及び「シニアと教官の対話会」を開催するので、これに先立って、地元関係者の皆様の参加と支援を要請するため、十一月末に仙台を訪ねた。





 訪問先ではそれぞれ要人がご対応下さって、趣旨にご賛同頂くと共に、何人かの参加の快諾が得られ、更にOB諸氏をお誘い下さる約束を頂戴した。

 現役時代にお世話になった皆様に温かく迎えられ、久闊を癒しつつ会食のお誘いにも甘えさせて頂いた。密度の濃い仙台の訪問であった。






             陽に透ける欅の黄葉輝くは
 
             青葉通りの霜月晦日ぞ








             抜けわたる空見上げればはらはらと
 
             降り散る欅の 舞を見るかな 








             散り敷ける欅の落葉を舞い上げて
 
             霜月の朝 タクシー走りぬ 





  

「風船唐綿・ふうせんとうわた」

2006-12-06 21:19:06 | 和歌

 散歩の途中で、白い花と髭を生やした風船状の実に出会った。





 ユーモラスな「風船唐綿・ふうせんとうわた」を、最近は彼方此方で見かけるようになったが、近くでまじまじと見たのは初めてであった。これまでは異形の実が気になっていたが、花を観るのは初めてだった。唐綿の花は赤と黄色で上向きに咲くが、「風船唐綿」は白花で逆さに垂れて咲く。唐綿の実は細長い莢が割れると、中から綿毛があふれ出し、風に舞って遠くまで種子を運ぶ。この「風船唐綿」の髭付きの実も、やがて年が明ければ枯れ、中から綿毛が溢れ出すことになろう。


 可能な限り休まずに書き続けて来たが、余りの多忙さに追われて、書きかけのまま二週間余も放置した。昨今の冷え込みで「風船唐綿」は如何しているだろうか。

 連載を中断していたにも拘らず、連日五十名をも越える皆様にお訪ね頂き、心から感謝しつつ、皆様にご心配をお掛けしたことが心苦しく、申し訳なく存じております。




             髭生やすは 狸のふぐりに非らざるや
 
             「風船唐綿」異形の実なれば



             白妙の稚けき花の結びしか 
 
             毛むくじゃらなるむくつけき実は



             柴の戸を閉ざすにあらねど訪ねきて 
  
             佇む気配に こころ苦しも