「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「蝉しぐれ」

2006-08-17 17:30:50 | 和歌


 「夏の高校野球」が最盛期を迎えて、テレビでは連日熱い戦と応援合戦とが続いているが、「うつろ庵」周辺ではそれと競うかのように、「蝉しぐれ」が賑やかだ。

 朝のうちは、つくつく法師の声を聴いたが、日中になると油蝉・みんみん蝉の大合唱だ。今年は梅雨明けが例年に比べて遅かったので、その分、蝉の脱皮も若干ずれたのかもしれないが、生垣や庭木、或いは草花などあちこちに、蝉の抜け殻が目立つようになった。ここに来て「蝉しぐれ」もひと際はげしくなったようだ。


             脱皮して未だ時も経ぬ蝉ならむ
   
             抜け殻近くに 息づく一匹



 小学校の友人に蝉博士がいた。抜け殻を一瞥しただけで、蝉の種類を鑑別したが、彼は時に奇問を発して、級友を手玉に取った。
「校長先生は朝礼で右を見てお話され、次に左を向いてお話をされたがなぜか?」
友人達が・・・頭を抱えるのを見て、ニヤッとほくそ笑むと、
「右も左も、同時には見れないからや!」などと煙に巻いた。

 蝉の抜け殻を見ると、蝉博士が思い出される。彼はどうしているだろうか。






             空蝉は木の葉をしかと掴みいて

             固まる手足は あはれ放たず   


 
             汗拭きて目を閉じおれば鳴き止まぬ 
  
             蝉しぐれかも 八月十五日